第39回日本アカデミー賞 授賞式レポート

    今年の授賞式も日本映画界を代表するベテラン俳優やスタッフが勢揃いしてのレッドカーペット幕開けとなった。その中で、「海街diary」で4姉妹を演じた綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、夏帆さん、そして、新人俳優賞受賞の広瀬すずさんが登場すると観客の視線を釘付けにし華やかさが増した。更に「母と暮せば」で、初受賞の二宮和也さんが姿を現すと女性客を中心に過去最大規模の黄色い声援があがった。全ての受賞者が勢ぞろいした最優秀賞発表前の会場は高揚感があがり、3年目の司会となる西田敏行さん(日本アカデミー賞協会・組織委員会副会長)と昨年「紙の月」で最優秀主演女優賞を受賞した宮沢りえさんが、第27回の授賞式以来12年ぶりに大役を務めるべくステージに登壇し、第39回日本アカデミー賞授賞式が開幕した。

    最優秀美術賞・花谷秀文さん「海難1890」の発表から始まった授賞式は、撮影・瀧本幹也さん「海街diary」、照明・藤井稔恭さん「海街diary」、録音・松陰信彦さん「海難1890」、編集・大関泰幸さん「バクマン。」の発表を終えたところで、助演男女優の発表へ。
    最優秀助演女優賞を受賞した黒木さんは、昨年の「小さいおうち」に続いて2年連続2回目の受賞となった。これは、第32回、33回で連続受賞した余貴美子さん以来6年ぶり、史上2人目の快挙となった。黒木さんは「2回もこの場に立てると思っていなかった。山田洋次監督に感謝してもしきれない。映画を観に来てくださったお客さんのおかげです。これからも地道に精進していきたいと思います」と声を震わせながらコメント。最優秀助演男優賞は、「日本のいちばん長い日」「天空の蜂」の2作品で優秀助演男優賞を受賞していた本木雅弘さんが「日本のいちばん長い日」で見事受賞。これまで最優秀主演男優賞を2度受賞している本木さんが、最優秀助演男優賞を初受賞した。本作で昭和天皇役を演じるにあたり本木さんは「相当のプレッシャーでした」とコメント。役作りに苦労したようで義母である樹木希林さんに相談していたことを告白。「(樹木さんの助言は)『苦しい時の義母頼み』で、神くらいの力がある」と「あん」で優秀主演女優賞を受賞し会場にいる樹木希林さんを見つめながらコメント。義母である樹木さんは「一家の主で生活がかかっているので、仕事をしてもらわないと。黙っているといつまでも何もしないので、不安がありました」と会場を沸かせた。
    授賞式中盤では、協会特別賞、協会栄誉賞の紹介に続いて、昨年、惜しまれつつもこの世を去った偉大な映画人たちを振り返る「追悼セレモニー」が行われ、多数の映画人たちが映像で紹介された。特に印象に残った映画人は、昨年9月に亡くなった原節子さん。小津安二郎監督作品をはじめ、日本を代表する多くの作品に出演し、圧倒的美貌と存在感を示す大女優の出演作品の一部を振り返った。
    続いて、新人俳優賞を受賞のフレッシュな面々が登壇。昨年、最優秀主演男優賞を受賞した岡田さんから賞状を手渡され、励ましのコメントをもらった。新人俳優賞の面々は、それぞれ抱負や映画との繋がり、ここに至るまでの思いやこれからの事など、個々の思いをスピーチしてくれた。外国作品賞「アメリカン・スナイパー」アニメーション作品賞「バケモノの子」の最優秀賞発表に続き、音楽賞・サカナクション「バクマン。」、脚本賞・足立紳さん「百円の恋」が発表され、いよいよ主演の男女優の発表へ。
    最優秀主演女優賞には、昨年の「0.5ミリ」に引き続き、「百円の恋」で2年連続優秀主演女優賞を受賞していた安藤サクラさんの名前が読み上げられた。最優秀賞、初受賞となった安藤さんは、かなり動揺した面持ちで再登壇し、「びっくりして何だか…じわじわ心臓が出てきちゃいそうな感じです。たくさんのエネルギーが繋がっていき、こういう場に来られる。そんな映画に出演できて嬉しいです」と震えながらコメント。会場からは盛大な拍手がおこった。続いて発表された最優秀主演男優賞を「母と暮せば」で受賞した二宮さんは、歓声と割れんばかりの拍手でステージへと迎えられ、「ありがとうございます。ここに立つとは思っていませんでしたけどすごく嬉しいです。先輩(昨年同賞受賞の岡田さん)の次に僕がこれを頂けるのはすごく嬉しい。この姿を嵐の人たちも見てくれていると思いますし、喜んでくれていると思います。今まで迷惑をかけてきた人にちょっとでも恩返しできたかと思うとありがたく、また頑張っていこうと思います」とコメント。
    最後に発表される監督賞と作品賞では、「海街diary」が最優秀賞を獲得し、作品賞、監督賞、撮影賞、照明賞の4部門と新人俳優賞の最多受賞となった。最優秀監督賞を受賞した是枝裕和監督は「最後に大きなご褒美が待っていた。すごく長い時間をかけて撮影させていただいて、お金を出していただいたプロデューサーの方たちに感謝したい」と喜びのコメント後、「今日(受賞者集合場所で)岡田会長が最初に挨拶されたように、この授賞式が本当に日本の映画の映画人のみんなで祝えるイベントになるためには、まだ色んな改革をしなければいけないと思う。今までは、外側から批判的に言ってましたが、これからは一緒になってより素敵な授賞式に変えていけるように自分も努力したいなと改めて思いました」と語ってくれた。
    いつもながら、最優秀作品賞の発表時は、会場にいる受賞者や観客はもちろん、裏に控える関係者たちも固唾を飲んで発表を待っていて、次の最高潮の歓声へと繋がる。今回は、俳優もスタッフもいくつかの作品でばらけての最優秀賞受賞となったが、果たして、第40回を迎える来年は、どんな作品が入ってくるのか?今から楽しみに今年の公開作品に期待しましょう。

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ぴあ特別会員による授賞式に出席した感想

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