レビュー一覧
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矢嶋杏奈さん(女性/20代) 「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」 6月26日 TOHOシネマズシャンテにて |
映画館で予告を観て芦田愛菜ちゃん演じる「こっこ」にすっかり魅了されたわたしは、劇場に足を運び、十年ちょっと前に自分が経験した「小学三年生」を振り返ってきました。「ジャポニカ持ってた〜!」「終業式の日にアサガオ持って帰ってた〜!」「友達の家でカルピス飲んだ〜!」などなど、あれもこれも懐かしくて、ワクワクが止まりませんでした。 これは、祖父母と両親、三つ子の姉たちという大家族で団地に暮らしている小学三年生のこっこが小さな世界で悩み、考え、少しずつ成長していく物語です。今では珍しい大家族での暮らしにはなんとなく昭和の香りが、そして、円卓での食事の風景は古くて狭いながらも温かみが感じられます。舞台は大阪ということで、こっこの口からは「うっさいボケ!」の連続。口が悪くてちょっとひねくれているこっこのキャラクターは、クラスにいたら面倒くさいタイプなのかもしれませんが、とても愛くるしいのです。みんなとは違うものをかっこいいと思い、真似してしまう気持ちも分かります。自分にもそういう子ども時代がありましたから。当時は心ない言葉で相手を傷つけたり、逆に傷つけられたり・・・。あの頃はまだ子どもだったから仕方ないなと思いつつも、嫌だったことは案外しっかりと覚えているものです(笑)。小学三年生というと思春期に入るか入らないかの微妙な時期。本作ではそこでの繊細でみずみずしい感性がうまく描かれていて、不安にさせられながらも、最後には頼もしさのようなものを感じずにはいられませんでした。 驚くべきことに、芦田愛菜ちゃん、映画は今回が初主演だそうで!スクリーンで観て、改めてその表情の豊かさに圧倒されます。ラストシーンの大笑いするこっこの表情が、この映画の中でいちばん好きです。他にも子役が大勢登場しますが、みんなすごくイイ。特にこっこの隣人であり、親友のぽっさん。ぽっさんとこっこのコンビは最高です!さらに、こっこたちの担任の先生・ジビキには関ジャニ∞の丸山隆平さん。これも見事にハマっています。とにかく大人から子どもまで、全員がハマり役なのではないかと思うぐらいしっくりきます。深夜にハイヒールの音を響かせながら歩く女性を演じていたのは・・・!?など、最後まで楽しませてくれる作品でした。 |
早川和希さん(女性/20代) 「私の男」6月14日 新宿ピカデリーにて |
二階堂ふみ×浅野忠信。禁断の愛。衝撃の映画化! と言う言葉に惹かれ公開前から気になっていた作品でした。 家族を知らない男・淳悟は、家族を失った少女・花を引き取り親子になり、北海道の田舎町で静かに暮らしていたが、ある事件をきっかけに二人の秘密が明らかになっていく…。始まってからタイトルが出るまでの冒頭部分を観ただけで、これはすごい映画だと感じました。 物語は花の幼少期から始まり、中学高校そして大人になるまでを順番に追っていく形で進んでいきます。中学時代から大人になるまでを演じた、二階堂ふみさんは、表情から雰囲気までもが少女から女へとガラリと変わり、ふみさんの振り幅にとにかく圧倒されました。浅野忠信さんの絶妙な表情の変化や事件をきっかけに徐々に落ちぶれていく姿もさすがでした。高良健吾くんも出演シーンは少ないのですが存在感を発揮していました!! そして、映画の最後に花が聞こえるか聞こえないかの声で言葉を発するのですが、それは女性には聞こえて男性には聞こえないらしいと舞台挨拶で話していました。そのセリフは秘密だということでした。私は1回目では聞きとれず、2回目でなんとか聞き取れました。花の表情と言葉が単純なようで深く思え、終わった後も頭から離れず花と淳悟の気持ちを沢山考えました。なのでぜひ、そこにも注目して観て頂き自分なりに色んなことを考え感じてもらいたいです! 映像、音、音楽、色、芝居すべてが美しくて生々しい、苦しくて、狂っていて、重いそれに、淳悟と花が共感することを許してくれないような感覚でもこの映画に惹かれてしまいます。 ただただ、二人だけの世界が広がっていて、私たちはそれを外から観ているようなそんな不思議な映画でした。恐らく、好き嫌いがはっきり分かれそうな映画ですが、自分の中では確実に年間上位になる作品です!! 原作を読んでいない私でも、この映画の虜になったので読んでいる方はもちろん、読んでいない方にもぜひ観に行って頂きたいです!! 映画館で観ないと損します! |
小室明子さん(女性/30代) 「超高速!参勤交代」 6月25日 新宿ピカデリーにて |
まず「とにかく面白かった!」の一言に尽きると思います。想像以上に楽しませてくれた映画でした。最近様々な映画を観る機会に恵まれたおかげで観る目が肥えてきたのか、やはり最初の掴みが面白くないと正直感情移入出来ないまま不完全燃焼で終わってしまう事が多かったのですが、これは久々に楽しく笑って感動できる映画でした。 参勤交代を終えたばかりなのに戻るや否やすぐに江戸への参勤を突然命ぜられた湯長谷藩(現在の福島県いわき市)の藩主や家臣が、あれこれ策を練って江戸へ向かう様が描かれているのですが、まず特筆すべきは脚本の見事さ。無駄なシーンがなく、観客の心をぐっと鷲掴みにする軽妙な笑いの入れ方、殺陣も見応え十分。無理難題を何とか知恵を絞って突破していく様に思わず共感する方も多かったのではないかと思います。これはひとえに脚本家・土橋章宏氏の力による所が大きいと思います。土橋氏といえば、実は私が通う脚本学校出身の方で、平成23年に脚本界のビッグタイトル・城戸賞でタイトルも同じ「超高速!参勤交代」で入選(大賞作品)されています。今後もぜひ幅広く活躍してほしいと心から願っています。 また、主役を演じる佐々木蔵之助さんのカッコイイこと!女性ならずともこんな藩主だったら絶対ついていきたくなる、いわば憧れの上司。そして知恵を絞って藩主を支える家老役の西村雅彦さんがもう出てくるだけでとにかく可笑しくて。西村さん以外にこの家老役は有り得ないと言わしめるキャスティングでした。その他、脇を固める家臣に個性的な役者を揃え、キャスティングはこれ以上ないという見事な配役でした。 観に行ったのがレディースデイだったこともあるかもしれませんが、時代劇にも関わらず若い女性客が沢山いたことも非常に興味深い現象だと思いました。映画終了後、口々に観客が「あー面白かったー!」と話していた事も私には驚きでした。私は断言します。この作品は、来年度日本アカデミー賞の作品賞、もしくは脚本賞で最優秀賞を獲る作品です!特に、ラストの徳川吉宗のセリフは、日本全国の人の心に特にポジティブに強く響いたのではないでしょうか。ぜひ劇場にて、ご家族、ご友人を誘って、時代劇を超えた時代劇エンターテイメントを心ゆくまで楽しんで頂けたらと思います。 |