レビュー一覧
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佐々木悠衣さん 「モーリタニアン 黒塗りの記録」(11月22日(月) TOHOシネマズ日比谷にて) |
無実であるにも関わらず、9.11アメリカ同時多発テロの首謀者として捕らわれ、拷問を受けながら14年間収容所で拘束されていたモハメドゥ・ウルド・スラヒ氏という男性をご存じだろうか。実話であるという字幕から始まる作品だが、彼が受けた様々な拷問のシーンを見ると、あまりの酷さにフィクションであって欲しいと願わずにはいられない。 パイロットの親友をテロで亡くし、スラヒ氏を死刑にするための起訴を担当することになった軍人スチュワートと、スラヒ氏の代理人を申し出た弁護士のナンシー。二人は対立する立場でありながらもスラヒ氏の真実を追い求める。それぞれが信念を持って行動した結果、どんな結末になっているのかを是非映画館で鑑賞して知ってほしいと思う。音や光の効果で、まるで自分も拷問を受けているように感じるときがある。それを何年も耐え続けたスラヒ氏の精神の強さが私には信じられない。 登場する人物がそれぞれ目的をもって行動しているが、目指すその先は皆、テロや戦争の無い平和な世界ではないだろうか。現在、世界20か国でスラヒ氏の手記は刊行されている。アメリカ政府によって黒塗りにされてしまった部分も多数あるが、私もその手記を読んでみようと思う。 |
齋藤 睦さん 「ちょっと思い出しただけ」(11月7日(日) 東京国際映画祭にて) |
コロナ前はどんな世の中だったか、あの頃自分は何していたか、誰と会っていたか、今に繋がる過去をちょっと思い出す作品でした。どの瞬間も「今」なのはあっという間で、それを思い出すときに、後悔したり懐かしんだり、色んな感情が湧き出てしまう。照生と葉の6年間もそうであるように、観た人みな自分自身の軌跡を思い出してしまうと思います。 二人の周りで出会う人も、今でもふと思い出すくらいキャラクターの濃い人ばかりで、鑑賞中マスクの中で何回もクスッと笑うくらい会話の掛け合いが秀逸でした。実際に出会ったかのように、コロナ禍でもあの人たちもなんとかやってるんだろうって思えてきます。 この作品は主題歌であるクリープハイプの「ナイトオンザプラネット」に触発されて書かれた脚本で、同名映画作品へのオマージュもたっぷり織り込まれています。松居監督と池松壮亮さんとクリープハイプという好きなタッグをまた見ることができたのも嬉しかったですし、この作品を通してコロナで中止になったあのライブをちょっと思い出すことができたのも、少し報われました。この作品を思い出すのもまた追体験のようで、改めて素敵な作品だと感じています。 |