レビュー一覧
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川端七成さん 「もっと超越した所へ。」 10月17日(月) TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞 |
昔付き合ってた人に私と別れた後の人生があるなんて、考えたこともなかった。関係を絶ってしまえば、彼らは次第に"過去の一部"でしかなくなっていく。「もっと超越した所へ。」はそんな無機質な存在たちが生きる、私の知らない"続き"について想像させられる作品だった。 近年、女性が男性の無意識な悪意によって傷を負い、搾取されている現状へ怒りをぶつけた作品は多い。その中で、彼女たちが彼との関係や自分の想いを全て断ち切り、ひとりで立って強く生きていく結末に、何度も勇気をもらった。しかし私たちはその何度も見た結末を、いつか"超越"したいとも願っていたのかもしれない。 自分が傷付くものから距離を置いたり、逃げたりすることを後押しされる時代になった。その選択ができる年齢になった。でも、だからこそ、誰かひとりと嫌になるほど向き合って、傷付けて、傷付いて、自分の弱さを全部さらして、最後に泣きながら抱きしめ合うような、泥まみれの愛に憧れている。主人公4人が今を変えるために叫ぶ姿を見て、初めてそんな自分がいることを知った。 そもそも誰かを好きになるって、他人の理解を得られることが前提ではない。恋愛は本来キモいものだし、キモければキモいほど本物なのだ。そうやって私も、元カレは知らない、私の人生の続きを歩いていく。 |
細井ゆうきさん 「僕が愛したすべての君へ」10月12日 新宿バルト9にて鑑賞 「君を愛したひとりの僕へ」10月13日 新宿バルト9にて鑑賞 |
今年の夏は、「今夜、世界からこの恋が消えても」(22)や「モエカレはオレンジ色」(22)、「サバカンSABAKAN」(22)等、夏ならではの素敵な青春作品に沢山出逢いました。皆さんにお薦めしたい作品も山程!"映画レポート執筆欲"をふつふつ募らせ、気づけば新たな季節を迎えていました。 そんな今回は、夏を終えた切ない秋に、“誰かと一緒に”見てほしい作品「僕が愛したすべての君へ」(以下:僕愛)と「君を愛したひとりの僕へ」(以下:君愛)をご紹介致します。この作品は、観る順番で結末から受ける印象が大きく変わると言う、『異例の2作品同時公開』です!「僕愛」から見ると、切ないEND。「君愛」から見ると幸せEND。日本が誇るアニメジャンルで、そんな斬新企画に挑んでいます。 私は、「僕愛」→「君愛」の順番で、誰かと観ることをお勧めします。この順番で観る事で、「僕愛」の帰り道には、まだ未回収の伏線についての考察で会話が弾み、そんな時間も含めて愛おしく、特別な時間を得られます。そして後日「君愛」を観た時、全貌が明らかになり、ほろっと泣けます。 「僕愛」「君愛」どちらから観るのか。この選択は1度きりです。私も記憶を消して「君愛」から観てみたいものですが、それは並行世界の私にしか叶わないことです。この新感覚エンタメを、ぜひ劇場でご体験ください。 |