レビュー一覧
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陳 珍九さん(女性/38歳) 「SCOOP!」10月31日 TOHOシネマズ日劇にて |
「SCOOP!」は傷のかさぶたが痛んだりかゆくなったりする様な生々しさがある映画で『もっと「SCOOP!」の世界を私に観せて!!』と余韻が続き、今悶々としています。 元々、大根仁監督の前作「バクマン。」を観て『全20巻の漫画を1本の映画に見事にまとめたな』とファンになり、次の作品を楽しみにしていました。今回は写真週刊誌の編集部が舞台で、どのネタを掲載するか編集者同士バトルしたり、スクープをものにする為にあの手この手でターゲットを撮影したり…仕事場という名の戦場の熱気が伝わってきます。前に大根監督が『商業映画という枠の中で、自分が観客に伝えたい事を映画にする為に日々闘っている』という様なお話をされているのを耳にしました。そんな監督の同志の様な編集部の面々がこの映画の中で生きています。特に、伝説的スクープを飛ばしていたのに、今は借金に追われるエロいクズな中年パパラッチカメラマン・都城静役という初の汚れ役を演じた福山雅治さんはヤバかったです。私は静に心を持っていかれちゃいました。 仕方なく静の弟子になる新人記者役が二階堂ふみさんなんですが、最初はゲスな言動をする静とゲスな仕事内容に「最低ですね!」というセリフの連発なんです。でも、静のプロの仕事っぷりとゲスで隠した本当の静を垣間見るうちに大人のいい女へと成長していきます。そんな彼女の上司で大人のいい女そのものだったのが、輝いていた頃の静を知る副編集長役の吉田羊さん。同じ女性として憧れます。真剣に仕事・恋愛をしてきたからこそ、愛情深く凛と美しい大人の女性になれたんだろうな。私はこの2人の女性の静への気持ちが痛いほどわかりました。 静と腐れ縁のチャラ源役リリー・フランキーさんはプライベートでも福山さんと仲良しだから息がぴったり。具体的なシーンはないですが、2人の過去が演技から伝わってきます。静が落ちていくチャラ源を見捨てられない所がもう、切ないです。 そうです!!本当にこの映画、皆切ないんですよね。大人の顔をちゃんと持っているけど、その下に本当の自分を秘めながら一生懸命今の自分の持ち場で頑張って踏ん張って生きている。観ていて心が痛くなるのにもっと観たくなるんだから、監督&演技派の出演者の皆さんさすがです。心がヒリヒリした分だけ「チクショウ!私も負けてらんねえぜ!!」と心が奮い立つ。まるで一緒に修羅場をくぐった戦友の様な不思議な映画ですね。願いが叶うなら、静にまた会いたいです。 |
はるかさん(女性/25歳) 「金メダル男」 10月25日 TOHOシネマズ新宿にて |
本物の内村さんがそのまま出てきたような主人公の出だしに、映画として楽しめるのかなと少し不安になりながら観始めたのですが、セリフの間に出てくるちょっとしたぼけや上手い間の取り方に、すぐに映画の世界に惹きこまれました。主人公の名前の由来や父と母のやりとりなど、ところどころにネタが散りばめられていて深く考えずに素直に笑いが出ました。 主人公は、小学生の頃のある出来事から、一等賞・金メダルにとりつかれていきます。運動会でみんなに囲まれて拍手されることに喜びを感じたり、一等賞を取ろうとする一生懸命さだったり、わざとらしさと現実感のあるシーンが絶妙に入り混じっているところが面白かったです。出演者も大泉洋さん、長澤まさみさん、土屋太鳳さん、鶴瓶さん…などなど豪華キャストが勢揃いで、しかもワンシーンだけの出演など贅沢な気分を味わえる映画でもありました。中でも、私が一番好きなのは竹中直人さんのワンシーンです。 さらに内村さん演じる主人公の青年期を演じる知念侑季くんは、内村さんに動きも表情もよく似ていて、一等賞をとろうとがんばる彼の姿が微笑ましくて、またその一生懸命さが逆に面白くて、声を出して笑ったりしました。もう一人の重要人物に内村さんが一躍有名になったときのマネージャーとして木村多江さんが出演しているのですが、優しく一途に主人公を支える姿はとても綺麗でした。さらに、木村多江さんと内村さんの夫婦のやりとりの中にある絶妙な間やセリフのテンポに思わずクスッと笑ってしまいました。 多くの映画を観ていますが、どちらかというと今までのコメディ映画とも少し違うような内村さんならではの新しい映画なんじゃないかなと思います。内村さんが子供からプレゼントをもらうシーンはジーンッと心が暖かくなりました。 この映画を観て、一生懸命頑張れば一等賞じゃなくてもきっと誰かに見てもらえて、何かに向けて必死にがんばるのは素敵なことだなと改めて感じました。難解な事件や心の底から泣く映画というよりは、クスッと笑えて少し泣けて元気になれる映画ではないかなと思いました。 |
阪本佳純さん(女性/20歳) 「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」 10月30日 新宿ピカデリーにて |
ダメな私の最後のモテ期というサブタイトルがついていると、シリーズ三作目にしてブリジットがモテモテ人生を送っているのかと思うかもしれませんが、ちょっと違います。確かに、前作とおなじように、二人の男性と三角関係になる展開は同じですが、原題の「Bridget Jones’s Baby」から今回のストーリーを想像してみてください。過去最高にコメディ要素がたくさん散りばめられており、ブリジット節のきいた、本当に緻密で面白い話になっています。 私は「ブリジット・ジョーンズ」シリーズを観たのは本作が初めてですが、前作をみていない私でもちゃんとひとつの作品として成立しており、初見でも楽しめる内容でした。予想外に面白かったので、前の二作もしっかり観て、知識の穴埋めをしたいくらいです。良い意味で登場人物一人ひとりに個性が強すぎるので、一度観たらすぐ覚えられますから、鑑賞中にこの人は誰だっけなんてことになる心配もありません。 エナジードリンクのような、ポジディプで、前向きな活力をくれるこの映画は、是非疲れたなと感じる全ての人に観てほしいです。等身大のブリジットはどの年代の方にも勇気を与え、背中を押してくれると思います。 |