第41回 日本アカデミー賞 授賞式レポート

 2018年3月2日(金)、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて、第41回日本アカデミー賞授賞式が開催された。

 今年の主演男優賞・女優賞の優秀賞受賞者は平均年齢が約31歳と歴代最年少の顔ぶれで、日本映画界の将来を担う若い俳優たちが集まったといえる授賞式となった。受賞者たちがレッドカーペットに登場すると、会場は一気に華やかになり、客席からは拍手や声援が湧きおこった。

 司会は日本アカデミー賞協会組織委員会副会長の西田敏行さんと昨年「湯を沸かすほどの熱い愛」で3度目の最優秀主演女優賞を受賞した宮沢りえさんが務めた。西田さんは今回「ナミヤ雑貨店の奇蹟」で優秀助演男優賞を受賞し、司会と兼務となった。また、宮沢さんとは第39回授賞式でもタッグを組んでおり、終始息の合った温かい雰囲気で式は進行していった。

 今回、個人賞では、「三度目の殺人」の是枝裕和さんが最優秀監督賞、最優秀脚本賞そして最優秀編集賞の3部門で最多受賞となった。是枝監督は「現場で脚本が変わっていく度にプロデューサー陣が心配して、僕自身もひりひりする時間が何度かあって、そんな時、主演の福山雅治さんがこういう時にこそ一番いいものが生まれますよと常に僕を信頼して、任せてくれました。この受賞を彼に届けたいと思います」とコメント。3本のブロンズ像を手にした。

 また、最優秀助演男優賞と最優秀助演女優賞は「三度目の殺人」に出演した役所広司さん、そして広瀬すずさんが共に受賞。役所さんは昨年「湯を沸かすほどの熱い愛」で最優秀助演女優賞を受賞された杉咲花さんからブロンズを受け取ると「この会場にくると素晴らしい監督、スタッフさんと会うのが楽しくて、その人たちの影響を受けて、また教えられてここまでやってきました。またもうしばらく日本映画の中でがんばりたい」と受賞の喜びと映画への想いを語った。また、最優秀助演女優賞を受賞した広瀬さんは、昨年「怒り」で最優秀助演男優賞を受賞した妻夫木聡さんからブロンズ像を受け取ると、声を震わせながら、「本当にありがとうございます、何を喋ればいいのか…。監督にはいつも見たことのない景色をみせてもらえるので、少しでも恩返しができるように、これからも参加した作品の役に立ちたい」と熱い思いを披露した。

 技術部門では、「関ヶ原」から、最優秀撮影賞を柴主高秀さん、最優秀照明賞を宮西孝明さん、最優秀録音賞を矢野正人さんが受賞し、原田眞人監督への感謝を伝えた。また、最優秀美術賞は「花戦さ」の倉田智子さんが受賞。「多くの作品の中から選ばれて嬉しい。京都での伝統文化を活かす事を心がけました」と京都のスタッフに対し感謝を述べた。最優秀音楽賞は、「アウトレイジ 最終章」の鈴木慶一さんが受賞となった。「アバンギャルドな音楽が受賞できて嬉しい、北野武監督、そして、ことある毎に音楽の道を勧めてくれた母に感謝しています」とコメント。最優秀外国作品賞を受賞したのは「ラ・ラ・ランド」。配給のギャガ(株)の依田巽さんが登壇し優秀賞受賞時に寄せられたデイミアン・チャゼル監督からの日本の観客に向けた感謝のメッセージを読み上げた。

 特別賞コーナーにおいて、第40回から永年にわたり多大なる貢献と顕著な実績をしるした映画人に対して贈賞することとなった会長功労賞として香川京子さん、川又昻さん、篠田正浩さん、紅谷愃一さん、舛田利雄さん、山本富士子さんが受賞。香川京子さんと山本富士子さんが登壇し、映画への熱い想いを語ると、会場に集まる映画関係者から称賛と惜しみない拍手が送られた。

 続いて、ニッポン放送・オールナイトニッポンのリスナーが選ぶ日本アカデミー賞で、唯一一般映画ファンが参加できる話題賞の贈賞。今年は、作品部門を「君の膵臓をたべたい」、俳優部門を「帝一の國」の菅田将暉さんが受賞した。まず、「君の膵臓をたべたい」は臼井央プロデューサーが登壇し、「若い力があってこそ作れた作品、これからも頑張ります」とコメント。「帝一の國」で受賞した菅田さんも「同世代の俳優たちと作った思い出の作品です」と若い映画人たちと作った作品であることを強くアピール。今年の会場の雰囲気である「若さ」が更に強調された。

 続いて、新人俳優賞の受賞者が発表され、中条あやみさん、浜辺美波さん、北村匠海さん、竹内涼真さんが登壇。昨年「64-ロクヨン-前編」で最優秀主演男優賞受賞の佐藤浩市さんが各受賞者に賞状を贈賞。「明日の映画界を担うつもりで研鑽してください」と受賞者たちにエールをおくった。

 続いて、最優秀主演女優賞が発表となり、蒼井優さんが「彼女がその名を知らない鳥たち」で受賞した。蒼井さんは、第30回日本アカデミー賞授賞式において「フラガール」で最優秀助演女優賞を受賞して以来の受賞となった。蒼井さんは「この映画を撮っている時、本当に映画界に入れてよかったなと思いました。こんな大きな賞をいただいて恐縮しています。これから新学期が始まりますが、もし学校がつらかったり、新しい生活どうしようと思っている方は、ぜひ映画界に来てもらえればと思います。私、本当に映画界って好きなんです。優秀賞を獲得された皆さんのことも本当に尊敬しています。みんなで一緒に映画を盛り上げていけたらなと思いました。白石監督、そして皆さん、ありがとうございました。」と涙ながらにコメント。会場中から拍手喝采を受けた。

 続いて、最優秀主演男優賞が発表となり、「あゝ荒野 前篇」に出演した菅田将暉さんが受賞した。菅田さんは「こんなに信じられないことはあまりないです。だんだん自分がどこにいるのか、何を大事にしているのか、実感する機会を自分で作らないといけないのですが、今日はちゃんと菅田将暉として凄く嬉しいです。本当にありがとうございました」と喜びを噛みしめるように語った。

 そして、最優秀アニメーション作品賞が発表となった。「夜は短し歩けよ乙女」が受賞。湯浅政明監督が登壇し、「アニメーションの制作にはたくさんのスタッフが参加しています。スタッフを代表して感謝しております」とコメント。

 最後に、今年の日本映画の頂点である最優秀作品賞が発表となった。プレゼンターは日本アカデミー賞協会の岡田裕介会長が受賞作品を発表。「三度目の殺人」が見事、第41回最優秀作品賞を受賞した。発表後、作品関係者一同が登壇。広瀬さんは、あまりの緊張からか「お腹がいたいです…でも受賞できて嬉しいです」と言葉を選びながらコメント。是枝監督も「この作品が受賞できて嬉しい」と作品を作る上で新しいチャレンジ(法廷作品への挑戦や画面サイズをシネマスコープにしてみたこと)など、制作中の裏話を披露した。会場から笑いがこぼれつつ、すべての作品の発表が終了した。

 次回、第42回授賞式は今年以上に若い映画人が活躍できる場になる事を切に願いつつ、既にどんな作品が受賞するのか心待ちで仕方がない。

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ぴあ特別会員による授賞式に出席した感想

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