第40回 日本アカデミー賞 授賞式レポート

 1978年から始まり、今回40回目を迎える第40回日本アカデミー賞授賞式は、例年にも増して華やかで、興奮と感動に満ちたものとなった。

 優秀賞を受賞した俳優・スタッフが勢揃いしてレッドカーペットに登場すると、観客の視線が一斉に集中した。特に主演男優賞を受賞した岡田准一さんや、新人俳優賞と話題賞を受賞した岩田剛典さんには多くの声援があがる。また、「シン・ゴジラ」で優秀監督賞を受賞した樋口真嗣監督は、ゴジラのマスクを被りゴジラになりきって入場。観客から「ゴジラ!」という掛け声が上がり大きな笑いを誘った。

 受賞者が席に着くと、いよいよ4年連続で司会を務める西田敏行さん(日本アカデミー賞協会・組織委員会副会長)と、昨年「百円の恋」で最優秀主演女優賞を受賞した安藤サクラさんが登壇。第40回日本アカデミー賞授賞式が開幕した。

 今年も美術賞から発表がスタート。最優秀美術賞の林田裕至さんと佐久嶋依里さんから始まり、最優秀撮影賞を山田康介さん、最優秀照明賞を川邉隆之さん、最優秀録音賞を中村淳さん(録音)と山田陽(整音)さんと「シン・ゴジラ」のスタッフが次々に受賞。さらに庵野秀明さんと佐藤敦紀さんも最優秀編集賞を受賞し、会場に「シン・ゴジラ」旋風を巻き起こした。

 主要技術賞は「シン・ゴジラ」が独占受賞する快挙を果たしたところで、助演男女優賞の発表へ。

 最優秀助演女優賞は「湯を沸かすほどの熱い愛」の杉咲花さんが初受賞。杉咲さんは「今日(授賞式当日)が怖すぎて2週間ぐらい寝れなかった。昨日“お母ちゃん”の宮沢りえさんにメールしたら、『受賞するしないに関わらず、とにかく授賞式を楽しみなさい』とお返事いただいて、すごく嬉しかったんです。こうして最優秀助演女優賞をいただけてとても嬉しい。本作品に関われたことも幸せでした。本当に嬉しいです。」と涙を流しながらコメントした。

 続いて最優秀助演男優賞を受賞したのは、「怒り」の妻夫木聡さん。第34回、「悪人」で最優秀主演男優賞を受賞した際、仕事の都合上会場でブロンズ像を受け取ることができなかった妻夫木さんは、「前回は会場にいられなかったので、今回この場で喜びを分かち合えて嬉しい」と喜びを伝えた。降壇し、満面の笑みを浮かべながら同作で共演した綾野剛さんと抱擁する様子も印象的だった。

 続いてニッポン放送のリスナーの投票によって選ばれる「話題賞」が発表された。

 今年は作品部門を「君の名は。」、俳優部門は「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」に主演した岩田剛典さんが受賞。まず、「君の名は。」からは新海誠監督、音楽を担当したRADWIMPSが登壇した。新海監督は「話題になると思って作ったわけではなかった。少しでもいい作品を作ろうと思っただけ」と謙虚に語った。続いてRADWIMPSの野田洋次郎さんは「1年半という時間をかけて作品と同時進行で音楽を作成した。ああでもない、こうでもないと監督と話していた時間が楽しかった」と作成時の感想を語った。
 続いて俳優部門で受賞した岩田さんは「栄誉ある賞をいただけて感無量。共演の高畑さんにも感謝しています。ファンの皆様にも感謝の気持ちを捧げたい」と気持ちを伝え、観客に感動を与えた。

 授賞式中盤は、協会特別賞、会長功労賞、第40回特別賞、会長特別賞が紹介され、会長功労賞の八千草薫さんが登壇され、映画人生を振り返り、想いを語った。引き続き行われた「追悼セレモニー」では、昨年惜しまれつつもこの世を去った偉大な映画人たち映像で紹介し、多くの故人を偲んだ。

 また、今回40回を迎えた日本アカデミー賞授賞式と協会に対して、海外よりマーティン・スコセッシ監督と女優のメリル・ストリープさんからよせられたお祝いコメント映像も紹介された。

 続いて新人俳優賞を受賞した男女優が登壇。プレゼンターは昨年「母と暮せば」で最優秀主演男優賞を受賞した二宮和也さん。今回、新人俳優賞には杉咲花さん、高畑充希さん、橋本環奈さん、岩田剛典さん、坂口健太郎さん、佐久本宝さん、千葉雄大さん、真剣佑さんが受賞。映画の枠を超え、日本のエンターテインメント界を担う俳優たちの活躍が期待される。

続いて最優秀外国作品賞は「ハドソン川の奇跡」が受賞。ワーナー・ブラザース映画の山田邦雄さんが登壇し、喜びを語った。

 最優秀音楽賞は「君の名は。」のRADWIMPSが受賞。映画の大ヒットにより、頻繁に耳にした「前前前世」をはじめとする映画音楽を担当。昨年最優秀音楽賞を受賞したサカナクションの山口一郎さんからブロンズ像を受け取った野田洋次郎さんは、「この作品は、この世にないものを作るんだ! という情熱で作った作品。新海誠監督と仕事ができて嬉しいです」とコメント。

 続いて発表された脚本賞は「君の名は。」の新海誠監督が最優秀を受賞。アニメ映画での脚本賞受賞は、優秀賞において、ましてや最優秀賞においても日本アカデミー賞初という快挙だった。新海誠監督は、「もっともいただけるとは思っていない賞でした。映画を見たファンからは映像が美しい、音楽がいいというコメントが多く、脚本については話題にならなかった」と真摯に語った。

 そして、最優秀アニメーション作品賞は、「この世界の片隅に」が受賞。本作はクラウドファンディングで一般の人からの出資で長年かけて製作された。そのため監督の片渕須直監督は「6年かけて完成させた映画。諦めなくてよかった。諦めていたら、小さいすずさんの可愛らしい姿が皆さんの心に残ることもなかった」と涙声でコメントした。

 最優秀主演女優賞は「湯を沸かすほどの熱い愛」の宮沢りえさんが、「たそがれ清兵衛」「紙の月」に続いて3度目の受賞を果たした。舞台出演のため退席していた宮沢さんに代わり、中野量太監督と同作で最優秀助演女優賞を受賞した杉咲花さんがブロンズを受け取った。中野量太監督は「りえさんは僕らにとってトップランナーでした。この役を引き受けてくれて感謝しています」と謝辞を述べた。杉咲花さんからは「やっぱり“おかあちゃん”はすごいなって思います」とコメント。今年の最優秀主演女優、助演女優賞は「湯を沸かすほどの熱い愛」が独占する結果となった。

 続いて最優秀主演男優賞は「64-ロクヨン-前編」の佐藤浩市さんが受賞。「忠臣蔵外伝 四谷怪談」以来22年ぶり2回目の受賞。「久しぶりに大きいブロンズを頂きましたが、こんなに重たかったかなあ……。これは50代の半ばを過ぎた筋力の衰えか、別の感慨でこの重みを感じているのか。当然、後者の方ですが。ここにまた戻ってこられるよう、みんなで映画作りを続けていきたいと思います」と感慨深げに受賞の喜びを語った。日本映画界に必要な俳優としてこれからも活躍が期待される。

 授賞式のクライマックスに向けて発表されたのは、最優秀監督賞。「シン・ゴジラ」の庵野秀明総監督、樋口真嗣監が受賞した。そして、最優秀作品賞も「シン・ゴジラ」が見事に受賞。会場には予告編でも印象的だった鷺巣詩郎さん作曲の劇中音楽が流され、壇上に「シン・ゴジラ」の関係者が結集した。代表して樋口真嗣監督より「何を話したらいいのかわからないけれど、とりあえず岡田裕介会長ありがとう」とコメントし、会場をわかせた。仕事の都合で欠席した庵野秀明監督に代わり、山内章弘プロデューサーが「特撮映画、怪獣映画、シリーズ映画、こういう映画はジャンルに押し込められてしまう傾向にある中、ちゃんと評価いただけて嬉しいです」とコメント。

 「シン・ゴジラ」が圧巻した第40回の授賞式は、重厚な人間ドラマから特撮、そしてアニメ映画までが最優秀の各部門に食い込み、まさに日本映画の成熟ぶりがうかがえる結果となった。

 最後に司会の西田敏行さんからの「授賞式は楽しめましたか?」という質問に、安藤さんは「近くで俳優の皆さんのお話をうかがいつつ、受賞の瞬間の感動を分かち合うことができて生涯忘れられない経験になりました」と語ってくれた。

 次回41回日本アカデミー賞授賞式にはどんな作品が受賞候補となるのか、すでに期待に胸が膨らむばかりだ。

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ぴあ特別会員による授賞式に出席した感想

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