第44回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
日時: 2021(令和3)年3月19日(金)
場所: グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール
司会: 羽鳥慎一/シム・ウンギョン

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優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C) 2020 Midnight Swan Film Partners

最優秀作品賞 「ミッドナイトスワン」


【最優秀受賞コメント】
「諦めずに一歩ずつでも進むと、奇跡って起きるし、いいこともあるんだなと。」草彅剛
「この映画に参加できて本当に良かったです。」服部樹咲
「映画って一人では作れないし、スタッフと出演者、そして観客があってこそだと思いました。」内田英治/監督
「全員が同じ方向を向いて作り上げた作品です。観客の皆さんの優しくて尊い眼差しが、この賞に導いてくださったと思います。」森谷雄/フィルムパートナーズ代表
【作品紹介】
「下衆の愛」(16)『全裸監督』(19)などの内田英治監督が、約5年間構想を温めていたオリジナル企画を、草彅剛を主演に得て、念願の映画化。脚本・ノベライズも内田監督自身が手掛けている。生き辛さを抱えながら暮らすトランスジェンダーの凪沙は、母に育児放棄されていた親戚の娘・一果を預かることに。孤独な二人が共同生活をするうちに、疑似親子のような感情が芽生えていく。一果のバレエの才能を目の当たりにし、突き動かされていく凪沙を草彅が繊細に好演すれば、オーディションで選ばれ本作で女優デビューとなる服部樹咲が、数々の受賞歴を持つバレエの実力で一果役に圧倒的な説得力を持たせている。公開後はリピーターが続出し、ロングラン上映を記録した。第63回ブルーリボン賞主演男優賞、第45回報知映画賞と第33回日刊スポーツ映画大賞の各新人賞受賞。今回の日本アカデミー賞では8部門を受賞。
監督・脚本:内田英治
製作会社:CULEN/アットムービー

優秀作品賞 「浅田家!」


【作品紹介】
自身の家族を被写体にして第34回木村伊兵衛写真賞を受賞したユニークな写真集『浅田家』と、東日本大震災の被害に遭った写真を洗浄するボランティア活動を取材した『アルバムのチカラ』。写真家・浅田政志によるこの2冊の写真集を原案に、「湯を沸かすほどの熱い愛」(16)「長いお別れ」(19)の中野量太監督が温かな目線で映し出す、愛すべき人間ドラマ。写真家になる夢を叶える主人公の成長や、震災の傷跡を抱えつつ前向きに生きる人々の姿を印象的に描き、ポジティブな余韻を残した。劇中に登場する家族写真を、写真集と同じ構図で浅田氏が撮影したことも話題に。第36回ワルシャワ国際映画祭国際コンペティション部門最優秀アジア映画賞、第63回ブルーリボン賞監督賞、第42回ヨコハマ映画祭主演男優賞、第33回日刊スポーツ映画大賞助演男優賞、助演女優賞を受賞。今回の日本アカデミー賞では8部門で受賞。
監督:中野量太 脚本:中野量太/菅野友恵
製作会社:東宝/ジェイ・ストーム/ホリプロ/ジェイアール東日本企画/カルチュア・エンタテインメント/パイプライン/朝日新聞社/毎日新聞社/ブリッジヘッド/パパドゥ音楽出版/LINE/日本出版販売/GYAO/中日新聞社

優秀作品賞 「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【作品紹介】
故・渥美清が、“フーテンの寅さん”こと車寅次郎を演じ、国民的人気を誇る「男はつらいよ」シリーズ約22年ぶりの新作。通算50作目かつ50周年記念作品で、渥美氏に捧げる作品となった。柴又帝釈天の参道にあった団子屋「くるまや」はカフェに生まれ変わっており、一人娘と暮らす満男は小説家になっていた。そんなある日満男は初恋の人・イズミとまさかの再会を果たす。全編デジタルHDで撮影され、4Kデジタル修復された過去作の映像とともに、物語が紡がれていく。寅さんゆかりの人たちの今を描きつつ、時代が変わっても変わらない人情や、色褪せない寅さんとの思い出が、登場人物だけでなく観客の心も躍らせる。スクリーンで蘇る寅さんの名シーン、名言、歴代マドンナの映像の数々。そのどれもが珠玉の輝きを放つ、シリーズ集大成といえる一本。今回の日本アカデミー賞では10部門で受賞。
監督:山田洋次 脚本:山田洋次/朝原雄三
製作会社:松竹

優秀作品賞 「罪の声」


【作品紹介】
元新聞記者の塩田武士が、昭和の終わりに日本中を震撼させ、未解決のまま時効を迎えた企業脅迫事件をモチーフに執筆し、2016年度『週刊文春』ミステリーベスト10国内部門第1位、および第7回山田風太郎賞を受賞したフィクション『罪の声』を映画化。原作者も絶賛した野木亜紀子による脚本を、『逃げるは恥だが役に立つ』(16)等でタッグを組んできた土井裕泰監督が演出。大人の都合で事件に巻き込まれた子供が背負わされた苦しみや痛みが、見る者の心を締め付ける。警察・メディアが抱える問題にも鋭く切り込み、世に一石を投じる一本となった。第75回毎日映画コンクール男優助演賞、第45回報知映画賞作品賞、主演男優賞、助演男優賞、第42回ヨコハマ映画祭助演男優賞、第33回日刊スポーツ映画大賞作品賞、主演男優賞を受賞。今回の日本アカデミー賞では11部門、12賞を受賞(優秀助演男優賞は2名)。
監督:土井裕泰 脚本:野木亜紀子
製作会社:TBSテレビ/講談社/WOWOW/TBSスパークル/トライストーン・エンタテイメント/ジェイアール東日本企画/TCエンタテインメント/朝日新聞/毎日新聞

優秀作品賞 「Fukushima 50」


【作品紹介】
2011年3月11日、東日本大震災発生。当時、福島第一原子力発電所では何が起こっていたのか。作家・門田隆将が福島第一原発事故の関係者90名以上に取材して書き上げたノンフィクション『死の淵を見た男吉田昌郎と福島第一原発』を原作に、若松節朗監督が映像化。原子炉がメルトダウンするかもしれない危機的状況下で、発電所内にとどまり命がけで戦った作業員たちの不眠不休の5日間を緊迫感たっぷりに描く。撮影はほぼ順撮りで行われ、作業員たちの疲労が濃くなっていく過程を役者陣がリアルに表現。オープンセットで原子炉建屋の外観を再現し、1・2号機中央制御室や緊急時対策室内部のセットも細部まで本物そっくりに作りこまれた。タイトルとなっている「Fukushima 50」とは、最前線で闘った現場作業員たちの海外メディアによる呼称。第63回ブルーリボン賞作品賞受賞。今回の日本アカデミー賞では12部門で受賞。
監督:若松節朗 脚本:前川洋一
製作会社:KADOKAWA/松竹/IMAGICA GROUP/中日新聞社/報知新聞社/読売新聞社/福島民友新聞社/産経新聞社/西日本新聞社/中国新聞社/ムービーウォーカー
優秀アニメーション作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

最優秀アニメーション作品賞 「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」


【最優秀受賞コメント】
この作品とキャラクターたちにアニメとして命を吹き込んでいただいた全てのスタッフ、キャスト、アーティストの皆さん、作品を支えてくださった関係者の皆さん、本当にありがとうございます。もちろん原点である原作漫画を描かれた吾峠呼世晴先生にも、心から感謝を申し上げたいです。そして、劇場関係者と観客の皆さん一人一人にも、スタッフを代表して御礼を申し上げたいと思います。(岩上敦宏/企画)
【作品紹介】
吾峠呼世晴の大人気漫画を原作に、作画の美しさで知られるufotableの制作で、19年に放送したTVアニメシリーズの続きを描く。人間を喰らう鬼が闇の中で生きる大正時代。家族を鬼に殺され、唯一生き残った妹・禰豆子も鬼にされてしまった竈門炭治郎は、鬼殺隊に入って鬼を退治しながら、妹を人間に戻す術も探していた。修行を終えた炭治郎は、多数の行方不明者が出た無限列車へ仲間と共に乗り込み、鬼殺隊最強の剣士・柱の一人の煉獄杏寿郎と合流。夢の中に引きずり込む鬼と列車内で激闘を繰り広げる。TV化により急伸したその人気は、原作コミックの累計発行部数が1憶5000万部を超えた他、様々なメディアミックスなどで拡大。社会現象を巻き起こしており、その極めつきともいえる本作は、日本の歴代興行収入記録を更新中。
第45回報知映画賞アニメ作品賞、第33回日刊スポーツ映画大賞石原裕次郎賞を受賞している。
監督:外崎春雄 脚本:ufotable
製作会社:アニプレックス/集英社/ufotable

優秀アニメーション作品賞 「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」


【作品紹介】
その作品クオリティの高さから世界中にファンを持つ京都アニメーションが、第5回京都アニメーション大賞受賞の暁佳奈の小説を原作に、18年放送のTVアニメシリーズのその後を同じメインスタッフで制作した劇場版。終戦から数年後、戦争で失った両腕に義手をつけ、代筆業を行う自動手記人形(ドール)として働くヴァイオレットは、大切な上官ギルベルトの生存を信じ、彼が残した「心から、愛してる」という言葉の意味を探しながら暮らしていた。ある日、余命僅かな少年・ユリスの仕事を受ける中、郵便社の倉庫で宛先不明の手紙が見つかる。兵士として育てられて戦うことしか知らなかった少女が、仕事や日常生活での交流により成長して愛を知るまでを、京都アニメーションならではの叙情的な美しい作画で綴る。完結編的な物語は大きな感動を呼び、TAAF2021のアニメ オブ ザ イヤー部門で作品賞(劇場映画部門)を受賞している。
監督:石立太一 脚本:吉田玲子
製作会社:「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」製作委員会

優秀アニメーション作品賞 「映画 えんとつ町のプペル」


【作品紹介】
原作者で人気お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣が自身のベストセラー絵本をアニメ化。自ら製作総指揮と脚本を手掛け、「鉄コン筋クリート」(06)などの制作会社STUDIO4℃と組んで制作。えんとつだらけでいつも煙に覆われたえんとつ町では、煙の向こうに何があるかを想像すらできない人々が暮らしていた。突然いなくなった父から、空には星があると教えられて育った少年ルビッチは、それを皆に話したことから嘘つき呼ばわりされる。しかしルビッチは、ゴミの中から生まれたゴミ人間のプペルと友達になり、のけもの同士で大冒険の旅に出る。声優には、プペル役の窪田正孝、ルビッチ役の芦田愛菜を始め、立川志の輔、小池栄子、伊藤沙莉、野間口徹、國村隼らも参加。原作では描かれなかった結末も交えたファンタジックな物語には、全編に原作者・西野の熱いメッセージが散りばめられ、夢を信じる大切さを伝える。
監督:廣田裕介 脚本:西野亮廣
製作会社:「映画 えんとつ町のプペル」製作委員会

優秀アニメーション作品賞 「ジョゼと虎と魚たち」


【作品紹介】
03年に実写映画化もされた、芥川賞作家・田辺聖子の同名短編小説を、現代を舞台にして長編アニメ化。幼い頃から足が不自由なため家に籠りがちで、趣味の絵と本と想像の世界で生きてきた女性と、夢の実現ために海外留学を目指す大学生の青年を主人公に、その出会いと恋をアニメーションならではのイマジネーション豊かな表現で紡ぎ出す。バイトに明け暮れる勤労大学生の恒夫は、ある日、坂道で転げ落ちそうになっていた車椅子のジョゼを助ける。ジョゼと2人で暮らす祖母・チヅから、ジョゼの注文に応えるバイトを持ち掛けられた恒夫は、ひねくれて口が悪い彼女とぶつかりあいながらも、お互いの心の距離を縮めていく。声優は恒夫役を中川大志、ジョゼ役を清原果耶、制作は『鋼の錬金術師』『僕のヒーローアカデミア』シリーズなどのボンズが務めている。第25回釜山国際映画祭のクロージング上映作品。
監督:タムラコータロー 脚本:桑村さや香
製作会社:『ジョゼと虎と魚たち』製作委員会

優秀アニメーション作品賞 「STAND BY ME ドラえもん 2」


【作品紹介】
藤子・F・不二雄が生み出し、生誕50周年を迎えた国民的な人気漫画『ドラえもん』。同作を3DCGアニメ化し、第38回最優秀アニメーション作品賞を受賞した14年の長編の続編。名作として知られる「おばあちゃんのおもいで」を主軸に、それら原作の名エピソードとオリジナル要素を原作ファンの山崎貴が感動的な一つの物語に再構築。前作で描かれた「のび太の結婚前夜」の翌日を舞台に、のび太としずかの結婚式当日の知られざる物語が展開する。ある日、優しかったおばあちゃんに会うため、タイムマシンで過去へ向かったのび太は、“お嫁さんが見たい”と言うおばあちゃんの言葉を聞き、ドラえもんと共に未来の自分の結婚式を見せようと、大冒険を繰り広げる。声優には水田わさびらのレギュラー陣に加え、妻夫木聡、宮本信子、バカリズムらがゲスト参加。主題歌を菅田将暉が歌い、制作は白組が務めている。
監督:八木竜一 脚本・共同監督:山崎貴
製作会社:シンエイ動画/藤子プロ/小学館/テレビ朝日/ADKエモーションズ/小学館集英社プロダクション/東宝/電通/阿部秀司事務所/白組/
ROBOT/朝日放送テレビ/名古屋テレビ/北海道テレビ/九州朝日放送/広島ホームテレビ/静岡朝日テレビ/東日本放送/新潟テレビ21
優秀監督賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞若松節朗「Fukushima 50」


【最優秀受賞コメント】
「愚かな過去の歴史を変えることはできませんが、映画なら未来を変えることができるかもしれない」尊敬する大林宣彦監督がそんな言葉をおっしゃっていました。原発事故の映画化は避けては通れないチャレンジで、リアリティにこだわりました。10年経ちましたが、福島にはまだまだ帰還できずに苦しんでいる方々がたくさんいます。この映画がリマインダーや語り部として、いつまでも残ってくれればと思っています。
【受賞歴】第24回「ホワイトアウト」で初受賞。第33回「沈まぬ太陽」で優秀賞受賞
優秀賞内田英治「ミッドナイトスワン」


【受賞コメント】
未曾有の危機のなか、たくさんの方々に作品を見ていただいたこと、そして、賞をいただいたこと大変嬉しいです。今後もオリジナル作品を作る糧にして行きたいと思います。
【受賞歴】初受賞
優秀賞河瀨直美「朝が来る」


【受賞コメント】
世界的パンデミックの最中、一筋の光を届けることができたなら、光栄です。何かが欠けていても人生は続く、その道行きに希望を見出す瞬間は、人と人との繋がりの中に在る。そう信じてこの映画は誕生しました。最後に届けたかったメッセージを贈ります。あなたに会えてよかった。
【受賞歴】初受賞。また、本作で第75回毎日映画コンクール、第45回報知映画賞の各監督賞受賞
優秀賞土井裕泰「罪の声」


【受賞コメント】
この緻密で濃密な原作と共に闘ってくれた全てのスタッフと、昭和から令和へとつながる時代の流れをその存在感を以て体現してくれた全ての俳優の方たちに、心から感謝いたします。授賞式の会場で久しぶりにチーム「罪の声」の皆さんと再会できることが、監督として何よりの喜びです。
【受賞歴】初受賞
優秀賞中野量太「浅田家!」


【受賞コメント】
出会いと感動が、僕に映画を撮らせてくれていると思っています。今回も、たくさんの素敵な人に出会い、たくさんの感動に奮い立ちました。スタッフ、キャスト、関係者に支えられて初めて監督・中野量太は存在します。天職なのかは分かりませんが、僕はこの仕事が大好きです。みんな、ありがとう、これからもよろしく。
【受賞歴】第40回「湯を沸かすほどの熱い愛」で初受賞。また本作で第63回ブルーリボン賞監督賞受賞
優秀脚本賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞野木亜紀子「罪の声」


【最優秀受賞コメント】
ものすごく長くて密度のある原作でしたので、それを脚本化するのは引き受けたことを何度も何度も後悔するほどでしたが、できあがった作品を観たら、スタッフ、キャストの皆様が素晴らしくて、やってよかったなあと思いました。ですが、このような賞をいただけて、さらにやってよかったと思うことができました。この受賞を糧に、今後はオリジナルの映画も含めて、またどんどん新たな挑戦をしていきたいと思います。
【受賞歴】初受賞
優秀賞内田英治「ミッドナイトスワン」


【受賞歴】初受賞
優秀賞中野量太/菅野友恵「浅田家!」


中野量太
【受賞歴】第40回「湯を沸かすほどの熱い愛」で初受賞
【受賞コメント】
菅野:浅田政志さんの軌跡を辿り監督と共に西へ東へ奔走する中で、私自身も改めて『家族』を考える一作となりました。取材にご協力くださった皆様、携わられた全ての方々に感謝申し上げます。
【受賞歴】初受賞
優秀賞前川洋一「Fukushima 50」


【受賞コメント】
題材が題材なだけに実現するまでに時間がかかりました。それだけに大変思い入れの強い作品です。それが評価され、このような大きな賞をいただけるとは、大感激です。この作品に関わったすべての人に感謝しています。
【受賞歴】初受賞
優秀賞山田洋次/朝原雄三「男はつらいよ お帰り 寅さん」


山田洋次
【受賞歴】最優秀賞は第1回「幸福の黄色いハンカチ」を始め、これまでに4回受賞。他に優秀賞はこれまでに15回受賞。さらに第6回では特別賞、第36回では協会栄誉賞も受賞
【受賞コメント】
朝原:半世紀前にも遡る作品の歴史を振り返るという、とても不思議な脚本作りを経験しました。「男はつらいよ」シリーズに関わってこられた全員の脚本家、関係者に敬意と感謝を捧げ、謹んで賞をお受けします。
【受賞歴】初受賞
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞草彅剛「ミッドナイトスワン」


【最優秀受賞コメント】
今まで皆さんとお仕事させてもらえたり、応援していただいたり、(香取)慎吾ちゃんや(稲垣)吾郎さんなど本当に近い人たちが支えてくれて、今日この舞台に立てたんだなと思い、嬉しいです。僕は代表としてこの賞をもらっただけで、一人の力では到底辿り着けないところです。一人一人の人生がよりよく自由に全うできるような作品作りと、人との関わりの中で、これからも自分の人生を全うしていきたいと思います。
【受賞者紹介】
トランスジェンダーの主人公・凪沙役に扮した。孤独でナイーブな内面を抱えながらも、強く生きてきたが、母に頼まれ預かった少女・一果と暮らすうち、母になりたいという初めての感情が芽ばえていく。見返りを求めない、献身的な愛情が美しく切なく、見る者の胸に突き刺さる。女性としてのルックスはもちろん、わずかな目線の動きや仕草まで神経が行き届いた繊細な演技で、圧倒的な存在感を放った。
【受賞歴】初受賞。他に、本作で第63回ブルーリボン賞主演男優賞受賞
優秀賞小栗旬「罪の声」


【受賞者紹介】
取材報道のあり方に疑問を持ち、志願して文化部に異動した元社会部記者・阿久津英士役。昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねるうちにのめりこみ、やがて真相に近づいていく。観客の目線に一番近いキャラクターとして、抑制された演技で見る者を作品世界に引きこんだ。記者としての矜持を取り戻していく心境の変化や、星野源演じる曽根との間に生まれる友情も丁寧に表現し、作品に深みをもたらしている。
【受賞歴】初受賞。他に本作で第45回報知映画賞、第33回日刊スポーツ映画大賞の各主演男優賞受賞
優秀賞佐藤浩市「Fukushima 50」


【受賞者紹介】
何度もタッグを組んでいる若松節朗監督作品で、福島第一原発1・2号機当直長を務める伊崎利夫を演じた。震災発生時、原子炉から最も近い中央制御室にいて、親友の吉田所長と連携しながら、原子炉の暴走を防ぐためのミッションを遂行していく。部下からの信頼も厚く、彼らを命の危険に晒すことに心苦しさを感じながらも、愛する故郷、愛する人々を守るために使命感を持って職務を全うする姿が、観客の心に深く訴えかけた。
【受賞歴】第18回「忠臣蔵外伝 四谷怪談」第40回「64-ロクヨン-前編」で最優秀主演男優賞、第24回「ホワイトアウト」第27回「壬生義士伝」で最優秀助演男優賞受賞。他に優秀主演男優賞は2回、優秀助演男優賞は4回受賞。第5回「青春の門」で新人俳優賞受賞
優秀賞菅田将暉「糸」


【受賞者紹介】
中島みゆきの楽曲『糸』をモチーフに、「64‒ロクヨン‒」(16)等の瀬々敬久監督が平成史を背景に描く壮大なラブストーリーで、素朴でひたむきな主人公・高橋漣を演じた。13歳で出会った初恋の人・葵が歩む人生と対照的に、生まれ育った土地で就職し、結婚し、やがて父親になる漣。喜びも悲しみも経験しながら、日々を一生懸命、誠実に生きる市井の人をリアルに演じ、同じように今を生きる観客の共感を呼んだ。
【受賞歴】第41回「あゝ、荒野 前篇」で最優秀主演男優賞、第43回「アルキメデスの大戦」で優秀主演男優賞、第37回「共喰い」で新人俳優賞、第41回「帝一の國」で話題賞[俳優部門]受賞
優秀賞二宮和也「浅田家!」


【受賞者紹介】
約3年ぶりの映画主演となった本作で演じたのは、浅田家の次男で、写真家になる夢を叶える主人公・政志。自由奔放でマイペースで予測不能。そのせいで周りを振りまわすこともあるが、それすら楽しみ全力で応援してくれる両親や兄、幼馴染の若奈らの愛情に包まれ、写真家として唯一無二の才能を発揮していく。飄々とした魅力で周囲を惹き付けるキャラクターをナチュラルに体現。豊かな表現力で、作品を牽引した。
【受賞歴】第39回「母と暮せば」で最優秀主演男優賞、第42回「検察側の罪人」で優秀助演男優賞受賞。他に、本作で第42回ヨコハマ映画祭主演男優賞受賞
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞長澤まさみ「MOTHER マザー」


【最優秀受賞コメント】
本当にたくさんの方に支えられなければ、映画作りはできないんだなと、去年、身に沁みて感じました。きっと作りたかった映画を作れなかった人たち、そして映画を公開できずに先延ばしになっている人たちも、たくさんいると思います。その中で映画を公開してたくさんの方に観に来ていただけたことは、本当に嬉しいです。これからも誠実に映画作りに向き合って、頑張っていきたいと思います。
【受賞者紹介】
17歳の少年が、実際に起こした祖父母殺害事件から着想を得て、大森立嗣監督が手掛けた衝撃作で演じたのは、息子を支配し、自分の意のままに動かそうとするシングルマザー・秋子役。ろくに働きもせず、親と妹に金を無心し絶縁され、息子や男に依存して生きている秋子が、どうしようもなく堕ちていく姿をリアリティをもって表現。役者の凄みを感じさせた。ラストシーンで見せる、別人のように変わり果てた表情も忘れがたい。
【受賞歴】本作と「コンフィデンスマンJP プリンセス編」で、第63回ブルーリボン賞主演女優賞、第33回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、第12回TAMA映画賞最優秀女優賞受賞
優秀賞小松菜奈「糸」


【受賞者紹介】
菅田将暉と3回目の共演となった本作で、波乱万丈な人生を送るヒロイン・園田葵に扮した。複雑な家庭に生まれ育ち、初恋の相手・漣との仲も引き裂かれ、孤独を抱えて生きてきた葵は、東京・沖縄・シンガポールと転々とする中で裏切りや別れを経験。何度も傷つきながらも、それでも前を向く。その凛とした美しさ、何があっても自分の力で進んでいこうとする強い意志と健気さで、応援せずにはいられないヒロイン像を生み出した。
【受賞歴】優秀主演女優賞は初受賞。第43回「閉鎖病棟-それぞれの朝-」で優秀助演女優賞、第38回「渇き。」で新人俳優賞受賞
優秀賞永作博美「朝が来る」


【受賞者紹介】
直木賞作家・辻村深月によるヒューマンミステリー小説を原作に、河瀨直美監督が描く人間ドラマで、特別養子縁組で迎えた息子・朝斗を、夫と共に深い愛情を注ぎ育てる妻・栗原佐都子を演じた。朝斗が6歳になった頃、生みの親を名乗る女性が現れ、幸せな日々に影を落とす。辛い局面にあっても取り乱さず、解決への道を探す知性と芯の強さがある佐都子をリアルに体現。内面から滲み出る母性と、誠実な存在感が光った。
【受賞歴】優秀主演女優賞は初受賞。第35回「八日目の蟬」で最優
秀助演女優賞受賞
優秀賞長澤まさみ「コンフィデンスマンJP プリンセス編」


【受賞者紹介】
古沢良太が脚本を務め、18年に連続テレビドラマ、19年に映画化第1弾となる「ロマンス編」が公開され大ヒットを記録した「コンフィデンスマンJP」シリーズ。長澤が演じるダー子は頭脳明晰な信用詐欺師(=コンフィデンスマン)で、くるくる変わる表情やファッションも魅力的なヒロイン。映画化第2弾となる本作では、身寄りのない少女を大富豪の隠し子に仕立て上げ、一獲千金を狙う。慈愛に満ちた母のようなダー子の新たな一面も見せた。
【受賞歴】第28回「世界の中心で、愛をさけぶ」で最優秀助演女優賞と話題賞[俳優部門]、第43回「キングダム」で最優秀助演女優賞受賞。他に優秀主演女優賞を3回、優秀助演女優賞を1回、第27回で新人俳優賞を受賞
優秀賞倍賞千恵子「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞者紹介】
寅さんの異母妹・さくら役として、シリーズ50作品すべてに出演。柴又帝釈天の参道にて、人情味あふれるにぎやかな日常を見せてきた。今回は吉岡秀隆扮する一人息子の満男に娘がおり、おばあちゃんになっているが、以前と変わらぬ笑顔と優しさで、家族や周りの人たちを温かく包み込む。前田吟演じる夫・博との長年連れ添った夫婦の自然なやりとりも心地よく、ファンに愛され続けるシリーズの魅力を支えている。
【受賞歴】第4回「遥かなる山の呼び声」「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」で最優秀主演女優賞受賞。他に優秀主演女優賞を3回、優秀助演女優賞を1回受賞(ノミネート含む)。第6回で特別賞受賞
優秀賞広瀬すず「一度死んでみた」


【受賞者紹介】
気鋭のCMディレクター浜崎慎治の映画監督デビュー作でコメディ初挑戦。デスメタルバンドのボーカルで、反抗期を引きずる女子大生・野畑七瀬を演じた。父を毛嫌いしていたが、“2日間だけ死ぬ薬”を飲んだ父が、生き返る前に火葬されそうになると、父を救うために奔走する。メタルファッションにピンクのグラデーションヘアーの個性的なルックスで、ハイテンションな七瀬を好演。パワフルな歌声も披露し、新たな魅力を炸裂させた。
【受賞歴】第41回「三度目の殺人」で最優秀助演女優賞、第40回「ちはやふる - 上の句 -」で優秀主演女優賞、第40回「怒り」で優秀助演女優賞、第39回「海街diary」で新人俳優賞受賞
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞渡辺謙「Fukushima 50」


【最優秀受賞コメント】
クランクインの際、出演者の皆さんに「今現在でも福島にこの原発事故で苦しんでいる方や命を落とされた方もたくさんいらっしゃるということを背負いきれないにしても、そういう思いをこの映画にぶつけていこう」と話させていただきました。“福島の力”をこの(最優秀賞)ブロンズに込めていただけたんだなと思っています。福島の皆さん、獲りましたので、どこか飾ってもらえるところに寄贈したいと思います。
【受賞者紹介】
実在の人物である福島第一原子力発電所所長、吉田昌郎役に扮した。現場のトップとして、事故の収束に向けて部下を鼓舞しながら精力的に指揮を執る一方、東電本店や官邸からの理不尽な命令・指示に対しては、歯に衣着せぬ物言いで反論する。「沈まぬ太陽」(09)でも組んだ若松節朗監督との再タッグで、リーダーシップあふれる骨太な男を魅力的に体現。理想の上司ともいえる存在を、吉田氏を彷彿とさせる佇まいで見事に演じきった。
【受賞歴】第30回「明日の記憶」第33回「沈まぬ太陽」で最優秀主演男優賞、第37回「許されざる者」で優秀主演男優賞、第22回「絆-きずな-」第25回「千年の恋 ひかる源氏物語」第26回「陽はまた昇る」で優秀助演男優賞受賞
優秀賞宇野祥平「罪の声」


【受賞者紹介】
小学生の頃、姉とともに脅迫テープに声を使用され、未来を奪われてしまった生島総一郎に扮し、強烈な印象を残した。地を這うような人生を送ってきた総一郎を演じるため、10キロ以上の減量を行い、撮影に臨んだ。一目で壮絶な過去や積年の苦しみが伝わる佇まいが見る者の胸を締め付ける。涙なしでは見られない告白シーンなど、スクリーンの空気を一変させる圧巻の演技で、作品をさらなる高みに引き上げた。
【受賞歴】初受賞。他に、本作で第94回キネマ旬報ベスト・テン、第75回毎日映画コンクール、第42回ヨコハマ映画祭の助演男優賞受賞
優秀賞妻夫木聡「浅田家!」


【受賞者紹介】
弟思いで笑顔が印象的な、浅田家の優しい兄・幸宏役。写真に関すること以外は苦手な弟を、フォローしたり、叱ったりしながら、最終的にはいつも弟の気持ちを尊重する。平田満と風吹ジュンが演じる、家族が大好きで弟にとことん甘い父、おおらかな母とともに、浅田家のほのぼのとした仲睦まじい空気感を作り出し、作品に貢献した。弟役の二宮和也とは初共演だったが、息の合った演技を見せ、二人の兄弟愛に説得力を持たせている。
【受賞歴】第34回「悪人」で最優秀主演男優賞、第40回「怒り」で最優秀助演男優賞受賞。他に優秀主演男優賞をこれまでに3回、優秀助演男優賞を1回受賞。第25回では新人俳優賞も受賞。また、本作他で第33回日刊スポーツ映画大賞助演男優賞受賞
優秀賞成田凌「窮鼠はチーズの夢を見る」


【受賞者紹介】
行定勲監督が、水城せとなのコミックを映画化した本作で、大学の先輩・大伴恭一を一途に想い続ける青年・今ヶ瀬渉に扮した。女性と受け身の恋愛を繰り返してきた恭一を、何とかして振り向かせようとして何度も傷つくが、それでも愛することをやめない今ヶ瀬。その痛々しい姿を繊細なバランスで演じ、普遍的なラブストーリーに昇華させた。
【受賞歴】優秀助演男優賞は初受賞。第42回「スマホを落としただけなのに」「ビブリア古書堂の事件手帖」で新人俳優賞受賞。また本作他で第63回ブルーリボン賞助演男優賞受賞
優秀賞星野源「罪の声」


【受賞者紹介】
土井裕泰監督、野木亜紀子脚本の『逃げるは恥だが役に立つ』(16)チームが社会派ミステリーに挑んだ本作で演じたのは、テーラーとして働く曽根俊也。京都に店を構え、家族と幸せに暮らしていたが、幼い頃の自分の声が未解決事件の脅迫テープに使われていたと知り、苦悩する。自らの足で真相を探っていく曽根の、実直な人柄や、曽根が抱えることになる複雑な感情や心の揺れを真摯に表現し、重厚なドラマを支えている。
【受賞歴】優秀助演男優賞は初受賞。第37回「箱入り息子の恋」「地獄でなぜ悪い」で新人俳優賞、第43回「引っ越し大名!」で話題賞[俳優部門]受賞。他に、本作で第45回報知映画賞助演男優賞受賞
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞黒木華「浅田家!」


【受賞コメント】
(コロナ禍で)周りがピリピリした空気の中、映画を観に行けるようになれてから、いろいろな映画を観に行って、私は救われました。改めて映画や舞台などのありがたみや大事さに気づきました。撮影もどんどんできるようになり、いろいろな人に会えることの幸せを、今すごく噛みしめています。これからも映画界に携わって素敵な作品を皆さんに届けることで、少しでも救われる人がいたらいいなと思っています。
【受賞者紹介】
浅田政志役の二宮和也と「母と暮せば」(15)以来の共演で、幼馴染である川上若奈役に扮した。政志の写真が大好きで、その才能を信じている、政志の成功に欠かせない存在。写真家としての自信を喪失した際にさりげなく勇気づけたり、尻を叩いたり、啖呵を切ったり。煮え切らない政志に対し、賭けに出たりと掌の上で操りながら支えていく。明るく、飾らないキャラクターをチャーミングに演じ、存在感を発揮している。
【受賞歴】第38回「小さいおうち」第39回「母と暮せば」で最優秀助演女優賞、第40回「リップヴァンウィンクルの花嫁」第42回「日日是好日」で優秀主演女優賞、第37回「舟を編む」「草原の椅子」で新人俳優賞受賞
優秀賞江口のりこ「事故物件 恐い間取り」


【受賞者紹介】
お笑い芸人・松原タニシが実体験を執筆したノンフィクションを、中田秀夫監督がメガホンを取り映画化した作品で、テレビ番組用のネタ欲しさに事故物件に住みたがる芸人・山野ヤマメに、次々と物件を紹介していく不動産屋・横水純子を演じた。ヤマメを訝しむことなく、事故物件を住居に選ぶことへの感謝すら伝えながら、にこやかに対応する。あっけらかんとした態度が印象的な、ミステリアスな従業員を好演し、強いインパクトを残した。
【受賞歴】初受賞
優秀賞後藤久美子「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞者紹介】
寅さんの甥・諏訪満男の初恋の人・イズミ役。山田洋次監督からのラブコールに応え、23年ぶりに女優業にカムバックした。シリーズ42作目「男はつらいよ ぼくの伯父さん」(89)で初登場して以来、6作目の出演となる。外国で暮らすイズミは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の職員となり、国際的に活躍。満男や諏訪家の人々と再会すると、時の流れを感じさせず、寅さんの世界に違和感なく溶け込み、ストーリーを鮮やかに彩った。
【受賞歴】第14回「男はつらいよ ぼくの伯父さん」「男はつらいよ 寅次郎の休日」で優秀助演女優賞、第12回「ラブ・ストーリーを君に」で新人俳優賞受賞
優秀賞桃井かおり「一度も撃ってません」


【受賞者紹介】
阪本順治監督が丸山昇一のオリジナル脚本で撮った、石橋蓮司の約19年ぶりの主演作で、さすがの存在感を見せた。石橋とはデビュー作「あらかじめ失われた恋人たちよ」(71)以来、何度も共演してきた間柄。本作では石橋扮する売れない小説家・市川の旧友で飲み友達、元ミュージカルスターの玉淀ひかるに扮し、あうんの呼吸で演じている。酸いも甘いも嚙み分ける、大人の女性の貫禄と色気で魅了した。歌唱シーンも見どころ。
【受賞歴】第3回「神様のくれた赤ん坊」「もう頬づえはつかない」で最優秀主演女優賞、第1回「幸福の黄色いハンカチ」で最優秀助演女優賞受賞。他に優秀主演女優賞を2回、優秀助演女優賞を1回受賞
優秀賞安田成美「Fukushima 50」


【受賞者紹介】
福島第一原子力発電所における数少ない女性従業員・浅野真里に扮した。緊急時対策室の総務班に所属し、あらゆる面で作業員を支えていく。緊急アナウンスやけが人の確認はもちろん、トイレ掃除も行うなど、非常事態下にあっても常に冷静かつ的確にやるべきことをこなし、周囲に安心感を与える。渡辺謙演じる吉田所長との打ち解けたやり取り含め、緊迫感漂う作品の中で、ひとときの癒しとなるような役柄を好演した。
【受賞歴】優秀助演女優賞は初受賞。第12回「バカヤロー!」「マリリ
ンに逢いたい」第25回「大河の一滴」で優秀主演女優賞受賞
優秀音楽賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞梶浦由記/椎名豪「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」


【最優秀受賞コメント】
素晴らしい作品にお声をかけていただいたことが、まず本当に光栄でした。私は主題歌とその周りのアレンジを担当させていただいたのですが、椎名さんによる素晴らしい音楽と目を見張るような映像との融合は、日本のアニメーションがまた新たな夜明けを迎えたのではないかと思える凄まじさでした。(梶浦)
劇場に観に来てくださった方に、一番感謝しております。これからもよろしくお願いいたします。(椎名)
【受賞歴】共に初受賞
優秀賞岩代太郎「Fukushima 50」


【受賞コメント】
世界にとって忘れられない年となった2020年に、人類が忘れてはいけないメッセージを主題とした本作品へ参画出来た御縁を、感慨深く噛み締めております。私にとっても忘れえぬ作品となりました。日本アカデミー賞ならびに本作品の関係者各位へ、心からの御礼を申し上げます。
【受賞歴】第28回「血と骨」で初受賞。第29回「春の雪」同29回「蝉しぐれ」第37回「利休にたずねよ」で優秀賞受賞
優秀賞亀田誠治「糸」


【受賞コメント】
映画「糸」で音楽賞をいただきました。身に余る光栄です。最高のチームと作品ファーストの現場を経験することができました。不確かな未曾有の日々の中で人と人の心の距離を繋ぐのはエンターテインメントの力だと信じています。これからもエンターテインメントの尊さを伝えるべく音楽家として一生懸命精進します。励みます。
【受賞歴】初受賞
優秀賞佐藤直紀「罪の声」


【受賞コメント】
この度は名誉ある日本アカデミー賞にご選出いただき、本当にありがとうございます。いまだに自分の作る音楽に確信が持てず、毎作品もがき苦しみ悩みながら作曲している中、ほんの時々この授賞式にご招待いただく事で劇伴作曲家としてのアイデンティティが保たれているように感じます。
【受賞歴】第29回「ALWAYS 三丁目の夕日」で初受賞にして最優秀賞受賞。第31回「ALWAYS 続・三丁目の夕日」第38回「永遠の0」第40回「海賊とよばれた男」で優秀賞受賞
優秀賞山本純ノ介「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞コメント】
遺影たちが大きく笑っている。評価をして頂いたからか。映像付随音楽は「融合」の賜物。弁えていた父。幾多の才能が集結し作品の力に。作家名を並べたが更に多くの録音スタッフが山田組であることは明白。寅さんは「泣き笑い」から「フィロソフィー」が滲む写真に。「命」とは何か。連作から感じないわけにはいかない。
【受賞歴】初受賞
優秀撮影賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞江原祥二「Fukushima 50」


【最優秀受賞コメント】
公開の年にコロナ禍になって、こんなに世の中が変わるのかと。この作品にとっても何か不思議な年になりました。作品をやる度にいろいろ勉強するのですが、今回も演出部が(資料を)いろいろ揃えてくれて、大変勉強になりました。いろんなことがわかりましたし、いろんなことがわかりませんでした。どうもありがとうございました。そしてもう一つ。VFX、メイク、衣裳も、ぜひとも部門の一つに加えて欲しいです。
【受賞歴】第36回「のぼうの城」で初受賞
優秀賞伊藤麻樹「ミッドナイトスワン」


【受賞コメント】
全く思ってもみなかった賞の受賞に非常に驚いております。と同時に恐れ多くて震えております。そして、まだまだ新人である私が撮った作品を選んでいただいた事に本当に感謝しかございません。これからも全力でこの仕事と向き合っていきたいと思います。
【受賞歴】初受賞。また、本作で日本映画撮影監督協会第64回三浦賞受賞
優秀賞河瀨直美/月永雄太/榊原直記「朝が来る」


【受賞コメント】
榊原:まさかの優秀撮影賞、思ってもいなかった事でとても驚いています。監督をはじめスタッフ、キャスト全員の努力があったからこその受賞だと思います。「朝が来る」という作品に携われた事に感謝します。本当にありがとうございました。
【受賞歴】3人共に初受賞
優秀賞近森眞史「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞コメント】
「男はつらいよ」が第30作でいよいよ終了するという噂が流れ出し、是非経験しておけということで第29作「寅次郎あじさいの恋」で一番下っ端として山田組の高羽さんの撮影助手として参加したのが1982年。39年後、不肖の弟子である私が受賞するなど想像も出来なかったこの度の受賞です。
【受賞歴】第34回「おとうと」で初受賞。第37回「東京家族」第38回「小さいおうち」第39回「母と暮せば」第40回「家族はつらいよ」第41回「家族はつらいよ2」で優秀賞受賞
優秀賞山本英夫「罪の声」


【受賞コメント】
製作期間中は、とても有意義な時間をスタッフ、俳優達と共有出来たと思える作品でした。そして、色々な手応えを感じる事も出来ました。昭和という時代で起きた事件を扱った中でも記憶に残る映画の一つになったと思います。この様な作品に関われる機会を与えてくれた製作陣にも感謝です。
【受賞歴】第22回「HANA-BI」で初受賞。第24回「ホワイトアウト」第30回「フラガール」「THE 有頂天ホテル」第35回「ステキな金縛り」で優秀賞受賞
優秀照明賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞杉本崇「Fukushima 50」


【最優秀受賞コメント】
3年前、この作品で福島をロケハンに行った時に初めて見たのですが、時が止まっていて絶句しました。体育館や教室に、ランドセルが置かれたままだったり、卒業式の準備をしたままでした。この作品は大変な作品になるなと、心を決めて挑みました。このような賞をいただき、本当にありがとうございました。
【受賞歴】第31回「憑神」で初受賞。第36回「北のカナリアたち」で最優秀賞、同36回「のぼうの城」で優秀賞受賞
優秀賞井上真吾「ミッドナイトスワン」


【受賞コメント】
この映画を撮り終えて、「日本アカデミー賞、ワンチャンある」と思っていました。そのくらいパワーのある映画で、僕も撮影中モニター越しにウルウルしてました。優秀照明賞もいただけるとは思いもよらず、ラッキーだと感じざるを得ません。
【受賞歴】初受賞
優秀賞太田康裕「朝が来る」


【受賞コメント】
光の中で 役者さんが生き フィルムに残し 監督が紡いでゆく その崇高な時間が大好きです。栄誉ある賞をいただき 感謝いたします。ありがとうございました。
【受賞歴】初受賞
優秀賞土山正人「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞コメント】
受賞とても嬉しいです。山田監督の言葉を借りれば「50年かけて一本の映画を完成させた」のです。歴代照明技師の内田喜夫さん→青木好文さん→野田正博さん→私へと灯りのバトンを引き継ぎ、仲間の力を借り「大船撮影所」で学んだ事を本作で表現いたしました。この賞に選んで下さった事に心から感謝いたします。
【受賞歴】初受賞
優秀賞小野晃「罪の声」


【受賞コメント】
今回このような時期に受賞した事に特別な思いでおります。コロナ禍前に行ったイギリス・ヨークロケが、今ではまるで嘘のようです。つきなみですが、この作品に携わったキャスト・スタッフ、特に照明助手さんと機材屋さんとイギリス・ガファーのポールさんに感謝いたします。ありがとうございました!
【受賞歴】第21回「失楽園」で初受賞。第30回「THE 有頂天ホテル」同30回「フラガール」第35回「ステキな金縛り」で優秀賞受賞
優秀美術賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞瀨下幸治「Fukushima 50」


【最優秀受賞コメント】
この映画を観ていただいた多くの方々から、美術・装飾に対するたくさんの高評価をいただきました。リアルに再現することに務めたのですが、決して誇張した表現はしていないと思います。実際はもっとひどい大変な現状だったと思います。少しでも演じる役者さんたちの力になれればと思い、みんなで頑張りました。ありがとうございました。
【受賞歴】第33回「ゼロの焦点」で初受賞
優秀賞磯見俊裕/露木恵美子「罪の声」


【受賞コメント】
磯見:東京のスタジオと京都の白川沿いに、東西の美術スタッフと共に造った「テーラー曽根」。優秀賞との報、とても嬉しいです。私が言うのもなんですが、飾りが素晴らしい。有難うございます。
【受賞歴】第28回「血と骨」で初受賞。第40回「64-ロクヨン-前編」で優秀賞受賞
露木:こんな事初めてなので驚いています。素晴らしいスタッフの皆さんやこの作品に出あえたことをとても感謝しています。皆さん有難うございます。
【受賞歴】初受賞
優秀賞倉田智子/吉澤祥子「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞コメント】
倉田:歴史あるこの作品で、優秀美術賞をいただけて、大変光栄に思います。現在の寅さんの世界を作り上げようと美術、装飾スタッフには、本当に頑張ってもらいました。大変感謝しております。
【受賞歴】第40回「家族はつらいよ」で初受賞。第41回「花戦さ」で最優秀賞、同41回「家族はつらいよ2」で優秀賞受賞
吉澤:山田組初参加でした。自分よりも長年寅さんを愛し続けている人々が、この映画を観に来るというプレッシャーの中、その後のさくらや満男たちの生活を想像してセットを創ることに苦労しました。
【受賞歴】初受賞
優秀賞黒川通利「浅田家!」


【受賞コメント】
「浅田家!」は様々な要素が詰まった作品です。美術、装飾、小道具皆に支えられました。部署を超えたチームワークがあってこそできた表現も沢山あります。撮影させていただいた地域の方々、本物浅田家、中野組皆様に感謝しております。ありがとうございます。
【受賞歴】初受賞
優秀賞我妻弘之「ミッドナイトスワン」


【受賞コメント】
草彅剛さん演じる凪沙が住む世界観をどのように美術で表現していくか、時間を掛け楽しみながら作っていきました。特に凪沙の部屋は装飾の湯澤さん・コスチュームデザインの細見さんなど美術・装飾・衣装・メイクが一丸となって作りました。美術パート代表として、優秀美術賞に選出して頂き本当にありがとうございました。 
【受賞歴】初受賞
優秀録音賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞柴崎憲治/鶴巻仁「Fukushima 50」


【最優秀受賞コメント】
原発のシステムそのものがわかっていなかったので、廃炉作業などを見せてもらい、システムエラーの音などを実際に出してもらって、ものすごく助けてもらいました。(柴崎)
【受賞歴】優秀賞は初受賞。第31回協会特別賞
この作品は3.11から約9年目の昨年3月6日に公開され、コロナ禍で観客制限などを受けてしまったので、ぜひもっと多くの方に観ていただきたいです。監督から、リアリティだけを追求してくれとの要望があり、一生懸命やりました。(鶴巻)
【受賞歴】第23回「金融腐蝕列島 呪縛」で初受賞(中村淳と)。第29回「ALWAYS 三丁目の夕日」第31回「ALWAYS 続・三丁目の夕日」で最優秀賞受賞
優秀賞伊藤裕規「ミッドナイトスワン」


【受賞コメント】
本格的バレエ映画とも言える本作の音響デザインに向き合えたことに感謝致します。内田監督とは、8年程前から低予算オリジナル映画で何本もご一緒しており、今回も中規模オリジナル作品、しかもマイノリティの人物が主人公です。このような作品を多くの方がご覧の上、高く評価していただいたことがとても感慨深いです。有難うございました。
【受賞歴】第28回「世界の中心で、愛をさけぶ」で初受賞。第29回「北の零年」同29回「春の雪」で優秀賞受賞
優秀賞加藤大和「罪の声」


【受賞コメント】
優秀賞をいただき、とても光栄に思います。本作は、多くのキャストが出演している作品です。メインの2人の声をはじめ、ワンシーンだけのキャストの声、子供達の声など多くの声を丁寧に紡いで作り上げたつもりです。その結果として、この様な賞をいただけた事を本当に嬉しく思います。撮影時、ポスプロ時にたくさんの方に協力していただき、感謝しています。ありがとうございました。
【受賞歴】第33回「ディア・ドクター」で初受賞。第37回「舟を編む」で最優秀賞、第43回「翔んで埼玉」で優秀賞受賞
優秀賞岸田和美「男はつらいよ お帰り 寅さん」


【受賞コメント】
受賞の喜びを実感しております。このシリーズ製作に関わった全ての出演者、なつかしいスタッフに「家族」を通して大きな共感の笑いと涙を届けてくれる作品です。最後に録音スタッフ、効果スタッフ、仕上げスタッフ皆様に感謝申し上げます。
【受賞歴】第24回「十五才 学校Ⅳ」で初受賞。第26回「たそがれ清兵衛」で最優秀賞受賞。他に優秀賞は第28回「隠し剣 鬼の爪」第30回「武士の一分」を始めとして、これまでに10回受賞
優秀賞ロマン・ディムニー/森英司「朝が来る」


【受賞コメント】
ディムニー:日本アカデミー賞、優秀録音賞を受賞できて光栄です。河瀨直美監督との長年の信頼関係に感謝すると共に、すべてのスタッフに感謝します。日本とフランスの混成録音部として、本作の音作りを一緒に出来たことに大きな喜びを感じましたし、映画は国境を越えた世界共通の言語であることを思い出させてくれました。
【受賞歴】共に初受賞
優秀編集賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞石井巌/石島一秀「男はつらいよ お帰り 寅さん」


石井巌
【受賞歴】第15回「男はつらいよ 寅次郎の告白」「息子」で初受賞。
第26回「たそがれ清兵衛」で最優秀賞受賞。他に優秀賞はこれま
でに第37回から第41回までの連続受賞を含め、12回受賞
【最優秀受賞コメント】
こんな素敵な賞をいただき、本当にありがとうございます。この作品は石井巌さんとの共同編集です。石井さんは僕の大先輩で、公私共にお世話になった方です。まさか一緒に共同編集ができる時がくるとは思っていなかったし、こんな素晴らしい賞までいただいて、二重の喜びになりました。(石島)
【受賞歴】初受賞
優秀賞上野聡一「浅田家!」


【受賞コメント】
「浅田家!」の編集はたくさん迷った記憶があります。迷う度に助言を与えてくれたのはスクリプターの田口さん、プロデューサーの小川さん、内山さん、若林さん、久保田さん。助手の澤井、堀内でした。そしてそれに付き合ってくれた中野監督。この受賞をチームみんなで分かち合いたいと思います。
【受賞歴】第26回「ピンポン」「突入せよ!『あさま山荘』事件」で初受賞。他に優秀賞は第30回「THE 有頂天ホテル」第31回「眉山 -びざん-」を始めとして、これまでに8回受賞
優秀賞鄺志良「Fukushima 50」


【受賞コメント】
このような歴史的映画に関わることができた上に、賞までいただき感激しております。私自身当時の震災のニュースは見ておりましたが、作業をしながら知らされる事が多々ありました。日本語がわからないため当初は不安でしたが、映像だけで十分に内容を理解でき、納得のいく編集をする事ができました。
【受賞歴】初受賞
優秀賞ティナ・バズ/渋谷陽一「朝が来る」


【受賞コメント】
渋谷:今回頂いた賞はティナとの共同作業あってのものです。奈良とパリ、約半年間の編集期間を経て、私たちは本作をフィクションの枠を超えて存在させる事が出来たと感じております。観た人が何か救いを感じられたら嬉しいです。私自身本作から、またこうして映画からも救われた思いです。本当にありがとうございます。
【受賞歴】共に初受賞
優秀賞穗垣順之助「罪の声」


【受賞コメント】
賞とはほぼ無縁でしたので、受賞したことにとても驚いています。今作は派手なアクション等もなく会話劇で進んでいく為、芝居のテンポや緩急を意識し、長さを感じさせないように編集しました。「涙そうそう」以降一緒にお仕事させて頂いている土井監督の作品で受賞出来たことを嬉しく思い、この作品に携わる全てのスタッフ、キャストの皆様に感謝いたします。
【受賞歴】初受賞
優秀外国作品賞
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E & A ALL RIGHTS RESERVED
最優秀賞パラサイト 半地下の家族


【最優秀受賞コメント】
本当に光栄に思っております。日本の映画人の方々が選んでくださった賞ということで、本作のポン・ジュノ監督も喜んでくださるのではないかと思っております。素晴らしい作品に関わることができ、こういった賞を受賞させていただくこともできて、身が引き締まる思いであると共に、これからも映画に対して真摯に向き合っていきたいと思っております。(定井勇二/ビターズ・エンド代表取締役)
【作品紹介】
「殺人の追憶」(03)「グエムル-漢江の怪物-」(06)などのポン・ジュノ監督作。同監督とは4度目のタッグとなる名優ソン・ガンホが主演を務め、劣悪な環境の半地下住宅で暮らす無職の家族が、高台の豪邸で暮らす裕福な家族に寄生していく姿を描く。世界が直面する貧富格差への批判を込めたブラックコメディであると共に、予測のつかないサスペンス的展開に驚愕させられる。エンターテインメント性豊かな人間ドラマは世界中で高い評価を受け、各国で大ヒットしただけでなく各映画賞も席捲。第92回アメリカアカデミー賞で、英語圏以外の映画で初の作品賞を含む主要4部門(監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)を受賞した他、第72回カンヌ国際映画祭でも韓国映画初のパルムドールを受賞し、65年ぶりのアメリカアカデミー作品賞とのW受賞を達成。日本公開の韓国映画としても、歴代最高のヒット作となった。
監督:ポン・ジュノ 脚本:ポン・ジュノ/ハン・ジヌォン
配給:ビターズ・エンド
優秀賞スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け


【作品紹介】
1977年から続く世界的大人気SFシリーズ「スター・ウォーズ」の続編3部作および本編9部作の完結編。家族3代にわたって繰り広げられてきた“光と闇”のフォースをめぐるスカイウォーカー家の壮大な物語の結末を描く。祖父ダース・ベイダーの遺志を受け継ぎ、ファースト・オーダーの最高指導者として銀河系の支配者に上り詰めたカイロ・レン。一方、伝説のジェダイであるルーク・スカイウォーカーの想いを引き継ぎ、類まれなフォースを覚醒させたレイは、自らの出自の秘密を知り、衝撃を受ける。僅かな軍勢となったフィンやポーらのレジスタンスは、援軍が来ることを信じて最終決戦に臨む。監督は、エピソード7「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(15)のJ・J・エイブラムス。レイア姫役の故キャリー・フィッシャーも、「フォースの覚醒」などの未使用映像を使って登場している。
原題:Star Wars: The Rise of Skywalker 監督:J・J・エイブラムス 脚本:J・J・エイブラムス/クリス・テリオ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
優秀賞フォードvsフェラーリ


【作品紹介】
1966年のル・マン24時間レースで、フォード・モーターが当時4連覇していたフェラーリに挑んだ実話を基に、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(05)「LOGAN/ローガン」(17)のジェームズ・マンゴールド監督が、マット・デイモンとクリスチャン・ベールの出演で描く。元レーサーだったカー・デザイナーのシェルビーは、アメリカ最大の自動車メーカーのフォード・モーター社から、レース界の絶対王者のフェラーリ社に勝てる車を短期間で造るという困難な依頼を受ける。シェルビーは破天荒ながら凄腕の英国人ドライバーのマイルズと組み、レーシングカーGT40の改良とテストを重ねていく。様々な試練を乗り越えた末に成し遂げる奇跡の大逆転劇が、迫真のレースシーンを交えて活写され、第92回アメリカアカデミー賞で音響編集賞と編集賞、第73回英国アカデミー賞で編集賞を受賞した。
原題:Ford V Ferrari 監督:ジェームズ・マンゴールド 脚本:ジェズ・バターワース/ジョン=ヘンリー・バターワース/ジェイソン・ケラー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
優秀賞1917 命をかけた伝令


【作品紹介】
「アメリカン・ビューティー」(99)「007 スカイフォール」(12)のサム・メンデス監督が、様々な技術を駆使して全編ワンカットで繋がって見えるように撮影した戦争映画。第一次世界大戦最中の1974年、連合国軍と独軍が激戦を繰り広げる西部戦線で、英軍の若き兵士2人に危険な任務が下る。通信手段が遮断された最前線の自軍部隊へ翌朝までに進軍中止命令を伝えねば、1600人もの仲間が敵の罠に陥るという。2人の兵士は伝令を届けるため、敵陣を潜り抜けて最前線を目指す。カメラが全編約2時間ノンストップで主人公を追い続ける驚異的な映像は、観客に戦場の兵士の緊張感や臨場感を体感させる。第73回英国アカデミー賞で作品賞と監督賞を含む7部門、第77回ゴールデングローブ賞でドラマ部門の監督賞と作品賞、第92回アメリカアカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞、録音賞を受賞した。
原題:1917 監督:サム・メンデス 脚本:サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ
配給:東宝東和
優秀賞TENET テネット


【作品紹介】
「ダークナイト」(08)「インセプション」(10)など、斬新な映像と物語で世界を驚かせてきた映像の魔術師クリストファー・ノーラン監督によるタイムサスペンス。満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスへ、テロ事件阻止のため突入した特殊部隊の中の一人〈名もなき男〉は、何者かに捕えられる。毒薬から目覚めた彼は、人類滅亡の危機に繋がる第三次世界大戦を止めるため、未来からやってきた敵と戦う任務を与えられる。時間が逆行する未体験の映像と物語は、複雑で難解にもかかわらず全く飽きさせないため、全編に散りばめられた伏線や謎を解き明かそうとリピーターが続出。コロナ禍でアメリカ本国は主要地区での公開ができない中、世界各国で大ヒットを記録した。第45回報知映画賞作品賞・海外部門、第75回毎日映画コンクール TSUTAYAプレミアム映画ファン賞・外国映画部門を受賞した。
原題:TENET 
監督:クリストファー・ノーラン 脚本:クリストファー・ノーラン
配給:ワーナー・ブラザース映画
新人俳優賞
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞服部樹咲「ミッドナイトスワン」


【受賞コメント】
オーディションに受かった2年前、このような素晴らしい賞をいただくことになるとは想像もしていなかったので、今ここに立てていることが夢のようです。クランクアップの時、内田監督に「何十年後も女優としてお会いしたい」とおっしゃっていただきました。その期待に応えられるように、そしていつの日かまたここに立てるように努力して、長くこの女優というお仕事を続けていけたらと思っています。
【受賞者紹介】
4歳からバレエを始め、第76回NAMUEバレエコンクール名古屋・第1位、平成29年・30年ユースアメリカグランプリ日本ファイナル進出、NBAジュニアバレエコンクール東京2018第1位などを獲得。演技は未経験だったが、オーディションで数百人の中から本作のヒロインである、母親に虐待されて心を閉ざしていた孤独な少女・桜田一果役に抜擢。預けられた親戚の主人公、トランスジェン
ダーの凪沙と次第に心を通わせ、バレエの才能にも目覚めつつ成長していく姿を体当たりで演じた。本作で、第45回報知映画賞と第33回日刊スポーツ映画大賞の各新人賞も受賞している。
優秀賞蒔田彩珠「朝が来る」


【受賞コメント】
この度はこのような素敵な賞をありがとうございます。今までこの舞台にたくさんの先輩方が立っている姿をテレビ越しに見ていて、いつか私も立てたらなと思っていました。今日こうしてここに立てていることが、本当に嬉しいです。これから先も家族や友達、事務所の方に支えてもらいながら、自分の大好きなお芝居を続けていけたらいいなと思います。
【受賞者紹介】
是枝裕和が監督・脚本を務めたドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(12/CX)の主人公の娘役で注目され、同監督の「海よりもまだ深く」(16)「三度目の殺人」(17)「万引き家族」(18)にも出演。18年「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で映画初主演。本作では、14歳の時に産んだ子どもをすぐに手放すも、6年後、特別養子縁組した家族に子どもの返還を迫る片倉ひかりを演じ、産みの母の複雑な葛藤をリアルに表現した。同作で他に、第94回キネマ旬報ベスト・テン、第75回毎日映画コンクール、第45回報知映画賞、第42回ヨコハマ映画祭の各助演女優賞を受賞。20年は他に「#ハンド全力」「星の子」がある。
優秀賞森七菜「ラストレター」


【受賞コメント】
まず私をこれまで支えてくださったスタッフの皆様、家族、友達、すべての方々に、感謝しています。ここまで来られたのは本当に皆さんのおかげだなと、それだけしかありません。これからの人生、この新人賞から始まった人生を長いものにしていくための皆様からのお声をいただけるように、そんなものに懸ける人生にしていきたいなと、改めて思いました。これからも頑張りますので、よろしくお願いします。
【受賞者紹介】
17年に園子温監督の配信ドラマ『東京ヴァンパイアホテル』で女優デビューし、「心が叫びたがってるんだ。」(17)で映画初出演。新海誠監督のアニメ「天気の子」(19)のヒロイン・天野陽菜役の声優を務めて注目される。本作はオーディションで選ばれ、主人公・岸辺野裕里の少女時代とその娘・颯香の2役を見事に演じ分けると共に、監督の岩井俊二が作詞した主題歌「カエルノウタ」で歌手デビューも果たした。本作で他に、第42回ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞、第12回TAMA映画祭で最優秀新進女優賞をそれぞれ受賞。20年は他に「青くて痛くて脆い」「461個のおべんとう」がある。
優秀賞岡田健史「望み」「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」「弥生、三月 -君を愛した30年-」


【受賞コメント】
かの有名な三冠王を三度獲得した落合博満氏はこう言いました。「ダイヤモンドを回っている瞬間には、ホームランを打ったという事実はもう過去のことだから、ガッツポーズをしないのだ」と。大変光栄ではありますが、私自身、(対象作の撮影は)数年前の出来事ですから、一喜一憂することなく、明日をどう生きるのか、今取り組んでいる作品の中での役割をどう果たすのか、目の前の刹那と向き合える役者でありたいです。
【受賞者紹介】
18年ドラマ『中学聖日記』(TBS)で、オーディションを経て主人公の相手役に抜擢され、俳優デビュー。本年は映画に初出演し、公開作が相次いだ。「望み」では物語の中心となる友人殺害の容疑がかけられたまま行方不明になった高校生・石川規士、「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」では連続殺人犯を追う警視庁捜査一課の捜査チーム・麻生班の新米刑事・沢田圭、「弥生、三月 -君を愛した30年-」では主人公・結城弥生の幼馴染・山田太郎の息子・あゆむをそれぞれ好演。同3作で第33回日刊スポーツ映画大賞の石原裕次郎新人賞も受賞。20年は他に「新解釈・三國志」がある。
優秀賞奥平大兼「MOTHER マザー」


【受賞コメント】
この場に僕を立たせてくれたスタッフの皆様、本当にありがとうございます。僕はこの作品でデビューし、この現場で初めて演技をさせてもらい、その楽しさというものも教えてもらいました。僕にとって大事なデビュー作で共演してくださった長澤まさみさんと、こういう舞台で一緒に立てるのはすごく光栄でありがたいですし、この賞に満足することなく、またこの舞台に戻ってこられるように頑張りたいと思います。
【受賞者紹介】
演技未経験ながら、初のオーディションで本作のメインキャストを勝ち取り、俳優デビューを飾る。定職に就かず家もなくその日暮らしを送るシングルマザー・三隅秋子の息子で、学校にも行けずに妹の面倒をみる16歳以降の周平を演じた。身勝手な母親からネグレクトのような仕打ちを受けながらも、その母親に無垢で歪んだ愛情を寄せる姿を繊細に表現した。本作で、第94回キネマ旬報ベスト・テンと第63回ブルーリボン賞の各新人男優賞を受賞。空手初段を持ち、12年には全国武道空手道交流大会「形」で優勝経験がある。20年は『恋する母たち』(TBS)でドラマにも初出演した。
優秀賞永瀬廉「弱虫ペダル」


【受賞コメント】
本日はこのような素敵な賞をいただけて、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。これからも、まだ自分が出会ったことのない自分と出会えるように、そして出演させてくださる作品に少しでも華を添えられるように、頑張っていきたいと思います。そして“弱虫”にならず、エンターテインメントという厳しい坂を、これからも昇り続けていきたいと思います。
【受賞者紹介】
12歳でジャニーズ事務所に入所し、関西ジャニーズJr.を経てKing & Princeのメンバーとなり、2018年にCDデビュー。同グループおよび個人としても幅広い分野で活躍。14年「忍ジャニ参上!未来への戦い」で映画初出演し、19年「うちの執事が言うことには」で映画初主演。本作では、孤独なオタク高校生だったが、自転車競技部の仲間との出会いによって成長し、自転車選手としての才能も開花させていく主人公・小野田坂道を演じた。主演として同世代の俳優たちを牽引すると共に、実際に自転車を漕ぎながら芝居をする過酷な撮影を経て、迫真の自転車ロードレースシーンを作り上げた。
協会特別賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞池端松夫【背景・塗装】


【受賞コメント】
私は58年間、裏方一本でこの仕事を続けてきました。今日は立派な賞をいただいて、どうもありがとうございました。
【受賞者紹介】
劇的空間は、池端氏のような職人芸の支えがあってこそ、リアルに、そして華麗に虚構の世界の魅惑が光り輝く。63年、東映京都撮影所入社以来、映画、TV、CMなどの塗装、エイジングに従事し、独立以降、現在も東映や松竹京都撮影所において精力的に活躍。単なる壁などの塗装のみならず、時を重ねた汚しの表現では、絵の具はもとより、時として、醤油なども使用し、刷毛やボロ布などで丹念に仕上げ、セットの全般的な汚しに関しては、コンプレッサーで、ふさわしい色や濃度の泥絵の具を吹き付けて、入念な作業を行う。作業自体が、セット空間に無限の奥行きを与えているといっても過言ではない。さらに木目や石垣などのディテールで、独自の技術を編み出し、「木目を浮き出し、ふすまや障子の引き手のこすれ具合にも拘る」という自身の発言が、その技術の完成度の高さを裏付ける。撮影や照明は勿論、総合的な見地から、造形を表現することで、映画の価値は、いっそう高まる。「里見八犬伝」(83)「華の乱」(88)「橋のない川」(92)「長崎ぶらぶら節」(00)「男たちの大和/YAMATO」(05)などで、その手腕は発揮され、技術の継承も確実に行なわれている。13年度の文化庁映画賞映画功労部門受賞。
優秀賞納富貴久男【ガンエフェクト】


【受賞コメント】
僕がこの業界に入った頃は、ガンエフェクトという職種がなかったんですね。いまだに「エンドクレジットを何にするんだ」と、揉めたりすることがあるくらいなので、今回の受賞は大変光栄ですし、大変貴重な賞だと思っております。ありがとうございました。
【受賞者紹介】
日本のガンアクション映画、あるいは少しでもガンアクション描写が登場する映画には、殆どその名前がクレジットされている。日本大学文理学部在学中から自主映画を製作し、同大学を中退後、80年に在学中よりアルバイトをしていたMGC協会(モデルガンメーカーの現・MGC)に入社。84年、同社を退社後、「てっぽう屋」を組織し、映画界入り。「チ・ン・ピ・ラ」(84)「ビッグ・マグナム 黒岩先生」(85)などの銃器関連の特殊効果を手がけ、86年「キャバレー」撮影時に、現BIG SHOTを設立。以降、『あぶない刑事』シリーズ(86~89)や『ベイシティ刑事』シリーズ(87~88)などのTVドラマ、『クライムハンター 怒りの銃弾』(89)から始まる初期東映Vシネマ、そして、北野武監督「その男、凶暴につき」(89)などを次々に手がけ、日本における革新的なガンエフェクトを開発、その第一人者となる。リアルな銃器を制作し、人体から噴き出す血のりなどの着弾表現を施し、海外とは違い撮影現場で実弾が使えず、予算的にも様々な制約のある日本映画において、貴重な存在といえる。「いつかギラギラする日」(92)「GONIN」(95)「図書館戦争 THE LAST MISSION」(15)「孤狼の血」(18)「ザ・ファブル」(19)などを担当し、現在もトップランナーとして走り続ける。
優秀賞安彦良和【アニメーター・キャラクターデザイン】


【受賞コメント】
僕は世間を知らないものですから、この賞のことをよく知らなくて、「どういう賞ですか?」「誰が先に受賞されていますか?」と聞きました。(アニメーション業界では)大塚康生さん、小田部羊一さんに続く3人目の受賞と知り、即「いただきます!」と言ってしまいました。偉大な先輩の大塚さんや小田部さんのように立派な仕事をしていないのに、こういう立派な賞をいただいて大変光栄です。

【受賞者紹介】
シャア・アズナブルや、ガルマ・ザビの横顔に胸躍らせ、アニメーションの魅力の虜になったファンは数多いだろう。その生みの親である安彦氏は、弘前大学を経て、70年、虫プロ養成所(株式会社虫プロダクション)に入社し、アニメーターとなる。73年、フリーとなり、創映社およびその後身となる日本サンライズ(現・サンライズ)を中心に活動。『宇宙戦艦ヤマト』シリーズや『勇者ライディーン』など数多くのアニメ作品に、キャラクターデザイン、作画監督、原画、絵コンテなどで携わる。79年に放送開始された『機動戦士ガンダム』では、キャラクターデザインおよび作画監督を務め、劇場版とも併せて日本中に社会現象ともいえるブームを巻き起こした。83年には「クラッシャージョウ」で長編アニメ映画初監督。自身の漫画原作を映画化した「アリオン」(86)「ヴイナス戦記」(89)の監督・脚本を手がけた後、89年に漫画家に転身。90年『ナムジ』で第19回日本漫画家協会賞優秀賞、00年『王道の狗』で第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。自身の漫画をアニメ化した「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」シリーズ(15~18)では総監督として久々にアニメの現場に復帰。イラストレーターや小説家の顔も持ち、幅広い分野のクリエイターたちに多大な影響を与え続けている。
会長功労賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞石原まき子【石原プロモーション代表取締役会長・元俳優】


【映画人生を振り返って】
日劇ダンシングチーム5期生入団。1952年松竹入社。芸名、北原三枝と命名。映画「君の名は」で本格デビュー。1954年日活移籍、映画「狂った果実」で石原裕次郎と出会い結婚、女優引退。「会者定離なれば、愛別離苦は避ける術も無し」 どんな素晴らしい出会いも誰もが永久の命を生きながらえることは出来ないそれはわかっていても心に受け入れることが出来たかと問われると私は静かに首を横に振る人生でした。

【受賞者紹介】
日劇ダンシングチーム5期生から、52年に退団して、松竹入社。芸名、北原三枝は木下惠介監督が命名。「カルメン純情す」(52)で映画デビュー。54年、日活に移籍し、「青春怪談」(55)で主演を果たす。56年、「狂った果実」で石原裕次郎と初共演し、大ヒット作「嵐を呼ぶ男」(57)や「赤い波止場」「錆びたナイフ」(共に58)など23本ものコンビ作で日活黄金時代を築く。そのクールで理知的な雰囲気を生かし、「俺は待ってるぜ」(57)などのアクションから、「陽のあたる坂道」(58)や「若い川の流れ」(59)などの家庭劇まで確実な演技力を見せた。
デビューからわずか8年の間に、70本もの作品に出演し、石原裕次郎との結婚を機に、「闘牛に賭ける男」(60)を最後に銀幕から引退。以後は大スターの夫を最後まで支え、石原プロモーション代表取締役会長として、多くの俳優発掘に尽力した。また「日刊スポーツ映画大賞」では、石原裕次郎賞、石原裕次郎新人賞を創設している。『裕さん、抱きしめたい―亡き夫、石原裕次郎への慕情の記』(88)、『妻の日記―夫・石原裕次郎の覚悟』(99/共に主婦と生活社)、『死をみるとき 裕さんが書き遺したもの』(03/共著/青志社)などの著書もある。
優秀賞小山明子【俳優】


【映画人生を振り返って】
この度は望外の賞を頂戴し、とても光栄に存じます。二十歳の時に右も左もわからぬまま映画の世界に飛び込みました。若い頃はいわゆる「お嬢様女優」で、プロ意識もそれほどありませんでした。俳優の仕事に目覚めたのは、夫の大島渚と共に独立プロで映画製作を始めてからでした。亡き大島に、この受賞を報告したいと思います。

【受賞者紹介】
大谷学園在学時、雑誌のカバーガールを務めたのを契機にスカウトされて、55年松竹入社。「ママ横をむいてて」(55)で映画デビュー。清純派スターとして売り出されるが、高橋治監督「彼女だけが知っている」(60)から演技派女優として注目される。「日本の夜と霧」(60)で初めて大島渚監督と本格的に組み、その直後に結婚。翌61年に松竹を退社し、大島監督らと6名で映画製作会社、創造社を設立。以降、日本映画の最前線を疾駆する大島監督と並走し、「白昼の通り魔」(66「) 絞死刑」(68「) 少年」(69/毎日映画コンクール助演女優賞
受賞「) 儀式」(71「) 愛の亡霊」(78)などの最盛期の大島作品に連続して出演し、看板女優として、その映画世界を支え続けた。同時に「続・兵隊やくざ」(65)や「陸軍中野学校 開戦前夜」(68)「昭和残俠伝 人斬り唐獅子」(69)などでは、勝新太郎、市川雷蔵、高倉健の相手役として積極的に出演し、映画会社の垣根なく活躍した。その後、舞台やTVに活躍の場を移すも、96年に夫の大島が脳出血で倒れて以降、その介護に専念しつつ、『パパはマイナス50点』(05/集英社)などの著書を発表。「インターミッション」(13)では四半世紀ぶりに映画出演を果たす。
優秀賞鈴木達夫【撮影】


【映画人生を振り返って】
助手になりたての頃は、技術的なことなどまるでわからず、周囲からは、暴れん坊、いつやめるのだろうと思われていたようです。その私がこの世界で65年余り過ごすことになろうとは。かかわりのあった監督のうち鬼籍に入られた方も半分以上になります。いろいろなタイプの監督たちや他のスタッフ、出演者の方々との出会いの中で様々な体験ができたことは大きな財産です。この先まだ仕事ができるなら、映画界にお返しできればと思っています。
【受賞者紹介】
黒木和雄監督「とべない沈黙」(66)の翔ぶ蝶を追うシャープなカメラワークは、日本映画のスタッフを瞠目させ、新たな時代への予感を感じさせたのみならず、若者たちの間からはカメラマンをめざす者が続出した。岩波映画製作所でドキュメンタリーのカメラマンとしてキャリアをスタートさせ、その後フリーとなり、土本典昭監督の「ドキュメント路上」(64)で注目される。吉田喜重監督「水で書かれた物語」(65)で劇映画の世界へ。以後、日本アート・シアター・ギルド(ATG)や独立プロの作品を中心に活躍する。黒木監督とは前述の「とべない沈黙」や「祭りの準備」(75)「 TOMORROW 明日」(88) 「父と暮せば」(04)、松本俊夫監督とは「薔薇の葬列」(69) 「ドグラ・マグラ」(88)、篠田正浩監督とは「少年時代」(90) 「写楽」(95)、長谷川和彦監督とは「青春の殺人者」(76)「太陽を盗んだ男」(79)、寺山修司監督とは「田園に死す」(74) 「さらば箱舟」(84)で組み、低予算の実験的作品から時代劇大作まで幅広く取り組み、近年も「こどもしょくどう」(18)や「日本独立」(20)など精力的に作品を送り出している。
【受賞歴】第3回「太陽を盗んだ男」で撮影賞ノミネート。第19回「写楽」で最優秀撮影賞、第12回「疵」「TOMORROW 明日」「マリリンに逢いたい」第14回「少年時代」第23回「梟の城」第24回「長崎ぶらぶら節」第25回「千年の恋 ひかる源氏物語」第27回「スパイ・ゾルゲ」で優秀撮影賞受賞
優秀賞前田米造【撮影】


【映画人生を振り返って】
「お金を多くかければいいわけじゃない。作品に対するスタッフ一人ひとりの愛情と構えがすべて」という宮川一夫キャメラマンの言葉を胸に作品に向き合ってきました。多くの人に出会い、助けられ、無我夢中で駆け抜けた映画人生でした。中でも伊丹十三監督とは10作品までもう少しだったのに……残念です。ふと「気楽にやって」と言われた撮影を思い出します。
【受賞者紹介】
その柔軟かつ鮮烈なカメラワークは、長年の蓄積と優しい人柄から醸し出されたものだろうか。54年、日活撮影所に撮影助手として入社。ロマンポルノ移行後の72年に、西村昭五郎監督「たそがれの情事」でカメラマンとしてデビュー。以後、「昼下りの情事 古都曼陀羅」(73) 「赫い髪の女」(79) 天使のはらわた 赤い淫画」(81)など、日活ロマンポルノの秀作を数多く手がける。82年にフリーになってからは、森田芳光監督と「家族ゲーム」(83)でコンビを組んで以来、「ときめきに死す」(84) 「それから」(85/毎日映画コンクール撮影賞、日本映画技術賞特別賞)から「未来の想い出 Last Christmas」(92)まで8本の作品を手がけ、伊丹十三監督とも「お葬式」(84) 「マルサの女」(87) 「ミンボーの女」(92)など8本の作品を担当。「時計 Adieu l’Hiver」(86) 「天と地と」(90) 「怖がる人々」(94) 「ピストルオペラ」(01)などでも監督が求める画を的確に実現させた。日活芸術学院の専任講師として長年に亘って後進の育成に務める、日本映画撮影監督協会から委嘱され、日本アカデ
ミー賞協会運営委員、選考委員を第20~40回まで務めた。第29回山路ふみ子映画功労賞、07年旭日小綬章を受賞。
【受賞歴】第9回「それから」「CHECKERS in TAN TAN たぬき」で最優秀撮影賞、第8回「お葬式」第11回「マルサの女」第14回「天と地と」「大迷惑トラブルコメディー どっちもどっち」で優秀撮影賞受賞
優秀賞吉行和子【俳優】


【映画人生を振り返って】
こんなに長く映画出演を続けられて、これほど幸せな事はありません。
多くの方々の支えがあったからこそと、感謝の気持ちでいっぱいです。
撮影現場にいる時が、一番心も体も元気です。
もう少しその時間が続くことを心から願っております。
【受賞者紹介】
54年、女子学院高校を卒業後、劇団民藝に入り、55年に『ものいわぬ女たち』で初舞台を踏み、同年、今井正監督「由起子」で映画デビュー。56年9月、民藝が俳優座劇場で上演した『アンネの日記』でヒロインを演じ、一躍注目される。59年に日活と契約し、今村昌平監督「にあんちゃん」、中平康監督「才女気質」の演技が評価され、第14回毎日映画コンクール助演女優賞にノミネート。69年からフリーになり、「大日本スリ集団」(69)「遺書・白い少女」(76)などに出演。73年には『焼跡の女俠』その他の演技で、第8回紀伊国屋演劇賞の個人賞受賞。大島渚監督の「愛の亡霊」(78)では、不倫相手の青年と共謀して夫を殺害する人妻を大胆に熱演し、第2回日本アカデミー賞主演女優賞にノミネート。以後も舞台、映画、TVを行き来しながら、多彩な作品に出演し、第57回毎日映画コンクール、田中絹代賞、第33回山路ふみ子文化財団特別賞をそれぞれ受賞。映画の近作に「折り梅」(01) 「東京家族」(13) 「家族はつらいよ」(16)などがあり、著書も、第32回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した『どこまでや演れば気がすむの』 (83/潮出版社)他多数。ナレーションや声優としても活躍している。
【受賞歴】第2回「愛の亡霊」で主演女優賞ノミネート。第37回「東京家族」で優秀主演女優賞受賞
協会栄誉賞
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞岡田裕介


大学在学中にスカウトされ、TVドラマ『レモンスカッシュ4対4』(69)で俳優デビュー。森谷司郎監督「赤頭巾ちゃん気をつけて」(70)の一般公募で、5000人の中から主役に抜擢され、映画デビューを果たす。東宝と契約し、「初めての旅」「二人だけの朝」(共に71)「初めての愛」「その人は炎のように」(共に72)などの青春映画に主演。「にっぽん三銃士 おさらば東京の巻」(72)「にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻」(73)で出会った岡本喜八監督の勧めで、同監督の「吶喊」(75)に主演し、初めてプロデュースを兼ねる。その後、「しなの川」(73)「実録三億円事件 時効成立」(75)「四季・奈津子」(80)「魔の刻」(85)「火宅の人」(86)に出演し、88年、東映入社。東京撮影所長、常務取締役を経て、02年、社長、14年に会長就任。「動乱」(80)「華の乱」(88)「きけ、わだつみの声Last Friends」(95)「北の零年」(05)「北の桜守」(18)などを企画、プロデュースした。その一方で、11年11月に日本アカデミー賞協会組織委員会会長に就任。8年間(第35~42回)会長を務め、19年には同協会の名誉会長として授賞式を支えた。14年には一般社団法人日本映画製作者連盟会長も務めた。同連盟においては脚本家の登竜門である「城戸賞」の審査委員長として、新たな才能の発掘や、若者の映画進出を後押しするなど、東映グループ会長という枠を超えて映画界の興隆に貢献した。製作総指揮の最新作「いのちの停車場」(21)の完成を見ることは叶わなかった。
会長特別賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞宍戸錠【俳優】 1月18日没 享年86


54年、日活ニューフェイス第1期生に合格し、日本大学芸術学部を中退。「警察日記」(55)で映画デビュー。二枚目役から57年に頬を整形手術し、悪役に転身。日活アクション全盛期に、小林旭主演「渡り鳥」シリーズや赤木圭一郎主演「拳銃無頼帖」シリーズなどでキザな殺し屋を演じて人気を博
し、“エースのジョー”として親しまれ、「ろくでなし稼業」「早射ち野郎」(共に61)などでは主演スターとしても売り出す。ガンプレイには定評があり、当時のキャッチコピーは「早射ち世界第3位0.65秒」。因みに宍戸氏自身の弁によれば、「1位は『真昼の決闘』のゲイリー・クーパー、2位は『シェーン』のアラン・ラッド」とか。その後も「野獣の青春」(63)「みな殺しの拳銃」「拳銃は俺のパスポート」「殺しの烙印」(全て67)などでハードボイルドな魅力を発揮。71年、日活の路線転換後はフリーになり、TVのバラエティ番組に出演する他、映画会社各社を股にかけて活躍。「仁義なき戦い 完結篇」(74)「瞳の中の訪問者」(77)「アゲイン AGAIN」(84)「我が人生最悪の時」(94)など出演作品は300本を超える。著書に『シシド 小説・日活撮影所』(01/新潮社)がある。
優秀賞大林宣彦【監督・脚本】 4月10日没 享年82


自主映画「EMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ」(66)で、当時の若者たちを熱狂の渦に巻き込み、CMディレクターを経て、「HOUSE/ハウス」(77)で商業映画デビュー。70年代、外部の人間が、大手映画会社の撮影所で撮ること自体が革命的であり、その門戸を開く存在となる。「転校生」(82)「時をかける少女」(83)「さびしんぼう」(85)は尾道3部作と呼ばれ、多くのファンが尾道を訪れた。以後、「姉妹坂」(85)や「水の旅人 侍KIDS」(93)など、メジャーでの娯楽映画から、「廃市」(84)や「野ゆき山ゆき海べゆき」(86)など文芸作品まで幅広く発表。「ふたり」(91)「青春デンデケデケデケ」(92)「はるか、ノスタルジィ」(93)「風の歌が聴きたい」(98)「理由」(04)でも常に実験精神を盛り込み、旺盛な活躍を続ける。晩年は闘病の身で「この空の花―長岡花火物語」(12)「野のなななのか」(14)「花筐/HANAGATAMI」(17)など、念願だった作品を次々と発表。遺作となった「海辺の映画館―キネマの玉手箱」(20)まで精力的に撮り続け、その創作意欲は最後まで衰えることがなかった。04年に紫綬褒章、09年に旭日小綬章、19年に文化功労者。
【受賞歴】第12回「異人たちとの夏」「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群」第16回「彼女が結婚しない理由」「青春デンデケデケデケ」「私の心はパパのもの」で優秀監督賞、第17回「はるか、ノスタルジィ」「水の旅人 侍KIDS」で優秀編集賞受賞
優秀賞渡哲也【俳優】 8月10日没 享年78


青山学院大学在学時にスカウトされて、日活に入社。「あばれ騎士道」(65)で映画デビューして以降、石原裕次郎や吉永小百合らと共演し、アクション映画から文芸映画まで幅広く出演する。日活時代の代表作に、鈴木清順監督「東京流れ者」(66)、舛田利雄監督「紅の流れ星」(67)、そして「『無頼』より 大幹部」に始まる一匹狼・人斬り五郎を演じた「無頼」シリーズ全6作(68~69)などがある。71年に日活退社後は「剣と花」(72)「日本俠花伝」(73)「仁義の墓場」(75)などに出演するとともに、石原プロに入り、『大都会』(76~79)や『西部警察』(79~84)などのTVシリーズに出演。その好漢ぶりが、お茶の間にも広く受け入れられる。石原プロでは副社長を経て、87年に社長に就任、11年に退任した。「やくざの墓場 くちなしの花」(76)で第32回ブルーリボン賞主演男優賞と第31回毎日映画コンクール男優演技賞、「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」(96)で第70回キネマ旬報ベスト・テンや第21回報知映画賞などの助演男優賞、「誘拐」(97)で第10回日刊スポーツ映画大賞主演男優賞、ブルーリボン主演男優賞をそれぞれ受賞。他に「時雨の記」(98)「レディ・ジョーカー」(04)「男たちの大和/YAMATO」(05)などにも出演。
【受賞歴】第20回「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」で優秀助演男優賞、第21回「誘拐」で優秀主演男優賞受賞

青山京子【俳優】
1月12日没 享年84
原 知佐子【俳優】
1月19日没 享年84
日下部五朗【プロデューサー】
2月7日没 享年85
仙元誠三【撮影監督】
3月1日没 享年81
楠部三吉郎【シンエイ動画創立者】
3月20日没 享年82
志村けん【コメディアン・俳優】
3月29日没 享年70
佐々部 清【監督】
3月31日没 享年62
伊地智 啓【プロデューサー】
4月2日没 享年84
志賀 勝【俳優】
4月3日没 享年78
志賀廣太郎【俳優】
4月20日没 享年71
久米 明【俳優・声優】
4月23日没 享年96
馬場正男【美術】
4月23日没 享年92
開米栄三【特殊造形家】
4月24日没 享年90
髙瀬將嗣【殺陣師・技斗創設映画監督】
5月25日没 享年63
森﨑 東【監督・脚本】
7月16日没 享年92
三浦春馬【俳優】
7月18日没 享年30
河原崎次郎【俳優】
2020年7月没 享年79
松本憲人【照明】
8月8日没 享年51
桂 千穂【脚本】
8月13日没 享年91
森岡道夫【プロデューサー】
8月13日没 享年88
梅野泰靖【俳優】
8月25日没 享年87
成田尚哉【プロデューサー】
9月11日没 享年69
斎藤洋介【俳優】
9月19日没 享年69
藤木 孝【俳優】
9月20日没 享年80
竹内結子【俳優】
9月27日没 享年40
小松政夫【俳優】
12月7日没 享年78
小谷承靖【監督】
12月13日没 享年84

映画界に多大なる功績を残され2020年に逝去された映画人(没日順)

話題賞
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

作品部門:「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」


監督:外崎春雄 脚本:ufotable
製作会社:アニプレックス/集英社/ufotable
(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

俳優部門:小栗旬「罪の声」


監督:土井裕泰 脚本:野木亜紀子
製作会社:TBSテレビ/講談社/WOWOW/TBSスパークル/トライストーン・エンタテイメント/ジェイアール東日本企画/TCエンタテインメント/朝日新聞/毎日新聞