レビュー一覧
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石津修之さん(男性/57歳/会社員) |
日本アカデミー賞会員になって、映画館へ行く回数が増えた。これまでは休日に近くのシネコンに行くことが多かったが、2013年は仕事帰りに都内の映画館で至福の時を過ごした。 2013年の映画界を100年後に振り返るとしたら、きっとスタジオジブリの2作品が公開された年、つまり宮崎駿の「風立ちぬ」と高畑勲の「かぐや姫の物語」が公開された記念すべき年として記録されているだろう。同じジブリの作品でありながら、この二つの作品の絵のタッチやテイストは全く違う。しかし、作家性が前面に出ている点では共通している。映画作家は自身の身を削りながら、作品に命を吹き込み、血の出るような試行錯誤と時間との戦いに苦しみながら、作品を産み落とす。さらにこの2作品の共通点は、いずれも作家が自分の作りたい領域に挑み、趣味性を乗り越え、芸術性と同時に大衆性を獲得した点にある。同時代にこの2作品に出会えたこともさることながら、今後TVやDVDなどで繰り返し見ることになる楽しみ(言わば財産)が増えたことを喜びたい。 一方で、2013年の収穫は、等身大主人公が活躍する青春ドラマの秀作があったことがあげられる。普通に生きていくことのいとおしさに胸ふるえた「横道世之介」、夢をあきらめることのせつなさを描いた「ばしゃ馬さんとビッグマウス」、天職であることを信じて進むストイックなさわやかさを応援したくなる「舟を編む」などなど。 日本映画がどんどん面白くなってきた2013年だったと思う。 |
吉田創貴さん(男性/25歳/会社員) |
この文章を書いているちょうど1年前にぴあ特別会員に選ばれたというメールを受け取りました。嬉しすぎて、すぐに周りにいる友人たちに自慢したのですが、当時は大学院を卒業するために修士論文と格闘中の身で「修士論文書かないで、特別会員になるための書類書いてたの?」と周りから笑われたことをよく覚えています。4月から社会人となり、とりあえず周りの人に名前を覚えてもらおうと考えた私は、いろいろな場所で自分が「日本アカデミー賞授賞式に参加したり、映画のレポートもネットに掲載されたりする、一般の中から選ばれたぴあの特別会員なんです」と自己紹介してまわりました。数ヶ月後、知らない間に会社内で私は「日本で数人しかいない特別な映画評論家」ということになっていました。噂って恐ろしいですね。でもそのおかげで、職場の席が近い人たちからはもちろんのこと、仕事上では関わらない(え?この人会社にいたっけ?と思う)人たちからも声をかけてもらえるようになり、映画を通じて良い人間関係を築けているように思います。職場の多くの方が、映画の話をするとき、映画の内容以外に「この映画は今の奥さんと観に行ってね、そして帰り道に・・・」などその映画の裏にあるドラマ?を語ってくれます。今はそれを聞くことも1つの楽しみになっています(笑)。「映画って、本当に素晴らしい!」それを再確認できた1年間でした。 |
久保さん(男性/52歳/会社役員) |
この夢のような企画に当選し、一年間映画館に通い続けた。昨年一年間に日本アカデミー賞会員証を使って見た映画の本数は約160本。例年70〜80本は見ていたが、それと比べても倍の本数。ほぼ2日に一本は見た計算になる。今回はラスト・メッセージということで、一年間映画館に通い続けて気がついたことを何点か書きたいと思う。 まず、作品の良し悪しは宣伝の量には比例しないということ。昨年は、普段なら見に行かないかもしれない作品まで見ることもでき、大作ではなくても素晴らしい作品に出会うことも出来た。実は素晴らしい作品がたくさんある。そして、それが一部映画ファンのみにしか知られずに埋れてしまっていては実にもったいない。 次に、平日の映画館は、テレビで大宣伝を打っている若者向けの大作映画はそれほど混んではいないものの、通の集まる単館ロードショーが常に満員に近い状態だったことにも驚いた。主な客層は私よりも少し年上のシルバー世代の方々。シルバー料金の設定が大きいのかも知れないが、映画館で見ることの魅力を知っている方々とも言える。作品的にも洋画を中心にシルバー世代を狙った作品が多く見受けられた。 最後に、やはり映画は映画館の大画面で見るに限ると改めて感じた。中にはテレビの特番とどこが違うのかわからないようなアップばかりを多用したビデオ作品のようなものも見受けられたが、映画館の大スクリーンとサラウンド音響で見る迫力は、いかに家庭用テレビが大画面化してきている昨今でも比較にならない。若者の多くが「レンタルでいいや」と口にするが、映画の魅力を十分に感じるには映画館が一番である。そしてまた今年も映画館で見るに足る素晴らしい作品に出会えることを期待している。 |
かつをさん(女性/40代) |
映画が好き。非日常の世界で喜怒哀楽に溺れる醍醐味がたまらない。映画好きと「ライターになりたい!」という目標もあり、ぴあ読者会員に応募しました。うんちくを語るのではなく、監督の個性や「らしさ」とか語れる豊富な知識もない。「楽しかった」「面白い」をもっと自分の言葉に噛み砕いて紹介すればいいじゃないか、と思って書いてきました。でも、実際難しい。自分の思い込みを指摘いただき勉強になりました。 この一年、平日、休日問わずシネコンやミニシアターへ観に行きました。186作品観たのは人生最多記録。レポートのためと動機付けできて、貴重な体験をさせてくれた事に感謝の言葉しかありません。そんな中、優秀賞の受賞者を見ると、やはりシネコンで上映される作品が多い。ミニシアターでも面白い作品があるのに!と歯がゆさも感じました。地域や規模に関わらず多様な映画が観られるようになるといいなぁと実感しました。 最後に残念なのは、愛してやなまい前田敦子主演の黒沢清監督作品「Seventh Code」のレポートが書けなかったこと。彼女の次のシングル「セブンス・コード」のMVとして撮影された物がローマ国際映画祭で評価され、凱旋上演で映画館で観るという試み。この感動を伝えたかったです。 一年間、場を与えて下さりありがとうございました。今後も日本アカデミー賞が素晴らしい賞であることを祈念いたします。 |
村上 真章さん(男性/29歳) |
「映画とは一体、なんだろう」 なんて自惚れたテーマを考えていたのです、去年のボクは。客観的にみればとんだ思考錯誤、といったとこれでしょうか。でも仕方ないじゃないですか。日本アカデミー賞の特別会員というワクワクを背負っていたのですから。で、その答えのひとつとしてたどり着いたのは、映画とは世界共通の娯楽なんだ、といったいたってシンプルな内容です。 というのも一昨年までのボクは、映画といえば邦画と捉えていたのです。根っからの日本生まれ下町育ちで非バイリンガルな人間は、字幕のついた西洋の映像を食わず嫌いしていました。しかしこの度、様々な映画を観賞出来るチャンスを得たことで、今まで手をつけなかった洋画もたらふくいただくことができました。ごちそうさまです。中でもおいしくいただけたのは「イノセントガーデン」という作品です。目がスクリーンに接しそうなくらい釘付けされた、妖しい魅力たっぷりな映画でした。誠に勝手ながら、ボクの映画史における「黒船」とさせていただきます。おそまつさまでした。 とまあ、日本アカデミー賞特別会員となった1年を振り返るレポートが、洋画の素晴らしさに気づくといった内容でちゃんちゃらおかしいことと存じます。ただ他の感想を記すには文字数が足りないんです。あしからず。 とにもかくにも、あの1年間、まるで2年間ほど映画に触れあったような日々でした。これからも日本映画の益々の発展を心より願っております。あ、洋画も。 |