レビュー一覧
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髙安 杏さん(女性/19歳) 「ブルックリン」7月2日 角川シネマ新宿にて |
第88回米アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞でノミネートされていてずっと観たかった作品。数時間前に劇場を出たばかりだからか、夢の中で“ブルックリン”の世界を歩けそう。この作品で感じた魅力を3つあげたい。 1つ目は、描写の美しさ。1950年代のアイルランドとブルックリンの舞台には、素敵な街並み、レトロな小物に心地よい音楽にあふれ、今もまだ映画館でしか味わえない余韻に満たされている。特に人々の衣装は色鮮やかで可愛くて印象的。主人公が人混みにいるワンシーンを見ても、ひとりひとりの色使いやデザインが考えられているのが分かり、細部まで意識して見ないと勿体無くて、瞬きしたくなかった。どれも品のある色で、特に緑色の水着が最高にキュートなので見るときには是非注目してほしい。 2つ目は、主人公エイリシュの変化。アイルランドから出て、何もかも新しいアメリカで打ち解けられない彼女は、もどかしさや寂しさに押し潰されそうになり追い詰められていく。彼女の張り詰めた表情は、いつ割れてもおかしくないような薄いガラスのようで、緊迫した雰囲気を作っていた。しかし、それが恋を知ることによってガラッと変わる。聡明でチャーミングでどんどん自信を持ち始める彼女の姿に、誰もが惹かれるだろう。そして、彼女が試練に出くわすときには涙し、幸せな出来事があれば笑顔がこぼれ、その空間がなんだかとても心地よくて満たされた。 3つ目は、主役のシアーシャ・ローナンの演技力。予告を見たときから彼女には美しいだけではなく、人の目を引く不思議な力があるような気がした。そのせいか「ブルックリン」の描写もずっと脳裏に焼きついていた。彼女が気になって調べてみると「つぐない」(07)の子役だったことを知り、衝撃と同時に納得した。あの静かな眼の奥にある芯の強さは子役の頃から変わっておらず、彼女にしかない魅力があるのだ。そして、今作で最も注目すべきアイルランドとブルックリンとの間で揺れ動くエイリシュの心情は、シアーシャ・ローナンだからこそ繊細に演じることができたのだと思った。 全体的にゆったりとしているのに眠くなることはなく、最後まで彼女に目が離せなくなる。忙しい日々の合間、どこからかの帰り道にふと映画館に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。 |
後藤早苗さん(女性/30代) 「日本で一番悪い奴ら」 7月4日 丸の内TOEIにて |
この映画は北海道警察の不祥事をテーマにしたものだと知り、大変興味を持ちました。黒川博行さんや大沢在昌さんの『新宿鮫シリーズ』など、入念で緻密な取材と鋭い観察力で構成されたノンフィクションに近い(であろう)フィクション小説が好きでよく読んでいます。本作も警察の潜入捜査や内部事情など、普段の生活では知り得ることの出来ない情報が詰まっており、終始興味深く鑑賞しました。また映画の中では「正義」という言葉が度々登場し、その意味についても考えさせられました。 映画は、正義感はあるけどパッとしない新人警察官が、職務で実績を上げる為に違法行為を伴った捜査をしていくその様子をベースに話が進みます。本篇は135分あったのですが、テンポの良さや展開の面白さがあって長さを全く感じさせませんでした。ストーリー以外のところでは、ピエール瀧さんが警察の上司役で出ていたのですが「こういう怖そうな一般人か警察官なのかわからない人って絶対いそう」と思うくらい、見た目の迫力や眼力の鋭さがリアルで大変インパクトがありました。それから、いかにも胡散臭そうな雰囲気を醸し出している、オープニングとエンディングに使われていた音楽が映画にとてもマッチしていて良かったです。 本作を通して「綺麗事だけで正義は成立しないのか」「正義は誰が判断するのだろうか」「法律を元に人を裁くことは出来ても、どうすれば正義を維持する事が出来るのだろうか」など考えることが多くありました。また、映画は観客が飽きないようドラマチックに脚色されて作られているとは思うのですが、だからといって他人事のようにただ客観的に観るのではなく、善悪の判断基準を自分がしっかり持つ事の大切さ、またその難しさを学びました。もちろん「悪い事をすればいつか破滅が訪れる」というメッセージもあったと思います。 本作は警察小説が好きな人はもちろん楽しめると思いますし、正義をジャッジする側にいる人達にも是非観てもらいたいと感じた素晴らしい作品でした。 |
阪本佳純さん(女性/20歳) 「HiGH&LOW THE MOVIE」試写会にて |
ドラマ『HiGH&LOW』(NTV)の続きの話であり、漫画、配信、SNS、オリジナルアルバム、ドームツアーなど、たくさんのメディアを巻き込み展開される世界初のビッグプロジェクトの集大成が、この「HiGH&LOW THE MOVIE」です。ドラマの内容のさらに核心をついたストーリーに加え、豪華なセット、俳優陣が加わり、総決算となるに相応しい、とても壮大でダイナミックな作品でした。 この作品が普通の映画と違うところは、エクザイルトライブをはじめとする高い身体能力を生かしたド派手なアクションシーンはもちろん、全く飽きさせない音楽とファッションが、この映画の大きなウエイトを占めており、重要な存在です。SWORDという五つのチームの頭文字をとった地区を中心に伝説のチームなどが加わり、仲間、チームを守るため、プライドをかけて闘う話。それぞれのチームには、テーマ曲があり、個性的なファッションでキャラクターの特徴や個性を出すクオリティの高いものになっています。シーン毎の音楽もストーリー性がよくでており、熱い歌詞、メロディーもとてもキャッチ―でズンと胸に入ってきて、目からも耳からもすごく面白味のある作品だと思います。大部分が抗争というアクションシーンですが、これもチームやキャラクターによって演じ分けられており、特に曲とともに登場するシーンは「HiGH&LOW」 には欠かせない、印象的で思わずかっこいい、と口から洩れてしまいそうです。また、バイクや車好きにはもってこいの映画で、たくさんの熱い男たちが全速力で駆け抜けるシーンは圧巻。劇場を駆け抜けるバイクのエンジン音はこの物語にはかかせない、始まりを感じさせる、主題歌のような存在になっているなと感じました。 計算つくされた壮大なセットや衣装が、物語をよりリアルにさせていますが、それだけでなく、エクザイルトライブ以外の俳優さん方もとても豪華で窪田正孝さん、林遣都さんをはじめとする実力派の方も加わりより一層盛り上げています。私は、独特な雰囲気が印象的で他のチームと一線を画した状態で居続ける、達磨一家が一番好きなので、喧嘩にやるきがなさそうにみえて、狂気的で猛烈パンチを繰り出す一家のトップ、日向紀久のけだるい姿をみてほしいです。なんともいえずかっこいいです。 しかし、どのキャラクターも、悪そうにみえても実は人間味ある、情にあふれる、仲間思いのあついプライドをもった愛せずにはいられないひとたちです。友情を糧に仲間を全力で信じ守る姿、成長していく姿勢から勇気をもらえる映画です。音だけでなく圧倒的熱量を感じさせるこの作品は、夏にふさわしい一本だと思います。 |