レビュー一覧
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高井さやかさん 「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」 11/15(金) TOHO新宿にて鑑賞 |
大ヒット作の続編というものは、背負うものが大きい。1つの作品として完成しているが故に、観客の期待も大きくなってしまう。今回おすすめする「グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声」に対しても、僭越ながら少なからず不安を持って鑑賞したのだが無用の心配であった。 本作の主演ポール・メスカルは、私にとって大好きな作品「異人たち」(23)や「aftersun/アフターサン」(22)などでも近年主演を務め、憂いのある繊細な演技がとても素晴らしい俳優だ。その為、こうした大作のアクション映画ではどんな姿を見せてくれるのかワクワクしていた。復讐に燃え闇に呑まれんとする繊細な姿と、グラディエーターとしての戦闘力やオーラのバランスがよく描かれており、この熱く血生臭い作品の主人公然とした存在感を放っていた。 そして何よりも、本作は名優デンゼル・ワシントンの魅力が余りにも詰まっている。奴隷商人として成り上がったマクリヌスは、汚い手も使うが下品にはならない。寧ろ身のこなしがエレガントで、飄々と賢く立ち回り、鋭い知性がとてもセクシーなため、画面上にいるだけで目で追ってしまう。もう1人の主役が如く魅力的なキャラクターを演じたデンゼルと、そんなデンゼルとポールを俳優として共闘させた、リドリー・スコット監督の変わらぬ手腕には惚れ惚れとした。 前作の物語をしっかりと継承しつつ、148分と長めの上映時間を忘れさせる王道の大スペクタクル作品に仕上がっており、特にコロッセオに水を張った模擬海戦のシーンでは、その迫力に胸が熱くなった。この血が滾る様な興奮を、ぜひ皆さんも映画館の大画面で味わって欲しい。 |
山﨑光さん 「アイミタガイ」 11/11(月) 新宿バルト9にて鑑賞 |
何度思い返してもいい映画だったなぁとしみじみ思います。本作は、主人公であるウェディングプランナーとして働く梓のもとに、親友の叶海が命を落としたという知らせが突然届くところから物語が始まります。交際相手の澄人との結婚に踏み出せず、生前の叶海と交わしていたトーク画面に変わらずメッセージを送り続ける梓。同じ頃に叶海の両親は、とある児童養護施設から娘宛てのカードを受け取ります。 この梓視点と叶海の両親視点の2つが主となって物語が進んでいくのですが、ここから様々な登場人物・ストーリーが交錯します。この繋がりは細かなものも多いのですが、それがすごく綺麗で繊細で心地よく、すっかり心を掴まれてしまいました。 悪い人間が登場しない物語には、深みがないであるとか嘘くさいという風な意見を度々耳にします。でも私は、人が人を思い合う世界が好きです。そんな世界であればいいと心から思います。「アイミタガイ」=『相身互い』、誰かを想ってしたことは巡り巡って見知らぬ誰かをも救い、誰の胸にも眠っている助け合いの心を呼び起こし何気ない毎日をやさしく照らします。優しい温度に自然と涙がこぼれ、じんわりと心温まる作品でした。 |