レビュー一覧
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林 道治さん 「パリタクシー」 4月12日(水) 角川シネマ有楽町にて鑑賞 |
突如訪れたコロナ禍により、様々なエンタメの流れが止まってしまった昨今。その最中、身近で楽しめる娯楽として映画館に行く機会が増えていた折、たまたま見かけた『ぴあ特別会員』の募集に対し反射的に応募しました。まさかの選出に驚く一方で、これまで以上に様々な作品と触れ合える喜びに胸が震えております。 早速鑑賞した作品の中で心に残る一本が「パリタクシー」です。偏屈で少し強面なタクシードライバーが乗せた一人の老女との優しくも切ない物語。老女の思い出の地を巡りながら彼女の過去が紐解かれ、美しいパリの街並みも見どころの一つとなっています。 この作品を見ていて頭をよぎった言葉、それは『一期一会』素敵な言葉ですよね。二人の『出逢い』はそんな表現がピッタリの偶然にして必然の巡り合いに感じました。老女からしたら孫ほども年の離れた運転手とのドライブが『かけがえのない時間』へ変化していくよう見て取れます。勿論、運転手側からしても特別な一時となったことはいうまでもありません。 人と出会うことの大切さ、一つ一つの機会を大事にしたくなる純粋な想い、生きていく上での『縁』を感じさせる魅力的な素晴らしい作品でした。 |
村上梨緒さん 「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」 4月18日(火) 新宿武蔵野館にて鑑賞 |
ありがたいことに、今年度『ぴあ特別会員』を務めさせていただくことになりました。ただの映画好きの学生には身に余る光栄ですが、折角いただいたこの機会を無駄にしないようにしますので、1年間どうぞよろしくお願いいたします。邦画、洋画問わず沢山の映画を観て感想を共有し、映画と繋がっている私達の社会について考えていければと思っております。 さて、記念すべき第1回の作品として選択したのは、4月14日に公開された「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」です。主人公は、少し内気だけど優しい気立ての青年、七森。この物語は彼と、大学入学後彼が所属する『ぬいぐるみ(と話す)サークル』通称『ぬいサー』の人たちについて描いた作品です。大学生活を過ごす中で彼は、世間とのズレや社会の厳しさに押しつぶされそうになってしまいます。そんな彼を支えるのが、ぬいぐるみ、そしてぬいサーの人たちなのです。そんな生活の中で、やがて彼は大切なことに気がつきます。 『大学生活についての作品』と聞くと、刺激的な日々や刹那的に恋愛について描いた作品を想像される方も多いかもしれませんが、この作品にはどちらも出てきません。しかしながら、本当に大切なものは、ドキドキする一瞬の輝きにではなく、穏やかで安心できる日々の中にあるのではないでしょうか。そんなことを、教えてくれた作品でした。 |
高山はる菜さん 「ロストケア」 3月25日(土) TOHOシネマズ六本木ヒルズにて鑑賞 |
介護という問題は、超高齢社会にある現代日本において、国単位の大きな問題であると同時に、一人一人に身近な問題でもあって、心揺さぶられずにはいられませんでした。殺しを裁く『法』も、救いたいと願う『情』も、どちらも間違っていないはずだと、相反する『正しさ』というものに葛藤させられ、どうすれば事件を防ぐことができたのか、そして『喪失の介護』をどう捉えるべきなのか、整理がつかず、エンドロールの間、焦点が定まりませんでした。
福祉は不可欠で、善意が負担になって崩壊してしまう現状のシステムのままでは絶対にいけないと思いつつも、やはりまだ解決策を見つけられずにいます。 それでも、「ロストケア」が、近い将来自分にも訪れるであろう介護という課題に対し、前もって向き合うきっかけになりました。作品としての密度も濃く、本編中、身動きをとった覚えがない程集中していました。作品について、また介護問題について、多くの方と共有し考えたいです。皆様是非劇場へ! 結びになりますが、毎年心待ちにしている日本アカデミー賞に『ぴあ特別会員』として携わることができること、夢のようです。責任を持ち言葉を綴れるよう努めていきますので、一年間どうぞよろしくお願いします。 |