レビュー一覧
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後藤早苗さん(女性/30代) 「後妻業の女」9月4日 TOHOシネマズ日劇にて |
本作品は黒川博行さん原作で、資産家の男性を狙って結婚詐欺をはたらく女性と、それをプロデュースする結婚相談所所長が、その悪事を資産家の男性の娘たちや私立探偵に暴かれそうになる話です。その文面だけ見るととても怖い事件を題材にしたシリアスな話のように聞こえますが、そこはさすが黒川博行風というか、映画の随所に散りばめられた関西風の細かいボケとツッコミでユーモア溢れるシーンが多く、みなが楽しめる娯楽作品として作り込まれていたと思います。関西出身の私としては、少し奇妙に感じた関西弁もあったもののそこはご愛嬌。全体的な展開がテンポよく、128分の長さにも飽きず楽しめました。 映画を観終わって、人を騙しても開き直ってのうのうと生きている人がもしいたら、自分が巻き込まれた時には絶対に許さないし法的に正しいことを証明するのが正義だと感じると思います。一方、人殺しはもちろんあってはならないことですが、当事者が幸せであればお金で解決出来ることは別にそれで良いのかもしれないとも感じました。大金でもお金はただ単にお金でしかなく、大竹しのぶさん演じる小夜子は、お金を手に入れても心のどこかでは何か満たされない気持ちがあるようにみえました。 豪華キャストもこの映画の一つの観どころで、特に大竹しのぶさんの演技は「これは素じゃないのか?!」と思ってしまうくらいの後妻業なりきりっぷりで、尾野真千子さんとの女同士のケンカシーンは思わず爆笑してしまいました。また、豊川悦司さん演じる結婚相談所所長も非常にお金に執着があり腹黒く、関西でいう「タヌキ」になりきっていました。そして関西人の私は「関西人がみんなこんなに口が悪いと思われてたらどうしよう…」と心配になるほどでした。俳優さんたち以外のところでは、小夜子の普段あまり表には出さない気持ちの表現として、音楽が効果的に使われていたのがとても印象的でした。 扱うテーマは結婚詐欺&殺人という実はヘビーなもので、救いようのない結末になっていたらどうしようかと考えていましたが、結果的には小夜子とその周りの人間模様にも焦点が当てられていて、インモラルである中にもメッセージ性がある作品になっていた点が個人的にはとても良かったと感じています。 映画にたくさん出てくるような年配の男女や気楽に映画を楽しみたい人、それから、お金をたくさん持っている人にも全然持っていない人にもお勧めしたい、そんな作品でした。 |
髙安 杏さん(女性/19歳) 「ゴーストバスターズ」 8月24日 TOHOシネマズ渋谷にて |
こんなネオンの美しいアクション映画だとは思わなかった。初めに出現する幽霊のことを「美しい」というゴーストバスターズのエリンたち。私も一緒に見惚れてしまった。戦うシーンでは、その美しい幽霊と武器から発する色使い豊かなネオンの組み合わせによる映像技術に圧倒される。また映画館でしか味わえないその映像と臨場感溢れる音響が合わさり、迫力満点。そんな幽霊に加え、ゴーストバスターズらしい愛着の湧くような可愛いお化けたちも登場するから破茶滅茶で観ていて楽しかった。 登場人物たちは、誰一人として劣らない強烈なキャラばかりなのにまとまっているのが不思議だった。クリス・ヘムズワースに関しては、今まで「マイティー・ソー」シリーズや「白鯨との闘い」(‘15)などカッコよく頼もしい役しか観たことがなかったので、ここまで空っぽなキャラを演じることができるのかと衝撃が大きかった。それでも違和感がなく笑えたのは、クリス・ヘムズワースの徹底した演技力の凄さだろう。4人の女性たちが主役の中で、彼がいたからバランスが取れていたのかもしれない。ラストのエンディングではセクシーさを生かして笑わせてくれるので、最後まで帰らずに観て欲しい。 女性がヒーローとして活躍しているのも嬉しかった。女性のヒーローと聞いて私が思い浮かぶのは、しなやかで美人なキャットウーマンぐらいだ。しかし、今回はみんなどこか抜けていて欠点もあることで身近さまで感じた。私が一番好きだったのは、ケイト・マッキノン演じるジリアン。彼女はゴーストバスターズの武器などを作っていて、頭が良すぎてなのか、かなりクレイジー。でも少し危険にも感じる魅惑的な視線に、かったるそうな動きのギャップが最高だ。 感動や考えさせられる場面は一切なくて清々しく、クスッと笑えるところが盛り沢山。これだからゴーストバスターズが好きってなる。また、前作にも出てきた人が大量のスライムを浴びるところは最高に楽しいエンターテイメント。観るだけで気分を明るくさせてくれる。前作を観ていない方もリメイクした今作を観れば、街中でよく目にするお馴染みのゴーストバスターズのキャラクターがちょっと特別になるかも。 |
陳珍九さん(女性/38歳) 「ペット」 8月20日 TOHOシネマズ渋谷にて |
公開前からCMを見て、絶対に観に行きたいと思っていた「ペット」。飼い主がいない間のペットたちの行動が個性的でハチャメチャでとても愛らしくて…。私はペットを飼っていますが、ただの動物ではなく、どこか憎めない人間の友達や家族の様に時々感じます。そんな飼い主たちのハートをCMだけでぐっとつかむ親しみと魅力を「ペット」のキャラクター達に感じ、公開を心待ちにしていました。ただCMではどんなストーリーなのか詳しくわからず、子供向けなのかなあと少し不安になりつつ劇場へ。でも観てびっくり!!1作品でこんなにも沢山の楽しみ方が出来るとは!!「ペット」はただのアニメ映画ではありませんでした。 作品によっては「この作品はこういう風に観て感じて欲しい!!」と強く観客に迫ってくる場合もありますが、この「ペット」はそうではありません。観る人の観たい観方が選べる映画…とでも言えばいいのでしょうか?例えば、次々に出てくる爆笑シーンに大笑いしながら観てもよし、センスがいい様々なジャンルの音楽がピッタリ合う場面で流れてくるのでそれをノリノリで楽しんでもよし、沢山のペットたちが人間界で大活躍するので彼らと共に自分もドキドキハラハラ大冒険に出てみてもよし、飼い主の立場でいつもは聞こえないペットたちの心の声を聞いてジーンと胸を熱くするもよし。 こんな感じで頭を使わずにただ楽しんで観る事もできれば、深く掘り下げて観ようとすればそれに応えてくれる様に、人間と動物・ペットの現代の問題にも触れられています。それでいて押しつけがましさは全くありません。だから逆に自分に入ってくるし、素直な気持ちで考える事ができます。沢山笑ってちょっと考えさせられて、ちょっとだけせつなくなるけど、でも希望の光がみえて笑顔になって心が温まる。1人じゃないって嬉しいな、ありがたいなって、心が素直に喜べる。 1人でも、恋人と一緒でも、家族や友達とでも、ちょうど良い気分になれる映画だと感じました。本当にまるで実際のペットの様な存在の作品ですね。すでに続編も決定しているそうで、早く観たくてたまりません。特にかわいい顔してブチ切れてて人間への復讐を誓う、うさぎのリーダー・スノーボール。この子にラスト、ある出会いがありました。その後どうなっているのか、早く知りたいです。でもその前にバナナマンさんの吹き替え版を観に行ってきます。 |