レビュー一覧
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板谷政弘さん(男性/50代) 「最高の人生の見つけ方」 9月19日(木) イオンシネマ港北ニュータウン(試写会)にて |
この作品は、病気のために余命僅かと宣告された、専業主婦と女社長という大きく境遇の違った二人の女性が、偶然知り合った12歳の病気の少女の『死ぬまでにやりたいことリスト』をもとに、人生最後の旅をしながら無謀とも思えるいろいろなことに挑戦していくという、心温まる感動作品です。 今までの自分では考えられないような『世界旅行』、『スカイダイビング』、『ももクロのライブへの飛び入り出演』など、やりたいことリストの一つひとつを次々と制覇していくことによって、生きていくことへの喜びを改めて感じ、それぞれの家族との確執も少しずつ解けていき、『最高の人生を生ききる』という彼女たちの雄姿と周りの人達の心の変化に、感動の嵐が押し寄せてきて思わず涙腺が崩壊しました。 主婦の夫は、平凡な毎日の中でお互いに分かり合うことが、如何に必要で大切なことだったのかを妻の懸命な姿を見てやっと目が覚め、娘や息子もその生き方に徐々に突き動かされていきます。一方、女社長は、仕事への執着とダメ夫への気持ちの整理を着け、今までのもやもや感を吹っ切っていきます。そうして二人は、最後にその『最高な人生を見つけていく』というサクセスストーリーとなっていて、見終わった後には大きなさわやかさが心の中に残りました。 オリジナルはハリウッド映画ですが、吉永小百合さん、天海祐希さんという日本を代表する二人の大女優が主演されていて、邦画バージョンとして見事にリメイクされています。その他にも、ムロツヨシさん、満島ひかりさん、前川清さん他、脇を固める個性強めの方々が、周りの人達の気持ちをうまく表現されていて、それぞれが最後には非常に愛らしく思えてきます。 人生の意味という深いテーマですが、身近に考えさせられ、これからの人生を前向きに、元気に、温かくしてくれる最高の映画だと思いますので、サユリスの方はもちろんのこと、皆さんに是非とも観て頂きたい作品です。 |
林啓輔さん(男性/20代) 「蜜蜂と遠雷」 10月8日(火) TOHOシネマズなんばにて |
音楽を題材にした、芸術の秋にふさわしい、上品かつ残酷な作品だ。舞台は、芳ヶ江国際ピアノコンクール。近年評価が高く、優勝を目指して名だたる参加者たちがエントリーする。登場人物の背景を最小限にし、コンサートの予選から最終選考までを淡々と描くことで、その過程で登場人物の思いや過去、関係性を描いている。 本作の良さは幾つか挙げられるが、今回は2点に絞りたい。まずは、実力派キャストたちが織りなす作品の奥行きだ。メインの4人がハマりにハマりっていて、脇を固める斉藤由貴さんや鹿賀丈史さんが作品に上質さと緊張感を与えている。キャストについて1人特筆すると、松坂桃李さん演じる高島明石について述べたい。メインキャストは、いずれも『かつての天才』、『音楽エリート』『神童』といった才能に溢れた面々だが、明石は『生活者の音楽』を届ける『年齢制限ギリギリのサラリーマン』として天才たちに対峙する。彼の朴訥とした雰囲気と努力の凡人たる存在感が、観ている側を置いてけぼりの天才たちの頂上決戦と一線を画す。 2点目が、音楽の美しさだ。『覚醒』と言う表現が適切かもしれない。心情とリンクしたクライマックスの演奏は、音楽知識のない私にも圧巻の素晴らしさだった。また、本作の素晴らしさは、劇場という空間で観ることにある。劇場がまさに劇中のコンサート会場さながらで、静寂とした場内に出場者たちの少しの緊張感と堂々たる演奏が響き渡る。『世界は音楽で溢れている』本作のテーマの1つである。ジョンケージの『4分33秒』のように、私たちが感じるもの全てが音楽だ。劇場で観ないなんてもったいない!上質で贅沢な空間を体感してほしい。 |