第46回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
日時: 2023(令和5)年3月10日(金)
場所: グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール
司会: 羽鳥慎一/有村架純

授賞式レポートはこちら

優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)2022「ある男」製作委員会

最優秀作品賞 ある男


【最優秀受賞コメント】
難しいテーマの作品をキャストやスタッフの皆さんが素晴らしいエンタテインメント作品に仕上げ、世に届け、素晴らしい評価もいただいて嬉しく思っています。[髙橋敏弘/製作] 
難しい題材にチャレンジさせてくださった松竹の方々と、この原作を預けてくださった原作者の平野啓一郎さんに感謝します。[石川 慶/監督] 
一瞬しかない人生の中で、このチームの一員になれたことが心から嬉しくて、これからの財産になると思います。[窪田正孝]

【作品紹介】
芥川賞作家・平野啓一郎が2018年に発表し、第70回読売文学賞を受賞した同名小説を、「愚行録」(17)「蜜蜂と遠雷」(19)の石川慶監督が映画化。亡き夫の名が別人のものだったと知った妻が、知り合いの弁護士に身元調査を依頼。次第に夫の壮絶な過去が明らかになっていく。出自や家庭環境をめぐる差別やレッテルも容赦なく映し出しながら、アイデンティティについて問いかける人間ドラマであり、ミステリー作品。原作と異なるラストシーンも強い余韻を残す。第77回毎日映画コンクール男優助演賞、第47回報知映画賞作品賞、第44回ヨコハマ映画祭脚本賞、撮影賞、助演女優賞、第35回日刊スポーツ映画大賞助演女優賞、新人賞受賞。第79回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に正式出品され、第27回釜山国際映画祭クロージング作品にも選出された。今回の日本アカデミー賞では12部門、13賞を受賞している(優秀助演女優賞は2名)。

監督:石川 慶
脚本:向井康介
製作:松竹/木下グループ/GYAO/文藝春秋/イオンエンターテイメント/コルク/松竹ブロードキャスティング

優秀作品賞 シン・ウルトラマン


【作品紹介】
1966年にTVドラマが初放送され、国民に愛されてきた特撮ヒーローである“ウルトラマン”を、映画「シン・ゴジラ」(16)で第40回最優秀作品賞を受賞した庵野秀明と樋口真嗣が再びタッグを組んで「シン・ウルトラマン」として映画化。今作では、庵野が企画・脚本を、樋口が監督を務めている。物語の舞台は、次々と巨大不明生物・禍威獣(カイジュウ)が現れ、政府が禍威獣特設対策室(通称:禍特対)を設置した日本。大気圏外から巨大な人型生物̶̶のちにウルトラマン(仮称)と名付けられる̶̶が飛来し、物語が加速していく。ウルトラマンはもちろん、映画冒頭から次々と登場する禍威獣や外星人の映像に心躍らされ、さらに斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、山本耕史など演技派キャストがスクリーンで存在感を発揮。大人から子供まで楽しめるエンターテインメント作品となり、44億円を超える興行収入を記録した。今回の日本アカデミー賞では、7部門と新人俳優賞を受賞している。

監督:樋口真嗣 
脚本:庵野秀明
製作:円谷プロダクション/東宝/カラー

優秀作品賞 月の満ち欠け


【作品紹介】
第157回直木賞を受賞した佐藤正午のベストセラー小説を映画化。1980年、ジョン・レノンが凶弾に倒れた年に小山内堅は梢と結婚し、やがて二人の間には一人娘となる瑠璃が生まれる。一方、この年に運命的な出会いを果たした三角哲彦と正木瑠璃には一緒になれない理由があった……。“瑠璃”をめぐる壮大なラブストーリーであり、生まれ変わりの奇跡を描いたファンタジー。キャラクターの繊細な感情と、愛する人への思いをリアルに描き、物語に引き込んでいく。ジョン・レノンが1980年に発表した楽曲『Woman』が何度も印象的に流れる他、1980年当時の高田馬場駅前を巨大オープンセットとCGで再現するなど、ノスタルジックな空気感も作品を盛り立てる。メガホンを取った廣木隆一監督は、本作に加え、「ノイズ」「夕方のおともだち」「あちらにいる鬼」「母性」と5本の長編映画が2022年に公開され、目覚ましい活躍の一年となった。今回の日本アカデミー賞では9部門と新人俳優賞(2名)を受賞している。

監督:廣木隆一 
脚本:橋本裕志
製作:松竹/アミューズ/JR東日本企画/トーハン/イオンエンターテイメント/クリエイティブオフィスキュー/松竹ブロードキャスティング

優秀作品賞 ハケンアニメ!


【作品紹介】
アニメを愛し、アニメ制作の仕事を愛するクリエイターたちが、“覇権”を取る=1クールに放送されたアニメの頂点に輝く作品を生み出すために日夜奮闘する、熱気溢れるお仕事ムービー。「水曜日が消えた」(20)で長編デビューを果たした吉野耕平監督が、2015年本屋大賞第3位に輝いた、辻村深月の同名小説を映画化。劇中に登場するアニメ『サウンドバック 奏の石』と『運命戦線リデルライト』は、本作のために辻村が各12話分のプロットを執筆。Production I.G.らが制作し、谷東監督、大塚隆史監督など第一線で活躍するクリエイターと豪華声優陣が参加し、細部までこだわって制作されているのも見どころ。公開後は口コミで評判が広がり、ロングラン上映を記録した。第44回ヨコハマ映画祭主演女優賞、助演男優賞、審査員特別賞、第35回日刊スポーツ映画大賞作品賞、助演男優賞を受賞。今回の日本アカデミー賞では9部門と新人俳優賞を受賞している。

監督:吉野耕平 
脚本:政池洋佑
製作:東映/東映アニメーション/ベンチャーバンクエンターテインメント/東映ビデオ/MBS/マガジンハウス/西武鉄道

優秀作品賞 流浪の月


【作品紹介】
女児誘拐監禁事件の犯人として逮捕された19歳の佐伯文と、被害者となった小学生・家内更紗。だが二人にとっては、お互いがお互いを必要とする、かけがえのない存在だった。引き裂かれて15年、更紗は偶然、文を見つけ……。2020年本屋大賞受賞作である凪良ゆうの同名小説を原作に描く、互いを想う二人の確かで純粋なつながりの物語。実写長編作品は「怒り」(16)以来となる李相日監督が自ら脚本も執筆し映画化。役者陣から切実な演技を引き出している。撮影監督を務めるホン・ギョンピョは、これまで韓国を代表する監督と何度もタッグを組み、カンヌ国際映画祭パルム・ドールや米アカデミー賞作品賞など数々の賞に輝いた「パラサイト 半地下の家族」(19)でもその手腕を発揮している名カメラマン。日本映画に初めて参加し、その重厚で艶のある映像美で作品に厚みをもたらした。第47回報知映画賞助演男優賞、第35回日刊スポーツ映画大賞監督賞を受賞。今回の日本アカデミー賞では6部門で受賞している。

監督・脚本:李 相日
製作:UNO-FILMS/ギャガ/UNITED PRODUCTIONS
優秀アニメーション作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners

最優秀アニメーション作品賞 THE FIRST SLAM DUNK


【最優秀受賞コメント】
日本アカデミー会員の皆様にも、お客様にも、本当に支えられた作品だと思います。この作品は、原作者である漫画家の井上雄彦先生が、映画という未知の世界に表現を求めてくださったので、実現した作品だと思っています。そしてスタッフの皆さんが挑戦することを諦めず、最後まで闘い抜いてくれたので完成した作品だと思っています。皆この賞は本当に励みになると思います。代表して心から御礼申し上げます。[松井俊之/プロデューサー]

【作品紹介】
1990~96年に『週刊少年ジャンプ』で連載された、高校バスケットボールが題材の伝説的大人気漫画を、作者の井上 雄彦自身の監督・脚本で映画化。兄の背中を追うようにバスケにのめりこみ、湘北高校バスケ部で2年生となったポイントガードの宮城リョータは、チームメイトの桜木花道、流川楓、赤城剛憲、三井寿らと共に、インターハイで王 者・山王工業高校に挑む。井上が細部にまで徹底してこだわり抜き、それを老舗の東映アニメーションとCG技術に長けたダンデライオンアニメーションスタジオが最新技術で応え、膨大な時間をかけて制作。まるで原作漫画の絵そのものが動いているかのような映像が、リアリティを追求した臨場感溢れるバスケシーンを交えて展開。以前の TVアニメ版でも未映像化の原作内の最終試合を新たな視点で描き、“初めて”の新鮮な興奮と感動に満ちた『SLAM DUNK』となった。現在も公開中で、興収100億円を超えて数字を伸ばし続けている。

監督・脚本:井上雄彦
製作:東映アニメーション /アイティープランニング/東映/集英社

優秀アニメーション作品賞 劇場アニメーション『犬王』


【作品紹介】
「夜明け告げるルーのうた」(17)「きみと、波にのれたら」(19)などで世界的に評価の高い湯浅政明監督が、古川 日出男による『平家物語 犬王の巻』を映画化。室町時代の京の都で、猿楽一座に生まれた異形の子・犬王は、平家 の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。絶妙な呼吸で歌と舞を交わして才能を開花させた二人は、乱世を生き抜くための唯一無二のエンターテイナーのバディとして、人々を熱狂させていく。歴史に消えた実 在の能楽師を基に、時を超えた友情を独創的な表現で描くミュージカル・アニメ。犬王役のアブちゃん(女王蜂)と友魚役の森山未來が圧倒的な演技力と歌唱力を披露。第80回ゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネートされた他、世界各国の映画祭で受賞やノミネートが相次ぎ、77回毎日映画コンクール大藤信郎賞など多数の映画賞を獲得。シッチェス・カタロニア国際映画祭2022では湯浅監督がタイムマシン賞も受賞している。

監督:湯浅政明 
脚本:野木亜紀子
製作:アスミック・エース/アニプレックス/コミックス・ウェーブ・フィルム/OCE/KDDI/サイエンスSARU/MIXI/Filmarks/日本出版販売

優秀アニメーション作品賞 かがみの孤城


【作品紹介】
本屋大賞など9冠に輝く辻村深月の同名ベストセラー小説を、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝 国の逆襲」(01)「河童のクゥと夏休み」(07)などの原恵一監督が、「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(13)「心が叫びたがってるんだ。」(15) などのA-1 Picturesの制作で映画化。学校での居場所をなくして引き籠っていた中学生のこころは、突然に光り出した自室の鏡の中に入り込む。そこは海に囲まれた洋風の孤城 の中に繋がっており、見知らぬ中学生たちが集められていた。彼ら7人は狼のお面を被った謎の少女から「期限内 に城に隠された鍵を見つけた一人にだけ、どんな願いも叶えよう」と告げられる。思春期の揺れる心を繊細に活写した青春冒険ファンタジーミステリー。声優には當真あみ、北村匠海、板垣李光人、麻生久美子、芦田愛菜、宮﨑あおいらが参加。第52回ロッテルダム国際映画祭のLimelight部門に邦画アニメで初めて正式出品された。

監督:原恵一 
脚本:丸尾みほ
製作:松竹/日本テレビ/アニプレックス/読売テレビ/ポプラ社/プロダクションI.G./中京テレビ/札幌テレビ/宮城テレビ/静岡第一テレビ/広島テレビ/福岡放送

優秀アニメーション作品賞 すずめの戸締まり


【作品紹介】
「君の名は。」(16)「天気の子」(19)の新海誠監督の最新作。九州の静かな町で叔母と二人で暮らす17 歳の女子 高校生・岩戸鈴芽は、災いを招く扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として日本中を旅する大学生・宗像草太に出会う。しかし草太が謎の白猫・ダイジンにより小さな椅子の姿に変えられてしまったことから、すずめは椅子になった 草太と共に、ダイジンを追いかけながら日本各地で次々に開き始めた不思議な扉を閉じる“戸締まりの旅”に出 る。新海監督作品ならではの圧倒的な映像美の中、様々な驚きと困難にぶつかっても進み続ける旅を通して、少女の解放と成長を描く冒険ロードムービー。声優には、すずめ役に原菜乃華、草太役にSixTONESの松村北斗をオーディションで抜擢し、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、神木隆之介、松本白鸚らも出演。新海監督は3作連続で 興収100億円超えの快挙を達成した。今回はRADWIMPSと陣内一真が優秀音楽賞も受賞している。

監督・脚本:新海誠
製作:「すずめの戸締まり」製作委員会

優秀アニメーション作品賞 ONE PIECE FILM RED


【作品紹介】
原作連載25周年の節目に公開された、国民的大人気漫画『ONE PIECE』の劇場版アニメ第15弾。世界中で愛される謎の歌姫・ウタが、音楽の島・エレジアで有観客LIVEを初開催。世界中からファンが集まり、ルフィたち麦わらの一味らの海賊たちに加え、海軍までもが様々な思惑で島に集結。LIVEが始まり世界中継でも盛り上がる中、ウタが赤髪のシャンクスの娘だという衝撃の素顔が、ルフィにより明かされる。原作者・尾田栄一郎が総合プロデュー サーを務め、監督はイベント上映された同原作初のアニメ化作品で監督デビューした『コードギアス』シリーズなどの谷口悟朗。音楽とLIVEシーンを効果的に物語と絡め、ウタの歌唱担当のAdoと中田ヤスタカら人気ア―ティストがコラボして制作した主題歌・劇中歌の大ヒットも新たなファン層獲得に貢献。シリーズ歴代記録を大幅更新する興収197億円をあげ、社会現象を巻き起こした。今回は音楽チームが特別賞も受賞。

監督:谷口悟朗 
脚本:黒岩勉
製作:フジテレビジョン/東映アニメーション/東映/集英社/バンダイ/バンダイナムコ エンターテインメント/ADKエモーションズ/電通
優秀監督賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞石川慶「ある男」


【最優秀受賞コメント】
監督って自分一人では何にもできなくて、演じてください、これを撮ってくださいと、わがままを言うだけの仕事だと思っています。それを皆さんが受けていただいたからこそ、自分は監督としてここに立てていると感謝しています。今日、特別賞の方々など諸先輩方の背中を見ていて、この賞は、先輩方が作ってくださった日本映画という大きな大河を、僕らが繋いでいくためのバトンなんだと受け止めております。ありがとうございました。

【受賞歴】初受賞
優秀賞小泉堯史「峠 最後のサムライ」


【受賞コメント】
映画作りにとって最も大切なものは、脚本と キャスティングと教えて頂きました。 『世ハ言ヲ載セテ以テ還リ、言ハ道ヲ載セテ以 テ還ル』と言われますが、歴史に生きた人々の 言葉を、スクリーンに生き生きと映してくださったキャストの皆様に心より感謝申し上げます。

【受賞歴】第38回「蜩ノ記」第26回「阿弥陀堂だより」第24回「雨あがる」で優秀賞受賞
優秀賞樋口真嗣「シン・ウルトラマン」


【受賞コメント】
今年度を代表する素晴らしい作品と並んで賞 をいただけることは身に余る光栄であります。 ウルトラマンという素晴らしいシリーズを生み 出し、継いで来ていただいた先輩の皆様、そし て共に戦った仲間……スタッフ、キャストの皆 様のおかげです。感謝の念が尽きません。あり がとうございました。

【受賞歴】第40回「シン・ゴジラ」で最優秀賞、第36回「のぼうの城」で優秀賞受賞。他に第19回「ガメラ 大怪獣空中決戦」で特別賞特殊技術賞受賞
優秀賞廣木隆一「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
キャスト、スタッフのみんなと受賞できたこと は嬉しいことだし応援していただいた皆さま のおかげだと思っております。ありがとうござ います。

【受賞歴】第41回「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で優秀賞受賞
優秀賞吉野耕平「ハケンアニメ!」


【受賞コメント】
この度は歴史ある賞をいただきありがとうござ います。チームでのものづくりの物語を、まさ に最高のチームで作らせていただくことがで きました。原作との出合い、人との出会いに感 謝したいと思います。この映画が、いつか誰か の新しい出会いへと繋がっていくことを願って います。

【受賞歴】初受賞
優秀脚本賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞向井康介「ある男」


【最優秀受賞コメント】
まず、この作品に誘っていただいた石川慶監督と、この原作を委ねてくださった原作者の平野啓一郎さんに感謝したいと思います。毎日、部屋にこもって書いている職業なもので、あまりこういうところに慣れていないのですが、こうやって皆さんの顔を見ながら立たせていただくと、自分も映画人の一人として居ていいんだなと、改めて教えられたというか、思うことができて、すごく嬉しいです。ありがとうございました。

【受賞歴】初受賞。他に本作で第44回ヨコハマ映画祭脚本賞受賞
優秀賞小泉堯史「峠 最後のサムライ」


【受賞歴】第26回「阿弥陀堂だより」で優秀賞受賞
優秀賞橋本裕志「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
思いがけない受賞に驚いています。長い時間 をかけて完成に至った作品ですので喜びもひとしおです。“生まれ変わり”という幻想と現実 が交差する世界を丁寧に構築したスタッフの 皆様、そこに横たわる失意と希望を素敵に見 事に描き出したキャストの皆様、そして劇場に 足を運んで下さった多くの皆様に、ただただ感謝です。

【受賞歴】初受賞
優秀賞早川千絵「PLAN 75」


【受賞コメント】
長いトンネルを抜けようやく書き上げた脚本に 評価の光を当ててくださり、ありがとうございます。この脚本に命を吹きこんでくれた俳優の皆さん、執筆の過程で助言をくださった全ての方 に感謝します。初めての読み合わせの日、自分の書いたセリフを倍賞千恵子さんが読んでくださった時の感激たるや。一生忘れません。

【受賞歴】初受賞。他に本作で第77回毎日映画コンクール脚本賞、第44回ヨコハマ映画祭森田芳光メモリアル新人監督賞、第75回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール特別表彰
優秀賞政池洋佑「ハケンアニメ!」


【受賞コメント】
「刺され、誰かの胸に」 そんな思いで書いた脚本が、想像よりも遥かに多くの人の胸に刺さり、応援してもらい、偉 大な賞を頂けました。ありがとうございます。劇中の王子監督の台詞。「書くことの壁は、書くことでしか越えられない」という言葉を忘れず、今後はオリジナル作品も含め世界中の誰かの胸に刺さる話を作っていきます。

【受賞歴】初受賞
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞妻夫木聡「ある男」


【最優秀受賞コメント】
10年前位に「悪人」で最優秀主演男優賞をいただきましたが、当時は舞台出演中のため中継での受賞でした。今回はこうして実際にいただくことができ、本当に嬉しいです。かつて山田洋次監督に「『ある』っていうことが大事なんだよ」と言われた言葉を頼りに、存在するということを大事にして、この役を務めさせていただきました。僕は日本映画が大好きです。日本映画を盛り上げていけるように、皆さんと一緒に仕事ができたらと思っています。

【受賞者紹介】
3度目となる石川慶監督作品への主演で、人権派弁護士の城戸章良に扮した。戸籍を偽り偽名のまま亡くなったある男の身元調査を行い、その真相と戸籍交換の実態に迫る一方、順風満帆に見えていた城戸の人生も、在日韓国人三世という出自に対する偏見に苦しめられてきたことが明らかになっていく。スクリーン映えする佇まいと圧倒的存在感で作品を牽引。城戸自身の内面の葛藤や苛立ちも表現しつつ、物語の水先案内人として観客を作品世界に引き込んだ。

【受賞歴】第34回「悪人」で最優秀主演男優賞、第40回「怒り」で最優秀助演男優賞受賞。他に優秀主演男優賞を3回、優秀助演男優賞を2回、第25回新人俳優賞受賞
優秀賞阿部サダヲ「死刑にいたる病」


【受賞者紹介】
「彼女がその名を知らない鳥たち」(17)以来となる白石和彌監督作品で、死刑判決を受けている連続殺人犯の榛村大和に扮した。残酷な方法で少年少女の命を奪ってきたが、うち一件だけは冤罪だと主張し、かつて接点のあった大学生・筧井雅也に証明を依頼。言葉巧みに唆し、手のひらで転がしていく。知能が高く、人当たりが良く、清潔感もあり、冷酷無情な殺人鬼とわかってもなお人を惹きつける榛村を怪演。その闇の深さを象徴したような漆黒の瞳も、強烈な印象を残した。

【受賞歴】第31回「舞妓 Haaaan!!!」で優秀主演男優賞初受賞
優秀賞大泉 洋「月の満ち欠け」


【受賞者紹介】
家族思いで、良き父、良き夫である小山内堅に扮した。幸せな日々を送っていたが、不慮の事故で妻子を失い、仕事も辞め青森の実家に戻ることに。失意の中で、亡き娘・瑠璃が見ず知らずの女性・正木瑠璃の生まれ変わりだったのではないかと聞かされ困惑し、苦悩する。20代から50代まで、各年代の小山内を丁寧に演じ分け、物語に説得力を与え、人生の明暗もスクリーンに映し出した。明るい笑顔が印象的だった小山内が、笑顔を失い、悲しみに沈む姿は見る者の涙を誘う。

【受賞歴】第41回「探偵はBARにいる3」第39回「駆込み女と駆出し男」第35回「探偵はBARにいる」で優秀主演男優賞受賞
優秀賞二宮和也「ラーゲリより愛を込めて」


【受賞者紹介】
第二次世界大戦終了後、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に不当に抑留された日本人は約60万人もいた。辺見じゅんのノンフィクション『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』を原作に、瀬々敬久監督が映画化した本作で演じたのは、そんな抑留者の一人で実在の人物である山本幡男。ラーゲリでの理不尽な扱いにも屈せず、信念を貫き通す強さを持ち、帰国の日が必ず来ると信じて仲間を励まし続ける。絶望の中の光となるような人物を抑制された確かな演技で、観客の心に深く訴えかけた。

【受賞歴】第39回「母と暮せば」で最優秀主演男優賞、第44回「浅田家!」で優秀主演男優賞、第42回「検察側の罪人」で優秀助演男優賞受賞
優秀賞松坂桃李「流浪の月」


【受賞者紹介】
19歳のとき、家に帰れない事情を抱えた少女・家内更紗を部屋に招き入れたため、女児誘拐監禁事件の犯人となる佐伯文を演じた。ロリコンと呼ばれるが、大人の女性に魅力を感じないのには訳があった。絶対に人に明かさないと誓った、とあるコンプレックスとトラウマを抱え、身を隠すようにひっそりと生きてきた文。深い絶望と諦観を肉体の奥に忍ばせ、自分にとって特別な存在である更紗への優しさと慈愛をにじませる。一筋縄ではいかない繊細な感情を表現し、見る者を圧倒した。

【受賞歴】第43回「新聞記者」で最優秀主演男優賞、第42回「孤狼の血」で最優秀助演男優賞、第45回「孤狼の血 LEVEL2」で優秀主演男優賞、第36回新人俳優賞受賞
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞岸井ゆきの「ケイコ 目を澄ませて」


【最優秀受賞コメント】
三宅組の誰一人が欠けてもここに立てなかったので、支えてくださった皆様、そして原案の小笠原恵子さんに感謝します。この作品には私が見たことのない景色をたくさん見せてもらいました。私は映画を観ることも演じることも大好きです。昔の映画を観た時に「これを観るため今までがあったのだ」と思うことがあり、映画はそういう風にずっと見つけてもらうのを待っていて、まだ出会う前の誰かの為に生きることができるのかなと思っています。

【受賞者紹介】
聴覚障害のある実在のプロボクサーの生き方に着想を得た三宅唱監督作品で、主人公・小河ケイコを演じた。自分を追い込みボクシングで結果を残してきたものの、不安や恐怖からモチベーションを失いかけるケイコが、再びリングに上がり戦うまでの心の動きや葛藤を、声ではなく、手話やその瞳、肉体で語り、見る者の目を釘付けにする。厳しいトレーニングを積んだというボクシングシーンも圧巻の迫力で、真っ直ぐなヒロインを体当たりで演じた。

【受賞歴】第43回新人俳優賞受賞。本作などで他に第96回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、本作で第77回毎日映画コンクール女優主演賞受賞
優秀賞のん「さかなのこ」


【受賞者紹介】
さかなクンの自伝的エッセイを沖田修一監督がメガホンを取って映画化した作品で、さかなクンがモデルの主人公・ミー坊に扮した。学校の勉強は苦手でも、魚に関することは誰よりも詳しくて、夢はお魚博士になること。仕事では失敗ばかりだが、周りの人たちに温かく見守られ、マイペースに自分の道をまい進する。天真爛漫で、とにかくお魚が大好きなミー坊を、性別の垣根を超え、キラキラした瞳と屈託のない笑顔でのびのびと体現し、観客を魅了した。

【受賞歴】第38回新人俳優賞受賞
優秀賞倍賞千恵子「PLAN 75」


【受賞者紹介】
75歳以上なら誰でも生死を選択できる制度「プラン75」が施行された架空の日本を舞台に、78歳の主人公・角谷ミチを演じ、約9年ぶりに映画単独主演を務めた。夫を亡くし、誰の手も借りず慎ましく生きてきたが、高齢を理由に仕事を失い、さらに住んでいる団地の取り壊しも決まってしまう。生きる意欲と諦めの間を揺れ動きながら人生の選択をするミチを、真摯に演技じ、さすがの存在感を発揮した。深い孤独と強い意思を感じる眼差し、佇まいも強く印象に残る。

【受賞歴】第4回最優秀主演女優賞受賞。他に優秀主演女優賞を3回、助演女優賞2回、主演女優賞と助演女優賞のノミネートを各1回、第6回で特別賞受賞。本作で他に第44回ヨコハマ映画祭と第35回日刊スポーツ映画大賞の主演女優賞
優秀賞広瀬すず「流浪の月」


【受賞者紹介】
李相日監督と二度目のタッグで演じたのは、小学校5年生のとき、女児誘拐監禁事件の被害者となった女性・家内更紗。だが、更紗にとっては犯人とされた佐伯文と過ごした時間が一番自由で幸せだった。事件後の世間からの目線や、複雑な家庭環境のせいで感情を押し殺すことに慣れ、控えめな性格に育ったが、ぶれない芯を持つヒロインを好演。犯罪者となった文への申し訳なさを抱きつつ、彼の幸せを何よりも願い、純粋な愛情を注ぐ更紗を渾身の演技で見せた。

【受賞歴】第41回「三度目の殺人」で最優秀助演女優賞受賞。他に優秀主演女優賞を2回、優秀助演女優賞を2回、第39回で新人俳優賞受賞
優秀賞吉岡里帆「ハケンアニメ!」


【受賞者紹介】
公務員を辞め、夢だったアニメ業界に転職し、『サウンドバック 奏の石』で念願の監督デビューを果たした斎藤瞳役。初監督作で次々と壁にぶつかるが、自分が納得できる作品を作るため、決して妥協しない。負けん気が強く、ひたむきで、いつも全力。ボロボロになっても闘い続けるうちに周囲の信頼も得て、監督として逞しく成長していく姿は見る者の胸を熱くする。夢に向かって頑張るすべての人の背中を押す、誰もが応援したくなるヒロイン像をパワフルに演じ切った。

【受賞歴】第43回新人俳優賞受賞。本作などで他に第35回山路ふみ子女優賞、第44回ヨコハマ映画祭主演女優賞受賞
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞窪田正孝「ある男」


【最優秀受賞コメント】
この作品で出会った石川慶監督に「役の本当の底の底の本人の中身のもっと深い部分を見つめて撮りたい」と言われ、裸でいるよりも恥ずかしいほど全部を剥き出して役にぶつかり、それを安藤サクラさんが受け止めてくれて、すごく幸せな家族像を描いていただきました。そういう幸せって一瞬だけど、その一瞬の人生を描いた作品でキーになる大役をやらせてもらえたことは、この仕事をしていて本当に良かったなと、心から感謝しています。

【受賞者紹介】
妻子と幸せに暮らしていたが、不慮の事故でこの世を去った後、別人の戸籍で生きていたことが判明する男・Xを演じた。どこかミステリアスで影のある一面を繊細に表現する一方、回想シーンでは自分の体を痛めつけるためにボクシングに没頭した過去や、幼い頃から抱えてきた生きづらさや苦しみを生々しく体現していく。身について回るレッテルを剥がし、負のスパイラルを断ち切る方法はあったのか。Xをめぐる人生の理不尽さが見る者の胸を締め付ける。

【受賞歴】初受賞。本作で他に第77回毎日映画コンクール男優助演賞受賞
優秀賞柄本佑「ハケンアニメ!」


【受賞者紹介】
吉岡里帆演じる斎藤瞳監督のデビュー作『サウンドバック 奏の石』を手掛ける敏腕プロデューサー・行城理に扮した。スタッフへのダメ出しも容赦なく、チームの憎まれ役的存在に徹しているが、物語後半では、その真意と人となりが明らかに。仕事に対して誰よりも厳しく、作品に対して誠実な行城を、クールな中に熱さを秘めた演技で表現。ラストにはお茶目な一面も見せる、愛すべきキャラクターを好演し、本作をより魅力的なものにしている。

【受賞歴】第43回「アルキメデスの大戦」で優秀助演男優賞初受賞。本作などで他に第44回ヨコハマ映画祭と第35回日刊スポーツ映画大賞の助演男優賞受賞
優秀賞坂口健太郎「ヘルドッグス」


【受賞者紹介】
原田眞人監督が岡田准一と3度目のタッグを組んだ本作で、ヤクザ組織の精鋭部隊に所属する室岡秀喜役。キレると手に負えない、狂気を秘めた要注意人物を感情豊かに演じ、激しいアクションシーンも披露した。岡田扮する主人公・兼高昭吾とは相性抜群のバディ関係だが、兼高がヤクザのふりをした潜入捜査官だとは知らず、二人で組織内をのし上がる。兼高への信頼の眼差しや無邪気な表情から、室岡の純粋さも垣間見せ、クライマックスに切なさを与えた。

【受賞歴】第40回新人俳優賞受賞
優秀賞目黒蓮「月の満ち欠け」


【受賞者紹介】
有村架純演じる正木瑠璃と運命的な出会いを果たし、一途に愛する青年・三角哲彦に扮した。傷つき傷つけることを恐れて、三角との恋に一歩踏み出すことができない既婚者の瑠璃に対し、不器用ながらも真っ直ぐに想いをぶつけていく。ピュアで若さ溢れる三角らしい、駆け引きのない愛情表現を素直に演じて、純度の高いラブストーリーをよりエモーショナルなものにしている。また、27年後のシーンも見事に演じ切り、役者としての高いポテンシャルを感じさせた。

【受賞歴】初受賞。今回は他に新人俳優賞も受賞。本作などで他に第96回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞受賞
優秀賞横浜流星「流浪の月」


【受賞者紹介】
広瀬すず扮する家内更紗の同棲中の恋人・中瀬亮を演じた。母親にまつわるトラウマのせいで、依存してくれそうな女性ばかりを好きになる、独占欲が強いタイプ。更紗が佐伯文と再会したと知ると、不安定になり、なりふり構わず引き裂こうとする。更紗に激高し、容赦なく暴力を振るうなど、挑戦的なシーンにも全身全霊で挑み、愛に飢えたキャラクターを熱演。恋人との不本意な別れに抗う男をリアルに、無様に演じ切り、新境地を開いた。

【受賞歴】第43回新人俳優賞受賞。本作で他に第47回報知映画賞助演男優賞
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞安藤サクラ「ある男」


【最優秀受賞コメント】
私はこの現場で撮影現場に居ることが何よりもすごく好きなんだと、はっきりと思えたので、また新たな現場に向かうことができています。大好きな撮影現場に行くことが自分の人生ですごく大切な時間になると気付いたんです。ただ、私にとって子育てと撮影の両立というのは、いまのところうまくできない。いまは悩みつつ、その都度、家族で会議しながら、みんなで協力し合い、また頑張れたら、大好きな現場に戻れたらいいなと思っています。

【受賞者紹介】
「万引き家族」(18)以来、約4年ぶりの本格的な映画出演となった本作で、再婚した夫が偽名を使っていたことを彼の死後に知り、かつて世話になった弁護士に身元調査を依頼する妻・里枝を演じた。過去を隠していた夫に対して一度は疑心暗鬼になるも、最終的には自分が感じたこと、自分の目で見たことを信じる。しなやかで強く、凛とした女性を、温かく包容力のある演技で見せた。

【受賞歴】第42回「万引き家族」第39回「百円の恋」で最優秀主演女優賞、 第38回「0.5ミリ」で優秀主演女優賞受賞
優秀賞有村架純「月の満ち欠け」


【受賞者紹介】
「ストロボ・エッジ」(15)「夏美のホタル」(16)以来、3度目のタッグとなる廣木隆一監督作品で、目黒蓮演じる大学生・三角哲彦と許されない恋に落ちる正木瑠璃役。突然どこかに消えてしまいそうな危うさを秘めた、謎めいた大人の女性を魅力的に演じ、切ないラブストーリーの中でひときわ存在感を放っている。

【受賞歴】第45回「花束みたいな恋をした」で最優秀主演女優賞、第39回「映画 ビリギャル」で優秀主演女優賞と新人俳優賞受賞
優秀賞尾野真千子「ハケンアニメ!」


【受賞者紹介】
天才監督・王子千晴の新作アニメ『運命戦線リデルライト』のプロデューサー・有科香屋子役。王子の才能に惚れ込み、作家性を守るために覚悟を決めて、全力を注ぐ。献身的で仕事熱心な有科をときにカッコよく、ときにチャーミングに演じ、『サウンドバック 奏の石』チームの強力なライバルとして、作品を盛り立てている。

【受賞歴】第41回「ナミヤ雑貨店の奇蹟」第37回「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」で優秀助演女優賞、第37回「そして父になる」で優秀主演女優賞受賞。他に「20歳のソウル」などで第47回報知映画賞助演女優賞受賞
優秀賞清野菜名「ある男」


【受賞者紹介】
本物の谷口大祐の元彼女で、弁護士の城戸が話を聞く、後藤美涼に扮した。別れ話もせずに突然目の前から消えてしまい、安否もわからない大祐のことを今も想い、引きずっている。ふとした瞬間に寂し気で憂いのある表情を見せる美涼を可憐に演じ、強い印象を残した。切ない笑顔と健気な姿が、大祐の人柄や二人で過ごした日々をも想像させる。

【受賞歴】初受賞。本作などで他に第35回日刊スポーツ映画大賞助演女優賞受賞
優秀賞清野菜名「キングダム2 遥かなる大地へ」


【受賞者紹介】
ベストセラー漫画を映画化し、19年の実写邦画作品ナンバーワンヒットを記録した「キングダム」の続編で、原作でも人気のキャラクター・羌瘣役。独特のリズムで敵を斬り倒していく剣術“巫舞”をはじめ、羌瘣ならではの人間離れしたアクションを鮮やかに体現する一方、辛い過去を持つ羌瘣の孤独や哀しみを繊細な目の演技で見せた。圧倒的な説得力をもって羌瘣として存在し、作品に貢献している。
優秀賞永野芽郁「母性」


【受賞者紹介】
湊かなえによる120万部突破の同名ベストセラー小説を、廣木隆一監督が映画化した本作で、母の愛情に飢えて生きてきた娘・田所清佳を演じた。娘を愛せない母から愛してもらいたく、正しいことをしようと頑張り、深く傷ついてもきた。生真面目な清佳の痛々しく切実な姿を、潤んだ瞳と迫真の演技でリアリティをもって体現。見る者に強いインパクトを残した。

【受賞歴】第45回「そして、バトンは渡された」で優秀主演女優賞初受賞
優秀賞松本穂香「“それ”がいる森」


【受賞者紹介】
中田秀夫監督によるホラー映画に初出演。主人公の息子・一也が転入するクラスの担任で、明るく生徒思いの小学校教師、北見絵里に扮した。学校近くの森で生徒が行方不明になるなど、不穏な空気が漂うストーリーにおいて、唯一ほっとできる存在を好演。得体のしれない“それ”が迫りくるクライマックスでは、鬼気迫る演技で観客の恐怖心を煽った。

【受賞歴】初受賞
優秀音楽賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞RADWIMPS/陣内一真「すずめの戸締まり」


【最優秀受賞コメント】
陣内さんと初めて新海誠作品でご一緒し、とてつもない勉強をさせてもらい、映画音楽はまだまだ面白いことがたくさんできるんだなと痛感させていただきました。[RADWIMPS/野田] 
今回の受賞は世界中から参加してくださった皆さんのお力添えがあったからこそだと信じており、この場を借りてお礼申し上げます。[陣内]

【受賞歴】
RADWINPS:第43回「天気の子」第40回「君の名は。」で最優秀賞受賞
陣内一真:初受賞
優秀賞池頼広「ハケンアニメ!」


【受賞コメント】
このような晴れがましい場にまた呼んでいただきとても光栄です。「ハケンアニメ!」には実写用の音楽と2つの異なるアニメ作品の音楽、そしてカントリー調のヴォーカル曲を作曲しています。楽しくも大変な作業でしたが報われた気がしております。これを機会にまた「ハケンアニメ!」、そして私の音楽が多くの皆様のもとに届けば幸いです。

【受賞歴】第35回「探偵はBARにいる」で初受賞
優秀賞髙見優「耳をすませば」


【受賞コメント】
今作品に関われたこと、そして優秀音楽賞をいただけたこと、大変光栄に思います。自分にとっても子供の頃の純粋な気持ち、音楽を楽しむという気持ちを思い起こさせてくれる素晴らしい作品でした。平川雄一郎監督をはじめ、関係者の皆様に感謝しております。

【受賞歴】初受賞
優秀賞Cicada「ある男」


【受賞コメント】
この度の受賞を大変光栄に思います。台湾でコロナ禍の状況が最も厳しかった時期に、私達 はこの楽曲制作に全力で臨み、すばらしい音楽制作の旅を経験できました。毎週監督とオン ラインで議論を交わし、多くの学びがありました。石川慶監督、松竹の皆さま、FLAU、Sophie Chiang、そして「ある男」に参加された全ての皆様に感謝致します。

【受賞歴】初受賞
優秀賞FUKUSHIGE MARI「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
このような素敵な映画の音楽に挑戦させていただき、嬉しく思っております。剰え賞までいただけるとは夢にも思っておりませんでした。私 ひとりの精一杯の力は微々たるもので、撮影現場でのキャストの方々の演技から得たものや、支えてくださった音楽制作チーム、そして廣木監督はじめ、いろんな方とのコミュニケーションによって良い結果となったと思います。ありがとうございます。

【受賞歴】初受賞
優秀撮影賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞市川修/鈴木啓造「シン・ウルトラマン」


【最優秀受賞コメント】
市川:一人では出来なくて、カメラが何台もあり、いろんな方に撮っていただいたので、皆さんのお力がないとこの賞はとれなかったと思います。

【受賞歴】初受賞

【最優秀受賞コメント】
鈴木:僕は最初の現場が円谷プロさんの作品で、ずっと特撮の現場でやってきました。だから今回の映画で、そしてずっと仕事を見ていただいていた樋口真嗣監督の作
品でいただけたことに感無量です。

【受賞歴】初受賞
優秀賞上田正治/北澤弘之「峠 最後のサムライ」


【受賞コメント】
上田:自然を追う仕事は大変だが面白い。時代 に合う場所を探す、これが一仕事です。

【受賞歴】第24回「雨あがる」第17回「まあだだよ」「虹の橋」第15 回「八月の狂詩曲(ラプソディー)」で最優秀賞、第38回「蜩ノ記」第 26回「阿弥陀堂だより」第14回「夢」第9回「乱」で優秀賞受賞

【受賞コメント】
北澤:多くの素晴らしい作品の中から今回選んでいただき大変光栄に思います。仕事としては個人的に これが最後のフィルム撮影になるかもしれないと感じながら過ごしました。またコロナの影響で公開が 何回か延びましたが、観客の皆さんに楽しんでいた だけたなら幸いです。ありがとうございました。

【受賞歴】第38回「蜩ノ記」で初受賞
優秀賞近藤龍人「ある男」


【受賞コメント】
スタッフ・キャストそれぞれが脚本に向き合い、アイデアを出して、監督を中心に映画を形 にしていく。映画作りに関わることができるよろこびを感じながら撮影していました。カメラマンとして、携わったスタッフ・キャストの狙いや思いをカメラでとらえ、スクリーンに残すことができたと評価されたこと、ほんとうに嬉しく思います。

【受賞歴】第42回「万引き家族」で最優秀賞受賞。他に本作で第44回ヨコハマ映画祭撮影賞受賞
優秀賞佐光 朗「キングダム2 遥かなる大地へ」


【受賞コメント】
前作の「キングダム」では、一人の観客として応援していました。今回はスタッフとして参加し、このような素敵な賞を頂きとても嬉しいです。私たちを呼んでくださった製作陣の皆さま、受け入れてくださった監督、スタッフ、キャストの皆さま有り難うございます。

【受賞歴】第26回「ピンポン」で初受賞
優秀賞ホン・ギョンピョ「流浪の月」


【受賞コメント】
「流浪の月」が優秀撮影賞に選ばれ、わくわくする嬉しい新年を迎えることが出来ました。一昨年の夏、李相日監督、広瀬すずさん、松坂桃李さんをはじめとする日本のキャスト・スタッフの皆さんと過ごした、苦労がありながらも楽しかった現場を思い出します。皆さんと喜びをわかち合いたいと思います。カムサハムニダ。

【受賞歴】初受賞
優秀照明賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞吉角荘介「シン・ウルトラマン」


【最優秀受賞コメント】
関わってくださったすべてのスタッフとキャストの皆さんに感謝を申し上げます。「平成ガメラ」シリーズなどからちょこちょこ特撮作品をやらせていただいていましたが、「シン・ゴジラ」の評価がすごく高かったのでプレッシャーがありました。でも何とかチームワークよくできたので、とてもよかったです。ありがとうございます。

【受賞歴】第29回「蝉しぐれ」第28回「半落ち」第24回「十五才 学校Ⅳ」で優秀賞受賞
優秀賞山川英明「峠 最後のサムライ」


【受賞コメント】
“光には意思と表情がある”を念頭において、今回のフィルムでの撮影に臨みました。モニターの無い現場の愛おしさと同時に、しびれる様な緊張に包まれた毎日でした。監督はじめ、この映画に関わった全ての皆様に感謝申し上げます。

【受賞歴】第38回「蜩ノ記」第26回「阿弥陀堂だより」第22回「カンゾー先生」で優秀賞受賞
優秀賞宗賢次郎「ある男」


【受賞コメント】
スタッフ、キャストが石川監督を中心にワンチームになって作った作品が評価されて大変 嬉しく思っています。関わった全ての関係者と喜びたいです。平野啓一郎さんの原作も大好きで、オファーをいただき脚本を読んだ時の興奮が忘れられません。今後も日本映画が盛り上がるよう我武者羅に精進していきます。ブラボー!!

【受賞歴】第45回「すばらしき世界」第43回「蜜蜂と遠雷」第42回「散り椿」で優秀賞受賞
優秀賞加瀬弘行「キングダム2 遥かなる大地へ」


【受賞コメント】
「キングダム」Ⅰの大ヒットの後、Ⅱからの参加 でプレッシャーと責任を感じながらの受賞で大変嬉しく思います。コロナ禍もあり多くの困難を乗り越えられたのもこのチームのパワーの賜物だと思います。この作品に巡り会えたことに感謝します。

【受賞歴】第27回「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」で初受賞
優秀賞中村裕樹「流浪の月」


【受賞コメント】
冒頭、嵐の中の撮影で雲の隙間の光が画面に流れる奇跡的なショットが撮れ、それに象徴さ れるように李監督の元、キャスト&スタッフが 困難に立ち向かい僅かな光を掬い取った作品です、有難うございます。

【受賞歴】第28回「世界の中心で、愛をさけぶ」で最優秀賞、第40回「怒り」第36回「あなたへ」第29回「北の零年」第29回「春の雪」第20回「スワロウテイル」第17回「水の旅人 侍KIDS」「はるか、ノスタルジィ」で優秀賞受賞
優秀美術賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞林田裕至/佐久嶋依里「シン・ウルトラマン」


【最優秀受賞コメント】
林田:観てくださった方、投票してくださった方、ありがとうございます。特撮や視覚効果の部分もあわせての賞だと思っています。

【受賞歴】第40回「シン・ゴジラ」第34回「十三人の刺客」で最優秀賞、第35回「一命」で優秀賞受賞

【最優秀受賞コメント】
佐久嶋:この作品はコロナ禍以前、2019年の撮影でしたので、いま思うと撮影環境というものが変わってきているように思います。映画業界全体がいい方向に進んでくれることを願っています。

【受賞歴】第40回「シン・ゴジラ」で最優秀賞受賞
優秀賞磯見俊裕/露木恵美子「ラーゲリより愛を込めて」


【受賞コメント】
磯見/露木:来る日も来る日も早朝から深夜までの雪掻き。指先は凍り痛く辛かった。凍てつく夜中、雪原のオープンセットに響き渡る捕虜のみんなの歌声が耳に。胸は熱くなり、こんな場・瞬間に身を置ける事の幸せを強く思いました。映画の現場はやっぱり素敵だ。この作品に出合えた事、とても感謝致します。

【受賞歴】
磯見:第44回「罪の声」第40回「64-ロクヨン-前編」第28回「血と骨」で優秀賞受賞
露木:第44回「罪の声」で初受賞
優秀賞小澤秀高「キングダム2 遥かなる大地へ」


【受賞コメント】
日本映画では今まで映像化されたことのない、紀元前中国の秦時代の国家間戦争。その表現に挑むスタッフに「コロナ」禍が押し寄せました。準備を進めていた中国ロケは全て中止となり、国内撮影での美術部の負担は膨大になりました。他パートも同様です。美術部の苦闘を支えて頂いた、全てのスタッフと美術関連業者の皆様に心より感謝申し上げます。

【受賞歴】第21回「失楽園」で初受賞
優秀賞神田諭「ハケンアニメ!」


【受賞コメント】
この度は権威ある賞に選出していただきありがとうございます。「ハケンアニメ!」は、美術部、装飾部、衣装部、メイク部からなる美術パート一丸となり作り上げた作品だったので、こうして評価して頂いたことを大変嬉しく思います。

【受賞歴】初受賞
優秀賞我妻弘之「ある男」


【受賞コメント】
大きく分けて安藤さん演じる里枝が住む宮崎 パート、妻夫木さん演じる城戸の東京パート、それぞれ時間を掛けて丁寧に作り込みました。装飾の森公美さん・スタイリストの高橋さやかさん・メイクの酒井夢月さんなど美術・装飾・衣装・メイクが一丸となって作りました。美術パート代表として優秀美術賞に選出して頂き本当にありがとうございました。

【受賞歴】第44回「ミッドナイトスワン」で初受賞
優秀録音賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞小川武「ある男」


【最優秀受賞コメント】
表に出るのが得意ではないのですが、まずはこの作品に呼んでいただいた石川慶監督にお礼を申し上げます。それと、いつも僕の相棒の音響効果の中村佳央さんに感謝します。そしてもう一人、僕の師である録音技師の久保田幸雄さんに感謝したいと思います。その方の現場に対する演出の向き合い方が、いまの僕のすべてです。

【受賞歴】初受賞
優秀賞田中博信/山田陽「シン・ウルトラマン」


【受賞コメント】
田中:幼い頃から見ていたウルトラマンで受賞出来たこと嬉しく思います。色々初めての事も有りましたが楽しく参加させていただきました。本当にありがとうございます。

【受賞歴】初受賞

山田:「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン」と続くシンシリーズ3本目、全ての作品にお客様の高い評価をいただき感謝しかありません。このシリーズまだまだ続く模様です。この賞を励みに一層精進して参ります。

【受賞歴】第40回「シン・ゴジラ」で最優秀賞受賞
優秀賞深田晃「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
廣木組に参加して30年以上。廣木作品は2022年に5本が公開され、どれか一作品はと期待していました。この作品での受賞大変嬉しく、驚いています。録音助手さん、効果部さん、 仕上げスタッフ、音楽チーム、音関係スタッフ皆さんに感謝申し上げます。

【受賞歴】初受賞
優秀賞矢野正人「峠 最後のサムライ」


【受賞コメント】
この度は、栄誉ある賞に選出していただき大変光栄です。会員の皆様に厚く御礼申し上げます。緊張感のある現場、気心知れたスタッフ、小泉組「峠 最後のサムライ」の作品に参加でき、楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。

【受賞歴】第41回「関ヶ原」で最優秀賞、第39回「日本のいちばん長い日」第38回「紙の月」第38回「蜩ノ記」第36回「わが母の記」第34回「告白」第32回「クライマーズ・ハイ」で優秀賞受賞
優秀賞横野一氏工「キングダム2 遥かなる大地へ」


【受賞コメント】
Part1、2と連続しての受賞、大変光栄に思います。

【受賞歴】第43回「キングダム」で初受賞
優秀編集賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞石川慶「ある男」


【受賞コメント】
実は昨日、ソフト化用のメイキング素材をいただいたのですが、結構カットしたシーンがいっぱい入っていて、全部本当に良かったんです。なぜ自分はカットしたんだろうと、今日はそういう思いでこの会場に来ていました(笑)。本当に全部のシーンが素晴らしくて、楽しい編集作業でした。この作品でいただけて、本当に嬉しいです。

【受賞歴】初受賞
優秀賞阿賀英登「峠 最後のサムライ」


【受賞コメント】
小泉組初めてのデジタル編集でした。私自身も久しぶりのデジタルで少々の戸惑いがありました。フィルム編集に多分に未練はありましたが、効率は上がったと思います。大きな画面を想定して、テレビ的な編集に成らないように心がけました。

【受賞歴】第38回「蜩ノ記」第26回「阿弥陀堂だより」第24回「雨あがる」で優秀賞受賞
優秀賞上野聡一「ハケンアニメ!」


【受賞コメント】
選んでいただき、ありがとうございます。楽しく歓びに満ちた制作期間でした。その歓びが手前味噌にならず「刺さった」ことに安堵しています。受賞をきっかけにこの作品が少しでも多くの人に知ってもらえると嬉しいです。

【受賞歴】第44回「浅田家!」第37回「清須会議」第36回「のぼうの城」第35回「ステキな金縛り」第33回「ゼロの焦点」第32回「ザ・マジックアワー」第31回「眉山 -びざん-」第30回「THE有頂天ホテル」第26回「ピンポン」第26回「突入せよ!『あさま山荘』事件」で優秀賞受賞
優秀賞栗原洋平/庵野秀明「シン・ウルトラマン」


【受賞コメント】
栗原:「臥薪嘗胆」「粒粒辛苦」そして「面目躍如」、今回、私の知った言葉です。「何をどのように見せるのか」を細やか且つ大胆に定める庵野さんの編集を楽しんで下さい。本作品に、ご尽力下さった皆様、ご覧下さった皆様に感謝申し上げます。

【受賞歴】
栗原:初受賞
庵野:第40回「シン・ゴジラ」で最優秀編集賞
優秀賞野本稔「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
素敵な画と音を作り出していただいた廣木組のキャスト、スタッフの皆さまと映画を見ていただいたお客さまのおかげです。編集中は普段通りに試行錯誤しながら進んでいったと思います。本当にありがとうございました。

【受賞歴】初受賞
優秀外国作品賞
(C)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
最優秀賞トップガン マーヴェリック


【最優秀受賞コメント】
もう感無量です。この映画では“追いトップガン”という現象が生み出されたことが本当に嬉しくて、何度も劇場に足を運んでくださったお客様が与えてくださった賞だと思っております。本当にありがたいです。外国映画も、もっともっと日本映画に負けないように、また今年も頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございます。[山﨑 敏/東和ピクチャーズ]

【作品紹介】
トム・クルーズ主演の大ヒット作「トップガン」(86)の36年ぶりの続編。アメリカはかつてない世界危機を回避するための絶対不可能な“極秘ミッション”に直面。その達成のため、エリート・パイロットを養成する海軍戦闘機兵器学校“トップガン”卒業生の精鋭からさらに選抜されたチームに教官として加わったのは、トップガン史上最高のパイロットながら、常識破りな性格で不遇な立場にあった“マーヴェリック”ことピート・ミッチェル大佐だった。新世代トップガンたちを鍛え上げ、共にこのミッションに命を懸けるマーヴェリックだが、タイムリミットはすぐそこに迫っていた。究極のリアルさを求め、実際の戦闘機にIMAXカメラを搭載して撮影された、大興奮のスカイ・アクション超大作。第95回米アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネート。日本では興収135億円を超え、22年公開実写映画&洋画のトップのとなり、世界興収は14億ドル以上を稼ぎ出している。

原題:Top Gun: Maverick 
監督:ジョセフ・コシンスキー 
脚本:アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリー 
配給:東和ピクチャーズ
優秀賞アバター:ウェイ・オブ・ウォーター


【作品紹介】
驚異の3D映像で世界を席捲した、全世界歴代興行収入No.1のジェームズ・キャメロン監督作「アバター」(09)の13年ぶりの続編。神秘の星パンドラで、森の民オマティカヤ族の一員となった元海兵隊員のジェイク・サリーは、ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、子供たちと平和に暮らしていた。しかし、10数年の時を経て、人類が侵攻を再開。ジェイクは一族の戦士たちを率いてゲリラ戦で対抗するが、因縁の敵が自身と家族を狙っていると 知り、神聖な森を離れることを決断。ジェイクの一家は美しい海辺の楽園で暮らす海の民メトカイヤ族の元へ身を寄せるが、そこにも人類の侵略の手が迫る。前作の森から舞台を海に移して家族の物語を描き、全てがさらに進化した驚愕の映像体験に没入できるSFアクション超大作。22年の世界興行収入No.1作品で、20億ドルを超えた全世界興収は現在も伸び続けている。第95回米アカデミー賞で作品賞を含む4部門にノミネート。

原題:Avatar: The Way of Water 
監督:ジェームズ・キャメロン 
脚本:ジェームズ・キャメロン、アマンダ・シルヴァー、リック・ジャッファ 
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
優秀賞コーダ あいのうた


【作品紹介】
14年に製作されたフランス映画「エール!」(15)をシアン・ヘダー監督がリメイク。豊かな自然に恵まれた海沿いの町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で1人だけ耳が聴こえる。ルビーは幼い頃から、陽気で優しい家族の“通訳”となり、家業の漁業も毎日手伝っていたが、新学期に秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブに入ると、歌の才能に気付いた顧問の先生から名門音楽大学受験を勧められる。しかし、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業を優先して欲しいと反対する。聴覚障害者の両親をもつ子供(コーダ)である少女を主人公に、夢と家族の絆を爽快に綴る感動作。第94回米アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)の3部門を受賞し、トロイ・コッツァーは男性ろう者の俳優で初オスカーを受賞。他、サンダンス映画祭では史上最多の4冠に輝き、配給権が同映画祭史上最高額で落札された。

原題:CODA 
監督・脚本:シアン・ヘダー
配給:ギャガ
優秀賞スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム


【作品紹介】
17年から単独シリーズが公開されているMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)「スパイダーマン」の「ホーム」シリーズ3部作最終章。ミステリオによりスパイダーマンだと明かされ、濡れ衣も着せられたピーター・パーカーは、ドクター・ストレンジに世界中の人々の記憶の消去を依頼。しかし、そのための危険な呪文に失敗した結果、マルチバース(多元宇宙・並行世界)の扉が開かれ、別ユニバースのヴィラン(敵)たちを呼び寄せてしまう。自身の招いた危機に対して責任を負うピーターは、厳しい選択を迫られる。別作品だったトビー・マグワイア主演による3部作(02~07)とアンドリュー・ガーフィールド主演による2部作(12~14)を含む20年に亘る実写映画 「スパイダーマン」シリーズの全てが、マルチバースにより作品の垣根を超えて融合した、画期的なヒーロー・アクション超大作。第94回米アカデミー賞視覚効果賞にノミネートを果たし、世界興収19億ドルを超えた。

原題:Spider-Man: No Way Home 
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
優秀賞RRR


【作品紹介】
「バーフバリ」2部作(17)のS.S.ラージャマウリ監督が、インド映画史上最高の製作費7200万ドル(約97億円)をかけた超大作。1920年の英国植民地時代のインドで、英国軍にさらわれた少女を救うため立ち上がったビーム と、インド人だが英国側の警察として働きビームを捕える命令を受けたラーマは、お互いの素性を知らずに出会って唯一無二の親友となる。しかし、2人はそれぞれの“宿命”により激突し、友情と使命のどちらを選ぶか迫られる。同時期に実在したインドの独立運動指導者の英雄同士がもし出会っていたらというオリジナルストーリーをド派手なアクションやミュージカルシーンを交えて描く。劇中曲『ナートゥ・ナートゥ』のダンスシーンも圧巻で、 第80回ゴールデングローブ賞主題歌賞受賞。世界中で熱狂的に支持されており、第88回ニューヨーク映画批評家協会賞監督賞受賞や第95回米アカデミー賞歌曲賞ノミネートなど、各国の映画祭も賑わせている。

原題:RRR 
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ
配給:ツイン
新人俳優賞
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞小野花梨「ハケンアニメ!」


【受賞コメント】
5歳からこの仕事をさせていただいていて、いろんなところで芸歴が長いねと言われるようになった中、ある方に芸歴は売れてから数えるものだと言われたことがあります。この賞をいただけて、やっと自信をもって1年目と言えるなあと、とても嬉しく思っています。
【受賞者紹介】
06年8歳でTVドラマに出演して女優デビュー。08年「チーム・バチスタの栄光」で映画初出演。21年には「プリテンダーズ」で映画初主演し、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)でも注目される。本作では 神作画の天才アニメーターとして評判の並澤和奈を、等身大の現代的若者としてリアルかつユーモラスに演じた。22年は他に 「Ribbon」、スマホ用映画『彼の全てが知りたかった。』、TVドラマ『ロマンス暴風域』(TX)、配信ドラマ『新聞記者』(Netflix)、舞台『青空は後悔の証し』などがある。
優秀賞菊池日菜子「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
まだ無名な私に「月の満ち欠け」という作品でこの賞をいただけたことを、何よりもありがたく
思います。取るに足らない部分ばかりですが、そんないまだからこそ得られる感性があると信じて邁進してまいりますので、成長過程を見守ってくだされば嬉しいです。
【受賞者紹介】
地元の福岡で出演したCMで注目された後、20年に上京し、TVドラマで女優デビュー。 21年には短編「世界で一番すばらしい俺」と「私はいったい、何と闘っているのか」で映 画初出演した他、三池崇史演出の『醉いどれ天使』で初舞台も踏む。本作では主人公・小山内堅の娘で、母親と共に事故にあう女子高生の小山内瑠璃を演じ、ある女性の生まれ変わりという秘密を抱えながらも明るく振舞う複雑な役を担った。22年は他にTVドラマへのゲスト出演や King GnuのMV『雨 燦々』への出演などがある。
優秀賞生見愛瑠「モエカレはオレンジ色」


【受賞コメント】
たくさんの方と協力して一つの作品を作り上げていくことが、こんなにもやりがいがあり、楽し
いことなんだと、初めての映画で実感させていただきました。この賞に恥じぬよう、作品の一つになれるよう、一つ一つ丁寧にこれからも頑張っていきたいと思っています。
【受賞者紹介】
14年に『第2回ニコ☆プチモデルオーディション』でグランプリを受賞し、“めるる”の愛 称でティーンモデルとして活躍。『ニコ☆プ チ』『Popteen』の専属モデルを経て、21年よ り『CanCam』の専属モデルを務める。21年のTVドラマ『おしゃれの答えがわからない』 (NTV)で女優デビュー&初主演。初出演映画の本作では、ヒロインの佐々木萌衣を演じ、孤独だったぼっち女子高生が、主人公の 消防士・蛯原恭介に恋することで前向きに変化していく姿を瑞々しく体現した。
優秀賞福本莉子「今夜、世界からこの恋が消えても」


【受賞コメント】
新人俳優賞は私にとって、新たなスタートです。この映画をきっかけに、たくさんの方に観ていただき、知っていただけたので、ここからまた女優としても、一人の人間としても成長し、映画を通して誰かの人生に少しでも輝く何かを残せるように、頑張りたいと思います。
【受賞者紹介】
16年に第8回『東宝シンデレラ』オーディションでグランプリと集英社賞(セブン ティーン賞)を同時受賞し、17年の配信ドラマで女優デビュー。18年「のみとり侍」で映画初出演。同年に歌手デビューし、初舞台で主演も務める。20年の「思い、思われ、ふり、ふられ」で映画初主演。本作では主人公の日野真織を演じ、眠る度に記憶を失う前向性健忘を患いつつも恋に落ちる女子高生という難役に挑んだ。22年は他に「君が落とした青空」「20歳のソウル」、TVドラマ『赤いナースコール』(TX)などがある。
優秀賞有岡大貴「シン・ウルトラマン」


【受賞コメント】
とても嬉しいです。そして何より、皆さんと映画を作る素晴らしさを改めて教えてくれた「シン・ウルトラマン」で受賞できたことを、嬉しく思います。キャスト、スタッフの皆様には本当に感謝しております。ありがとうございます。
【受賞者紹介】
子役を経て、03年よりジャニーズ事務所に入所。芸能活動を開始し、07年にHey! Say! JUMPのメンバーになりCDデビュー。俳優としても「こどもつかい」(17)「劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」(18)などの映画やTVドラマに出演し、21年には『探偵 ☆星鴨』(NTV)でTVドラマ単独初主演。本作では防災庁の禍威獣特設対策室(禍特 対)に所属する非粒子物理学者の滝明久を演じ、人類存亡をかけたクライマックスのキーマンとなる重責を担った。22年は他にTVドラマ『インビジブル』(TBS)がある。
優秀賞番家一路「サバカン SABAKAN」


【受賞コメント】
オーディションで一番ヘタくそだった僕を、この場に立たせてくれた、記録(スクリプター)の外川恵美子さん、スタッフの方々、大人の人たち、原田琥之佑、金沢知樹監督のおかげです。僕もこれからも、頑張っていきたいです。よろしくお願いします。
【受賞者紹介】
10年5人兄弟の長男として生まれる。弟と妹と共に事務所に所属し21年より芸能活動を 始める。公開順は21年の連続テレビ小説 『おかえりモネ』(NHK)がデビュー作となったが、撮影順は本作が先で初めての撮影現場であった。初出演にして初主演した本作では、主人公・久田孝明の少年時代を務め、80年代の長崎で友人と共にひと夏の冒険に出る少年を生き生きと体当たりで演じた。本作で第77回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞も受賞。22年は他にTVドラマ『二十四の瞳』(NHK BS)などがある。
優秀賞松村北斗「ホリック xxxHOLiC」


【受賞コメント】
この賞をいただけたことがまず嬉しいです。僕なんかを選んでくださった方にゆっくり恩を返しつつ、「なんでこの人が?」と思った方にもゆっくり納得していただけるよう、今後も頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございます。
【受賞者紹介】
09年よりジャニーズJr.を経て、15年に6人組のSixTONESのメンバーとなり、20年にCDデビュー。俳優としては12年に『私立バカレア高校』のTVドラマと劇場版で初出演。主演映画に「バニラボーイ トゥモロー・イズ・アナザー・デイ」(16)「ライアー×ライアー」(21)がある。本作では主人公・四月一日君尋の同級生で弓の使い手の高校生・百目鬼 静を、クールかつミステリアスに演じた。22 年は他に声優を務めた「すずめの戸締まり」、TVドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』(CX)などがある。
優秀賞目黒蓮「月の満ち欠け」


【受賞コメント】
人生で一度しかいただけない、こんな貴重な賞をいただけたことを、本当に嬉しく思います。メンバーからもこの会場にくる前、(授賞式を)見ているから頑張ってねと、メールをもらいました。これからもSnow Man の目黒蓮として、邁進していけたらと思っています。
【受賞者紹介】
10年よりジャニーズJr.を経て、20年に9人組のSnow ManとしてCDデビュー。俳優としては15年のTVドラマで初出演し、22年はドラマ 『silent』(CX)『舞いあがれ!』(NHK)も好評を博した。20年にはSnow Man主演舞台を映画化した「滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie」に出演。本作では大学時代に年上女性と恋に落ちた三角哲彦を演じ、その大学時代と27年後の中年時代を繊細に表現した。本作で優秀助演男優賞とのW受賞の他、第96回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞も受賞。22年は他に「映画『おそ松さん』」がある。
協会特別賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞雨宮正信【カー・スタント】


71年頃より『太陽にほえろ!』(72~86)などのTVドラマでカースタントマンとしての仕事を開始。76年のカーアクショ ン映画「狂った野獣」以降は映画でも活躍。84年に代表を務める有限会社スーパードライバーズを34歳で創業。様々な演出や撮影手法に対応できるアイデアと技術力が高い信頼を得ており、個人および同社でカースタントコーディネートやカースタントマンとして、500本以上の映画やTVドラマの制作に携わる。また、その技術と経験を活かし、89 年からは学習者の目の前で交通事故をリアルに再現し、恐怖を体験してもらうことで交通安全意識の醸成と高揚を図る『スケアード・ストレート』にも尽力。撮影の仕事と並行して年間200か所以上の交通安全教育を行い、令和2年度『交通栄誉章緑十字金章』を受賞した他、映画やドラマの撮影時に警察の理解や協力を得やすくなることにも役立っている。主な参加映画に、「ゴジラVSビオランテ」(89)以降の「ゴジラ」シリーズや、「20世紀少年」シリーズ(08~09)の他、「この愛の物語」(87)「誘拐」(97)「プラチナデータ」「藁の楯 わらのたて」(13) 「HiGH&LOW THE WORST」(19)「初恋」「罪の声」(20)「東京リベンジャーズ」「太陽は動かない」「護られなかった者たちへ」(21)「バイオレンスアクション」(22)など。
優秀賞川本征平【アニメーション美術背景】


武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)卒業後、ピープロ(現ピー・プロダクション)や東京ムービー(現トムス・エンタテインメント)制作のTVアニメの美術や背景を務めた後に、メキシコでマヤ遺跡の拓本を取る仕事に従事して1年以上アニメ業界を離れるが、帰国後の69年にアニメーションの背景・美術の制作を行う有限会社アトリエロークを設立。以降、 同社が株式会社アトリエローク07に社名変更する07年まで代表取締役を務めながら、美術監督、美術設定、美術、背景などの役職で、多数のTVアニメや映画を手掛ける。79年からのTVアニメ『ドラえもん』では、リニューアル前の05年まで美術監督や美術設定を担当。劇場版シリーズでも第1作「映画ドラえもん のび太の恐竜」(80)から第6作「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争」(85)まで美術監督を務め、原作にはなかった美術設定を作り上げるなどシリーズ初期の設定 構築に貢献した。主な参加作品に、映画「森は生きている」(80/美術)「宇宙皇子」(89/美術監督)「機関車先生」(97/美 術)「MARCO 母をたずねて三千里」(99/美術監督)、TVアニメ『エースをねらえ!』(73~74/背景)『アルプスの少女ハイジ』(74/背景)『未来少年コナン』(78/背景)『まえがみ太郎』(79/美術監督)『小公女セーラ』(85/美術設定)など。
優秀賞小池直実【装飾】


映画好きだったことから、大学在学中にアルバイトとしてTVドラマや映画の美術に携わる。大学卒業後、本格的にフ リーの美術スタッフとしての仕事を始め、美術や装飾の助手として映画「南十字星」(82)「竜二」(83)などに参加した 後、83年の相米慎二監督作「ションベン・ライダー」「魚影の群れ」で装飾を務める。以降も相米監督、滝田洋二郎監督、 若松節朗監督らの各作品を始め、多数の映画美術・装飾を手掛ける。文字になっていないシナリオの行間を読み取り、 登場人物の性格や設定に適した装飾を施して、美術監督や美術デザイナーらと共に作品の世界観を想像力豊かに表現。その美術・装飾は、監督、スタッフ、俳優を刺激し、撮影現場に映画の原動力となる“気”を与えてくれる職人としての 仕事ぶりが高く評価されている。主な装飾の参加作品に、「逃がれの街」(83)「ア・ホーマンス」(86)「海へ See you」(88) 「東京上空いらっしゃいませ」「つぐみ」(90)「王手」(91)「外科室」(92)「夢の女」(93)「天守物語」 (95)「誘拐」「ラヂオの時間」(97)「ホワイトアウト」(00)「風花」「みんなのいえ」(01)「壬生義士伝」(03)「武士の一分」「涙そうそう」(06)「椿三十郎」(07)「おくりびと」(08)「沈まぬ太陽」 (09)「夜明けの街で」(11)「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(17)など。
優秀賞福岡康裕【キャスティングプロデューサー】


大学在学中、監督を志してアルバイトで東映撮影所に入る。あるプロデューサーから「監督をやりたいのなら俳優の気持ちを知れ」とのアドバイスを受け、TVドラマ『Gメン'75』(75~82)で俳優デビューし、映画やCMに出演。84年からは 映画「ひとひらの雪」を皮切りに、俳優経験を活かして本格的に演技者事務(撮影現場での俳優の世話係、俳優のスケジュールの調整と押さえを行う役職。現・演技事務になり、「天国の大罪」(92)「きけ、わだつみの声 Last Friends」(95) など多数の映画に同職で参加。96年のTVドラマ『刑事追う!』からは、配役の提案や出演交渉、ギャランティの決定、ビリング作成を行うキャスティングプロデューサーを務め、多数の映画やTVドラマを手掛ける。また、97年には夢であった監督デビューも果たした。99年に東映の社員となって以降はキャスティングプロデューサーとしてさらに多忙を極めるも、きめ細かいケアにより俳優陣からの絶大な信頼を得ており、40年以上にわたって現役で活躍し続けている。キャスティングプロデューサーとしての主な参加映画に、「鉄道員(ぽっぽや)」(99)「男たちの大和/YAMATO」(05)「劔岳 点の記」(09)「孤狼の血」(18)「いのちの停車場」(21)「ヘルドッグス」(22)「レジェンド&バタフライ」(23)など。
会長功労賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞伊藤俊也【監督】


【映画人生を振り返って】
監督生活五十年といって、やり残した仕事の多いこと。本来多作家であるべきはずが、寡作に甘んじています。だが、別に悔いを残しているわけでもない。ただ、想像力と体力の尽きぬ限り、作り続けたいと願っています。

【受賞者紹介】
監督デビュー作「女囚701号 さそり」(72)での鮮烈な反権力思想とアヴァンギャルドな映像表現で、映画ファンを熱狂させた伊藤俊也監督は、60年に東映撮影所入社、マキノ雅弘、石井輝男監督らの助監督を経て、「さそり」シリーズを連打し一躍注目される。その間、東映労働組合の幹部として闘争の先頭に立ち、月刊新聞『大泉スタジオ通信』(73~75)を発行。異色作「犬神の悪霊」(77)や「白蛇抄」(83)などと共 に、実在の事件をモデルにした「誘拐報道」(82)や老人性痴呆症の問題を扱い第9回日本アカデミー賞 最優秀作品賞を受賞した「花いちもんめ」(85)などの秀作を次々と発表する。さらに「風の又三郎 ガラスのマント」(89)「プライド 運命の瞬間」(98)「ロストクライム -閃光-」(10)などの意欲作も手掛ける。2006年には日本映画監督協会創立70周年記念作品として「映画監督って何だ!」を監督し、歴史的事実を検証しながら現行の著作権法に敢然と立ち向かい、映画の著作権者は監督にあることを訴えた。近年も「始まりも終わりもない」(13)や「日本独立」(20)などその創作意欲に衰えはない。著書に『幻の「スタヂオ通信」へ』(78/れんが書房新社)『偽日本国』(00/幻冬舎)『メイエルホリドな、余りにメイエルホリドな』(09/れんが書房新社)などがある。
優秀賞加山雄三【俳優】


【映画人生を振り返って】
私の映画人生において特別な出会いが二つあります。18本続いた代表作「若大将シリーズ」。この映画に出会っていなければ今の私は絶対におりません。もう一つは黒澤明監 督との出会い。「赤ひげ」の保本登の役そのものが、私の俳優人生の指標となりました。

【受賞者紹介】
まさにヒーローの登場だった。水泳やスキーなどスポーツ万能、そして育ちの良い明るさで彼は60年代 から70年代にかけて青春のヒーローとして大活躍した。いや「生涯現役」を目標に掲げる我らの若大将 は日本人にとって永遠のヒーローと呼ぶべき存在だろう。父は松竹の大スター上原謙、母は元女優の小桜葉子の息子として横浜市に生まれ、60年慶應義塾大学卒業後、東宝へ入社。大型新人として「男対 男」(60)で映画デビューする。主役の田沼雄一に扮した「大学の若大将」(61)が大ヒットし、「若大将」シ リーズ(61~71)として計16本が作られ、81年には「帰ってきた若大将」を製作・主演した。また、「エレキの若大将」(65)では自身の作曲による挿入歌「君といつまでも」が大ヒットするなど、ミュージシャンとしても活躍している。他に黒澤明監督「椿三十郎」(62)「赤ひげ」(65)、成瀬巳喜男監督「乱れる」(64)「乱れ雲」(67)や、堀川弘通監督「さらばモスクワ愚連隊」「狙撃」(共に68)、森谷司郎監督「兄貴の恋人」(68)「八甲田山」(77)などに出演し、陰影ある一面を見せて演技の幅広さを示した。2022年夏から秋にかけては期間限定で「若大将」シリーズ3作が復活上映され、人気を博したことも記憶に新しい。自伝に『父からの贈りもの』(86/小学館、集英社)『終わりなき航路―加山雄三の人生』(00/世界文化社)などがある。
優秀賞望月英樹【照明】


【映画人生を振り返って】
昭和三十一年東宝撮影所の門を入り、映画の撮影で照明一筋多数の作品で監督、俳優、キャメラマンと出会い楽しい映 画人生を送ることが出来ました。オフでの山登り、スキー、ダイビング、海釣りが出来たのもこの道を選んで正解でした!ライフ・イズ・ワンダフル。

【受賞者紹介】
被写体をどう魅力的に生かし、映画の中でどう印象づけるのか。照明とは、撮影に必要な光量をカメラのレンズを通して与え、作り手の創造的感性を個性的に映像表現するためには必要不可欠な作業だが、同時に俳優を生かす最大の技術でもある。60年以上にも亘って映画の撮影現場に携わってきた望月氏こそ、その効果を知り尽くしたエキスパートであり、長年、映画芸術を支えてきた功労者のひとりであることはいうまでもない。56年東宝に入社、同撮影所に配属され、照明助手として多数の作品を経験し、日ソ合作映画「白夜の調べ」(78)で本格的にデビュー。以降、「駅 STATION」(81)「海峡」(82)「おはん」(84)「姉妹坂」(85)「トットチャンネル」(87)「優駿 ORACION」(88)「マイフェニックス」(89)「飛ぶ夢をしばらく見ない」(90)「ゴジラVSモスラ」(92)「ゴジラVSメカゴジラ」(93)「ヤマトタケル」(94)「誘拐」(97)「絆‐きずな-」(98)「ロボコン」「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」(共に03)など様々な作品を担当し数々の受賞歴に輝く。11年日本映画テレビ照明協会会長就任。15年旭日小綬章を受章。
会長特別賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞恩地日出夫【監督】 1月20日没 享年88


【受賞者紹介】
慶応義塾大学経済学部卒業後、55年東宝入社。堀川弘通監督らに師事した後、61年28歳の若さで社会の底辺に生きる若者を活写した「若い狼」で監督デビュー。続く「高校生と女教師 非情の青春」(62)では屈折した青春をアクチュアルに描き、団令子をヒロインにした「素晴らしい悪女」(63)「女体」(64)では旧来の道徳 に拘束されることなく、自由奔放に生きる女性の姿を描いた。そして「あこがれ」(66)「伊豆の踊子」(67)「めぐりあい」(68)で、東宝青春映画の旗手として注目される。「あこがれ」公開当時、恩地監督は「きれいなものがそのまま美しいとは限らない。しかし徹底してきれいなものをつきつめた場合、そこにはきっと“美”が存在 するだろう」と語ったが、当時の若い観客は、その言葉通りに語られた三本の傑作に熱狂した。75年、フリーになり、TVドラマや、ドキュメンタリー、アニメ映画などを手掛けた後、11年ぶりの劇映画「生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件」(85)を監督。同作は実際の事件の被害者に丹念に取材した力作となる。晩年の「四万十川」(91)や「わらびのこう 蕨野行」(03)も高く評価された。著書に『「砧」撮影所とぼくの青春』 (99/ 文藝春秋)がある。
優秀賞石井巌【編集】 10月28日没 享年90


【受賞者紹介】
編集とは企画、製作、監督、そして全てのスタッフ、キャストが、その映画に注ぐ「思いをつなぐ」仕事であると いえる。観客に何を感じてもらうか、何を感じさせるかを常に意識しつつ、ワンカット、ワンカットに込められた 思いを踏まえて画に対峙し、同時に映画に冷静に向きあう目と、本当にこのカットが映画に必要なのかを客観的に判断する姿勢も要求される。最終的に映画の出来を左右する、きわめて責任の重い仕事であるだろう。その第一人者である石井氏は、51年に松竹大船撮影所に入社。現像部を経て編集部に異動になり、「九ちゃんのでっかい夢」(67)で山田洋次監督作品に参加。以後「男はつらいよ」シリーズ(69~19)、「家族」(70)「故郷」(72)「幸福の黄色いハンカチ」(77)「キネマの天地」(86)「ダウンタウンヒーローズ」(88)「息子」(91)「学校」(93)「たそがれ清兵衛」(02)「隠し剣鬼の爪」(04)「武士の一分」(06)「母べえ」(08)「東京 家族」(13)「小さいおうち」(14)など、「男はつらいよ お帰り 寅さん」(19)までほぼ全ての山田作品の編集を担当する。文字通り、山田作品とファンとの間の「思いをつなぐ」存在として貴重な人物である。
優秀賞松田寛夫【脚本】 3月24日没 享年88


【受賞者紹介】
脚本は映画の具体的な出発点であり、作品の成否に大きく影響する。なぜなら脚本に基づいて製作予算が見積もられ、スタッフやキャストは脚本を拠り所として集まり、作品を創造していくからである。俗に「良い脚本から悪い作品が出来てしまうことがあっても、悪い脚本から良い作品が生まれることはありえない」と言わ れるが、これは映画製作の真実をついているといえるだろう。脚本家として数々の作品に関わった松田氏はその最も尖鋭的な旗手として映画の原動力となった。58年、京都大学文学部卒業後、東映入社。京都撮影所に助監督として配属された後、62年に企画本部企画室文芸課にへ異動。以後、「網走番外地 大雪原の対決」(66)「女囚701号 さそり」「人斬り与太 狂犬三兄弟」(共に72)「実録・私設銀座警察」(73)「0課の女 赤い手錠」(74)「仁義の墓場」(75)「柳生一族の陰謀」(78)「その後の仁義なき戦い」(79)「誘拐報道」(82)「花いちもんめ」(85)「夜汽車」(87)「社葬」(89)「天国の大罪」(92)「プライド 運命の瞬間」(98)など数々の傑作、佳作の脚本・脚色を手掛ける。その作品群は娯楽映画の何たるかを雄弁に証明した軌跡であり、映画史の中に息づいている。
優秀賞大森一樹【監督・脚本】 11月12日没 享年70


【受賞者紹介】
70年代に監督経験のない自主映画出身の新人が大手映画会社の製作・配給で映画を撮るのは画期的な出来事=事件だった。時代の壁に風穴を開けたのが京都府立医科大学出身の大森一樹だった。六甲高校時代から8ミリで自主映画を撮り始め、大学在学中に16ミリ「暗くなるまで待てない!」(75)を発表。77年には「オ レンジロード急行」の脚本で第3回城戸賞受賞。翌78年、同作の映画化で監督を務め、商業映画に進出する。 次作「ヒポクラテスたち」(80)では自らの医大生時代の青春を作品に反映させ高く評価される。以後、村上春樹原作「風の歌を聴け」(81)や、「すかんぴんウォーク」(84)をはじめとする吉川晃司主演三部作、「恋する女たち」(86)をはじめとする斉藤由貴主演三部作をヒットさせ、「ゴジラVSビオランテ」(89)「ゴジラVSキングギドラ」(91)では「ゴジラ」(平成VSシリーズ)の方向性を決めた。他に「緊急呼び出し エマージェンシー・ コール」(95)「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」(96)「T.R.Y.」(03)などの作品がある。05年から大阪芸術大学芸術学部映像学科の教授に就任、翌年以降は同学科の学科長として学生を指導し、後進の育成も積極的に努めた。著書に『星よりひそかに 大森一樹の作った本』(86/東宝出版事業室)などがある。
優秀賞河村光庸【プロデューサー】 6月11日没 享年72


【受賞者紹介】
映画製作において、その卓抜な行動力は周囲の映画人たちをしばしば驚かせたという。とにかく即断即決。現在、製作委員会方式と称される「座組み」が映画作りの主流を占めているが、それとは対極にあったのが河村氏の一連の作品といっていいだろう。98年にアーティストハウスを設立し、数々のヒット書籍を手がける。その一方、映画出資にも積極的に参画し、08年にはスターサンズを設立し、ドキュメンタリー映画「牛の鈴音」(09)を買い付け、ヒットさせる。配給作品「息もできない」(10)は第84回キネマ旬報ベスト・テン外国語映画 第1位を獲得。製作、配給した「かぞくのくに」(12)では第86回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位や第 32回藤本賞の特別賞など多くの映画賞を受賞する。その後も原案・企画・製作全を手がけた「新聞記者」(19)で第43回最優秀作品賞、新藤兼人賞2019プロデューサー賞、第39回藤本賞を受賞、他に「あゝ、荒野 前篇・後篇」(17)「愛しのアイリーン」(18)「MOTHER マザー」(20)「パンケーキを毒見する」「茜色に焼かれる」「空白」「ヤクザと家族 The Family」(全て21)など、従来の日本映画界が二の足を踏むような問題作を精力的に製作し、大きな話題となった。
優秀賞崔洋一【監督・脚本】 11月27日没 享年73


【受賞者紹介】
社会派としての視点からではなく、ヒューマニズムの訴求対象としてでもなく、監督と共同脚本を務めた「月はどっちに出ている」(93)は、在日コリアンのタクシー運転手とフィリピン人女性の恋愛をコミカルな人間喜 劇として描いたからこそ普遍的な価値を持ち、『キネマ旬報』が発表した90年代日本映画ベスト・テンでも、堂々第1位の栄誉に輝いた。同作をはじめ、数々の傑作を手がけた崔監督は、東京朝鮮中高級学校の高級部を卒業後、照明部の助手として映画界に入り、大島渚監督「愛のコリーダ」(76)などの助監督を経て、TVドラマ『プロハンター』(81)で監督デビュー。内田裕也主演「十階のモスキート」(83)で劇映画の初監督を果たし、以後「友よ、静かに瞑れ」(85)「Aサインデイズ」(89)「マークスの山」(95)「犬、走る DOG RACE」(98)「豚の報い」(99)「刑務所の中」(02)「血と骨」(04)などを発表。大島渚監督「御法度」(99)には俳優として近藤勇役で出演。04年からは日本映画監督協会の第8代理事長に就任し、22年6月まで歴代最長の18年間務める。松田優作の死の約1年後に構成・演出した伝説のライブを自ら作品化した「松田優作メモリアル・ライブ」と、ドキュメンタリー「優作について私が知っている二、三の事柄」(共に20)が遺作となった。
【受賞歴】第28回「血と骨」で最優秀監督賞と優秀脚本賞、第17回「月はどっちに出ている」で優秀監督賞と優秀脚本賞受賞
特別追悼
優秀賞宝田明【俳優】


3月14日没 享年87
第43回会長功労賞受賞
優秀賞佐々木史朗【プロデューサー】


4月18日没 享年83
第27回協会特別賞受賞
優秀賞中野昭慶【特技監督】


6月27日没 享年86
第9回「ゴジラ」第11回「首都消失」「竹取物語」で特別賞特殊技術賞受賞
優秀賞森英恵【衣裳】


8月11日没 享年96
第45回会長功労賞受賞
優秀賞吉田喜重【監督】


12月8日没 享年89
第10回「人間の約束」で優秀監督賞、第42回会長功労賞受賞

井上 昭 
【監督】 
1月9日没 享年93
石原慎太郎 
【作家】 
2月1日没 享年89
西郷輝彦 
【歌手/俳優】 
2月20日没 享年75
川津祐介 
【俳優】 
2月26日没 享年86
安丸信行 
【特殊美術造型】 
3月1日没 享年87
佐藤忠男 
【映画評論】 
3月17日没 享年91
青山真治 
【監督】 
3月21日没 享年57
山本 圭 
【俳優】 
3月31日没 享年81
渡辺裕之 
【俳優】 
5月3日没 享年66
石井 隆 
【脚本/監督】 
5月22日没 享年75
沢本忠雄 
【俳優】 
6月5日没 享年86
岩内克己 
【監督】 
6月18日没 享年96
渡辺宙明 
【音楽】 
6月23日没 享年96
西東清明 
【編集】 
7月18日没 享年81
島田陽子 
【俳優】 
7月25日没 享年69
石濱 朗 
【俳優】 
7月26日没 享年87
小林政広 
【監督/脚本】 
8月20日没 享年68
古谷一行 
【俳優】 
8月23日没 享年78
小林七郎 
【アニメーション美術監督】 
8月25日没 享年89
森川時久 
【監督】 
8月28日没 享年93
結城良熙 
【プロデューサー】 
9月1日没 享年83
澤田幸弘 
【監督】 
9月21日没 享年89
江原真二郎 
【俳優】 
9月27日没 享年85
荒木正也 
【プロデューサー】 
10月14日没 享年91
金宇満司 
【撮影】 
10月27日没 享年89
佐藤蛾次郎 
【俳優】 
12月9日没 享年78
あき竹城 
【俳優】 
12月15日没 享年75

映画界に多大なる功績を残され2022年に逝去された映画人(没日順)

話題賞
(C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会

作品部門:『ONE PIECE FILM RED』


 
(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会 (C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

俳優部門:松村北斗


対象作品
「すずめの戸締まり」(声の出演:宗像草太役)
「ホリック xxxHOLiC」(百目鬼静役)
※対象作品50音順
第46回特別賞
(C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会
優秀賞『ONE PIECE FILM RED』音楽チーム


劇場版シリーズの15作目となる本作は、物語が音楽と密接に結びつき、劇場の観客にLIVE会場の臨場感をもたらす新たな体験を提供。中田ヤスタカを筆頭に原作者自らが選んだアーティスト、Mrs.GREENAPPLE、Vaundy、FAKE TYPE. 、澤野弘之、折坂悠太、秦基博らが楽曲を制作し、Adoが劇中キャラクターのウタとして歌唱を担当。映画が北米他海外でもヒットしたことに加え、音楽面でも『新時代』がApple Musicのグローバルチャートで日本の楽曲として初めて全世界1位を獲得、他の4曲もトップ10に入るなどミュージカル映画とも違う“新時代”の音楽映画を誕生させた。