レビュー一覧
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佐藤 由美さん(女性/会社員) 「ムカデ人間」7月5日(月) シネクイントにて |
白地に赤線、一筆書きのように書かれた3人の人間のハイハイ姿。そんなユルいチラシと「つ・な・げ・て・み・た・い。」という文句に釣られ観にいくと、ホントに繋がっちゃう話だった。ただ、いきなり繋がって終わりではなく、ちゃんと前後にストーリーがあり、話の組立が意外としっかりしていて驚いた。映像も色を抑えた寒色系な仕上がりになっていて、ハイター博士の潔癖で人嫌いな性格の表現がみてとれた。3人の人間の繋がれた姿はシュールであり滑稽でもあった。 そんな中にも「どうあれば人間なのか」「どうなったら人間ではなくなるのか」という哲学的要素を含んでいて、笑ったり考えたり忙しい作品でもあった。そして切ない(?)ラストに危うく泣かされそうになった。続編があるそうなので、楽しみにしたい(12人になっちゃうとか……)。 今回、ガチな芝居で作品を盛り上げてくれたカツロー役の北村昭博さんと松尾スズキさんの「トークショー」にも参加してみた。小ネタ・ディープネタが聞けてかなり楽しかった。ハイター博士役のディーター・ラーザー氏は撮影中、常に役に入っていたとか……。偉業を成し遂げた後の酔いしれっぷりがハンパなかった訳だ。 |
大内さん(女性/49歳/イラストレーター) 「あぜ道のダンディ」 6月30日 テアトル新宿にて |
この作品は後になればなるほどじわーっと暖かさが感じられる……そんな映画でした。前作の「川の底からこんにちは」(09)では商業映画デビュー作ながら高評価を得た石井裕也監督。そんな彼の期待の最新作は50歳のおじさんの物語。 光石研演じる宮田淳一は、妻に胃がんで先立たれ、浪人中の息子と高3の娘を男手ひとつで育てている運送会社の運転手。彼はどうにかして子どもたちとコミュニケーションをとろうとしてもなかなか会話が噛み合わない……それでも粋がって父親としての見栄をはっている不器用な男。そんなある日、からだに先立った妻と同じような症状を感じ、勝手に『余命わずか……』と先々の不安を友人の真田(田口トモロヲ)に打ち明ける。彼は中学時代からのイケてない同士の友達……そう、唯一弱音を吐ける飲み友達なのだ。そんな真田も長い間の親の介護で妻に逃げられ子供もいない、今は天蓋孤独な身だったりして、もうどこをとってもトホホなおじさん二人組。 でもこんな今どきのおじさんを悲しさやユーモアを含ませながらダンディにカッコよく描けてしまうのは脚本も手がけたこの監督のスゴさなのかもしれない。まだ28歳なのになぜにこんな優しい視線で描けるのだろう……。 それから忘れてはならないこの二人の役者、光石研と田口トモロヲ。本当によいコンビネーションだった。彼らだからこそ内側から滲み出る本音の部分が伝わってこれたのかも。可笑しくも思わずほろほろと泣けてしまいます。 そして帽子やネコ、部屋に鳴り響く時計の秒針の音…そういうものたちからもいろんな気持ちが溢れ出ていました。 この作品は観る世代や男女などで受ける印象が違うかもしれないので、自分に近い様々な登場人物の目線でこのおじさんたちのダンディズムを感じてほしいと思います。 |
後藤さん(女性/37歳/主婦) 「ハリーポッターと死の秘宝 PART2」 7月15日 アメリカにて |
ついにハリーポッター最終話! 敢えて原作未読の私は、ワクワクして公開初日の朝一番で鑑賞。思えば10年前はまだあどけなかったハリー。3話、4話と進むうちにどんどん試練が与えられて、苦悩して、この最終話では見た目も精神もすっかり逞しくなって、私はもうすっかり親心。特に後半のヴォルデモートとの戦いの場面では、その精悍な姿に思わず涙腺崩壊でした。 ハリーポッターと言えば迫力があってスケールの大きい映像が魅力。今回もいい感じ。映画館で映画を観る醍醐味はやっぱりこれ。まだ話の筋がきちんとわからない子どもでも、乗物や動物等、子どもが食いつきそうなシーンが沢山散りばめられているので、退屈しないで画面を追うことができそう。ただし幼稚園までの子どもには怖がられる可能性が高いかな。 そして大人にとってもシリアス一辺倒じゃない。クスッと笑えることが時々出てきて、緊張感を解してくれる。個人的には、劇場内で誰も笑っていなかったハリーの胸毛に笑ったけれど~ってこれは観点ずれ過ぎだけど。とにかくちょこちょこ笑えます。 強いて言えば、ヴォルデモートとの戦いの場面だけはもう少し迫力が欲しかった。もっともっと強い人を想像していたのでなんかあっけない気がしないでもなく。ハリーをこれ以上苦しめないで~と言いつつもっと戦わせてって、矛盾してそうだけど、最終話の最大の山場だけに、もう少しパンチを効かせて欲しかった。 あーそれにしても、ついにハリーポッターともお別れなのね。ホッとするような、寂しいような。10年なんてあっという間だけれど、こんなにも人を成長させるんだということを実感。あ、最後のシーンは何気に必見! |