市原悦子 (いちはら えつこ)【俳優・声優】 1月12日没 享年82
高校卒業後、俳優座養成所に6期生として入所。57年「雪国」で映画デビュー。脇役ながらその存在感は早くから豊田四郎、川島雄三、松山善三ら名監督の信頼を得た。同年『りこうなお嫁さん』で舞台デビューし立て続けに舞台に出演、その活躍はめざましく新劇女優として高い評価を受ける。71年に俳優座退所後も映画、舞台、テレビと幅広いフィールドで精力的に活躍。個性溢れる演技に加え、聴く人を惹きつける魅力的な声の響きからアニメーション作品やナレーションの出演も相次いだ。エポックメーキングな作品となった『まんが日本昔ばなし』(75~94/TBS)、『家政婦は見た!』シリーズ(83~08/テレビ朝日)はお茶の間の幅広い世代の記憶に残る作品となった。映画では「黒い雨」(89)、「人間の砂漠」(90)、「うなぎ」(97)、「あん」(15)、「しゃぼん玉」(17)、声の出演に「あらしのよるに」(05)、「君の名は。」(16)がある。
【日本アカデミー賞受賞歴】
第13回「黒い雨」で最優秀助演女優賞、第21回「うなぎ」で優秀助演女優賞受賞。
降旗康男 (ふるはた やすお)【監督】 5月20日没 享年84
57年東映に入社。助監督を経て66年「非行少女ヨーコ」で監督デビュー。74年フリーになるまで任侠映画全盛期の東映の作品群を支えた。監督2作目の「地獄の掟に明日はない」(66)での高倉健との出会いは運命的と呼べるもので、「冬の華」(78)、「駅 STATION」(81)、「夜叉」(85)、「あ・うん」(89)、そして高倉健の遺作となった「あなたへ」(12)まで半世紀近く20本もの作品を共にし、日本映画史に残る寡黙で心優しい男性像を生み出した。日本アカデミー賞では第23回に「鉄道員(ぽっぽや)」で作品、監督、脚本、主演男優、主演女優など8賞の最優秀賞を受賞。人の心と生き様を巧みに描き、生涯現役として49本ものジャンルを越えた作品を残した。その他の代表作に「藏」(95)、「赤い月」(04)、「追憶」(17)など。
【日本アカデミー賞受賞歴】
第23回「鉄道員(ぽっぽや)」で最優秀監督賞、最優秀脚本賞(岩間芳樹と)受賞。
第5回「駅 STATION」「仕掛人梅安」、第19回「藏」、第25回「ホタル」、第36回「あなたへ」で優秀監督賞受賞。第25回「ホタル」(竹山洋と)優秀脚本賞受賞。
高島忠夫 (たかしま ただお)【俳優】 6月26日没 享年88
51年、新東宝ニューフェイス1期生として芸能界入りし、翌年「恋の応援団長」でデビュー。続けて「チョイト姐さん思い出柳」で初主演を飾る。東宝カラーにマッチした都会的容姿と明朗な演技で早くから注目を浴び、デビューしてからの10年間に100本もの映画に出演。中でも青春コメディ「坊ちゃん」シリーズ(56~59)、「嵐を呼ぶ楽団」(60)、「君も出世ができる」(64)などで人気を集める。59年に菊田一夫の勧めで演劇界にも進出し、日本初のブロードウェイミュージカル『マイ・フェア・レディ』で定評のあった歌声を披露した。「サラリーマン弥次喜多道中」(61)や「キングコング対ゴジラ」(62)などコメディや特撮映画にも主演作が多い。後年はテレビ番組の司会や『ゴールデン洋画劇場』(73~98/フジテレビ)の映画解説を務め、持ち前の明るさと親しみやすい語り口でお茶の間の人気を得、ホスト役を務める番組はいずれも長期にわたる人気番組となった。
※第14回~第18回日本アカデミー賞授賞式司会
和田 誠 (わだ まこと)【監督・脚本・イラストレーター】 10月7日没 享年83
59年、多摩美術大学卒業後、広告デザイン会社に入社。イラストレーターの先駆者として活躍する。71年からキネマ旬報の連載『シネ・ブラボー』のイラストを手掛け、73年からは同誌でエッセー連載『お楽しみはこれからだ』を開始、幅広い映画ファンを魅了して第1回キネマ旬報読者賞を受賞、96年までの長期連載の始まりとなった。80年代に至り劇映画の監督に進出し「麻雀放浪記」(84)では作品の面白さと完成度の高さで映画人とファンを驚嘆させ、数々の映画賞を獲得した。以来、「快盗ルビイ」(88)、「怖がる人々」(94)、「真夜中まで」(01)などを監督した。この間も報知映画賞のブロンズ像、キネマ旬報表紙、数々の映画ポスターなど映画にまつわる作品を送り出し、その活動は2010年代まで衰えることなく続けられた。氏の描いた“スチールを越えたイラスト”は、名場面と名セリフで映画の歴史と映画への深い愛情を次世代に伝え、三谷幸喜を始め多くの後進の道標となった。
【日本アカデミー賞受賞歴】
第8回「麻雀放浪記」で優秀監督賞、優秀脚本賞(澤井信一郎と)受賞。