すずかさん 「劇映画 孤独のグルメ」 1/22(水) TOHOシネマズ ららぽーと横浜にて鑑賞 |
とても寂しいのですが、今回で私の映画レポートは最後です。この活動を通じて、多くの素敵な作品に触れ、その魅力を自分の言葉でたくさんの方にお伝えできたことは、私にとって一生の思い出です。最後のレポートも、これまでと変わらず心を込めて作品の魅力をお伝えしたいと思います! 今回ご紹介するのは、「劇映画 孤独のグルメ」です。実は、私は孤独のグルメをテレビで観たことがありませんでした。それでも、『食』という私が映画と同じくらい好きなテーマであることに惹かれて足を運んでみました。結果として私に映画の素晴らしさを改めて感じさせてくれる作品になりました。 私が映画を好きな理由のひとつは、自分の世界観が広がる面白さを実感できる点です。そして、この作品を通じて、まさにその感覚を存分に感じることができました。この作品は、日本国内の舞台だけでなく、パリや韓国にも広がり、それぞれの地での美味しそうな食事の風景や文化が丁寧に描かれています。グルメ以外にも、私はパリのまるで公衆電話のようなエレベーターには驚かされました。食だけでなく、異文化に触れる旅のような感覚を味わえる点がこの作品の大きな魅力だと思います。 そんな魅力ある一作という点に加え、この映画のポイントは監督を主演の松重豊さんが務めているというところです。予測のつかない展開にユーモアが散りばめられ、新鮮な気持ちでストーリーを楽しむこともできます。ぜひ皆さんも、劇場でご覧になってください!これからも素敵な映画が多くの人の元に届きますように。 |
高井さやかさん 「敵」 1/18(土) テアトル新宿にて鑑賞 |
今回ぴあ特別会員としてこの様な機会を頂き「人生で1番映画を観る1年にするぞ」と意気込んで挑みましたが、その通り1番映画を観た1年になりました。様々な映画を観るようになったことで、新しい好みや思いがけない傑作との出会いなど、私の人生の中でより一層、映画というコンテンツに対する愛しさが増しました。映画を通して色々な感性に触れ、思考や経験を疑似体験し、感情を揺さぶることは、私にとってこれからも人生を豊かにしてくれる1番身近なご褒美であり続けると思います。 そんな私の最後のレポートは「敵」です。預金残高から逆算した人生のXデーを決め、身の丈にあった暮らしを送る元大学教授の平穏な日常に、”敵”が現れる。丁寧な暮らしを楽しみ、やり残したことも、思い残すこともないと余生を過ごしていた筈の主人公が”敵”の影を感じ、どんどんと心身の老いや過去の後悔に呑み込まれていく姿が印象的でした。 筒井康隆さん原作という事もあり鑑賞しましたが、どんな人間でも一皮剥けば...といった思考の描写や、虚実の入り混じるSF的展開を見事に映像化しており、全編モノクロでありながら様々な色をみせてくれる物語に夢中になってしまいました。主人公を演じた長塚京三さんの知的で紳士的な佇まいと、日常の崩壊に伴う変貌がとても美しかったです。 また、主人公を取りまく3人の女性達の文学的なエロティシズムもとても美しく魅惑的でした。生と性と死という重く生々しいテーマを描きながらも品があり、食事描写もとても美味しそうに劇中で描かれている為、幅広い方が楽しめる素晴らしい作品だと思います。あの映像化の難しそうな筒井ワールドが、こんなに知的でパワフルに実写化されるのか、と吉田監督の手腕にうっとりしました。ぜひ、劇場であなた自身も”敵”と対峙してみてください。 |
山﨑光さん 「サンセット・サンライズ」 1/20(月) TOHOシネマズ錦糸町オリナスにて鑑賞 |
私が担当する最後のレポートで選んだ作品は「サンセット・サンライズ」です。本作は、コロナ禍によるロックダウンでリモートワークが広がった2020年を舞台に、これを機に三陸の物件にお試し移住した釣り好きの主人公・周作が、地元住民たちとの交流を通じて、地方の過疎化や震災といった問題に向き合っていく物語です。 と聞くと、少し堅いテーマに思えるかもしれませんが、宮藤官九郎さんの脚本によって、人々の力強さや温かさがユーモアたっぷりに描かれています。社会問題と向き合いながらも、それを豊かなエンターテインメントへと昇華させた、見応えのあるヒューマン・コメディに仕上がっています。 全体的にコミカルで楽しく心地いい話なのですが、社会問題の部分についてはやはり深く考えさせられます。しかも田舎町に突然やって来た都会者の話ということで、都市圏で生まれ育った私には他人事に思えませんでした。コメディ要素とシリアス要素のバランスが絶妙で、2時間半弱の長尺を飽きさせることなく描かれている傑作です。 最後に、1年間ぴあ特別会員という貴重な経験をさせていただき、この1年は私の人生の中で最も彩りに満ちた一年となりました。濃密に映画と向き合い、映画について考えることに特別な意味が生まれるこの1年は本当に幸せで、より一層映画への愛が深まりました。もしこの活動がどこかで何かの一助となれていたなら、心底嬉しく思います。これからも変わらず映画を愛し続けていきます。 |