レビュー一覧
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林 道治さん 「渇水」 5月24日(水) 試写会にて鑑賞 |
日々の生活の中で欠かすことのできない『水』を一つのテーマとして描いている部分に深みを感じる作品です。行政と住民、暮らしを通じて交わる両者の視点からは水の大切さとそれが使えなくなってしまったときの深刻さが色濃く伝わってきます。 水道料金が払えない理由、ネグレクトや生活保護など、深刻な社会問題にも切り込んでいる為、胸がしめつけられるような描写もあります。中でも『停水執行』と呼ばれる水の供給を断つ業務を行う者の苦悩、彼らの表情からは『できればこんなことはしたくない』という強い思いが見て取れました。真夏の炎天下に水が使えなかったら…想像しただけでも恐怖がよぎりますね。普段、水や電気を当たり前に利用している我々ですが、気候や自然災害の影響で状況が一変してしまう可能性もあります。そう気付かされ、ライフラインの有り難みを強烈に痛感させられました。 社会人にとっての存在意義と表しても過言ではない『仕事』 規則に基づき業務を行うことが果たして正しいことなのか、水道職員である彼らが思い悩み、葛藤していく姿は実に見応えがあります。「渇水」は鑑賞後に想いを共有し、だれかと言葉を交わしたくなるような、厳しくも優しく心に反響する物語でした。 |
高山はる菜さん 「怪物」 6月8日(木) 新宿バルト9にて鑑賞 |
自分の人生に多大な影響を与えてくれた監督と脚本家の待望のタッグによって生み出されたこの「怪物」を、余す所なく受け止めようと満を持して劇場に足を運びました。結果、期待も想像もゆうに超越し、形容し難い感情に包まれ、久しぶりにしゃくりあげて泣きました。そんな作品を、私のような未熟者がレポートしてしまってよいものかと恐縮しつつも、自分なりに言語化してみようと思います。 『怪物、だーれだ』誰が怪物であるか、そんなことでおさまるものではありませんでした。怪物を探そうとしていた自らの愚かさを突きつけられ、このような私こそが怪物なのではないかと振り返り震えます。あらゆるタイムリーな社会問題が映し出されており、保身を優先し他者を身代わりにする考えにしか至らない心の貧しさと、塗り重ねられ取り返しがつかなくなっていく嘘や噂への警鐘、固定概念と偏見が想像の機会を追いやってしまうことなどを思いました。そして、子どもは大人を手本にして育つ。子どもという存在は、大人以上に空気を感じ取る敏感な心を持っている一方で、知識は不十分で大人の言葉が絶対的になってしまう。子どもの無垢さとそれに伴う危うさ、大人の責任を強く感じました。 とにかくまだ解釈しきれていので、整理をして、また映画館に行きたいです。 |