レビュー一覧
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大内さん(女性/49歳/イラストレーター) 「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」 5月11日 シアターN渋谷にて |
世の中にはスゴいことをする人間がいるもんだ……。 ある意味、火事場の馬鹿力といえるかもしれないが、要はそれに見合った「力(才能)」があるかどうかで「成功する」か「失敗する」か。この映画の主人公は犯罪者であるにしろ、まさしく「成功者」であろう。後にその身がどうなろうと知るまでもなく……。 売れない作家クリフォード・アーヴィングは出版社に持ち込んだ作品を却下され、その腹いせに大口を叩いてしまう。その後ふと出かけた旅行先でアクシデントに巻き込まれ、当時謎のベールに包まれていたハワード・ヒューズのニセ自伝本を書くことになるのだ。"ヒョン"なことからである。その"ヒョン"からなるとんでもないことに友人を巻き込み、依頼書の偽造やらリサーチした事実を自分の体験話と置き換え熱く語り、そして出版の契約に成功する。どんどんと"事"が進んでゆく。もうハラハラドキドキである。そんな嘘や偽りが最後には……。 この映画を観ようと思ったのはそんな『でっち上げ男』をラッセ・ハルストレム(監督)が撮ったからだ。過去の作品「ギルバート・グレイプ」('93)「サイダーハウス・ルール」('99)「ショコラ」('00)など、彼の描く人物は常に内側に熱いものを秘めている。そんな様々な人間ドラマにいつも引き込まれ感動せずにいられない。今回のこの男もやっぱりただの悪者だけでは済まされない、なんだか可愛くてどこか好きになってしまった。 またそれは役者がよかったからだ。様々な出来事を自由自在にデッチ上げて話すその巧みな話術はリチャード・ギアならではのウマさだろう。どうしようもない欲求にやっぱり負けてしまったり、逆ギレしたり、はにかんだり……「シカゴ」('02)の時のイメージがよぎる。他にも作家の友人役に「ショコラ」でウインドーのチョコにまみれていた頑固な悲しい伯爵のアルフレッド・モリナ、妻役は脇でいつも芯の強さを感じさせるマーシャ・ゲイ・ハーデン。 みんな愛すべき役者だ! 漂うちょっと古めかしい70年代のニューヨークもどこか昭和的な香りがしてよかった。ハワード・ヒューズや当時のアメリカを知る人ならきっと私の何倍もまたこの映画が楽しめることと思います。 ※ホークス=(人を)かつぐ、でっち上げ |
川上 望さん(男性/59歳) 「SP 革命篇」 |
3月12日に「SP革命篇」が公開された。2部構成の後篇作品である。 後篇で全ての謎が解けると言う宣伝文句をよく聞く。しかし、観客はそんなこと余り期待しない。前篇で何が謎だったか、大して覚えていないのだから。謎よりも気になるのは、魅力的な登場人物のその後である。映画の魅力は、ドラマ性のあるストーリーと主要な登場人物の生き様だと私は思う。前篇でそれが生き生きと描かれていれば、その後の行方が自然と気になるものである。 もともと映画は1本で勝負するものだと自分は認識している。48作で打ち止めになった寅さんシリーズも1作1作が独特の輝きを持っていた。1本にまとめられないからと言って、2回に分けて公開するというのは論外な話だ。前後篇に分けるなら、2本とも独特な輝きを持っていなければならない。時期を同じく公開された作品の中には、後篇が全く輝かず、期待はずれのものもあった。 が、「SP」の後篇は素晴らしかった。国会占拠という新たなドラマを用意し、尾形と井上の対立を軸とする見応えのある展開に最後まで目が離せなかった。堤真一演じる尾形は、銃で議会をストップさせ、現職の内閣の大臣に自分の罪の懺悔をさせていく。犯人役ながら、育った家庭の状況まで描かれ、その行動がやむを得ないものとして、共感できるのである。他の登場人物の個性も際立っていて、その言動が分かりやすく、ドラマにしっかりと組み込まれていた。発展性のある後篇こそ、2回に分けて公開するにふさわしいと、改めて認識した次第である。 登場人物の魅力とドラマ性、込み入ったストーリーでも分かりやすく、感情移入ができるものがいい。金を払って観るのだから、満足できなかったら不良品を買わされたことになる。そして私にはもうひとつこだわっていることがある。はらはらするドラマなら、横長の大画面で見たいということだ。黒幕が横に開くと得した気分になる。邦画にはビスタサイズの画面が多い。何故ちまちました画面にこだわるのか。往年の時代劇のように横開きのワイドスクリーンの邦画がたくさん見たいと思っているのは、私だけだろうか。 。 |
後藤さん(女性/37歳/主婦) 「抱きたいカンケイ」 5月21日 品川プリンスシネマにて |
アシュトン・カッチャー主演でこのタイトル、おバカなラブコメディでアシュトンが色々笑わせてくれるんだろうと思いきや、一番笑わせてくれたのは同じく主演のナタリー・ポートマンだった! ナタリーと言えば知的でいつも真面目顔、そんなイメージだったけど、この映画では仁王立ちで雄叫びを上げたりするシーンが幾つかあって、もうそれだけで爆笑もの。役柄も、恋に不器用な忙しい医者である一方で、アシュトンとのセックスをとことん楽しんじゃう「女の子」で、ナタリー頑張って新境地を開拓してるのね~と親心的気分になっちゃった。方やアシュトンは、これまた意外にもちょっとシャイで真面目な男の子を演じていて、こちらも新鮮。しかしアシュトンは、ちょっと見ない間に随分大人っぽくなったのね。役柄のせいかもしれないけれど、雰囲気が随分穏やかな感じがしたわ。 お話自体は典型的なラブコメでびっくりするような展開は何もないけれど、頭を使わずにリラックスしたいならぜひ。しつこいけれど、これまでのナタリーの作品を観てきた人なら、あまりのギャップに一瞬唖然&お腹を抱えて笑えること請け合い。それはこの作品中に、たった数回だけの熱演なので、せっかく見るなら見逃さないように~! |