レビュー一覧
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Shioriさん(女性/20代) 「リトル・フォレスト 夏・秋」 9月2日 109シネマズ川崎 |
夏と秋の2部構成になっていて1部が終わるとエンドロールが流れる珍しい構成になっています。また、主題歌を担当するバンドFlower Flowerの曲も1部と2部では楽曲が異なっていて贅沢なエンドロールだなぁと思いました。 本作はなんと岩手県奥州市で約1年間も撮影したとのことで、葉の色が変わっていく様子や動物、日の陰り具合、空の色など季節の移り変わりが細やかに活写され、夏と秋の編で徐々に風景が変わっていく映画の舞台・小森の姿がとても美しく心地よいです。 橋本愛さん演じる主人公のいち子がなぜ故郷の小森に帰ってきたのか、また、いち子の母は何故突然失踪してしまったのか?などドラマティックな展開を作り上げられそうな素材は派手に使用せず、生きる事とは何か?と言うことを生きると言う事に最も重要な食を通して表現しています。鴨や魚をさばくシーンがあり生きていた鴨が綺麗に処理され食べられるお肉になる過程をみてかわいそうだなぁと思いましたが、それより残酷なのは調理した瞬間すぐにおいしそう!と思った自分なのかもしれません。食の安全が問題になっていますが人間が生きる為に食べる命はもちろん、食物を作る人、加工する人、調理する人、誰かの手作業が無い限り食べることが出来ないんだなぁと思うと『いただきます』と『ごちそうさま』がより重く感じられます。いち子を演じた橋本愛さんの食べっぷりも包丁使いも見どころ。 厳しい冬にはどんな感情が生まれるのか、いち子がどんな決断をするのか。続編が楽しみです。 |
矢嶋杏奈さん(女性/20代) 「イントゥ・ザ・ストーム」 9月1日 ユナイテッドシネマとしまえん |
久しぶりにディザスタームービーが出てきたぞ〜!と思いガッツポーズ。というのも、私、「ザ・コア」(2003) や「ディ・アフター・トゥモロー」(2004) など、パニック映画に分類されるものが好きだからです。地球がメチャメチャになればなるほどイイ。木がバッタバッタなぎ倒されて、建物が惜しみなく壊される描写があればいいのです。 「イントゥ・ザ・ストーム」はストームチェイサーこと竜巻撮影隊を中心にお話が進んでいきます。パニック映画なだけあって、予告で観た感じだと手持ちカメラが多いのかな? と思ったのですが、撮影隊が撮った映像+高校生が回していたハンディカムの映像+そこらの監視カメラの映像が混ざってドキュメンタリータッチに仕上がっています。近年、モキュメンタリー(虚構の話をドキュメンタリー風に撮ったもの)の作品はホラーで多く見かけますが、こちらは災害系で言うと「クローバーフィールド/HAKAISHA」(2008) っぽいなぁと。 撮影隊はタイタスというごつい装甲車に乗って竜巻を追いかけ回すのですが、このタイタスが超かっこいい!!!!!やたらカメラが積んであるし(その数なんと24台!)、他にも色々な性能を持っていて見所満載。特殊車両、メチャ燃えます。撮影隊のボスは「タイタスに乗っている俺カッケー!」という感じを全面に押し出してきます。劇中あまりにもかっこよくて目立つので、この映画の主役はタイタスなのではないかと思うようになりました・・・。 89分という短い尺ではやはり竜巻が暴れ回る映像が主となるわけですが、その裏ではきっちり家族愛やハイスクール・ラブが描かれていて、ポイントが高かったです。欲を言えば、もっと大きな建物がド派手に吹っ飛ぶところを観たかったかな。でも舞台が田舎なのでそんなものはないのです。欲張りすぎました。『jackass』(アメリカのTV番組)に出てきそうなバカな大人が飛ばされるのを観るだけでも十分に楽しいです(笑) どうやらこの作品、4DXで観るのがおすすめという声が多いようです。私自身まだ体験したことのない4DXですが、暴風暴雨が吹き荒れる本作品はきっと楽しいに違いありません。4DXで観た方の感想もぜひお聞きしたいと思います。 |
小室明子さん(女性/30代) 「TOKYO TRIBE」 9月5日 池袋シネマサンシャインにて |
『世界初バトルラップミュージカル』と銘打って、世に躍り出たこの作品。まさに想像を超える内容に度肝を抜かれた。以前から園子温監督作品には注目しており、日本で今一番ノリに乗っている監督と言っても過言ではない。描きたいものを誰が何と言おうとも描く、という監督の姿勢の伺える入魂の一作に仕上がっている。 この映画は漫画家・井上三太作『TOKYO TRIBE』が原作だが、漫画ではTribe同士の確執は勿論のこと、主人公・海(カイ)とメラの対立、愛と友情、カイの人間的成長を描いており、2時間の映画で納めるのは非常に厳しい試みだったと思われる。なお、Tribeとは英語で種族、一族を意味する言葉だが、ここでは“血の繋がりを超えた家族”や“仲間”の意味で捉えるべきであろう。 また、海(カイ)役に人気ラッパーのYOUNG DAISを起用しており、カイのイメージを裏切らない爽やかなルックスと声が魅力的で、キャスティングに成功している。また全編にわたってラップ、ラップ、ラップの嵐。紛れも無く本物のラップが聞ける映画。これがこの作品の最大の魅力(ウリ)である。それもそのはず、出演しているラッパーは全て職業ラッパーの方々であり、YOUNG DAISをはじめ、練馬ザファッカーなど有名ラッパーが惜しげも無くその美声を披露。ラップファンでなくとも本物のラップバトルに魅了され、いつの間にか園子温監督の鬼才極る世界の渦の中に観客は飲み込まれてしまう。今までにない新しい作品を作りたいとする監督の勇気、そして俳優、スタッフの方々の並々ならぬ熱意と努力の感じられる作品だ。 だが、言うまでもなく、この作品の核となるのはカイとメラの対立だ。対立とはお互いへの無理解から生じるミスコミュニケーションが原因であり、映画ではメラが悪役に描かれているが実はそうではない。何故この二人が対立するに至ったかその理由は、出来れば漫画も読んで頂き映画との違いや映画で描き切れなかった部分を感じて欲しい。決してこれは遠い未来の話ではなく、現実に起こり得るTribe同志の抗争劇なのだ。 最後にメラ役に、NHKの朝ドラで注目された鈴木亮平を起用しているのも必見だ。TOKYO TRIBEの予告編を見て気がついた人も多いだろうが、鈴木亮平の変貌ぶりに驚愕出来る事請け合いである。ぜひ漫画と映画を比較しながらご鑑賞頂けたらと思う。 |