レビュー一覧
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川端七成さん 「わたし達はおとな」 6月14日(火) 新宿武蔵野館にて鑑賞 |
誰も死なない映画が好きだ。ただ、生きているという事実やその姿に、どうしようもなく救われることがある。映画館を出たあとも私たちの人生が続いていくように、映画の中の死ねない人たちも、苦しい日々を生きようとしている。「わたし達はおとな」は、その様子をまざまざと見せつけられた作品だった。 加藤拓也監督の作品との出会いは、『ぽに』という舞台だった。責任には出口がないということを、『ごっこ遊び』として演劇にした作品で、ここでの『ごっこ遊び』が、映画のラストで主人公の優実が料理をするシーンと重なった。大人になるって、ただの『ごっこ遊び』でしかないのかもしれないと思った。 大人とはなんだろう、と昔からずっと考えている。家もとを離れたら?恋人ができたら?親になったら?どれもあまりしっくりこない。なぜなら、それらをすべて経験した人たちが、必ずしも大人だとは思えないからだ。 たぶんこの世界に大人なんていない。どれだけ年齢や経験を重ねても、みんな大人『ごっこ』をし続けるだけなのだ。そんな自分の子供みたいな意識と、実はあいまいな『大人』像との距離に不安を抱いたり、ときに怒りながら、ただ生きていくしかない。そんな彼らの、不毛で、情けない姿が、私にとっては希望のように見えた。 |
細井ゆうきさん 「メタモルフォーゼの縁側」 6月18日(土) TOHOシネマズ池袋にて鑑賞 |
今年4月、「チェリまほTHE MOVIE」(22)と思いがけない出会いをし、BL世界のトキメキに衝撃を受けた私ですが、なんと!同じような境遇のキャラクターをスクリーンの中に見つけました!それが、今回ご紹介する「メタモルフォーゼの縁側」です。 本作は、芦田愛菜さん演じる17歳の女子高生/うららと、宮本信子さん演じる75歳の老婦人/雪が、BLをきっかけに繋がる物語です。雪は、表紙の絵が綺麗という理由で偶然手にしたBL漫画に、久々のトキメキを見つけ、瞬く間に日々をポジティブに生きるようになります。それに影響を受け、元々BL好きで内気なうららも、少しずつ前向きに…。他者から見ればちょっとした日常の変化も、2人にとっては大メタモルフォーゼ(変身)なのです!一冊の漫画が、本来出会うはずのない2人を結びつけ、踏み出す勇気を与える展開に、改めてエンタメのパワーと存在意義を実感し胸が熱くなりました。 また、メインストーリーと並行して、うららの幼馴染/紡(普通の高校生)の恋物語が描かれており、こちらも素敵です。紡役は高橋恭平さんが好演していますが、これからの活躍が楽しみな俳優さんの一人になりました。 脚本は、数々の名作を手掛けた岡田恵和さん。言葉がとにかく刺さります!豪華製作陣の手により、優しく丁寧に纏め上げられた心温まる一本です。気になった方、ぜひチェックしてください。 |