宮本さん(女性/19歳/学生) 「夢売るふたり」 10月3日 新宿ピカデリーにて |
「ゆれる」(06)「ディアドクター」(09)の西川監督の最新作。火事で店を失った夫婦が結婚詐欺をはたらくお話。妻の里子は、常連客の女と寝て偶然お金をもらった夫•貫也を見て、結婚詐欺をさせることを思いつく。最初の方はふたりともゲーム感覚で、里子の台本通りに詐欺を行う貫也、という構図。しかし、詐欺を続けるにつれて貫也も慣れてきて、ひとりで詐欺を行うようになっていく。このあたりから夫婦の力関係が崩れてきて、それまで優位にたっていた里子と貫也の立場があやふやになり始める。 後半、貫也は里子に向かって『お前は腹いせのために俺に結婚詐欺をさせている』と言うけれど、それは本当なのだろうか。むしろ、大好きな夫が犯した過ちの行動を許せない気持ちを殺してなんとかなんとか肯定しようとした結果が詐欺へと繋がっていってしまったのではないか。『夫は自分を裏切ろうとしたのではない。自分のためにお金を借りようとした結果なのだ』と。里子は現実的な人物に見えるけれど、実は誰よりも貫也とのあたたかい夢を大切にもっていたのだと思う。だからこそ、木村多江さん演じるシングルマザーの家庭に家族として受け入れられている夫を見て、その家に乗り込んでしまうほどの嫉妬や焦燥感を持ったのではないか。この家庭は、結婚詐欺を行うことで貫也と里子が失った家庭の暖かさを持っている。そして、この家庭のあり様こそが、里子が本当に作りたかった家庭像だったのかな…。 本当は、ふたりで自転車に乗ったり、くっついて眠ったりするだけで充分だったはず。その幸せが走るたびにどんどん手からこぼれていく様がかなしくて、元に戻らないふたりの時間を思ってどうしようも無い気持ちになった。今作にはいろいろな女が出てくるけれど、里子が一番哀しく、本当のところですごく純粋な存在だったように思う。 ラストシーン、あのカモメを見たのはどちらだったのだろう。里子か貫也か、あるいはどちらも?きっと最初から里子には見えているのだから、夫に見ていて欲しい。と思うけれど、やっぱり貫也にはまだ見えないんだろうな。 |
丸茂さん(女性/26歳/販売業) 「アウトレイジ ビヨンド」 10月10日 渋谷TOEIにてにて |
劇場で、何度吹き出してしまった事か…。『全員悪人』とは聞いていたけれど、どの登場人物もあまりにも恐すぎて、迫力がありすぎる…。更に、暴力描写はいっさい手抜きがなく痛そうで堪らなくて、人間関係の立場がコロコロと変わる展開の為、どんどん人が死んでいくし…。作品全てにおいてあまりにも容赦のない作りに観ていて段々と“恐さ”という感情を通り越して、思わずプププと笑ってしまった‥。 前作から5年後、加藤(三浦友和)が組長、石原(加瀬亮)が若頭に就任した山王会は今や政界とも繋がりを持ち、ヤクザの世界以外にも勢力を増している。警察は巨大化した山王会を潰そうと躍起になり、暴力団担当の刑事・片山(小日向文世)は大阪の花菱会に後ろ盾を求めるも、裏切りにあい失敗してしまう。そして、片山は5年前に死んだと思われていた服役中の大友(北野武)に会いに行く‥。実は、前作「アウトレイジ」(10)はいまだ未鑑賞で、“強面なおじ様・お兄様が集まって『ばかやろー!このやろー!』とよく叫び、よく人が死ぬヤクザ映画”という勝手なイメージだけ抱いて劇場に乗り込んだのだが、物語序盤に人物関係が分かりやすく描写され、予備知識が無くとも充分に作品を理解出来た。上記の“容赦のなさ”も作品を面白くしているポイントだが、登場人物をただの泣く子も黙る恐~いヤクザではなく、一癖もふた癖もある個性豊かなキャラクターとしてスクリーンに焼き付けた役者さん達の力が本当に大きいと思う。武さんの存在感や三浦さんの静かな怒り、小日向さんの刑事なのに誰よりも1番底知れない感じ、加瀬さんのコントみたいにへっぴり腰なヤクザぶり、高橋克典さんの台詞を一言も発しないのに溢れ出る男気、西田さんのコッテコテな関西のおじ様、などなど‥。ここに書き切れなかった方達を含めて、どの役者さんの演技も本当に凄くて奥深く、怒涛の台詞回しやドスの利かせ方1つを取って比べてみても、様々でとても面白い。大物から若手、個性派・名脇役まで、360度スクリーンのどこを見渡しても味のある素敵な役者さん達が勢揃いで、キャストの豪華さに圧倒された。また、これだけの役者さん達を集められる、北野監督の偉大さも改めて感じた。 普段なかなか手を伸ばさないジャンル(バイオレンス、ヤクザ系)の映画に触れたら、とてもいい刺激を貰えた。まさに芸術の秋にピッタリな、巨匠の問題作だった。 |
MIKIさん(女性/50歳/会社員) 「人生いろどり」8月29日 試写会にて |
徳島県上勝町の実話をもとにしたサクセスストーリーが映画になったと知りさっそく見に行ってきました。 ミカン産業が全滅し、やる気を失った過疎の町。何かをやろうにも、新しいアイディアなど出てこない。農家の方たちは新しい事業へのやる気より、いかにして国の補助金がとれるかを考える。そんな中、農協職員江田のアイディアで始まった『つまもの』の葉っぱビジネス。最初に手掛けた3人の女性薫・花恵・路子と江田の話を中心に展開していく。周りの人たちの反対やアクシデントがあるが、サクセスストーリーだけにどちらかというと安心して次はどうなるのかとストーリー展開を見守っていくという感じだ。周りの反対を押し切って、どんな困難にも乗り越えて、様々な工夫やアイディアを出して前向きに頑張っていく3人に元気をもらった気がする。ラスト、たくさんの花と花弁が舞うシーンに思わずウルッとなってしまった。 この映画で見入ってしまったのは、エキストラで出てくる地元の女性のみなさん達の姿だった。映画の前半では、町での暮らしはどん底で日々やる気をなくした町の人たち。主人公薫役の吉行和子さんは、それこそ日々の農作業で疲れ果てたという感じだが、ちらっと出てくるエキストラの現地の女性たちはそれこそ元気そのもの、吉行さんより若々しいんじゃないかと思わず目が行ってしまった。映画の後半では、今の町の人々の様子が映し出されているが、電動カートに乗って山から葉っぱを持ちかえる女性たちの様子や若木を増やしている方たちも映し出され、とても生き生きとしていていいなと思った。また、エンドロールの映像では、地元の元気な女性がたくさん映っている。とくにビックリだったのは、iPad持って注文もこなしているし!!と、まだ携帯しか持っていない私は思わず負けたと思った。観終わって、上勝町のみなさんから元気をもらったようで、帰りの足取りがすごく軽く感じた。 翌日、会社でこの映画面白かったよと話したら、この実話を知ってる人が多く職場でも話題沸騰、映画の話題に彩られた。 |