第30回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
日時: 2007(平成19)年2月16日(金)
場所: 新高輪プリンスホテル 国際館パミール
司会: 関口宏/吉永小百合

優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)2006 BLACK DIAMONDS

最優秀作品賞 「フラガール」


寂れた炭鉱の町を立て直すため、ハワイアンセンターが設立され、町の女の子達も自分と家族のためにフラダンサーを目指す。だが彼女達の所にやって来たのは、半ば自暴自棄になった美貌のダンス教師であった…。昭和40年の常磐炭鉱を舞台に、町が再生していく様子が描かれている。その中心になるのが、踊りに人生を賭けた炭鉱娘たちとダンス教師平山まどかとの心の交流である。(シネカノン=ハピネット=S・D・P)

優秀作品賞 「明日の記憶」


広告代理店の部長として充実した日々を送っていた佐伯は、ある日身体の不調を感じて病院に行く。診断の結果は若年性アルツハイマー病であった。その時から彼の苦悩の日々が始まる。俳優渡辺謙が荻原浩原作の小説の映画化を望み、実現した作品。次第に記憶を失っていく主人公の葛藤と絶望、そして、それを支え続ける妻の姿が緊迫感を持って描かれており、観るものに忘れられぬ印象を残す。(「明日の記憶」製作委員会)

優秀作品賞 「男たちの大和/YAMATO」


太平洋戦争末期の昭和19年、帝国海軍の誇る巨大戦艦大和に乗り込んだ特別年少兵と、彼等を見守る下士官の視点を軸に、過酷な戦争の中で懸命に生きる人々の姿を壮大なスケールで描いている。本作品では、原寸大に再現された大和のセットでも話題を呼んだが、これによって、特攻出撃の戦闘シーンのみならず、全編に亘って迫力と現実感のある映像をスクリーンに現出させた。(「男たちの大和/YAMATO」製作委員会)

優秀作品賞 「THE 有頂天ホテル」


大晦日のホテルのカウントダウンパーティに向かって織り成される宿泊客とホテルマンの人間模様。緻密に練り上げられた構成と伏線によって、オールスターキャストで演じられる物語が怒濤のごとく展開されていく。三谷監督は自分の体験をベースに脚本を書き上げ、実物のホテルと見紛うほど見事なセットの中でこれを映像化した。日本に出現した新たなグランドホテルスタイルの粋な映画である。(フジテレビ=東宝)

優秀作品賞 「武士の一分」


愛する妻と共に、慎ましくも楽しく暮らしている下級武士の三村新之丞。だが毒味役という立場から失明し、絶望の淵に立つ。妻は夫のために助力を得ようとして上士、島田藤弥に弄ばれ、やがてそれを新之丞が知る。山田監督は3部作の最後となる物語で、武士の誇りを賭けて戦う男と、身を捧げてまで夫を守る妻の姿を描きながら、昔の日本人が持っていた情愛の念と謙虚な心をも表現している。(「武士の一分」製作委員会)
優秀アニメーション作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)「時をかける少女」製作委員会 2006

優秀アニメーション作品賞 「時をかける少女」


過去にタイムリープする能力に目覚めた高校生、紺野真琴。彼女はその力を使って、自分の過去を思うがままにやり直していく。だが、修正されたはずの現在は、真琴にとってかならずしも快適なものではなかった。筒井康隆の傑作短編小説をもとに、細田守監督は主人公を現代に生きる17才の元気な少女に置き換え、その個性を大事にしつつ、彼女の目線でみた世界をそのままリアルな青春映画として再構築した。(「時をかける少女」製作委員会)

優秀アニメーション作品賞 「あらしのよるに」


オオカミのガブとヤギのメイが友達になったことから、彼等の周囲によって引き起こされる問題と、それに翻弄される主人公達。本作では原作者きむらゆういち自らが脚本を手掛けているが、動物の世界を描きながら、人間社会の普遍的な問題をも彷佛させる深いドラマとなっている。(TBS=東宝=博報堂DYメディアパートナーズ=セディックインターナショナル=獏エンタープライズ=MBS=毎日新聞社=伊藤忠商事=小学館)

優秀アニメーション作品賞 「ゲド戦記」


多島海世界アースシー。その世界に災いをもたらすものの源を探るべく、偉大な魔法使いであるハイタカは旅を続ける。途中、父親を刺して国を出た王子アレンと出会うが、心に闇を持つ彼は、正体不明の〝影〟に追われていた。新鋭宮崎吾朗監督は、アーシュラ・K.ル=グウィンの原作をベースに、アレンが苦難を乗り越えて成長していく過程を、現代の若者にも通じる物語として描き出している。(「ゲド戦記」製作委員会)

優秀アニメーション作品賞 「ブレイブ ストーリー」


父親が家出し、両親は離婚する。11歳の少年ワタルは家族を取り戻したいと願い、異空間、幻界(ヴィジョン)へと入って行く。だが願い事が叶うというその空間は、剣と魔法に支配されていた。宮部みゆきの人気長篇小説を、一年半という時間を使って脚本に練り上げ、それから更に長期の製作期間をかけてアニメーションにした力作である。(フジテレビジョン=GONZO=ワーナー・ブラザース映画=電通=スカパー!WT)

優秀アニメーション作品賞 「名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌」


コナンが腕に付けたテーマパークのフリーパスIDは突如カウントダウンを開始する。実は、彼が事件を解決せねば爆発するプラスティック爆弾であった。実写のサスペンス映画を凌ぐ勢いで展開していくシリーズ10周年記念作品は、毛利小五郎や怪盗キッドはもちろん、レギュラー総出演。あのキャラクターはどこに登場するのか?(小学館=読売テレビ=日本テレビ=小学館プロダクション=東宝=トムス・エンタテインメント)
優秀監督賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞李相日「フラガール」


これまでで一番難題が多く、一番悩んで迷い、一番人に迷惑をかけまくった作品が一番高い評価を得ている。不思議なことに。「今までやってきたこと以上の力を出して下さい」とスタッフ・キャストにのたまっていたのがそっくりそのまま自分に返ってきた。結果的に、一つ自分の限界を超えることが出来たし、賞まで付いてきた。この作品に関わった全ての人たちがもたらしてくれたものだ。ひたすら感謝。~「フラガール」で初受賞(1974年 新潟県)
優秀賞佐藤純彌「男たちの大和/YAMATO」


優秀監督賞に選ばれて大変嬉しく思いますが、それに倍する喜びは、撮影、照明、録音、美術、編集などの全技術パートが優秀賞に選ばれたことです。顧みれば、この人達と「男たちの大和/YAMATO」の撮影準備を始めてから既に二年半の月日が過ぎました。作品が完成して以降、再会したスタッフは数人であり、回数も数える程でしたが、授賞式に揃って出席して久闊を叙することを心底喜んでおります。(1932年東京都)
優秀賞中島哲也「嫌われ松子の一生」


まったくのダメ監督です。主演女優には嫌われ、スタッフにはソッポを向かれ、現場は日々地獄、映画の完成も危ぶまれるほどで…。それがまさか、このような賞をいただけるなんて!夢のようです。苦しいだけの映画作りですが、続けていれば、良いこともあるのですね。ありがとうございます。~今回、独自の映像世界を作り出した「嫌われ松子の一生」によって、見事初受賞となった。(1959年福岡県)
優秀賞三谷幸喜「THE 有頂天ホテル」


僕は喜劇作家なので、自分の作品という以前に、「コメディ映画」がこんなにも沢山の人に観て頂けて、さらにこういう形で評価して頂けたことを、大変嬉しく思います。しかもそれが自分の作品なんですから、これ以上の喜びはありません。個人的には、僕と同世代のカメラマンの山本さん、照明の小野さん、美術の種田さんと授賞式に出られるのも嬉しいです。~「THE有頂天ホテル」で3度目の監督賞受賞。(1961年東京都)
優秀賞山田洋次「武士の一分」


日本アカデミー賞が30回を迎えたことを祝福したいと思います。第1回の時に「幸福の黄色いハンカチ」で脚本、ならびに監督の優秀賞を受けてから、30年もたってしまったことに呆然たる思いを抱きつつ、選んで下さった会員諸氏に御礼を申し上げます。~今回、「武士の一分」で13度目の優秀監督賞受賞となった。この内、記念すべき第1回を含め、3度の最優秀監督賞に輝いている。(1931年大阪府)
優秀脚本賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞李相日/羽原大介「フラガール」


“実話である”をいいことに、実際にはなかった“嘘”でさえ“真”に変わっていく。おかげで、書きたいシーンや言いたい台詞を余すことなく詰め込むことが出来た。良き理解者である羽原さんに大感謝。(李談)快く取材に応じてくださった福島の皆さんに心から感謝します! (羽原談) ~「フラガール」によって、李相日は初受賞。羽原大介は、昨年に続いて2度目の受賞となった。(1974年新潟県)(1964年東京都)
優秀賞砂本量/三浦有為子「明日の記憶」


優秀賞を頂き有難うございます。砂本は、作品の映像を見る前に他界してしまいましたが、書いた最後の作品がこのような素敵な形になって残ったことを、家族皆で喜んでおります。(奥様談)「明日の記憶」という作品に関わることができたという事実が大きな財産です。堤監督、全てのスタッフの皆様、出演者の皆様に心から感謝いたします。ありがとうございました。(三浦談)(1958年神奈川県、2005年逝去)(1973年東京都)
優秀賞中島哲也「嫌われ松子の一生」


原作を読んだときの衝撃は忘れられません。読みながら次々に映像が浮かび、音楽が響き、読み終えたときには勝手に映画化を決意していました。山田宗樹さんの力強い小説に導かれ書かされた脚本であり、この受賞は山田さんとの共同受賞だと受けとめます。ですが、賞金は私一人で頂いておきます。~今回の「嫌われ松子の一生」では、様々な娯楽の要素を取り入れた、展開の早い台本で初受賞となった。(1959年福岡県)
優秀賞三谷幸喜「THE 有頂天ホテル」


僕は脚本家なので、やはり脚本を評価して頂けるのが一番嬉しいです。特にこの作品は、監督がもうひとつ信頼出来きず、ホンが勝負だと思ったものですから力を入れて書きました。誉めて貰えてホッとしています。僕は脚本家ですが、実はまだ、自分以外の監督の作品で、オリジナル脚本を書いたことがありません。映画関係者の皆さん、よろしくお願いします。~「THE有頂天ホテル」で5度目の脚本賞受賞。(1961年東京都)
優秀賞山田洋次/平松恵美子/山本一郎「武士の一分」


周りの方々に支えられての結果だと思います。ありがとうございました。(平松談)たいへん感激しております。忙しいところ、取材に協力していただいた皆様に感謝いたします。ありがとうございました。(山本談)~「武士の一分」の山田監督の脚本執筆に、各々助監督とプロデューサーでもある二人が参加、無駄を削ぎ落とし、細部まで配慮の行き渡った脚本が出来上がった。(1931年大阪府)(1967年岡山県)(1963年大阪府)
優秀主演男優賞
最優秀賞渡辺謙「明日の記憶」


「明日の記憶」では若年性アルツハイマー病に侵されて職を失い、次第に記憶をも失っていく主人公の苦悩と絶望、そしてささやかな希望を、何よりも情熱を傾けて演じている。そこには自らの経験が生きているのであろうが、物語を成立させる冷静な目も持っているに違いない。原作の映画化を希望したのは彼自身だからである。~4度目の受賞。本作にはエグゼクティブプロデューサーとしても参加。(新潟県出身)
優秀賞オダギリ・ジョー「ゆれる」


彼の個性はその独特なファッションセンスにも表れているが、その個性自体も日々進化しているのではないだろうか。そう思わせる何かが彼にはある。今回の「ゆれる」では、兄に対し複雑な感情を抱く弟の役を演じているが、研ぎすまされながらも過剰にならぬ演技で、これまでにない彼の繊細な一面を見せてくれた。~04年に新人俳優賞受賞、05年には最優秀助演男優賞を受賞している。(岡山県出身)
優秀賞妻夫木聡「涙そうそう」


爽やかな好青年、誰しもこの人にはそんなイメージがあるのではないだろうか。今回の「涙そうそう」で演じた役もその範疇に入るのかもしれないが、彼が丹念に構築していった人物像はそう単純なものではない。妹に、周囲の人々に、そして自分の過去にと、様々な思いを持ちながら精一杯生きている青年の心の襞を、丁寧かつ大胆に表現している。~昨年の「春の雪」に続き3度目の優秀主演男優賞受賞。(福岡県出身)
優秀賞寺尾聰「博士の愛した数式」


「博士の愛した数式」では、80分しか記憶がもたない天才数学者という、演じるに極めて難しいと思われる役柄に挑んだ。彼は、一つのことに没頭すると周りが見えなくなるという博士の性格を核に、そこから手探りで役の中に入っていった。この様な丁寧な役作りで主人公は実に暖かく魅力的となり、他の登場人物と共に、映画を素敵なものにしている。~今まで2度の最優秀主演男優賞を受賞。(神奈川県出身)
優秀賞役所広司「THE 有頂天ホテル」


副支配人としてトラブル解決に奔走するも、昔の妻に小さな嘘をついたが為、自らが大きなトラブルに巻き込まれて行く。「THE有頂天ホテル」では、こんな人間臭い役柄に挑戦した。彼は一人の人間の中にある多面性と滑稽さ、そして微妙な感情の揺れを鮮やかに表現し、果ては男の哀感までを漂わせて見事であった。~今回、10度目の優秀主演男優賞受賞、内2度は最優秀主演男優賞を受賞している。(長崎県出身)
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞中谷美紀「嫌われ松子の一生」


明るい悲劇の主人公、しかもミュージカル仕立ての部分もあるという「嫌われ松子の一生」に体当たりで挑んだ。監督の高レベルな要求に、一時はアイデンティティ・クライシスにまで陥ったという彼女であるが、完成した作品には、主人公が生き生きと表現されている。それは観る者をして、他の女優の松子を想像出来ぬ程のものであった。~04年の「壬生義士伝」では優秀助演女優賞を受賞している。(東京都出身)
優秀賞檀れい「武士の一分」


映画初出演の彼女が「武士の一分」で演じた加世は、下級武士の妻として懸命に夫を支えて生きる、しなやかで心暖かな女性であった。宝塚歌劇団の娘役で好評を博していた彼女にとって、今回の役は所を得たものであったかもしれない。立ち振舞いにも凛としたものが求められるからである。従ってその演技は、水を得た魚のようにのびやかなものになっている。~今回新人俳優賞も受賞。(京都府出身)
優秀賞長澤まさみ「涙そうそう」


素直な心で役に溶け込んでいき、やがてその役を自分のものとしてしまう彼女の力量は、多くの監督が認めるところであろう。今回の「涙そうそう」では、タイトルにもある涙に注目し、本番の時に心から泣ける演技を自分に課した。思い通りにいかぬことも多かったようであるが、ラストシーンでは会心の涙を流すことが出来たという。~04年新人俳優賞、05年には最優秀助演女優賞を受賞している。(静岡県出身)
優秀賞樋口可南子「明日の記憶」


若年性アルツハイマー病に侵され、次第に記憶を失ってゆく主人公を精一杯支える妻。「明日の記憶」でこの役を演じるに当り、彼女は小手先の芝居を避け、自然な演技を心掛けたという。それは夫の言葉や行為に対して自然なリアクションをすることでもあった。今回の役には、実人生で優れた生活者でもある彼女のセンスが生かされることになった。 ~今回、3度目の優秀主演女優賞受賞となった。(新潟県出身)
優秀賞松雪泰子「フラガール」


「フラガール」で演じたのは、寂れた炭鉱の町を立て直すため、請われて東京からやってきたダンス教師の平山まどかである。彼女は台本にはない主人公の背景を丹念に探りつつ、3ヶ月間絶え間なくバレエ、フラ、タヒチアンダンスのレッスンに明け暮れた。言わば、頭と身体を限界まで使ってまどかを演じたのであるが、それがどれほど素晴らしかったか、観客の反応と今回の受賞が雄弁に物語っている。(佐賀県出身)
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞笹野高史「武士の一分」


若い武士の暖かな家庭を陰ながら支える中間、徳平。地味ながら、その存在は「武士の一分」を厚みのあるものにしている。こういう人物を演じて存在感を出すことの出来る役者はそうはいない。ミュージカルを含む舞台、映画、テレビドラマ、そして歌舞伎に至るまで、この人はジャンルの枠を軽々と越えて縦横無尽な活躍をしている。そんな彼の経験が今回の役にも見事に生かされているのではないだろうか。(兵庫県出身)
優秀賞大沢たかお「地下鉄(メトロ)に乗って」


「地下鉄(メトロ)に乗って」の主人公、長谷部真次が、時空を越えて行った終戦直後の闇市で出会った男、アムール。彼は虚無感を漂わせつつも、前だけを見て必死に生きていた。真次の実父、アムールこと小沼佐吉の破天荒な生涯の折々を、エネルギッシュで野性的な持ち味を生かしつつ、冷静な視点で演じ分けて観客の高い評価を受けた。~05年に「解夏」で、優秀主演男優賞を受賞している。(東京都出身)
優秀賞香川照之「ゆれる」


近年の彼に感じるのは、演技に対する気迫と貪欲さであり、その情熱が次々に実を結んでいくことである。今回の「ゆれる」では、一見おだやかでありながら、心中には鬱屈したものを抱えた陰影のある人物を演じており、ここに於いても役への肉迫ぶりは鋭く、言葉とは微妙にずれる心の動きを、さりげない身ぶりで表現し、それが観る者の心までをも揺さぶっていく。~3年連続の優秀助演男優賞受賞。(1965年東京都)
優秀賞佐藤浩市「THE 有頂天ホテル」


男らしく重厚でありながら、飄々とした役柄の芝居もこなしてしまう、こんな印象があるほど彼の演技の引き出しは多い。「THE有頂天ホテル」で演じたのは、汚職疑惑で人生の瀬戸際に追い詰められた国会議員であるが、絶妙のセンスによって、どこか憎めないこの人物を、まるで実在するかのように見せてくれた。~最優秀主演男優賞及び2度の最優秀助演男優賞受賞に輝いている。(東京都出身)
優秀賞松山ケンイチ「デスノート 前編」


「デスノート前編」で、高い知能と推理能力を誇る探偵、L(エル)を演じている。この役は、主人公のライバルとして設定されているが、彼は、自ら役に工夫を凝らしながら、楽しんでLの人物像を造っていった。今回、「男たちの大和YAMATO」でも新人俳優賞を受賞しているが、性格や時代設定がまったく異なった役柄を演じて共に高い評価を得るということは、将来の大器を予感させるものがある。(青森県出身)
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞蒼井優「フラガール」


「フラガール」においては、寂れた炭坑に生きる健気で一所懸命な女の子を演じたが、この役には高度なフラダンスの技術も求められた。一人での見せ場も多かったからである。彼女は役に対する表現はもちろんのこと、踊りに対してもひとかたならぬ情熱と気迫でのぞみ、厳しい稽古の積み重ねによって、物語のクライマックスにも堂々とした踊りを見せて感銘を与えた。~本作品により新人俳優賞も受賞。(福岡県出身)
優秀賞蒼井優「男たちの大和/YAMATO」


小学生の頃から戦争の時代に関心を持ち、多くの本やビデオを見ていた彼女にとって「男たちの大和/YAMATO」に出演できたことは、一つの夢が叶ったことでもあった。それだけに、妙子という役を良く研究して掘り下げており、戦時下を必死に生きる女学生の日常を自然に、また情感豊かな演技で表現している。彼女の存在は、全編緊迫感が漂うこの映画に、清涼感とふくらみを与えたと言ってよい。(福岡県出身)
優秀賞富司純子「フラガール」


古風で筋は通すものの情にはもろいという、かつての日本の良き母親像を彷佛させる役を「フラガール」では演じている。彼女は、このような毅然とした佇まいの役柄を演じながら、同時に情感を漂わすことの出来る希有な演技者であろう。その力量がこの映画においても発揮され、緊張感を含む娘との関係を、現実感のあるものにした。~90年に優秀主演女優賞受賞、優秀助演女優賞は2度目の受賞。(和歌山県出身)
優秀賞もたいまさこ「かもめ食堂」


彼女が演じる役柄には独特の個性を求められるものが多いが、それはこの人に、余人をもって変え難い雰囲気と演技力があるからではないだろうか。「かもめ食堂」で演じたのは、両親を看取ったのちにヘルシンキにやって来て、やがては主人公サチエの食堂を手伝うようになるマサコという役であるが、物語を担う一人としてのリアリティと不思議な存在感をもたらしている。~今回が初受賞となった。(東京都出身)
優秀賞桃井かおり「武士の一分」


現代劇にも独特の雰囲気を漂わす人であるが、ひとたび戦前の物語や時代劇の中に登場すると、確固たる存在感で見る者を圧倒する力がある。「武士の一分」においても、持ち味である暖かさとユーモアを武器に、主人公の叔母以寧を人間臭い人物として表現し、観る者に強い印象を残している。~78年に第1回の最優秀助演女優賞、80年には最優秀主演女優賞、82、83年、優秀主演女優賞を各々受賞。(東京都出身)
優秀音楽賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞ガブリエル・ロベルト/渋谷毅「嫌われ松子の一生」


「嫌われ松子の一生」での受賞は非常な光栄です。機会を与えて頂いた金橋様、中島監督、私を日本で支えて頂いた高井家の皆様に心から感謝すると共に、今後の仕事で恩返しをしたいと存じます。(ロベルト談) 優秀音楽賞、ありがとうございます。ロベルトはじめ作家の方々、スタッフのおかげです。特に音楽制作に関わったグランドファンクの皆様に感謝します。(渋谷談)(1972年イタリア、クネオ)(1939年東京都)
優秀賞大島ミチル「明日の記憶」


この素晴らしい作品に関わる事が出来て心から嬉しいです。ありがとうございました。~98年「失楽園」で初受賞以来、01年「長崎ぶらぶら節」、03年「陽はまた昇る」「模倣犯」、04年「阿修羅のごとく」、そして昨年の「北の零年」と、近年の活躍は目覚ましい。今回の「明日の記憶」では、記憶に残るテーマ曲もさることながら、物語の端々に印象的な音を表現して、緊迫感を盛り上げている。(1961年長崎県)
優秀賞冨田勲「武士の一分」


この度「武士の一分」の音楽が優秀賞に選ばれました事を、たいへん嬉しく思います。にわかに視覚を失った青年の苦悩など、できるだけ音楽の表現を控えめに、その映画の根底を支えるように努め、作曲しました。山田監督の映画のストーリーには、貧しいながらも最後には必ず救いや期待があり、観客に感動とともに生きる希望を与えます。藤原道山氏の尺八とストリングスがそれを表してくれました。(1932年東京都)
優秀賞久石譲「男たちの大和/YAMATO」


日本アカデミー賞優秀音楽賞に選出していただきありがとうございます。最近はいくつかの海外映画の音楽も担当しましたが、日本の映画でしかも非常にスケールの大きい「男たちの大和/YAMATO」に参加、そして受賞できたことをとても光栄に思います。スタッフ、キャストそして映画を観てくださった皆様に心より感謝いたします。~03年以来、9度目の受賞。その内5度の最優秀音楽賞受賞。(1950年 長野県)
優秀賞本間勇輔「THE 有頂天ホテル」


日本アカデミーの皆様、有難うございました。賞に無縁の僕にとって最初で最後の授賞式かもしれませんが当日が楽しみです。誉めて貰えるのは大好きです。また、「THE有頂天ホテル」に起用して下さった三谷監督を始め、プロデューサー、スタッフ、キャストの皆様に感謝します。楽しんだ上に勉強になった現場でした。この作品には誇りを持っています。今後も日本映画界に貢献できるよう努力します。(1952年JAPAN)
優秀撮影賞
最優秀賞長沼六男「武士の一分」


「武士の一分」で、時代劇三本になりました。何時もの事ですが、馴れに流されたり、技術に走ったり、奇を衒ったりの目先の見栄えに囚われず、オーソドックスに物語の核心を見失う事のない様心掛けました。セット撮影が大半の映画です。閉息感、息苦しさ、似たような画の連続にならない様苦心しました。天候や時間の微妙な変化は照明部さん、季節の移り変わりは美術部さん、各パートの力の集大成です。(1945年長野県)
優秀賞阿藤正一「嫌われ松子の一生」


松子の内面的な世界観を表現するために、デフォルメされた色や光の世界が評価された事を嬉しく思います。またこの世界を作るため最後まで頑張ってくれた現場のスタッフに感謝します。そして何よりも、この世界観を提示してくれた監督のイマジネーションに感謝します。~今回、「嫌われ松子の一生」で初受賞。ミュージカル部分の鮮やかな映像はもちろん、様々な時代の雰囲気もよく表現されている。(1954年群馬県)
優秀賞阪本善尚「男たちの大和/YAMATO」


この映画映像をデジタル技術の特撮で語りたくなかった。出来れば全てを実写でやりたかったが願えぬ事で、戦艦大和が生きた舞台を、先輩カメラマン諸氏が命をかけて歴史の真実を残して下さった構図や空気感を下敷きにして再現した。その60余年の時間を継承した映像が評価されたことはとても感激です。大和を海原に再び走らせたVFXスタッフ、それを撮った5人のカメラマンの総代で賞を頂きます。(1942年奈良県)
優秀賞山本英夫「THE 有頂天ホテル」


最初に「THE有頂天ホテル」の台本を手にして驚いたのが、その分厚さでした。そして、次に驚いたのが、話の面白さや、キャストの顔ぶれの豪華さなど、そこには、紛れもない三谷ワールドが展開されていました。そんな、驚きや、発見、模索の中で、スタッフ全員が悩みながらも楽しみ、又は参加した作品が、この様な形で実を結んだ事をうれしく思います。~今回が6年ぶり、3度目の受賞となった。(1960年岐阜県)
優秀賞山本英夫「フラガール」


この「フラガール」は、多くの人々の想いや願いのこもった作品だと思います。昭和40年、石炭産業も斜陽の折、北国・常磐の地にハワイを作ろうという起死回生のプロジェクトの中で、フラと言う踊りを通して、その復活の大きな担い手となった女性達。それを作品の中で見事に演じきった女優陣達に拍手。この時代を実際に生きた人々も「フラガール」を見て同じ様に感じてくれていると思います。(1960年岐阜県)
優秀照明賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞中須岳士「武士の一分」


まずは助手達をはじめ、業者やスタジオ等沢山の方々のお力添えのお陰でこの様な名誉ある賞を頂けた事を感謝致します。そして何よりも、私の様な若輩者を山田組という確固たるチームに迎え入れて頂き、チャンスを下さったキャメラマンの長沼氏、そして見守って下さった山田監督や松竹の製作陣の皆様に厚く御礼申し上げます。これからも今回の受賞に恥じぬ様、精進して参ります。~「武士の一分」で初受賞。(1968年大阪府)
優秀賞木村太朗「嫌われ松子の一生」


普段CMの世界に身を置く者として、この度の受賞は望外の喜びです。「嫌われ松子の一生」は、悲惨な人生の筈なのに前を向いてガムシャラに生きた女性の話です。これをミュージカルコメディに仕立てるというもので、ハリウッドのミュージカル映画を意識しました。刺激的な陰影のある大人の光、夢のような色彩豊かな光等。現場ではキャスト・スタッフについて行くので精一杯でしたが、良い仕事が出来たと思っています。(1949年東京都)
優秀賞大久保武志「男たちの大和/YAMATO」


照明賞ありがとうございます。「男たちの大和/YAMATO」は初めて全編ハードディスクでの撮影で良い経験になりました。最初にオープンセットを見た時、その実物大の大きさに驚き、合成する為のブルーバック左、右舷合せて300メートル以上張るのに毎日風と格闘したのが賞につながったのかと思っております。関係者、スタッフに感謝します。~03年以来、今回が3度目の受賞となった。(1946年東京都)
優秀賞小野晃「フラガール」


今回は「フラガール」とのダブル受賞ということで喜びも2倍です。三谷ワールドに多少なりとも貢献出来たのならば大変光栄です。この作品に携わった全てのライティングスタッフに感謝します。~98年、「失楽園」で初受賞。今回は9年ぶりの受賞となった。ホテルという、照明が大切な要素となる華やかな空間を、綿密なライティングによって表現し、リアルな映像を作ることに貢献している。(1960年北海道)
優秀賞小野晃「THE 有頂天ホテル」


今回は「THE有頂天ホテル」とのダブル受賞ということで喜びも2倍です。この作品でフラガール達と共に成長出来たならば誇りに思います。同じく、この作品に携わった全てのライティングスタッフに感謝します。~昭和40年当時の様々な場所の雰囲気作りから、フラガールの見せ場であるハワイアンセンターの舞台の光まで、照明に求められたものは少なくなかったであろうが、見事な仕事で答えている。(1960年北海道)
優秀美術賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞松宮敏之/近藤成之「男たちの大和/YAMATO」


たくさんの人達の想いと大きな力によって、世界一大きく美しい船「YAMATO」ができ上がりました。多くの方々と貴重な時間を過ごさせて頂き感謝しております。(松宮談)この賞は大勢の優秀な美術スタッフの努力の結果だと思っております。全員の知恵と技術で完成した原寸大の大和は臨場感溢れるものになっていました。この作品に出会えた幸せを感じております。(近藤談)(1959年和歌山県)(1958年三重県)
優秀賞桑島十和子「嫌われ松子の一生」


たくさんの中島組美術部の代表として頂戴致します。ありがとうございました。~今回、「嫌われ松子の一生」によって初受賞。本作品では、主人公松子のキャラクターを重要に考えると共に、彼女が付き合う人や時代ごとに基調の色を決めていった。その成果は、松子が暮らした部屋の違いのみならず、ミュージカル部分の派手やかな場面でも発揮されており、映画の成立に貢献している。(1971年秋田県)
優秀賞種田陽平「THE 有頂天ホテル」


ホテルの中だけが舞台になっているシチュエーション・コメディの美術を評価して頂いたこと、とても嬉しく思います。三谷監督が紡ぎ出す複雑な人間模様と同じように、空間の多様性と広がりを意識して架空のホテルをつくりました。映画の世界観を隅々までつくりあげてくれたアシスタント、装飾、大道具、美術部全員に感謝します。~「THE有頂天ホテル」によって、8年ぶりの受賞に輝いた。(1960年神奈川県)
優秀賞種田陽平「フラガール」


40年前が舞台でありながら、大仕掛けではなく手作りの感覚を大切につくった映画です。現実と同じ常磐の地にセットをつくりこんだので、極寒の中のハードな撮影となりましたが、逆にリアリティが生まれ、フィルムの中では登場人物が生き生きと輝いていました。スタッフ、キャスト全員が一丸となって1965年を生き抜いたような達成感があったと思います。~ 「フラガール」でダブル受賞。(1960年神奈川県)
優秀賞出川三男「武士の一分」


「武士の一分」は多くの人達から反響を頂きました。観客に媚びたり顔色を伺うのではなく、本当に作りたい映画をスタッフ全員が思いを込めて必死になって作る、その結果が今回の成果だと思います、観客は本当の良い映画をわかってくれて、きっと付いて来てくれるはずです。僕らがどんなに良い仕事をしても見てくれる人がいなければ意味がないのですから。~03、05年に続く山田監督時代劇での受賞。(1936年東京都)
優秀録音賞
最優秀賞松陰信彦/瀬川徹夫「男たちの大和/YAMATO」


監督をはじめスタッフ・キャストの皆さんの協力で、この賞を受賞することが出来ました。どうもありがとうございました。最後に妻と子供達に感謝!(松陰談)「男たちの大和/YAMATO」は仕上げでの参加でしたが、現場録音を担当した録音部の努力と無理な要求に応えてくれた効果部、そしてシーンごとにバランスの良い音楽を配してくれた久石譲さんの音楽があっての受賞です。(瀬川談)(1961年大阪府)(1943年岩手県)
優秀賞岸田和美「武士の一分」


優秀録音賞を頂きありがとうございました。この作品は、「音」は時代感、緊迫感、力強さの作品作りを心掛けました。素晴らしい作品に参加することが出来てとても幸せに思っています。山田監督を始め、キャスト、オールスタッフの皆さんの協力があってのことです。特に録音スタッフの努力にお礼を言いたいと思います。~01年「十五才 学校Ⅳ」で初受賞。「武士の一分」で4度目の受賞に輝いた。(1952年神奈川県)
優秀賞志満順一/太斉唯夫「嫌われ松子の一生」


日本アカデミー賞優秀賞に選ばれたことを光栄に思い、今後の精進の糧にしたいと思います。また、機会を与えていただいたすべてのスタッフ、特に録音助手の皆に感謝します。(志満談)この仕事を続けてきて本当に良かったと思いました。チャンスを下さった方々に深く感謝致します。未熟ですが、自分なりの特異性も少し出せたと思います。(太斉談)~「嫌われ松子の一生」で両者共初受賞(1961年青森県)(1951年東京都)
優秀賞白取貢「フラガール」


この度の日本アカデミー賞優秀賞受賞という、栄えある名誉をいただき、うれしく思います。今後、この賞に恥じぬよう日々精進していきたい所存であります。ありがとうございます。~今回「フラガール」で初受賞となる。ハワイアンの音楽が印象的な映画であるが、随所に効果的な音を配して、昭和40年という時代に生きる炭鉱の人々の生活を現実感のあるものにしている。(1962年北海道)
優秀賞瀬川徹夫「THE 有頂天ホテル」


三谷幸喜監督2作品のうち「ラヂオの時間」での最優秀録音賞受賞があり、今回の「THE有頂天ホテル」でまた優秀録音賞に選ばれたことをとても嬉しく思っております。三谷監督の情熱とこだわりに少しでも貢献できたことは無上の喜びであり、今後の作品作りへの大いなる励みにもなります。今回はベテランのキャストがたくさん出演されており、その達者な演技にはずいぶんと助けられた思いです。(1943年岩手県)
優秀編集賞
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞小池義幸「嫌われ松子の一生」


優秀賞の受賞、驚きと感謝の気持ちで一杯です。いつも自分を助け支えてくれた、監督やスタッフの皆さん、ありがとうございました。素晴しいキャスト・スタッフに囲まれ、仕事ができた事を大変嬉しく思います。まだまだ未熟者ですが、今後も宜しくお願いします。~今回、「嫌われ松子の一生」で初受賞。場面ごとに挿入される音楽に細心の注意を払いながら画をつないだという。(1980年神奈川県)
優秀賞石井巌「武士の一分」


「武士の一分」で名誉ある賞を頂きとても嬉しく思います。それに、すばらしい「武士の一分」は営業成績も大変良好で、全国で大勢の方々に見て頂いたことで、我々スタッフは何よりも喜びでいっぱいです。それが次の作品への弾みとなり、意欲を益々強くして頑張れるものと思います。~今回が6度目の受賞である。その内、03年には、「たそがれ清兵衛」で最優秀編集賞に輝いている。(1933年神奈川県)
優秀賞今井剛「フラガール」


撮影現場から送られてきたフィルムを見た時、すでにすばらしい作品になる事は予想できました。そのぐらい画に力があったのを覚えています。監督はじめ現場スタッフの努力と、役者さんたちの生き生きとした演技があってのこの編集賞だと思っています。良い作品にしようと努力した全てのスタッフ、キャストに感謝したいです。ありがとうございます。~昨年に続き、「フラガール」で4度目の受賞。(1969年静岡県)
優秀賞上野聡一「THE 有頂天ホテル」


ありがとうございます!~03年「突入せよ!『あさま山荘』事件」及び「ピンポン」でダブル受賞。共に臨場感溢れる映像であった。今回4年ぶりに「THE有頂天ホテル」で2度目の受賞となる。この映画では大勢の登場人物が交錯するアップテンポの映像が、手際良い編集によりスッキリとまとめられて、さらに魅力有るものとなった。(1969年広島県)
優秀賞米田武朗「男たちの大和/YAMATO」


「男たちの大和/YAMATO」は2時間25分、合成400カットを含む約2500カットの映画です。多くの方々の想い、情熱、精神の凝縮された約40時間の映像を編集させて頂きました。至福の体験でした。スタッフ、キャスト、映画の成立を支えた全ての方々に深く感謝し、代表して賞を頂きたいと考えます。受賞を誇りとし、感謝の気持ちを忘れず日々精進します。ありがとうございました。(1964年兵庫県)
優秀外国作品賞
(C)父親たちの星条旗 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.and Dream Works LLC All Rights Reserved.
最優秀賞父親たちの星条旗


硫黄島の激戦地、摺鉢山の頂上で写された一枚の劇的な写真。そこに写っていた若い兵士達は英雄となり、やがて国策のために利用されていく。だがその写真の裏側には別の物語があった。クリント・イーストウッド監督は、一枚の写真によって大きく運命を変えられていった3人の若者の人生を通して、多くの若き兵士達が参加した硫黄島戦の実相と、戦争が人間に及ぼす影響を、冷静かつ鋭く描き出している。(ワーナー)
優秀賞クラッシュ


ロサンゼルスの街に生きる多種多様な人々。それぞれ異なった状況に置かれた彼等の人生がどこかで交錯し、そして事件が引き起こされていく。ポール・ハギス監督は、自らの経験や観察から脚本を書き起こし、人の心に潜む偏見や不寛容さが生む悲劇を、街のさまざまな場所を背景に、リアルなタッチで淡々と描き出した。尚、この映画は第78回アカデミー賞に於いて、作品、脚本、編集の各部門で受賞している。(ムービーアイ)
優秀賞ダ・ヴィンチ・コード


ルーブル美術館で発見された館長の他殺体は、ダ・ヴィンチの人体図を模した形で横たわり、周りには暗号が残されていた。容疑者となったハーヴァード大学のラングドン教授は、ダ・ヴィンチが絵画に仕掛けた謎に敢然と挑んでいく。ロン・ハワード監督は、世界中で大ベストセラーになったダン・ブラウンの原作を、知的な要素を損なうことなく、壮大なサスペンス・ミステリーとして映像化した。(ソニー・ピクチャーズ)
優秀賞パイレーツ・オブ・カリビアン・デッドマンズ・チェスト


ブラックパール号を駆って痛快無比な冒険を繰り広げる孤高の海賊キャプテン・ジャック・スパロウ。そしてその冒険に巻き込まれていく総督の令嬢エリザベスと海賊の血をひく青年ウィル。彼等は深海の悪霊デイヴィ・ジョーンズの心臓が入ったチェストを求めて再び冒険に乗り出していく。シリーズ3部作の2作目となるこの作品では、大ヒットした前作にも増してエキサイティングな物語が展開される。(ブエナ ビスタ)
優秀賞ホテル・ルワンダ


内戦が終息したばかりのルワンダの首都キガリ、そこにある高級ホテルの支配人ポールは、誰しも認める有能なホテルマンであった。だが、充実した日々を送っていた彼は再び民族間の争いの中に巻き込まれ、大きな決断を迫られる。1994年に起こった実話をもとに、勇気ある決断で1200人もの命を救った良心の人、ポール・ルセサバギナの物語を、緊迫感溢れる映像で映画化。(メディア・スーツ=インターフィルム)
新人俳優賞
優秀賞須賀健太「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」


子役としては、すでに02年の頃からテレビで活躍し、映画等にも出演していたが、何と言っても彼の名を広く世に知らしめたのは、昨年の「ALWAYS三丁目の夕日」で淳之介少年を演じたことであろう。それほど彼の演技力と存在感は際立っていた。今回は大ヒットコミックを映画化した「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」で、淳之介役とは正反対のガキ大将花田一路を、エネルギッシュに演じている。(東京都出身)
優秀賞塚地武雅「間宮兄弟」


お笑いコンビ、ドランクドラゴンでデビューして以来、テレビやラジオ等で大活躍、近年はドラマにも出演して独特の存在感を示している。映画出演2作目となった「間宮兄弟」では、驚くほど仲の良い兄弟の弟、徹信を演じているが、これは、演者の素の部分にも人柄の良さを求めた森田監督直々のキャスティングであった。彼は、不器用ながら繊細で誠実なその役柄を、余すことなく表現して評価された。(大阪府出身)
優秀賞速水もこみち「ラフ」


02年のテレビドラマ「逮捕しちゃうぞ」でデビューを飾り、それ以降、恵まれたと容姿と体格を生かして、ドラマやCMなどで活躍。現在では各方面から引っ張りだこの人気を博している。映画初出演となった青春ラブストーリー「ラフ」では、競泳に賭ける一途な青年を演じているが、撮影の終了を残念に思ったほど、映画に対して愛着をもって臨んでおり、そんな彼の情熱は画面からも伝わってくる。(東京都出身)
優秀賞松山ケンイチ「男たちの大和/YAMATO」


01年に本格デビューして以降、映画やテレビドラマでの活躍は目覚ましいものがある。今回の受賞作である「男たちの大和/YAMATO」では、特別年少兵を演じているが、大和に関する原資料を読み、そして生存者からも貴重な話を聞き、精一杯の努力で、戦争の時代を生きた若者の役を自分のものにしていった。その成果は、優秀助演男優賞受賞となった「デスノート前編」の演技にも生かされている。(青森県出身)
優秀賞蒼井優「フラガール」


99年のミュジーカル「アニー」で、およそ1万人の中からポリー役に抜擢されて舞台デビュー。01年には映画「リリイ・シュシュのすべて」に出演、以後は映画を中心に、活動の場をテレビやCMにも広げていった。今回の「フラガール」では、フラダンスに人生を賭けた炭鉱の娘、紀美子を演じているが、演技や踊りはもちろんのこと、方言にも熱心に取り組み、その存在は映像の中で光彩を放っている。(福岡県出身)
優秀賞檀れい「武士の一分」


92年、宝塚歌劇団雪組の公演「この恋は雲の涯まで」で初舞台を踏む。93年には月組に配属され、99年の「うたかたの恋/ミリオン・ドリームズ」では、主演の一人として男爵令嬢マリーを演じ、好評を博した。「武士の一分」は、05年に宝塚を退団以来、初めての映画出演となったが、凛としながらも可憐な主人公の妻、加世の存在感を画面に醸し出し、その演技力によって優秀主演女優賞にも輝いた。(京都府出身)
優秀賞山崎静代「フラガール」


03年に結成したお笑いコンビ、南海キャンディーズでの活躍によって、〝しずちゃん〟は、一躍お茶の間の人気者に。「フラガール」は2度目の映画出演であるが、この作品が女優としての本格的デビューとなった。彼女が演じたのは、寡黙でありながらフラダンスに情熱を燃やす娘、小百合の役であったが、のびのびとした演技と個性輝く踊りを見せて、今後多方面での、さらなる飛躍の可能性を示した。(大阪府出身)
優秀賞YUI「タイヨウのうた」


05年に自作の曲「feel my soul」が、フジテレビの月9ドラマ「不機嫌なジーン」の主題歌に起用され、シンガーソングライターとして幸運なデビューを飾る。映画初出演となる「タイヨウのうた」では、太陽の光にあたれないXP(色素性乾皮症)という病を持った16歳の少女、薫に抜擢された。この作品には、夜の公園で弾き語りするシーンなどもあり、彼女は今の自分を最大限に生かして役を演じている。(福岡県出身)
協会特別賞
優秀賞鈴木和幸「映画美術特殊工作」


 
会長功労賞
優秀賞「LIMIT OF LOVE 海猿」企画チーム


2001年に、「海猿」の映画企画の開発を開始。以来、第1部映画、第2部テレビシリーズ11話、そして第3部となる本作を同じ監督、脚本家、主演者によって製作。日本映画のスケールを超えた数々の撮影を遂行しつつ、人命救助の感動と青春群像劇の楽しさを巧みに描き、加えて全3部を通して登場人物のキャラクターを育て進化させることで観客に強い印象を残し、興行収入71億円という記録的なヒットを生み出した。この優れた企画力によって、本作は2006年度邦画洋画観客動員逆転の立役者となった。
岡田茂賞
優秀賞株式会社ロボット


1994年製作の第一回劇場用映画「Love Letter」以来、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「ALWAYS 三丁目の夕日」など、26本の良質な映画を一貫して製作。特に、昨年製作の「LIMIT OF LOVE 海猿」は、興行収入71億円の画期的成功を収め、多くの映画ファンの記憶に残る映画として、日本映画界の発展に大きく貢献した。独自の創造性と高い技術力によって、娯楽性と芸術性を併せ持った高品質の映画を生み出し続けている。
会長特別賞
優秀賞伊福部昭「音楽」


日本の映画音楽を多数作曲。映画「ゴジラ」等絶大な劇的効果に大きく寄与しました。ここにその偉業を讃え、会長特別賞を授与いたします。
優秀賞今村昌平「監督」


日本映画の代表的監督として、人間存在の根源に迫る傑作を世に送り、世界からも圧倒的賛辞を浴びました。ここにその偉業を讃え、会長特別賞を授与いたします。
優秀賞田村高廣「俳優」


日本映画の名優として、数々の名作に人間味溢れる演技を刻み、称賛を浴びました。ここにその偉業を讃え、会長特別賞を授与いたします。
優秀賞丹波哲郎「俳優」


日本映画の名優として、豪放なスケールと入魂の演技を貫き、多くのファンを魅了してきました。ここにその偉業を讃え、会長特別賞を授与いたします。
優秀賞永山武臣「松竹」


松竹株式会社社長時代、1984年から1999年の間15年の長きに渡り、当協会組織委員として協会発展に貢献して下さいました。ここに感謝の心をこめて、会長特別賞を授与いたします。
話題賞

作品部門:「フラガール」


シネカノン=ハピネット=S・D・P

俳優部門:塚地武雅「間宮兄弟」