レビュー一覧
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北 奈々さん(女性/30代) 「人生はシネマティック!」10月26日 試写会にて |
「人生はシネマティック!」は、第二次世界大戦下のロンドンで映画製作に関わった新人女性脚本家を描いた英国映画です。もう一つの『ダンケルク』を描く作品、ということでも話題となりました。代理で手がけた広告コピーがきっかけで、新作プロパガンダ映画の脚本家としてスカウトされたカトリン。戦争で負傷した夫を支えるため、生活のため、彼女は映画製作活動に邁進します。しかし、製作過程の中で政府や軍部から無理難題を押し付けられたり、個性的な役者に悩まされたり、現場は一難去ってまた一難。そして戦争が激化する中、さらなる困難がカトリンや仲間たちに立ちはだかります。 この作品のユニークな点は、当時の映画製作現場を作品を通じて垣間見ることができること。脚本の作り方、膨らませ方を脚本チームで話し合っていくシーンは、カトリンと同様にワクワクした気持ちになりますし、撮影シーンではまるでメイキング映像のような面白さがあり観ているほうも楽しいです。また、ロケ地でのシーンでは、初めは衝突もあったりしますが、やがてみんなで集まったり、歌ったり、和んだりするシーンはどこか牧歌的で懐かしいような気持ちにもなります。 一方で印象に残ったのは、ロンドンでの空襲のシーン。第二次世界大戦というと日本ではどうしても太平洋戦争のイメージが先行しがちですが、当時はヨーロッパにおいても多くの被害をうけており、ロンドンもまた度重なる空襲をうけていました。避難の際には地下鉄で肩を寄せ合って難をのがれていたり、街のいたるところで建物が破壊されて多くの人たちが犠牲になっていたのが印象的でした。そして、主人公・カトリンの生き様も素晴しかったです。女性の活躍があまり認められなかった時代の中で、彼女の機転と、アイディアと、たくましさで、困難を切り開いていく姿には圧倒されました。過酷な状況下でどのように取捨選択し生きていくのか、一人の女性の生き方を描いた作品でもあります。 人生には楽しいこと、嬉しいことがある一方で、辛いこと、困難なこともある。しかし、その一つ一つが自分を作るピースとなる…それはまるで映画を創っていくかのように。そうしたメッセージ性のある作品でもあります。多くの人に劇場でぜひその感動を味わっていただきたいです。 |
石田桃子さん(女性/10代) 「ミックス。」11月6日 新宿ピカデリーにて |
今年行われた「2017世界卓球選手権ドイツ大会」で、石川佳純・吉村真晴ペアが48年ぶりとなる金メダルを獲得したり、2020年に開催される東京オリンピックの追加種目として採用されるなど、大きな注目を集めている卓球の種目の一つ『男女混合(ミックス)ダブルス』を題材にした映画「ミックス。」を観に行きました。 「ALWAYS 三丁目の夕日」(05)「リーガル・ハイ」シリーズなどを手掛けた、大人気の脚本家“古沢良太”さんのオリジナル脚本作品です。 不器用でどこか欠点だらけの登場人物たちが、卓球の「男女混合(ミックス)ダブルス」を通して小さな“奇跡”を起こす、恋と人生の再生の物語です。主人公の富田多満子(新垣結衣)は、元天才卓球少女。OLとなった多満子は会社の卓球部のイケメンエース、江島(瀬戸康史)に出会い付き合うことになりますが、新入社員の美人卓球選手、愛莉(永野芽郁)に江島を取られてしまい、多満子は田舎へ帰ることに。そこで、亡き母が経営していた「フラワー卓球クラブ」で、元プロボクサーの萩原久(瑛太)と出会います。多満子は江原・愛莉ペアに卓球で勝って復讐するために、萩原とミックスペアを組み、大会に向けて猛練習を開始します。全く反りが合わずケンカばかりの、多満子と萩原の関係の変化や、大会での勝負の行方などが見所です。 また、卓球界の第一線で活躍している選手の方々が出演。本格的な卓球シーンもあり、卓球というスポーツの世界観をとてもリアルにしてくれています。新垣結衣さんや瑛太さんなどの卓球シーンもとても自然で、凄くかっこよかったです。会話のテンポが良く、個性的な助演陣もとても魅力的でした。特に、卓球クラブのメンバー行きつけの四川料理店「楊々苑」の楊(蒼井優)のキャラクターは強烈で、話し方や発する言葉など全てが面白かったです。卓球というスポーツを通して、多満子と萩原が互いに切磋琢磨し、成長していく姿を観て元気をもらい、あたたかい気持ちになりました。 最高の笑いと感動、そして思わずキュンとさせる切ない恋を“ミックス”した極上のエンターテイメント作品でした。 |