レビュー一覧
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江守太一さん 「ブラック・ショーマン」 9/13(土) グランドシネマサンシャインにて鑑賞 |
東野圭吾が新たに生み出した「ブラック・ショーマン」は、まさに『ガリレオ』に次ぐ新シリーズの幕開けを予感させる作品でした。華やかなオープニング、豪華キャストの緊張感あふれる名演技、そして重厚で緻密なミステリーが観る者を一気に物語に引き込み、期待を高めてくれる映画です。 特に福山雅治が演じる主人公は、異色の経歴を持つ人物。『ガリレオ』の湯川学に次ぐ、まさにハマり役といえるでしょう。どこか掴みどころのない人物像を絶妙に体現しつつ、元マジシャンとして培った器用さや鋭い観察眼、人を引き込む話術で物語を進めていきます。その存在が、ただの推理劇にはない独特の雰囲気を生み出し、観客に常に“次の一手”を期待させてくれるのです。 事件の核心が明らかになる過程は、まるで大掛かりなマジックショーを目撃しているかのよう。観客の一人として、その鮮やかな“種明かし”に酔いしれました。新シリーズの第一歩として十分な存在感を示した本作。もし今後続編が生まれるのなら、このキャラクターがどんな“マジック”で私たちを魅了してくれるのか、ますます楽しみでなりません。 |
丸山美歌さん 「ふつうの子ども」 9/11(木) テアトル新宿にて鑑賞 |
子どもが主役の映画といえば、逸れもののように映る主人公が、壁にぶつかったり新しい出会いを経たり…ひと夏の成長記を想像します。本作はそんな要素もありつつ、あくまでも"ふつうの子ども"が引き起こしたある出来事を鮮やかに描いています。 ⠀生き物が好きな主人公唯士は、環境問題に関心を持つ心愛のことが好き。クラスのお調子者である陽斗も加わった3人は大人の意識を変えるため、少し変わった"環境保護運動"を始めます。子どもの発想力は斬新でクリエイティブなもの、行動に抑制がなく予測できない方向へとストーリーは進んでいきます。 授業でタブレットを使用したりSDGsの授業があったり。現代の子どもたちは多くのことに容易く関心を持てる時代。才能が拓くきっかけが多くて羨ましいと思う反面、子どものうちは子どもらしくのびのびと遊んでほしいと思ったり。 模索しながら子育てに奮闘する親の姿も描いており、情報社会で子育てをすることの大変さを感じました。そして見どころはラストの会議室のシーン。 各々の家族の描き分けが秀逸であるがために残酷にも感じます。ただ少し過激にも見えるやり取りにはユーモアを感じ、その加減が好感触で印象的な着地点でした。 子どもたちの生き生きとした等身大の演技はとても愛らしく、機微を捉えた豊かな表情に惹きつけられます。誰がおかしいんじゃない、みんなふつうの子どもなんだと感じ、どの子の個性も肯定したくなるあたたかい作品でした。 |