レビュー一覧
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久保さん(男性/52歳/会社役員) 「パシフィック・リム」 8月22日 シネマ・メディアージュにて |
昭和35年生まれの私は、初めて見た映画が昭和39年、道玄坂の渋谷東宝で母に連れられて見た「三大怪獣 地球最大の決戦」(64)でした。それ以来「怪獣大戦争」(65)「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(66)「怪獣総進撃」(68)と、子供の頃の私の映画体験は怪獣映画と共にありました。またテレビでは『鉄人28号』に始まり『ジャイアント・ロボ』『マジンガーZ』など、スーパーロボットの活躍に夢中になっていた少年期でもありました。 そんな怪獣とロボットで育った20世紀少年の私にとって、この「パシフィック・リム」は予告編を見た数ヶ月前から、待ちに待っていた作品でした。なにせハリウッドが製作する[大怪獣対スーパーロボット]です。期待せずにはいられません。息子を連れてワクワクしながら劇場へ参りました。 冒頭、簡単な説明でわかるのは、この世界では怪獣が毎回一匹ずつ登場するということ。「あれ? この設定はウルトラマンとか日本の特撮番組のお約束?」と、日本人的には何の違和感もなく受け入れられる設定。また対するスーパーロボットの[イェーガー]には二人の人間が乗り込み、彼らの手足の動きがそのままロボットの動きに反映され、二人の息を合わせて戦う操縦方法。「おっ? これはGガンダム的な?」「石破ラブラブ天驚拳?」と思えるような、これも日本のアニメ的な設定。それもそのはず、監督のギレルモ・デル・トロは日本の特撮映画やアニメを愛する大のオタク。だから怪獣やロボットに対する愛情が半端なく、好きで作っていることが画面を通して伝わってくるから素晴らしい。だからハリウッド版「GODZILLA」(98)のような心配はご無用。最新3DCGで特撮ファンがワクワクするような映像を真正面から見せてくれます。劇中に登場する日本のイェーガー[コヨーテ・タンゴ]がどう見ても[ガンキャノン]だったりする小ネタ(リスペクト)も満載。日本から菊池凛子、芦田愛菜も熱演しています。 また当日は、息子がネットで仕入れてきた情報で、あえて3D日本語吹替版で鑑賞。これが当たりでした。古谷徹、池田秀一、林原めぐみ、三ツ矢雄二などロボットアニメでお馴染みの声優さんを起用してアニメファンにも楽しめます。特に『ロケット・パーンチ!』のかけ声が出た時には燃える、燃える! 息子も私も楽しむことができました。 怪獣映画ファン、スーパーロボットファンには絶対オススメ! 少年に戻れる一本です。 |
吉田創貴さん(男性/25歳/会社員) 「マン・オブ・スティール」 8月31日 109シネマズ港北にて |
ぴあ特別会員内での映画レポートの担当月が知らされたとき、私は心の中でガッツポーズをしていました。「やった!9月担当ならあの映画をレポートできる!」と。応募の際に好きな監督はクリストファー・ノーランです!と書いたことが効いたのでしょうか?本作では監督ではなく、製作に回っていますが。「誰だ、その監督?」と思った人は「メメント」(00)「ダークナイト」(08)「インセプション」(10)をとりあえず観てください。彼のファンが増えることを心から願っています。 さて、半年前からレビューを書くことを決めていた「マン・オブ・スティール」。全てのヒーローの原点ともいえるスーパーマンの誕生を描いた映画です。最近流行(?)のアメコミ実写化ですが、アイアンマンやバットマンと違い、彼は地球人とは違います。元から強大なパワーを持った超人です。スーツやマスクを身につけた時の自分と本来の自分といった2面性に悩むヒーローも多いですが、スーパーマンの場合(スーツはありますが)、そこに明確な差はなく、常に超人なのです。そんな大きな力を持ちすぎる彼なりの苦悩が、映画の前半で語られていきます。強大すぎる力のためにそれを隠して生きねばならない彼の姿、生き方を複数のエピソードを通じて知っていきます。特に竜巻のエピソードは心に残ります。ケビン・コスナー演じる育ての父、カッコ良すぎです。スーパーマンの苦悩が丁寧に描かれていきますが、あれ?これいつになったら戦うんだ?と思い始めた頃に急にギアが入ってハイスピードバトルが勃発します。いきなり映画が変わります(笑)。 映像・アクション面ですが、さすがザック・スナイダー監督!と思いました。バトルがとにかく速く敵が一瞬で間合い詰めてきます。本作の続編に登場予定のバットマン、速すぎて対応できなくて大変だろうなと思ってしまいました(笑)。建物もどんどん壊れます。続編大丈夫か?くらいに瓦礫の山です。でも、あれだけ暴れてもちゃんと大事なあのビルは無事なんですけどね(映画の最後を観ていただければわかると思います)。 2015年に公開予定の続編ですが、先日ベン・アフレックがバットマンを演じると報じられました!どんなバットマンになるのか、今から楽しみです♪そして、その先に公開されるはずの、DCコミックのオールスターチーム(マーベル・コミックで言うところのアベンジャーズ)の活躍を描く「ジャスティス・リーグ」も… |
かつをさん(女性/40代) 「あかぼし」 8月27日 K’Sシネマにて |
新宿のK'Sシネマでしか上映されていなかった作品だったが、なんか気になって観に行った作品。たまたま吉野竜平監督の舞台挨拶があった回で、その時に監督が資金工面も宣伝も一人でやっていると聞いた。自主映画なんだ…とちょっと斜に構えて観始めたのだが、ズシンと決して心地よさとは言えない感情が観終わって残りました。でもそれは嫌じゃない。「あ、口当たりのいい映画ばかり観ていたな」と振り返ることができた、と言ってもいいかもしれない。 夫が蒸発したのを機に精神的に追い込まれバランスを崩した女が、駅で新興宗教の勧誘を受け、衝動的に入信し宗教にのめり込んでいってしまうのだが、のめり込むほどに心の安定を得て行く。一人息子はそんな母の布教活動の手伝いをさせられるようになっていき、友達との付き合いも悪くなる。学校の友達の家に訪問してしまったことで活動がばれて、まもなく学校での苛烈ないじめに会うようになる。息子は布教を辞めたくても、母の顔色を見ては辞めることはできない。あるアクシデントが元で宗教団体から追い出された母と息子の関係が怪しくなっていくものの…。 人によってそれが仕事だったり、家庭だったり、行き詰まり激しく落ち込み、精神的に「もうだめだ」と言葉も出ないようなことはあると思う。その時に何をきっかけに突破するのか、涙を流すのか、堕ちるのか、逃げ道に避難するのか…人によって様々あるだろう。突破のタイミングと場所、それがたまたまこの母には新興宗教だった。勧誘される場面で、母の心がぐっとすくわれる動きが、かつて落ち込んだ時にすくわれた自分の体験と重ねてリアルにわかった。 そして、息子が健気で、子供はわかってないのではなく、親の顔色を伺っている。それを親が見えてないだけ。宗教団体で知り合った年上の女友達が痛みとともに飛び立つのを横目で見ながら、体も拒否反応を示し学校でいじめられ、家で母に罵倒されても母の危うさをわかった上で見棄てられない…という眼差しがラストの台詞と重なる。何度もエクスキューズを出すんだけど、届かないのがもどかしい。 この映画観てて、新興であれなんであれ、実は心の弱い人は宗教で救われているのか?、むしろ心が強い人が宗教できるんじゃないか?って気がしてきてならなくなった。心の弱い人は救われるのではなく、溺れる可能性しかないんじゃないかって思えて怖かった。 |