第42回 日本アカデミー賞 授賞式レポート
第42回日本アカデミー賞授賞式が3月1日(金)グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール3階・崑崙にて盛大に開催された。
定刻になり、各受賞者が会場中央に敷かれたレッドカーペットを歩いて入場。トップバッターは日本アカデミー賞授賞式初参加である新人俳優賞を受賞した8名が登場。伊藤健太郎さん、中川大志さん、成田凌さん、吉沢亮さんたちが登場すると会場の雰囲気が一気に明るくなり、その後も次々と登場する受賞者たちへの拍手と歓声が響いた。
今年の司会は日本アカデミー賞協会組織委員会副会長の西田敏行さんと昨年「彼女がその名を知らない鳥たち」で最優秀主演女優賞を受賞した蒼井優さんが務めた。西田さんは、「平成最後の日本アカデミー賞授賞式を楽しみましょう」とコメント。蒼井さんは「人生ではじめての司会が日本アカデミー賞の舞台なので粗相のないようにがんばります」とコメント。おふたりの司会で和やかに授賞式がスタートした。
今回、優秀作品賞を受賞した5作品は昨年1年間の日本映画界を象徴する作品が揃った。その中でも第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた是枝裕和監督作品「万引き家族」が、作品賞をはじめ監督賞・脚本賞・音楽賞・撮影賞・照明賞・主演女優賞・助演女優賞の最多8部門で最優秀賞に輝いた。是枝監督はプレゼンターも担当され、監督賞・脚本賞の発表では少し恥ずかしそうに自らの名を読み上げた。また、プレゼンターの登壇時、日本アカデミー賞協会に対し「是非、衣裳部門も新設してほしい。いろんな作品で映るものの中でとても大事なものだ」と提言され、賛同の拍手を浴びた。
続いて「孤狼の血」が主演男優賞、助演男優賞、美術賞、録音賞の4部門で最優秀を受賞。最優秀主演男優賞を受賞した役所広司さんは、優秀主演男優賞を18回20賞の最多受賞者ながら、21年振りの最優秀賞の受賞に「最優秀の難しさをつくづく感じます」と喜びを噛みしめ、「広島の呉市で撮影しました。西日本豪雨で被災し、まだまだ復興まで時間がかかると思いますが、「孤狼の血」がたくさん賞をとったので、呉の人たちも元気になってくれたと思います」とロケ地となった呉市の方に対して心を寄せた。最優秀助演男優賞を受賞した松坂桃李さんは「本作で役所広司さんと再会でき、財産のような作品になりました」と声を震わせながらしっかりとブロンズを握りしめた。
今回、都内2館からスタートした昨年の大ヒット作「カメラを止めるな!」は上田慎一郎監督が最優秀編集賞を受賞。上田監督は7年前に仲間で買ったMac Proでの編集作業を振り返り感謝を伝えた。同作は「話題賞【作品部門】」も受賞。上田監督のほか、“カメ止めチーム”のキャスト・スタッフ一同がステージに集結した。また、「話題賞【俳優部門】」は伊藤健太郎さんが受賞し「役者を始めてこんなに早く、思い入れのある作品でこの賞をいただけて嬉しいです」とコメントした。なお、話題賞のプレゼンターは菅田将暉さんが務めた。
最優秀アニメーション賞は「万引き家族」同様に第91回アカデミー賞にノミネートされていた細田守監督最新作「未来のミライ」が受賞。細田監督自身の子供たちを題材として描いている本作について、スタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーは「何気ない日常の中に輝きや喜び、驚き、そして奇跡があるということを、たくさんの方々と共有し確認できた。一緒に挑戦してくれた才能ある役者の皆さん、優秀なスタッフに改めて、心から感謝したいと思います」とコメント。ステージには声優を務めた、上白石萌歌さん、黒木華さん、役所広司さんも登壇され、客席から大きな拍手が贈られた。
最優秀外国作品賞は、20世紀フォックス映画配給「ボヘミアン・ラプソディ」が見事受賞。興行収入も120億円を突破し昨年を代表する洋画となった。また今回同社配給作品が5作品中4作品優秀賞を受賞する快挙を成し遂げた。代表して20世紀フォックス映画日本代表のジェシー・リーさんが「一緒に応援して一緒に歌ってくださいました日本全国の映画ファンの方々に感謝します」とコメントされた。
特別賞セレモニーでは、正賞部門外で映画現場を支えるスタッフを讃える、協会特別賞の受賞者が発表され、アニメーターの大塚康生さん、映画スチールマンの金田正さん、プロデューサーの櫻井勉さん、衣裳の千代田圭介さんにプレゼンターの広瀬すずさんより賞状が贈られた。次に永年に渡り日本映画界に多大なる貢献と顕著な実績をしるした映画人に対し与えられる会長功労賞では、岡田茉莉子さんと吉田喜重監督が寄り添いながら、岸惠子さんが役所広司さんのエスコートで、会場より颯爽と登場し、映画人生を振り返るとともに今活躍する映画人の背中を押した。
続いて、壇上の役所広司さんが2018年に惜しまれつつ逝去された映画人を「皆さんが残してくださった映画に対する情熱はこれからも私達の心の中に生き続けます」と偲び、会長特別賞と追悼の映像がスクリーン映し出された。故人が紹介される度に、過去の名作や名シーンが蘇り、素晴らしい作品を今後も忘れてはいけないと実感させられた。
新人俳優賞は伊藤健太郎さん、中川大志さん、成田凌さん、吉沢亮さん、上白石萌歌さん、趣里さん、平手友梨奈さん、芳根京子さんの8名が受賞された。プレゼンターの菅田将暉さんは「よく知っている奴も何人かいるのでちょっと照れ臭いですが、同世代の方と晴れやかな場所で出会えるのは嬉しい。これからも面白いものを作っていきたいと刺激を受けました」とエールを贈った。
最後に司会の西田さんから「はじめての司会、どうでしたか」という質問に蒼井さんは「とっても良い席で受賞者の皆さんの喜んでいる姿や日本映画界の抱える焦りや希望を間近で感じる事ができ、明日への活力となりました」と語ってくれた。
平成最後の日本アカデミー賞授賞式は集った映画人がお互いを讃えあい、観客と一つとなり、温かい拍手のもと幕を閉じた。
ぴあ特別会員による授賞式に出席した感想
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真耶さん(女性/20代)
昨年ぴあ特別会員に決まった日から、ずっとこの日を待ち遠しく思っていました。会場に入り案内して頂いた席につくと、振り返っても横を見てもすぐそこにレッドカーペットがあり、始まるまでそわそわとしてしまいました。
授賞式が始まると、すぐそばを受賞された方々が歩く姿は圧巻でした。みなさんとても華やかで、凛とした空気をまとっていたように感じました。そして何より、これは実際に会場に居たからこそ出来た経験でしたが、テレビで放送されない部分も含めてスピーチや司会者の方との会話などを全て聞けたことがとても貴重なことだと思いました。普段映画を見ていても、制作に関わる多くのスタッフさんたちに意識を向けることは正直多くありませんでした。撮影や照明、美術、録音、他にもスタッフさんへの賞はたくさんありますが、投票の際に正直そこまで理解して投票できなかった賞もありました。
しかし言うまでもなく必要不可欠な存在で、そういった映画を支えるスタッフ部門の受賞者の方たちの熱い思いを授賞式ではスピーチを通したくさん聞けたことがなにより印象に残り、今後私の映画の観方に大きな影響を与えて下さったと思いました。自分も投票をしていたこともあり、今までテレビで見ていた以上に各賞の発表は緊張感を持って見ていました。
今後授賞式のチケットを購入し、参加が叶ったとしても自分が投票した作品は受賞するか?という緊張感は体験できないことなので、非常に貴重で有り難く、楽しい経験をさせて頂いた時間でした。 -
林ゆりかさん(女性/20代)
この度3月1日に開催された日本アカデミー賞の授賞式に出席しました。この日が近付くにつれて2月の後半はソワソワと落ち着きがなかったのですが、当日は会場へ近付くにつれて益々緊張が高まり、受付を済ませた後も1年に1度の映画の祭典を前に期待で胸が膨らみました。
会場に入ると今まで地上波で拝見していた光景が目の前に広がっていて、開演後も受賞者の皆さんが入場して最優秀賞の発表、スピーチが終わるまで本当にあっという間でした。自分が投票した作品が最優秀賞に選ばれるかどうか見守りながら、受賞した数々の作品はどのような方達がどのような思いを抱き、そして願いを託して作られたものであったのか、その思いを生の声で伺うことができて、映画好きの私にとって本当に幸せな時間でした。会場にいなければ立ち会うことのできない、作品や俳優、スタッフが授賞されるその瞬間を見ることができ、また授賞式が終了しその後のパーティに参加した後もまるで現実味がなくて帰宅しても夢見心地でした。あの時間は私の一生の宝物となりました。
あらためて、夢のような時間をありがとうございました。この1年間は自分が今まであまり足を運ばないようなジャンルの作品を鑑賞したり、鑑賞後もシナリオだけではなくて映像の撮り方や音楽の使い方が他作品と比べどのように秀でていたかであったりと、今までに比べて映画について考える時間が自然と増えていました。これからもさまざまな映画を観ていきたいと思います。 -
mayaさん(女性/20代)
映画を好きになって、試写会に応募するようになり、たまたま見かけた日本アカデミー賞ぴあ特別会員の募集に応募してから1年が過ぎました。1年間はぴあ特別会員として色々な映画を観させて頂けるので、空いた時間に一人で映画を観たりと、今までとは違った映画の楽しみ方ができるようになりました。観た映画のレポートを書くときに、自分が観た映画をどういう風に書いたら読んだ方が観てみたいと思ってくれるだろうと考えるのが楽しかったです。
12月になりいよいよ2018年に公開された映画の中から優秀賞を決める投票をしました。公開された映画の一覧を観ると、たくさん見逃してしまった映画があったりして、もっと観ればよかったなあという後悔や、あらためてひとつの映画を作り上げるのに多くの関係者がいることを知りました。
2月の最優秀賞の投票を終えていよいよ当日です。ずっと楽しみにしていた平成最後の日本アカデミー賞授与式。授賞式は4時間近くありましたが、あっという間でした。いろんな方のスピーチを聞いたり、受賞して喜ぶ顔を観て、人を感激させる映画を作っている会場にいる方もいない方も全ての関係者に尊敬の念を抱きました。
スタッフの方々ももちろんですが、最優秀主演女優賞の安藤サクラさんは、スピーチで子育てと仕事の両立について語られていて、華々しい世界で活躍されている女優さんも私たちと同じように仕事と育児の両立に悩まれていたり、いろいろな想いがある中でただただ映画が大好きだから関わりたいと日々お仕事に邁進されているんだなあと感じました。映画はこの世からなくなっても生きてはいけますが、映画を観ることで感じられるいろんな感情だったり感覚は日常生活に新たな活力を与えてくれます。そんなことをあらためて感じる機会を与えてくれたことに感謝します。今後も視聴者として、もしくは違う形として映画に関わっていきたいと感じた4時間でした。 -
南真紗子さん(女性/40代)
授賞式の会場に足を踏み入れてからは夢見心地のあっという間のひとときでした。ご用意頂いた席はレッドカーペットにとても近く、すぐ後ろを受賞者やプレゼンター、司会の方々が次々と輝く笑顔で闊歩されていきました。華やかな場には慣れているであろう方々も、少し緊張されている様子が感じ取れるほどの距離で、このような栄誉有る晴れの場に同席し、緊張と栄光の瞬間を共有できる喜びと興奮で、胸がいっぱいになりました。
そして、いよいよ各賞最優秀賞の発表。受賞作品はほぼ鑑賞してましたので、大型モニターで紹介映像が映し出されるたびに作品が思い出され、生で耳にする撮影時の思い出や苦労話が感慨深く感じられました。
特に、技術スタッフの発表では、モニターで映し出された同作品の出演者の笑顔が自分のことのように嬉しそうで、とても印象的でした。撮影、照明、美術、録音をはじめ、エンドロールにクレジットされている実に多くの方々が、一丸となって作品づくりに向き合っていたであろう様子が垣間見え、映画というものを更に愛おしく感じました。
また、長い間日本の映画界を支えてこられた会長功労賞、会長特別賞の方々の表彰では、喜びのコメントの中に、移り行く時代への一抹の寂しさが滲むように感じられる方もいましたが、後世に遺る素晴らしいお仕事に長年携られてきた方々に敬意の念がこみ上げると共に、「映画界ってよくないですか。私、本当に好きなんです」という昨年の蒼井優さんのスピーチが思い出され、胸が熱くなりました。
ぴあ特別会員として、たくさんの映画に触れる機会を与えて頂き、また、最後に出席させていただいた日本アカデミー賞授賞式では、映画にかかわる方々の熱い思いを直接耳にするとともに、映画界を支える実に多くの方々の存在を感じることができ、映画と映画界の素晴らしさを再確認する特別な一年を過ごさせて頂きました。感謝の気持ちをお返しする術は、映画館に足を運び続けるほかなさそうなので、これからも映画を愛し、観続けたいと思います。 -
高瀬倫子さん(女性/40代)
昨年1年間、数多くの映画と触れ合う機会を作って頂いたぴあ特別会員。その活動の締めくくりとなる日本アカデミー賞授賞式は、一生の思い出になるようなとても素敵で新鮮な時間でした。せっかく近くで拝見出来たので、入場時に印象的だった場面を三つ紹介します。
一つ目は、新人俳優賞を受賞された伊藤健太郎さんが、登場時に一旦立ち止まることなくフライングで歩き出してしまった、可愛らしいハプニングの時の表情と、そのことで緊張がとれた他の受賞者の皆さんの優しい表情。二つ目は、優秀助演男優賞を受賞された西島秀俊さんが、二宮和也さんの腕を持ちあげていたずらな笑顔を浮かべて一緒に手を振るような仕草をしていた場面。三つ目は、優秀助演女優賞を受賞された深田恭子さんが入場時に見せてくださった可愛らしい表情。そして、優秀主演女優賞を受賞された吉永小百合さんの美しく輝く優しいオーラを感じることも出来ました。俳優の皆さんが「演じていない時間」でも人々を魅了するご様子を間近で拝見することができ、とても感動しました。
また、最優秀賞のプレゼンターで幾度となく是枝裕和監督が登壇され、その都度興味深いお話で皆さんを魅了されていたこともとても印象に残っております。私が応援していた「孤狼の血」、最優秀主演男優賞を役所広司さんが、最優秀助演男優賞を松坂桃李さんが受賞された時は、お二人の喜びと撮影時の思い出や感謝がスピーチからもひしひしと伝わり、広島の呉の皆さんにとっても本当に嬉しい知らせになったのでは無いかと思い、思わず涙が出てしまいました。
そして、テレビでは見ることができない、「協会特別賞」では、縁の下で日本映画を支えていらっしゃる方々のお話を伺うことができ、とても興味深かったです。長時間でしたが、西田敏行さんと蒼井優さんの息の合った司会進行で、あっという間に感じました。「日本映画人による日本映画人のための日本映画の祭典」である日本アカデミー賞。もうこれほど身近に感じられることも無いのかもしれませんが、次回からもテレビの前でドキドキハラハラしながら参加出来るよう、これからもたくさん日本映画を観ようと思います。