第39回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
日時: 2016(平成28)年3月4日(金)
場所: グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール
司会: 西田敏行/宮沢りえ

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優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

最優秀作品賞 「海街diary」


【最優秀受賞コメント】
最後に大きなご褒美が待っていました。すごく長い時間かけて撮影させて頂いたので、お金を出して頂いたプロデューサーの方たちにも本当に感謝したいと思います。(鎌倉の)あのとても素敵な家がなかったらたぶん撮れなかった映画だと思いますので、 一年を通してあのお家を貸して頂いた方にも感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。(是枝裕和監督)

【作品情報】
マンガ大賞2013を受賞した吉田秋生の「海街diary」。「そして父になる」(13)の是枝裕和監督が作品に魅了され映画化を熱望し、初めて原作ものに挑戦した。三姉妹が腹違いの妹と出会い、本当の家族になるまでの一年間を描くドラマ。鎌倉を舞台に四姉妹が一つ屋根の下で暮す日々を全篇フィルム撮影で季節の移ろいと共に丁寧に映し撮った。彼女たちの家として使われた築82年の日本家屋をはじめ、美しい鎌倉の風景が作品の画にさらに深みをもたせている。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが四姉妹に扮し、それぞれのキャラクターの心情をみずみずしく演じている。ヨコハマ映画祭、TAMA映画賞で作品賞を受賞。今回の日本アカデミー賞では11部門12賞(助演女優2人)と新人俳優賞を獲得、最多受賞となった。

監督・脚本:是枝裕和
製作:フジテレビジョン/小学館/東宝/ギャガ

優秀作品賞 「海難1890」


日本・トルコ合作。1890年に和歌山県大島樫野崎(現:串本町)でオスマン帝国の親善訪日使節団を乗せた軍艦エルトゥールル号が台風のため座礁。地元住民たちが決死の救出作業と看病を行い、69名の命が救われた。それから95年後、イラン・イラク戦争が長期化し、サダム・フセインの声明により無差別攻撃開始が48時間後に迫る中、テヘランにいる邦人に対し救援機を派遣できない日本のためにトルコ政府がトルコ人より優先して救援機を提供してくれた――。このふたつの実話をもとに描いた感動作。「利休にたずねよ」(13)の田中光敏監督が、大学の同級生だった田嶋勝正串本町町長から、エルトゥールル号についての映画を作りたいと相談を受けたところから始まった企画。日本とトルコで延べ4ヶ月に及ぶ撮影を敢行しており、スケールの大きな映像が作品を盛り立てる。今回の日本アカデミー賞では10部門を受賞している。

監督:田中光敏
脚本:小松江里子
製作:Ertugrul Film Partners

優秀作品賞 「日本のいちばん長い日」


半藤一利(はんどう)のノンフィクション書籍「日本のいちばん長い日 決定版」を原作に「聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎」「一死、大罪を謝す」「昭和天皇実録」などを参考文献とし、原田眞人監督自ら脚本を執筆。1945年8月15日、日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎えるまでの4ヶ月の出来事を膨大なセリフと共に力強い筆致で描く。役所広司、本木雅弘のほか、山﨑努、堤真一、松坂桃李などの実力派俳優が、それぞれに立場は違えど、国を思い命をかけた男たちの重厚なドラマを演じきった。ブルーリボン賞作品賞を受賞。日刊スポーツ映画大賞石原裕次郎賞を受賞している。今回の日本アカデミー賞では11部門を受賞。

監督・脚本:原田眞人
製作:松竹/アスミック・エース/テレビ朝日/木下グループ/WOWOW/巌本金属/読売新聞社/中日新聞社

優秀作品賞 「母と暮せば」


広島の原爆に遭った父娘の戯曲『父と暮せば』の対の作品として、長崎を舞台にした物語を構想していた故・井上ひさしの遺志を山田洋次監督が継ぎ、終戦から70年となる節目の年に「泉下(せんか)の井上さんと語り合うような思いで」平松恵美子と共に脚本を執筆。「生涯で一番大事な作品をつくろうという思いでこの映画の製作にのぞみます」とコメントしている山田監督にとって、初のファンタジー。長崎の原爆で命を落とした青年と残された母親の物語。ささやかな日常を原爆によって奪われた親子のお互いを思う心が、戦争の悲劇をより浮き彫りにする。今回の日本アカデミー賞では11部門を受賞。山田組に初参加となった坂本龍一が、毎日映画コンクール音楽賞を受賞している。

監督:山田洋次
脚本:山田洋次/平松恵美子
製作:松竹/住友商事/テレビ朝日/木下グループ/博報堂DYメディアパートナーズ/松竹ブロードキャスティング/Jストーム/読売新聞社/博報堂/朝日放送/日販/GYAO/メ~テレ/こまつ座/長崎新聞社/長崎文化放送/講談社/九州朝日放送/北海道テレビ

優秀作品賞 「百円の恋」


故・松田優作の故郷である山口県で開催されている周南映画祭で2012年に脚本賞として新設された「松田優作賞」。その第一回グランプリに輝いた足立紳の脚本を武正晴監督が映画化。実家に引きこもり、なんとなく日々を過ごしていた主人公・一子が、ボクサーとの出会いと別れをきっかけに、自らもボクシングを始め、魂も肉体も変わっていくさまをパワフルに描いた。撮影は3週間足らずで行われ、主演の安藤サクラは、うち約10日間で一気に減量。クライマックスとなる試合のシーンでは、まさに全身全霊を込めた、鬼気迫る演技を披露。戦うヒロインの姿を鮮やかに体現している。第27回TIFF日本映画スプラッシュ部門作品賞を受賞。今回の日本アカデミー賞では5部門を受賞。

監督:武正晴
脚本:足立紳
製作:東映ビデオ
優秀アニメーション作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

最優秀アニメーション作品賞 「バケモノの子」


【最優秀受賞コメント】
細田監督の身近な体験をもとにした映画を才能あふれるキャスト、スタッフの皆と作り多くのお客様に観て頂くことができました。子供と大人が一緒に楽しめるアニメーション映画は、一人の監督、スタジオが担っていくものではありません。多くの監督たち、多くのキャスト、スタッフ、そしてお客様たちが、アニメーション映画の歴史と文脈と未来を作っていくのだと思っています。細田監督はこれからも一本一本、子供と大人が一緒に楽しめるアニメーション映画を作っていくと思います。ぜひ引き続き応援をしてあげてください。(スタジオ地図 プロデューサー 齋藤優一郎)

【作品情報】
「サマーウォーズ」(09)「おおかみこどもの雨と雪」(12)の細田守監督の3年ぶりとなる長編オリジナル作品。バケモノたちが暮らす「渋天街」(じゅうてんがい)に迷いこんだ一人ぼっちの少年が、バケモノ・熊徹と師弟関係になり、厳しい修行の日々と積み重ねるうち、親子のような絆で結ばれていく。冒険あり、アクションあり、恋愛ありのエンターテインメント。細田監督が、初めて単独で脚本も手掛けている。役所広司、宮﨑あおい、染谷将太、広瀬すず、大泉洋、リリー・フランキー、津川雅彦などの豪華俳優陣が声優を務める。興行収入は58.5憶円で15年度公開の日本映画で2位となっている。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品。

監督・脚本:細田 守
製作:日本テレビ放送網 /スタジオ地図 /KADOKAWA /東宝 /バップ /電通/読売テレビ放送 /D.N.ドリームパートナーズ/STV・MMT・SDT・CTV・HTV・FBS

優秀アニメーション作品賞 「心が叫びたがってるんだ。」


「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(13)の監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀が再結集し、再び秩父を舞台に描く青春ドラマ。幼い頃のトラウマで言葉を話せなくなり、自分の殻に閉じこもっている女子高校生・順。ある日、歌なら声や感情が素直に出せることに気づき、クラスメイトとミュージカルを作り上げる中で徐々に心を開いていく。ベートーヴェンの「悲愴」や映画「オズの魔法使い」(39)の『Over The Rainbow』など名曲の数々が、本作オリジナルの歌詞と共に高校生たちの恋や青春を彩る。吉田羊がヒロインの母親役で声優に初挑戦。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品。

監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
製作:アニプレックス/フジテレビジョン/電通/小学館/A-1 Pictures/ローソンHMVエンタテイメント

優秀アニメーション作品賞 「百日紅 ~Miss HOKUSAI~」


1983年から87年まで、「漫画サンデー」に連載された杉浦日向子の漫画「百日紅」を「クレヨンしんちゃん」シリーズ、「河童のクゥと夏休み」(07)等の原恵一監督が映画化。江戸時代、日本の美しい四季を背景に浮世絵師・葛飾北斎の娘・お栄と彼女を取り巻く人々を丹念に描く。杏、松重豊、濱田岳ほか豪華俳優陣が声優を務め、浮世絵を効果的に取り入れた映像も美しい。アヌシー国際アニメーション映画祭長編アニメーション部門審査員賞をはじめとし、シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門最優秀作品賞など海外でも数々の映画賞を受賞。文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品。毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞。また、原恵一監督が山路ふみ子文化賞を受賞している。

監督:原 恵一
脚本:丸尾みほ
製作:プロダクション・アイジー/バンダイビジュアル/テレビ東京/トランス・コスモス/プロダクション・グッドブック/朝日新聞社/アサツーディ・ケイ/東京テアトル/OLM/サンライズ

優秀アニメーション作品賞 「ドラゴンボールZ 復活の「F」」


大人気マンガ「ドラゴンボール」の劇場版19作目にして、原作者・鳥山明がキャラクターデザインはもちろん初めて脚本も務めた新作。2013年に公開され、30億円近い興行収入を記録した前作「ドラゴンボールZ 神と神」の続きの物語。主人公・孫悟空の宿敵であった悪の帝王・フリーザがドラゴンボールにより復活し、さらにパワーアップ。新フリーザ軍VS悟空たちのバトルが繰り広げられていく。本作ではCGを多用し、スリリングで迫力のあるアクション表現が可能となった。ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」がフリーザのことを歌った楽曲「F」にヒントを得て脚本化。ももいろクローバーZが主題歌を歌ったことも話題になる。興行収入は37.4億円の大ヒット。また、昨年末時点で海外44カ国でも公開され、全世界興行収入(日本含む)は80億円に迫る。

監督:山室直儀
脚本:鳥山 明
製作:東映/Fox International Productions,Japan/集英社/フジテレビジョン/東映アニメーション/バンダイ/バンダイナムコエンターテインメント

優秀アニメーション作品賞 「ラブライブ!The School Idol Movie」


2010年に「電撃G’sマガジン」の誌面でスタートし、メディアミックス展開するスクールアイドルプロジェクト「ラブライブ!」。学校統廃合の危機を救うべく「μ‘s」(ミューズ)というグループ名でスクールアイドルとしての活動を始めた9人の女子高生たちの友情と成長を描く。13年1月より第1期アニメ、14年4月より第2期アニメの放映を経て、本作は初の劇場映画。3年生の卒業を持って活動を終了することを決めているμ’sが、アメリカでのライブを大成功させ、秋葉原でスクールアイドルとしてのラストライブに挑むストーリー。μ‘sの各キャラクターを演じる声優陣は、μ’sとしてライブイベント等も行っており、2015年の年末には紅白歌合戦に出場したことも話題になり、興行収入28.4億円を記録した。

監督:京極尚彦
脚本:花田十輝
製作:2015 プロジェクトラブライブ ! ムービー
優秀監督賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞是枝裕和「海街diary」


【最優秀受賞コメント】
僕は20年映画をやってきましたが、ここに呼んで頂けるようになってまだ2年しかたってないので、ずっと日本アカデミー賞は他人事だと思って、テレビを見ながら言いたい放題言ってました(笑)。この授賞式が日本の映画人皆で祝えるイベントになるためには、改革しなければいけないところがまだたくさんあると思います。今まで僕は外側から批判的に言っていましたが、もうそういう年齢でもないので、一緒になってこの授賞式をより素敵なイベントに変えていけるように自分も努力したいと改めて思いました。

※本作でヨコハマ映画祭監督賞を受賞、山路ふみ子映画賞を受賞。

【受賞歴】
第37回「そして父になる」で初受賞。
優秀賞大根仁「バクマン。」


優秀監督賞をはじめ、6部門の賞をいただき嬉しく思います。映画の中に「天才じゃない俺たちは邪道で勝負するんだ!」というセリフがありますが、我々も「バクマン。」を日本映画の王道に対して邪道で勝負するつもりで作りました。それが興行的ヒットだけでなく、このような大きな賞に結びつき、本当に嬉しいです。すべての役者、すべてのスタッフと共にこの喜びを分かち合います。作品賞と主演男優賞も欲しかったけど!!
初受賞

【受賞歴】
監督作品「モテキ」が第35回話題賞作品部門を受賞。
優秀賞武正晴「百円の恋」


「百円の恋」を評価選考して頂いた日本アカデミー会員の皆様に感謝いたします。良きシナリオ、良きスタッフ、良きキャストを得てこそ、監督は仕事ができうるのだと思っております。「百円の恋」に身を捧げてくれた脚本の足立紳さん、安藤サクラさん、新井浩文さん、キャスト、スタッフの作品への熱量を如何に観客に伝え届けるかが自分の使命でした。観てくれた観客の皆様に深謝します。「百円の恋」で得た熱量を次回作品の糧としたいと思います。

初受賞
優秀賞田中光敏「海難1890」


嬉しいです。本当に嬉しい。10年前、「可能性1%」から始まったこの作品が、まさか日本とトルコの合作として完成し、日本アカデミー賞をいただけるとは夢にも思っていなかった事です。“積み上げる力は奇跡を起こす”、まさしく奇跡が奇跡を呼んだと思っています。日本・トルコの協力してくれたスタッフ、キャスト、関係者のみなさんと一緒に喜びたいと思います。

初受賞
優秀賞原田眞人「日本のいちばん長い日」


時代劇と西部劇と戦争映画で育った半端者が、初めて作った戦争映画で受賞。感無量です。辛抱強い製作陣、心優しいスタッフとぎらぎら輝く演技陣、監督を監督する家族がいなければ、私は単なる変屈なB型蟹座男です。この作品では、歴史を自分なりにひもとくことの醍醐味を学びました。将来、真珠湾前夜、ポツダム会談、日本国憲法という意義ある戦争と人間のドラマに今回の経験を生かすことができれば本望です。
※本作と「駈込み女と駆出し男」で日刊スポーツ映画大賞監督賞を受賞。

【受賞歴】
第23回「金融腐蝕列島 呪縛」で初受賞。第32回「クライマーズ・ハイ」、第36回「わが母の記」ほか。今回5度目の受賞。
優秀脚本賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞足立紳「百円の恋」


【最優秀受賞コメント】
スタッフ、キャストの皆さんが、本当に過酷な条件で作って良い映画にしてくださったおかげで、脚本賞を頂けたと思います。この脚本は何年も前に書いたもので、いろんなところに売り込みにいったんですけどダメで、それを見つけてくれたのが、山口県の周南映画祭という本当に小さな映画祭です。映画祭を一人で立ち上げた大橋広宣さんが松田優作賞というシナリオの賞を作って、そこに僕が応募した脚本がこうやって作品になってここまでこれたので大橋さんに感謝の気持ちを伝えたいです。
※本作と「お盆の弟」でヨコハマ映画祭脚本賞を受賞。

初受賞
優秀賞小松江里子「海難1890」


日本とトルコ、真心で繋ぐ二つの国の物語。その懸け橋となるこの映画の脚本を書かせていただけたことに感謝しています。その上、このような賞までいただいて、本当にありがとうございました。素晴らしい映画を作って下さった田中監督はじめ、スタッフの皆様、役者の皆様、そして関係者の皆様のお陰です。

初受賞
優秀賞是枝裕和「海街diary」


脚本作りは、正直プレッシャーがありました。大好きな作品世界と原作者の吉田秋生さんの頭の中を深く息を止めて潜り、手探りで宝物を探しあてるような作業でした。「海街diary」のファンのひとりとしても、この受賞は大変嬉しく思います。

【受賞歴】
第37回「そして父になる」で初受賞。
優秀賞原田眞人「日本のいちばん長い日」


イデオロギーに毒されず、不偏不党の精神を貫き、半藤一利先生の著作を中心に戦争終結
にまつわる歴史的事実を拾い集め、映画人の知恵と図々しさで繋ぎ合わせて到達した結論
が、この脚本です。むずかしい企画だったと思います。しかし、製作陣に勢いと覚悟がありました。脚本家としては、その勢いに乗じて最大限の力を発揮してくれたスタッフと偉大なる俳優陣に、ただただ感謝です。

【受賞歴】
第26回「突入せよ!「あさま山荘」事件」で初受賞。第32回「クライマーズ・ハイ」、第36回「わが母の記」ほか。今回4度目の受賞。
優秀賞山田洋次/平松恵美子「母と暮せば」


山田洋次

【受賞歴】
第1回「男はつらいよ」シリーズ「幸福の黄色いハンカチ」で受賞以来、今回17度目の最多受賞者。第1回、第4回、第17回に続き、第26回「たそがれ清兵衛」で4度目となる最優秀を受賞。第6回特別賞、第36回協会栄誉賞を受賞。

平松恵美子:井上ひさしさんから娘さんの井上麻矢さんを通して受け渡されたバトンをいかに大切に受け継ぎ、形にしていくかで大変苦労しました。そして今回の受賞は、戦争を憎み平和を願う山田監督のこの作品にかける情熱によるものだと思います。伴走させて頂けたことを感謝しています。

【受賞歴】
第24回「十五才 学校Ⅳ」で初受賞。第30回「武士の一分」、昨年の「小さいおうち」に続く7度目の受賞。
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞二宮和也「母と暮せば」


【最優秀受賞コメント】
昨年、僕の(事務所の)先輩である岡田准一くんがこの賞を頂きまして、すごく嬉しくて。僕も欲しいなと思うようになった頃に岡田くんと会って「次はお前だから」と言って頂きました。こうやって賞を頂いて、すごく嬉しいです。今までずっと迷惑をかけてきた人たちに、これでちょっとは恩返しができたかなと思うとすごくありがたいですし、これからも頑張っていこうと思っています。今日はすごくいい酒が飲めそうだなと。ちょっと岡田くんに自慢します(笑)。

クリント・イーストウッド監督作品「硫黄島からの手紙」(06)をはじめとする話題作に出演してきたが、本作で山田洋次監督作品に初出演。長崎の原爆で命を落とした3年後に母親のもとに亡霊として姿を現す青年・浩二をやわらかく、軽やかに演じた。吉永小百合演じる母親と繰り広げる会話の数々や恋人・町子への切ない思いなど、その一つ一つを繊細に丁寧に表現し、存在感を発揮している。本作で、キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞受賞。日本アカデミー賞は今回が初受賞となる。
優秀賞内野聖陽「海難1890」


日本とトルコの友情を描く本作で演じたのは、損得を考えず献身的に治療を施し、村人たちから慕われている医師・田村。1890年に台風で座礁したオスマン帝国軍艦エルトゥールル号の負傷した乗組員を村人たちと共に全力で救っていく……。現存する、治療に当たった医師たちのカルテやトルコ政府からの文書等も参考にして田村役を演じた。見返りを求めず信念を貫く日本男児を力強く演じ、作品を牽引した。日本アカデミー賞は第20回「ハル」で新人俳優賞を受賞している。
優秀賞大泉 洋「駆込み女と駆出し男」


井上ひさしの時代小説「東慶寺花だより」を原作に原田眞人監督が初めて時代劇に挑戦した本作で、駆出し戯作者で医師見習いの中村信次郎役に扮した。原田監督に大泉演じる信次郎は唯一無二の存在と言わしめたほどのハマリ役。面倒見が良いがどこか頼りない、でも憎めない役柄を持ち前のキャラクターで軽妙かつチャーミングに演じ観客の心を掴んだ。本作でブルーリボン賞主演男優賞を受賞。日本アカデミー賞優秀主演男優賞は第35回「探偵はBARにいる」で受賞しており、今回が2度目となる。
優秀賞佐藤浩市「起終点駅 ターミナル」


桜木紫乃の短編集「起終点駅 ターミナル」を篠原哲雄監督が映画化した本作で演じたのは、かつての恋人の死に責任を感じ、罪の意識を抱えながら孤独に生きてきた男。その苦悩と再生を熟練した演技で見せた。本作と「愛を積むひと」の演技で報知映画賞主演男優賞を受賞。日本アカデミー賞は第5回「青春の門」で新人俳優賞を受賞以来、今回で3度目の主演男優賞受賞となり、うち第18回「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で最優秀主演男優賞を受賞。また6度の助演男優賞受賞があり、第24回「ホワイトアウト」第27回「壬生義士伝」で最優秀助演男優賞を受賞している。
優秀賞役所広司「日本のいちばん長い日」


ノンフィクション小説を原作に日本がポツダム宣言を受諾し、降伏するまでの葛藤を描いた「日本のいちばん長い日」。鈴木貫太郎内閣の陸軍大臣として軍の士気を高める立場にありながら、昭和天皇に忠誠を誓い、終戦に向けても努力する。その狭間で苦悩しつつ、自分のすべきことをやり遂げようとする阿南惟幾の覚悟を見事に演じた。日本アカデミー賞は第21回、第36回のダブル受賞を含め、17度目(19賞)の優秀主演男優賞の受賞となる。第20回「Shall we ダンス?」第21回「うなぎ」で最優秀を受賞している。
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞安藤サクラ「百円の恋」


【最優秀受賞コメント】
驚いてます。びっくりしてじわじわ心臓が出てきてしまいそうな感じです。数館の上映から始まって、口コミで上映して頂ける映画館がたくさん増えた作品です。観て頂いた方に会いたいと思って、国内海外含め舞台挨拶などでいろんな場所に行かせて頂きました。観て頂いた方々にこんなことになっていますよと早く伝えたいです。観てくださった皆さまのおかげですし、劇場に入ったときに感じた熱気とか表情、エネルギーが、こうやってじわじわと繋がっていって、こんなところに来ることができる。そういう映画に出会えたことが、とにかく嬉しいなと思います。やった!

自堕落な生活をしていたが32歳にして実家を飛び出し一人暮らしを始め、百円ショップで働く一子役。700人以上の応募の中からオーディションで役を獲得した。自身、中学生の頃にボクシングジムに通った経験はあったが、本作のために約3ヶ月間トレーニングを敢行。身も心も一子になりきった。昨年、キネマ旬報ベスト・テン、高崎映画祭、およびブルーリボン賞で「0.5ミリ」と合わせて主演女優賞を受賞。日本アカデミー賞は第38回「0.5ミリ」で優秀主演女優賞を受賞しており、2年連続の受賞となる。
優秀賞綾瀬はるか「海街diary」


「立ち振る舞いが長女役にぴったり」と是枝裕和監督も太鼓判を押すように三人の妹たちの母親のような存在でもある四姉妹の長女・幸をたおやかに演じた。看護師として働く幸は、いつも冷静で責任感の強いしっかり者だが、同じ病院に勤める医師と不倫し罪悪感を持ちつつ生きている。笑顔の中にどこか陰のある幸の心の揺れを繊細に演じた。日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、ヨコハマ映画祭主演女優賞、毎日映画コンクール女優主演賞、TAMA映画賞最優秀女優賞受賞。日本アカデミー賞は、第33回「おっぱいバレー」で優秀主演女優賞と話題賞俳優部門を受賞している。
優秀賞有村架純「映画 ビリギャル」


2014年の年間ベストセラーランキング総合4位となった書籍「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」の映画化で、高校生のヒロイン・さやか役を好演。作品も興行収入28.4億円を記録した。明るく、負けん気の強い少女が、不可能に思えた夢の実現のために全力で頑張り抜く姿は、見る者に勇気を与えた。本作と「ストロボ・エッジ」の演技に対してブルーリボン賞主演女優賞を受賞。初受賞の日本アカデミー賞優秀主演女優賞は、新人俳優賞とのダブル受賞となった。
優秀賞樹木希林「あん」


カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でオープニング上映された河瀨直美監督作品「あん」。ドリアン助川の原作で元ハンセン病患者・徳江を演じ圧倒的な存在感を見せた。なかでも“人が生きる意味”について語るシーンは、セリフの一つ一つが観客の心にしみわたる名シーンとなった。報知映画賞主演女優賞、ヨコハマ映画祭特別大賞、山路ふみ子女優賞、TAMA映画賞最優秀女優賞を受賞。日本アカデミー賞は、第31回「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」第36回「わが母の記」で最優秀主演女優賞を受賞。また、優秀助演女優賞は8度受賞しており、うち第34回「悪人」で最優秀を受賞。
優秀賞吉永小百合「母と暮せば」


これまでに何度もタッグを組んできた山田洋次監督作品で今回扮したのは、忍耐強く優しく、ちょっぴり“おとぼけ”なところもある日本の母親・伸子役。戦争によって家族を奪われた母の悲しみ、切なさ、息子への深い愛情を演じ切り、観客の涙を誘った。本作が119本目の映画出演作となる。日本アカデミー賞は第32回のダブル受賞を含め、今回が17度目(18賞)の優秀主演女優賞受賞となる。うち、第8回「おはん」「天国の駅」、第12回「つる鶴」「華の乱」第24回「長崎ぶらぶら節」第29回「北の零年」で、最優秀を4度受賞している。
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞本木雅弘「日本のいちばん長い日」


【最優秀受賞コメント】
原田監督からオファーを頂いて、そのささやかな入口からこんなありがたいことが起こるとは撮影中は想像もしていませんでした。実際にこの両作品(※「天空の蜂」で優秀助演男優賞受賞)とも自分としてはもがきあがいた役作りでしたので、ちょっと詰めが甘かったかなと正直心配している部分もまだ残ってはいるんですが、何とかやりきることができました。つい力んでお芝居をしてしまうタイプですが、50代を迎えまして、いい意味で物事の捉え方に、肩の力が抜けていきそうな気配がしています。これからの新たな出会いをうまく時代の風を掴みながら、楽しんでお芝居をしていけたらと思います。


日本映画で初めて昭和天皇を正面から捉えた本作で、昭和天皇を演じた。戦況が困難を極める中、自らの名のもとに始まった戦争を終わらせる――。その強固な決意、覚悟を威厳と品格をもって体現。メガホンを取った原田監督も「純粋かつ高貴、そして勇気ある品格を併せもつ昭和天皇を、本木雅弘さんは理想的な形で演じてくれました」と語っている。本作および、「天空の蜂」の演技に対して、報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞、キネマ旬報ベスト・テン、ブルーリボン賞の助演男優賞を受賞している。
優秀賞浅野忠信「母と暮せば」


本作では黒木華演じる町子の同僚の小学校教師・黒田を演じた。戦争で片足を失い、心にも深い傷を抱えた男の葛藤や苦しみは、観る者の胸を締め付けた。本作と対となる存在で、井上ひさしの戯曲を黒木和雄監督が映画化した「父と暮せば」(04)にも出演。日本アカデミー賞は第20回話題賞俳優部門を受賞。第27回「座頭市」第32回「母べえ」で優秀助演男優賞を受賞。第33回には「劔岳 点の記」「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」で優秀主演男優賞をダブル受賞している。
優秀賞新井浩文「百円の恋」


ボクシングに打ち込むヒロイン・一子の人生に影響を与える寡黙なボクサー・狩野に扮した。不器用でぶっきらぼうだが、一子が惹かれていく魅力のある男を好演。プロボクサーを演じるため、約3ヶ月にわたるハードなトレーニングと過酷な食事制限を行い説得力のあるキャラクターを作り上げた。試合のシーンでは元日本スーパーライト級チャンピオンと対戦している。「青い春」(02)で初主演し、映画を中心に活躍。日本アカデミー賞は今回が初受賞となる。
優秀賞伊藤淳史「映画 ビリギャル」


原作は塾講師・坪田信貴の実体験を綴って大きな話題となったベストセラーで、その坪田先生役に扮した。「どんな生徒にも可能性があり、その可能性を広げてあげたい」という真摯な姿勢が、ヒロイン・さやかをはじめ生徒たちの心を掴んでいく。明るく一生懸命な教師の姿を魅力的に演じ切り、作品にポジティブなパワーをもたらした。子役として役者のキャリアを開始し、数多くのテレビドラマ、映画に出演。日本アカデミー賞は今回が初受賞となる。
優秀賞染谷将太「バクマン。」


大根仁監督が人気マンガ「バクマン。」を映画化した本作で演じたのは、天才マンガ家・新妻エイジ役。主人公の高校生漫画家コンビ・サイコーとシュージンの最強のライバルとして、二人の前に立ちはだかる。何かにとりつかれたかのように制作に没頭したかと思えば、飄々とした語り口で挑発する。そんな、どこか掴みどころのない一匹狼的存在のエイジをしなやかに演じ、強烈な印象を残した。日本アカデミー賞は第36回「ヒミズ」「悪の教典」で新人俳優賞を受賞している。
優秀賞本木雅弘「天空の蜂」


ベストセラー作家・東野圭吾が原発テロの恐怖を描き、1995年に発表した同名小説を堤幸彦監督が映画化した本作で原発の設計士・三島を演じた。クールな切れ者が人知れず抱えていた後悔と巨大な闇が、明らかになるさまを説得力たっぷりに演じた。日本アカデミー賞は、第13回新人俳優賞を受賞。優秀主演男優賞は4度受賞しており、第16回「シコふんじゃった。」第32回「おくりびと」で最優秀を2度受賞している。優秀助演男優賞は今回が初受賞にしてダブル受賞となる。
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞黒木華「母と暮せば」


【最優秀受賞コメント】
二回もこの場に立てると思っていませんでした。山田監督に感謝してもしきれないなと思いますし、この映画を映画館に観に来てくださったお客さんのおかげだと思います。これからも地道に精進していきたいと思いますので、どうか皆さまよろしくお願いします。


結婚の約束をしていた恋人・浩二を長崎の原爆で失った町子役に扮した。戦後、小学校の先生となり浩二の母を明るく支えながらも、愛する人を突然失った喪失感や自分が生き残ったことに対する罪悪感も持っている、健気な女性を好演している。本作と「幕が上がる」「ソロモンの偽証前後篇」でキネマ旬報ベスト・テン助演女優賞を受賞。日本アカデミー賞は第37回新人俳優賞、第38回「小さいおうち」で最優秀助演女優賞を受賞。今回3年連続の受賞となった。
優秀賞夏帆「海街diary」


鎌倉の一軒家で暮らす四姉妹の日常を綴る「海街diary」で、四人の中でもっともマイペースな三女・千佳役に扮している。チャーミングな笑顔と持ち前の明るさで、周りを和ませる存在だが、幼い頃に家を出て行った父の記憶がないことで、実は心に深い傷を抱えている。その微妙な心情を細やかに演じた。是枝裕和監督作品には、本作が初出演となる。日本アカデミー賞は第31回「天然コケッコー」で新人俳優賞を受賞している。
優秀賞長澤まさみ「海街diary」


酒好きで、ダメな男に引っかかってばかりの奔放な二女・佳乃に扮した。姉と対立することが多いが、実は姉の幸せを一番に願っているキャラクターを生き生きと演じ、存在感を発揮している。是枝監督作品への出演は「奇跡」(11)以来となる。日本アカデミー賞は第27回「ロボコン」で新人俳優賞、第28回「世界の中心で、愛をさけぶ」で最優秀助演女優賞および話題賞俳優部門、第30回「涙そうそう」第35回「モテキ」で優秀主演女優賞を受賞。本作で日刊スポーツ映画大賞助演女優賞、および毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。
優秀賞満島ひかり「駆込み女と駆出し男」


江戸時代の離婚をモチーフにした本作で、豪商・堀切屋の愛人・お吟に扮した。訳あって愛する男との離縁を望み、鎌倉の縁切寺(東慶寺)に駆け込むお吟。その華奢な体の奥にある芯の強さ、切ない思いを鮮やかに演じ切った。傷ついたヒロイン・じょごとの女の友情もすがすがしい。日本アカデミー賞は第34回「悪人」第35回「一命」第36回「北のカナリアたち」で優秀助演女優賞を受賞しており、今回が4度目となる。
優秀賞吉田羊「映画 ビリギャル」


本作で演じたのは、突然慶應大学を目指すと宣言した娘をどんなときも信じ続け、最大の味方となる母親役。まっすぐな愛情と包容力、芯の強さを感じさせる演技で作品を支えた。舞台女優としてキャリアをスタートし『HERO』(CX)の女性検事役でブレイク。15年は映画出演作が続き、本作と「愛を積むひと」「脳内ポイズンベリー」の演技に対しブルーリボン賞助演女優賞、3作に加えて「HERO」の演技に対し、報知映画賞助演女優賞を受賞。日本アカデミー賞は今回が初受賞となる。
優秀音楽賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞サカナクション「バクマン。」


【最優秀受賞コメント】
「バクマン。」と言う素晴らしい作品に関わらせて頂けただけではなく、このような権威のある日本アカデミー賞を頂けるなんて本当に夢にも思いませんでした。本当にありがとうございます。(山口一郎)

初受賞
優秀賞大島ミチル「海難1890」


「海難1890」と言う日本とトルコの合作映画に作曲家として参加出来たこと、そして日本アカデミー優秀音楽賞を受賞出来たことを心から嬉しく思います。田中監督とは初めてご一緒させて頂きましたが、クランクインからアップまで一環した哲学で引っ張って行ってもらいました。デモテープも100曲くらい作ったでしょうか? 監督も私も納得するまで…と決めてレコーディングの直前までやり取りをしました。監督、映画、音楽の全スタッフに感謝しています。

【受賞歴】
第21回「失楽園」で初受賞ほか、第27回「阿修羅のごとく」など、今回9度目の受賞。第31回「眉山 ‒びざん‒」で最優秀を受賞。
優秀賞菅野よう子「海街diary」


是枝監督作品に参加できて、とても光栄です。物語に寄り添ったり情感を盛り上げたり、という役ではなく、全てを包容する「場所」や何があっても流れていく「時間」のように堂々とそこに在る音楽を心がけました。ご縁をいただいた全ての方に感謝いたします。

初受賞
優秀賞富貴晴美「日本のいちばん長い日」


終戦の決断、敗北という重苦しい空気のなかにも、夜明けを予感させる光のカケラを音に込めた曲『夜明け前のヒカリ』。それぞれの正義が激しくぶつかりあうなかでも、日本、家族を守りたいというまっすぐな気持ちをテーマに『対立の向こうに咲く花』。戦争と平和。生と死。終わりという始まりの統合から生まれたメインテーマ曲『日本のいちばん長い日』。『戦後70年』という節目。この作品に関われたことに幸せいっぱい感謝します。

【受賞歴】
第36回「わが母の記」で初受賞。
優秀賞安川午朗「ソロモンの偽証 前篇・事件」


映画音楽としてもっともっと映像に近づいた音楽になればと曲を書きました。今回数千人から選ばれた希有な新人女優・藤野涼子の本読みから立ち会い、音楽として追従し、長丁場となる作品の行方を信じました。「いじめ」に真剣に向き合った監督と同調し、志を受け取った作品として評価して頂き、ありがとうございます。

【受賞歴】
第35回に「八日目の蟬」で最優秀を受賞。昨年の「ふしぎな岬の物語」に続く3度目の受賞。
優秀撮影賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞瀧本幹也「海街diary」


【最優秀受賞コメント】
本当に光溢れる幸せな撮影の現場でした。本気で、ずっと撮影したいと思ったほどの現場だったのでその作品で受賞できたことを嬉しく思います。
※本作でヨコハマ映画祭撮影賞を受賞。

【受賞歴】
第37回「そして父になる」で初受賞。
優秀賞柴主高秀「日本のいちばん長い日」


戦後70年の節目に、昭和20年8月15日の終戦に至った事実を後世に伝えていく事も映画の仕事という想いで挑んだ作品です。この賞を頂けたのも自分を活かせる作品や監督に出会えたことが大きいと思いますが、自分を助けてくれたスタッフや素敵なキャストのみなさんと仕事が出来た事、そして何よりも大変多くの方にこの映画を観て頂けたことがこの賞に繋がったのだと思います。この場をかりて全ての方にお礼を申し上げます。

【受賞歴】
第33回「ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~」で初受賞。
優秀賞近森眞史「母と暮せば」


いつの間にか、ほとんどの映画がデジタルで撮影され上映もされるようになりました。今回の作品は監督・山田洋次作品として初めてCGを多用するにも関わらず、フィルム撮影という手段を選択させていただきました。完成したリリースプリントのDCPはデジタルとフィルムの結合というとても贅沢なものに仕上がりました。この仕事が栄誉あるこの賞をいただける事となり、大変うれしく思います。

【受賞歴】
第34回「おとうと」で初受賞。第37回「東京家族」、昨年の「小さいおうち」に続く4度目の受賞。
優秀賞永田鉄男「海難1890」


まるでそれが宿命だったように、「海難1890」の撮影現場にはレインスプリンクラー(雨降らしの装置)や大型扇風機がつきまとった。東映京都撮影所に建てられた嵐の海岸セット、アンタルヤ(トルコ)のスタジオに建てこまれた難破するエルトゥール号、そして水没する機関室のセット。そこには幾多なる難題が待ち受けていた。その多難を乗り越えここまで辿り着いたのは日本、トルコ両国の強い絆の賜物と信じている。

初受賞
優秀賞藤澤順一「ソロモンの偽証 前篇・事件」


今回の受賞、大変嬉しく、また感謝しております。この作品の撮影時、子供たちは大人へ心身共に変化するエネルギー漲る時期、そのパワーに負けじと毎日が闘いの現場でした。子供達の姿を力強くフィルムに焼き付けてくれた照明の金沢氏が昨年暮れに亡くなり、私にとって一番の仲間を失いました。授賞式に共に出席出来ないのが残念です。成長した子供たちもこれからの日本映画を支えて行く事と思います。
※本作で毎日映画コンクール撮影賞を受賞。

【受賞歴】
第35回「八日目の蟬」で初受賞にして最優秀賞を受賞。第37回「舟を編む」以来、今回が3度目の受賞。
優秀照明賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞藤井稔恭「海街diary」


【最優秀受賞コメント】
20歳から映画を目指したんですが、やっと48で初めて(映画の照明を担当することができました)。今回が(映画)2本目になりますが、こういう賞を頂けて嬉しく思います。

【受賞歴】
第37回「そして父になる」で初受賞。
優秀賞宮西孝明「日本のいちばん長い日」


原田監督をはじめスタッフ、キャストそしてプロデューサーの方々、私をこの作品に一緒に参加させて頂き誠にありがとうございました。またこれからもすばらしい作品が出来るように私もガンバリますので、よろしくお願いいたします。

【受賞歴】
第35回「最後の忠臣蔵」で初受賞。昨年の「ふしぎな岬の物語」に続く3度目の受賞。
優秀賞渡邊孝一「母と暮せば」


この度は素敵な賞を頂きありがとうございます。山田監督はじめ、スタッフ・キャストが難題に取りくみ、一枚岩となって作り上げた作品が評価され大変嬉しい限りです。三ヶ月の長丁場、苦楽をともに戦った仲間のみんなに感謝します。

【受賞歴】
第26回「ピンポン」で初受賞ほか、第37回「許されざる者」で最優秀を受賞。昨年の「小さいおうち」に続く今回7度目の受賞。
優秀賞安藤清人「海難1890」


前回の「利休にたずねよ」に続き田中光敏監督と組み、再びこのような名誉ある賞をいただき感謝しております。今回この作品に関わった全てのキャスト・スタッフの皆さん、又撮影の際お世話になった和歌山県串本町の皆さん有難う!

【受賞歴】
第20回「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」で初受賞。
第25回「千年の恋 ひかる源氏物語」、第37回「利休にたずねよ」ほか、今回7度目の受賞。
優秀賞金沢正夫「ソロモンの偽証 前篇・事件」


中学生たちがそれぞれの役を生き、日々成長する姿を金沢さんはオーディションから見守ってきました。彼らの一瞬の表情のために力強い照明を心がけていたと思います。「いいぞぉ~」という東北なまりの声が現場で何度も聞かれました。大雪の実景から真夏の撮影、仕上げまで約1年間本作品に携わったことにご本人はたいへん満足していました。
(文:本作助手 志村昭裕)

【受賞歴】
第35回「八日目の蝉」で初受賞。
優秀美術賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞花谷秀文「海難1890」


【最優秀受賞コメント】
本当にありがとうございます。ずっとこの仕事を続けていて良かったと思います。明日からまた頑張ります。トルコと京都のみんなを代表して頂きます。
トルコという未知の文化とトルコ語という初めて接する言語と格闘しながら作り上げた作品です。2つの国の素晴らしい友情の史実があったことを再確認し、そのような作品に関わることができたことを、とても光栄に思います。この作品に関わった日本・トルコのすべての美術スタッフで頂いた賞だと思います。

【受賞歴】
第34回「大奥」で初受賞。
優秀賞都築雄二「バクマン。」


この評価は、美術スタッフのものだけではなく、CGやプロジェクションマッピング、大好評のエンドロール等に関わった若きクリエーター達の才能と努力があったからこそのものだと思っています。この映画に参加できて本当によかったと思っています。

初受賞
優秀賞出川三男「母と暮せば」


「母と暮せば」の美術で受賞したことにとても驚いています。どの作品も仕事の内容の重さは同じですが、どちらかと言えば美術としては地味な作品で、奇をてらわず、誇張せず、オーソドックスにと心掛けていました。舞台は昭和23年、日本中が貧しく辛い日々だったけど、先行に暗雲漂う今の日本と違って中学1年の僕は戦後のどん底から這い上がり、未来に大きな夢と希望を持っていた時代でした。

【受賞歴】
第10回「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」で初受賞。第26回「たそがれ清兵衛」、第28回「隠し剣 鬼の爪」で最優秀を受賞。昨年の「小さいおうち」に続く10度目の受賞。
優秀賞原田哲男「日本のいちばん長い日」


栄誉ある賞に選出して頂き光栄至極。選考して下さった会員の皆様には厚く御礼申し上げます。又、様々な制約の中、極度の緊張感と集中力を要する現場で、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、無から形を作り上げてくれた全ての関係者の方々に心より感謝いたします。
※本作で毎日映画コンクール美術賞を受賞。

【受賞歴】
第35回「最後の忠臣蔵」で初受賞にして最優秀を受賞。
優秀賞三ツ松けいこ「海街diary」


このような名誉ある賞を頂きまして大変嬉しく思います。監督の作品はいつも自然と共に撮影している印象があり、鎌倉の街や海、季節に合わせた花々を追いかけたことが良い思い出です。そして、メインセットの香田家になったお宅の佇まいが素晴らしく、与えていただいた脚本、素敵な場所があってこそ、私はほんのり色付けができたのだと思います。支えてくれたスタッフの皆様に感謝いたします。

初受賞
優秀録音賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞松陰信彦「海難1890」


【最優秀受賞コメント】
今日は京都から来ました。京都のスタッフを代表してこれを頂きます。ありがとうございました。

日本とトルコの友情を描いたこの作品に出会えたことに感謝し、この度の受賞、大変有り難く嬉しく思います。串本弁に英語、加えてトルコ語にペルシャ語と日夜格闘したのが、昨日の事のように思い出されます。トルコの録音チーム並びにこの作品に関わったすべての方に、感謝とお礼を申し上げます。そして早く平和が訪れることを切に願って。

【受賞歴】
第30回「男たちの大和 YAMATO」で初受賞ほか、第31回「慿神」、第37回「利休にたずねよ」。今回が4度目の受賞。
優秀賞岸田和美「母と暮せば」


今回の「母と暮せば」は悲しい、優しい、甘いファンタジィー映画です。山田監督をはじめとして素敵なキャスト、オールスタッフ、音楽は昔から大ファンの坂本龍一さんに決まりテンションが上がりました。素敵な音楽ありがとうございました。最後に「録音スタッフ」「効果スタッフ」「仕上げスタッフ」皆様に感謝申し上げます。

【受賞歴】
第24回「十五才 学校Ⅳ」で初受賞他、第26回「たそがれ清兵衛」、第34回「おとうと」。昨年の「小さいおうち」に続き9度目の受賞。
優秀賞弦巻裕「海街diary」


是枝監督の演出は、役者さんが自然に演技できるように現場でどんどん変化していきます。
録音部として付いていくのが大変な時もあるのですが、それが決して苦ではなく、作品を作る喜びに繋がっているような気がします。桜の季節から冬の鎌倉での撮影、年を越して3月のダビングまで、ほぼ1年間この作品に関わりましたが、映画人として幸せな1年でした。その上このように名誉ある賞までいただき、大変光栄に思っております。

【受賞歴】
第37回「そして父になる」で初受賞。
優秀賞照井康政(録音)「日本のいちばん長い日」


この度は、技師としてまだまだ未熟な私にこの様な賞を頂きありがとうございます。戦後70年という年にこの様な作品に携われた事、大変な現場の中、私のわがままに不満を言う事なくついてきてくれた助手達に感謝します。

【受賞歴】
第35回「大鹿村騒動記」で初受賞
優秀賞矢野正人(整音)「日本のいちばん長い日」


原田監督をはじめスタッフ・キャスト・関係者の皆様に感謝いたします。この作品に参加出来た事、光栄に思います。

【受賞歴】
第32回「クライマーズ・ハイ」で初受賞、第34回「告白」ほか。昨年の「蜩ノ記」「紙の月」のダブル受賞に引き続き6度目の受賞。
優秀賞渡辺真司「バクマン。」


最初に連絡を頂いたときにはピンと来なかったのですが、コメントを書くに至り徐々に受賞の喜びを実感しております。大根組3本目にして初めての映画でしたが、いつも新鮮な緊張感を与えてくれる大根監督に感謝致します。効果と音楽に後押しされ緩急のあるミックスが出来ました。受賞にあたり、すべての「バクマン。」関係者の皆さまに感謝致します。

初受賞
優秀編集賞
最優秀賞大関泰幸「バクマン。」


【最優秀受賞コメント】
僕自身、映画の編集がほぼ初めての状態で。こんな場所まで連れて来て頂いた大根監督、どうもありがとうございました。

素晴らしい音楽、特殊効果、VFXがあってこそ、今作品の編集に辿り着いたと思っております。僕はこの作品が映画の編集としては2本目になるのですが、ほぼ素人のような僕をここまで導いてくれた大根監督、本当にありがとうございました。素晴らしい映画です。

初受賞
優秀賞石井巌「母と暮せば」


「母と暮せば」で優秀編集賞を頂きとても嬉しく思っております。この作品は山田監督の反戦、反核の意志が強く感じられる作品になったと思います。今、世界の情勢を見ると、すでに中東、アフリカ各国は戦争状態です。一歩間違えれば世界大戦勃発も懸念されます。このように世界が不安定な時こそ、この映画「母と暮せば」を世界の人々にぜひ見ていただきたい、そんな思いでおります。

【受賞歴】
第15回「男はつらいよ 寅次郎の告白」で初受賞。第26回「たそがれ清兵衛」で最優秀を受賞。昨年の「小さいおうち」に続く10度目の受賞。
優秀賞川島章正「海難1890」


企画から10年余、田中監督執念の作品に参加出来た事はとても嬉しく光栄に思います。2014年真冬の京都から始まり、東京、トルコ・アンタルヤで編集作業、帰国して完成の頃には再び冬の足音が近づいていました。2つの国の文化を1本の映画として創りあげた原動力は、トルコ、日本双方スタッフ、キャストの心底に和歌山県紀伊大島樫野の村人や恩に報いたトルコ人達の真心が伝承されていたように思います。

【受賞歴】
初受賞の第15回「大誘拐」で初受賞にして最優秀を受賞。第22回「愛を乞うひと」、第23回「金融腐蝕列島 呪縛」、第32回「おくりびと」で最優秀を受賞。今回が10度目の受賞。
優秀賞是枝裕和「海街diary」


編集は、いつも苦しみます。削って、加えて、スタッフに観てもらって、凹んで勇気付けられて、の繰り返し。出来た! と思ったのは、試写当日の朝、駅までの道を歩いてる途中でした。呆れながらも最後まで付き合ってくれた(事務所の)分福のスタッフに感謝します。

【受賞歴】
第37回「そして父になる」で初受賞。
優秀賞原田遊人「日本のいちばん長い日」


質も量も贅沢な編集素材。至福の仕上げ期間。現場にも極力立ち会う様にし、スタッフ・キャスト諸先輩方の渾身の素材を余す所無く最大限活用しました。その素材こそが、この度の受賞に繋がったと思います。いつも導いてくれる監督である父とこの作品に関わる全ての人に感謝致します。

【受賞歴】
第32回「クライマーズ・ハイ」で初受賞ほか、第36回の「わが母の記」。今回が3度目の受賞。
優秀外国作品賞
(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
最優秀賞アメリカン・スナイパー


【最優秀受賞コメント】
残念ながら、クリント・イーストウッド監督はこの場で賞を受け取ることはできませんが我々で、監督の手元にこの素晴らしい賞を間違いなく届けます。ワーナー・ブラザース映画の全スタッフでこの映画をヒットさせました。この場をお借りしまして、日本アカデミー賞協会会員の皆様、そして、映画をいつもご覧になっているファンの方々、本当にありがとうございます。(ワーナー・ブラザース映画 山田邦雄)

【作品情報】
イラク戦争に従事し、米軍史上最多の160人以上を射殺した伝説のスナイパー、クリス・カイルの自伝を映画化。監督・製作は、「許されざる者」(92)「ミリオンダラー・ベイビー」(04)で2度、米アカデミー賞作品賞および監督賞を受賞しているクリント・イーストウッド。また、製作の一人としても名を連ねる主演のブラッドリー・クーパーが、体重を20キロ近く増量し、主人公を熱演。家族への思いや愛国心と戦場の狂気の間で揺れ動き、精神が崩壊していく様を演じ切った。第87回アカデミー賞では音響編集賞を受賞。キネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・テン2位。アメリカで公開された戦争映画史上最高の興行成績を収めている。

原題:AMERICAN SNIPER 
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジェイソン・ホール
配給:ワーナー・ブラザース映画
優秀賞キングスマン


イギリス、ロンドンにある高級テイラー「キングスマン」は、実は世界最強のスパイ機関。エリートスパイのハリーは、亡き同僚の息子で今は無職のエグジーを「キングスマン」候補生に抜擢。一人前のスパイに育て上げようとする……。ハリー役のコリン・ファースが数カ月のトレーニングを積み、キレ味鋭いアクションを披露。エグジー役には当時無名だったタロン・エガートンが選ばれ、落ちこぼれ青年から一流紳士への成長を見事に演じ、本作でブレイク。監督は、「キック・アス」(10)のマシュー・ヴォーン。彼がストーリー構成から関わったグラフィックノベル「キングスマン:ザ・シークレットサービス」が原作で、スパイ映画へのオマージュがたっぷり。全世界で大ヒットし、すでにエガートン主演で続編の製作が決定している。

原題:KINGSMAN: THE SECRET SERVICE 
監督:マシュー・ボーン
脚本:マシュー・ボーン、ジェーン・ゴールドマン
配給:KADOKAWA
優秀賞セッション


名門の音楽大学に入学し、偉大なジャズドラマーになることを夢見る青年・ニーマンは、尊敬するフレッチャー教授が指揮者を務めるバンドにスカウトされる。しかしフレッチャーはとんでもない鬼教師だった……。本作が初の長編作となるデイミアン・チャゼル監督が自らの実体験をもとに脚本を執筆。資金集めのため、まずは同じ物語の短編を制作。その高評価を得て本作が製作された。若手映像作家の登竜門的存在であるサンダンス映画祭にて、グランプリおよび観客賞を受賞。スパルタ指導でニーマンを精神的に追い詰めていくフレッチャー役をJ・K・シモンズが怪演、第72回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞。また第87回米アカデミー賞では5部門にノミネートされ、J・K ・シモンズの助演男優賞を含む3部門を受賞。日刊スポーツ映画大賞外国作品賞受賞。

原題:WHIPLASH
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
配給:ギャガ
優秀賞マッドマックス 怒りのデス・ロード


1979年に公開された第1作の大ヒットを受け、81年に第2作、85年に第3作が公開された人気シリーズ「マッドマックス」。30年ぶりに公開された第4作では、主演のマックス役をメル・ギブソンからトム・ハーディにバトンタッチ。近未来を舞台に荒廃した砂埃が舞う地で、カーチェイスあり、爆破あり、バトルありのパワフルでバイオレンスな壮絶アクションが展開する。スキンヘッドで女戦士・フュリオサ大隊長を演じるシャーリーズ・セロンが強烈な存在感を発揮。監督・脚本は4作とも変わらずジョージ・ミラーが務めている。第88回米アカデミー賞では、作品賞を含む10部門にノミネート。ブルーリボン外国作品賞、キネマ旬報ベスト・テンでは外国映画第1位とジョージ・ミラーが外国映画監督賞を受賞している。

原題:MAD MAX:FURY ROAD 
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラソウリス
配給:ワーナー・ブラザース映画
優秀賞007 スペクター


「007」シリーズ24作目。前作「007 スカイフォール」(12)に続いてサム・メンデスがメガホンを取った。ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドを演じて4作目となる本作では、「007」史上最強の悪の組織でボンドの宿敵「スぺクター」が「007ダイヤモンドは永遠に」(71)以来44年ぶりに、新たなる敵として登場。ボンドの少年時代の記憶を遡るほか、クリストフ・ヴァルツ演じるオーベルハウザーとの因縁の対決が描かれる。メキシコ、イタリア、オーストリア、モロッコで撮影した壮大なスケールの映像や、迫力満点のアクションシーンに圧倒される。サム・スミスが歌う主題歌「ライティングス・オン・ザ・ウォール」が第73回ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞。第88回米アカデミー賞でも歌曲賞にノミネートされている。

原題:SPECTRE
監督:サム・メンデス
脚本:ジョン・ローガン、ニール・パービス、ロバート・ウェイド、ジェズ・バターワース
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
新人俳優賞
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞有村架純「映画 ビリギャル」


今日という日を迎えることがすごく嬉しいですが、すごく緊張もしています。「映画ビリギャル」は、本当にたくさんの奇跡をくれた作品だと感じていますし、どこまで連れていってくれるんだろうといつも思っていました。(「ビリギャル」の)さやかという女の子に出会えて、自分は幸せ者だなと強く感じています。

2010年デビュー。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』舞台『ジャンヌ・ダルク』(14)「思い出のマーニー」(14、声優)「ストロボ・エッジ」(15)など幅広く活躍。学年ビリの女子高生が慶應大学に現役合格するまでを描いた「映画 ビリギャル」では主人公・さやかをいきいきとエネルギッシュに演じ作品をヒットに導いた。原作が実話を元にした事でも大きな話題となった。今回8人目となる主演女優賞とのダブル受賞を果たす。
優秀賞土屋太鳳「orange-オレンジ-」


私は11年前、10歳の時にどうか私を映画の世界に入れてくださいと言って事務所に所属しました。それから最初は漠然と、3年前からは真剣に、この場所を目指して歩いてきました。「orange-オレンジ-」という作品に出会えたこと、「orange-オレンジ-」を通して出会った全ての方々、応援してくださる方々に心から感謝しております。いざこの場に立つと映画の扉がどこにあるのか私にはまだわかりません。でもやっとここに辿りつくことができたので、今日はもう一度この願いを伝えたいと思います。どうか私を映画の世界に入れてください。今日は本当にありがとうございました。

08年映画「トウキョウソナタ」でデビュー。テレビドラマ『鈴木先生』(TX)とその映画化「映画 鈴木先生」(13)で注目を集める。「るろうに剣心」続編二部作(14)では持ち前の運動神経のよさを活かし、見事なアクションを魅せる。15年は『花子とアン』に続く出演作NHK連続テレビ小説『まれ』で主役を務めた。人気少女マンガを映画化した「orange-オレンジ‒」では10年後の自分から受け取った手紙をきっかけに、思いを寄せる同級生を救うために行動を起こすヒロイン・菜穂の成長を繊細な演技で見せた。
優秀賞広瀬すず「海街diary」


この舞台に立つことが今もまだすごく不思議なんですが、監督とお姉ちゃんたち、そしてスタッフの皆さんと同じ舞台に立てることが何よりすごく幸せです。(姉役のキャスト陣には)撮影のときも本当にかわいがって頂いて、私が演じたすずという女の子は、綾瀬さん、長澤さん、夏帆さんがいなかったらできなかったと思うので感謝の気持ちでいっぱいです。

2012年雑誌専属モデルとなり、翌年女優デビュー。「海街diary」では、オーディションで自身と同じ名前でもある四姉妹の末っ子“すず”役を獲得。しっかり者で、自分の気持ちを抑えて生きてきたすずの心の動きをナチュラルに体現し、爽やかな印象を残した。報知映画賞をはじめ、日刊スポーツ映画大賞、キネマ旬報ベストテン、山路ふみ子映画賞、TAMA映画賞でそれぞれの新人賞を受賞。ヨコハマ映画祭では最優秀新人賞を受賞、本年の新人賞を総なめにしている。
優秀賞藤野涼子「ソロモンの偽証 前篇・事件」「ソロモンの偽証 後篇・裁判」


この名誉ある賞を頂けてとても嬉しく思っています。私はエキストラ時代があって、今回初めて主演に選ばれて、どっちにいけばいいのかわからなかったんですけど、涼子に出会えて、涼子を演じて……(涙)、小学校6年生から今の事務所にいるんですが、当時はこのような舞台に立てると思っていなかったので、(成島出)監督にここまで育てて頂けてとても嬉しいです。

宮部みゆきのミステリー巨編を成島出監督はじめ「八日目の蟬」(11)チームが結集して映画化した意欲作「ソロモンの偽証」前後篇。約1万人の候補者の中から主演の“藤野涼子”役に抜擢されデビュー。役名をそのまま芸名とした事で話題となる。同級生の死の真相を明らかにするため、学校内で裁判を開く涼子の芯の強さ、真っ直ぐさを凛とした演技で表現し、強烈な存在感を放っている。報知映画賞および毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。
優秀賞篠原篤「恋人たち」


現場で橋口亮輔監督が「君は僕がこれだけ苦しい思いをして、たくさんのスタッフの方たちが力を尽くしてくれても、それでも観てくださっている方たちにはほんの少ししか伝わらないかもしれない。それでも映画で人に何かを伝えていきたいのであればどんな思いでもしてこれをやり遂げるんだよ」とおっしゃってくださいました。その言葉を胸にこれからも精進してまいります。

橋口亮輔監督のワークショップに参加し、中編「ゼンタイ」(13)に出演。その後、再びワークショップを経て、橋口監督7年ぶりの本作の主役に抜擢。監督が本人をイメージしてアテ書きしたアツシ役に扮している。通り魔事件によって妻を失い、やりきれない思いを抱えながら生きる男の悲哀や苦しみを切なく、リアルに演じ、見る者の心を掴んだ。高崎映画祭優秀新進俳優賞、キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞。作品は毎日映画コンクール日本映画大賞、キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位を受賞している。
優秀賞野田洋次郎「トイレのピエタ」


非常に場違いな気持ちもしているんですが、大変光栄に思っています。撮影までの1年間、(松永大司)監督はたぶん毎週のように我が家に来て、二人で何時間も、脚本や二人の人生やこの映画について話をしました。そして1年後に撮影を迎えて、その1年半後にこの場所に立てるとは思っていなかったので、本当に光栄に思っています。音楽は孤独な作業で、基本的には一人で取り乱して、生まれた瞬間も周りには誰もいない。映画は周りに一緒に泣く人がいて、一緒に笑いあえる人がいて、たまに大の大人同士がケンカして、命懸けで作る価値のあるもの。本当に恐れ多い世界ですが、だからこそ命を懸けるかいがある素晴らしい世界だと痛感しました。

若者たちから圧倒的な支持を集めるロックバンドRADWIMPSのヴォーカル&ギターとして活躍。劇映画初監督の松永大司をはじめとする製作側からのラブコールにより役者デビューし、見事に主演を務め上げた。また映画の主題歌も手掛けている。画家になる夢をあきらめ生きていた男が、突然余命を宣告され、やがて思いを絵にぶつけていく。絶望感や恐怖、生への執着など複雑な感情を演じ切った。毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。
優秀賞山﨑賢人「orange-オレンジ-」「ヒロイン失格」


2010年テレビドラマで俳優デビュー。ここ数年で「麒麟の翼~劇場版・新参者~」(12)「L♡DK」(14)、NHK連続テレビ小説『まれ』『デスノート』(NTV)など多数の映画・テレビに出演し幅広い人気を獲得している。「orange-オレンジ-」では、母親の自殺により心に深い闇を抱え、儚く陰のある青年を。また「ヒロイン失格」では幼なじみのヒロインへの思いがありながら、一歩踏み出すことのできないナイーブな青年を繊細に演じ、観客を魅了した。
優秀賞山田涼介「映画 暗殺教室」


今回、初主演映画でこのような名誉ある賞を頂き本当に光栄に思っております。映画に出るのは、小さい頃からの夢でした。なので、(出演が決まったときは)本当に嬉しかったですし、第一に家族に報告しました。この映画でこのステージに立てていることが本当に嬉しいです。これからも先輩方の大きな背中を追い掛けながら、これから出る映画に少しでも華を添えられるような役者になれるよう日々精進して頑張っていきたいと思います。

07年、Hey!Say!JUMPのメンバーとしてデビュー。グループでの活動に加え、テレビドラマで主演を務めるなど俳優としても活躍。羽住英一郎監督がベストセラー漫画を映画化した「映画 暗殺教室」では、映画初出演にして初主演を果たす。人当たりが良く、優しく控えめな青年・潮田渚が、地球破壊を宣言する殺せんせーを暗殺するため仲間と共に訓練や戦いを通じて成長していくさまを魅力的に演じた。映画は興行収入27.7憶円のヒットを記録している。
協会特別賞
(C)日本アカデミー賞協会
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞松田和夫 【衣裳】


賞を頂きありがとうございました。これからもまだちょっと(キャリアは)続くと思いますけども、目立たないように静かに仕事をしていきたいと思います。

【解説】
映画が総合芸術である由縁は、例えば撮影、照明、美術などの技術が突出して優れていればいるほど、結果として映画全体のバランスを壊す可能性を孕む、その恐さにあると言えるかもしれない。62年、松竹衣裳(株)入社後、テレビ局付の衣裳担当を経て、松竹大船撮影所の衣裳担当となった松田氏は「ファッション性だけが先走っていくことが嫌いで、その作品の持つ世界観を大切にしたい」と発言されているが、それはそうした事態を回避するための姿勢であるといえる。時代設定や環境を考慮し、その俳優の役柄や個性に合わせつつ、画面の色調やセットの配色なども踏まえ、汚しなどの加工から着付けの細部にまで拘りを持ち衣裳を選択決定してきた。あくまで映画全体の中で自然に見えるように心がけてきた。その成果は「旅の重さ」(72「) 幸福の黄色いハンカチ」(77)「 事件」(78)「 御法度」(99)「 たそがれ清兵衛」(02)「聯合艦隊司令長官 山本五十六」(11)「母と暮せば」(15)などの作品世界に見事に貢献している。半世紀を越えて、今なお映画製作の現場に立ち、周囲から厚く信頼され、後進の人材育成にも尽力を惜しまぬ、その活躍が今後も積み重ねられることを願いたい。
優秀賞株式会社ガル・エンタープライズ 【予告篇製作】


非常に緊張しております。このような席でこんな賞を頂くというのは夢のようであります。これからも社員ともども頑張っていきます。(代表取締役社長・佐藤宣明)

【解説】
観客にとって、映画は予告篇からはじまる。限られた時間の中で、未知の映画の魅力の核を的確に伝えることで、観客の夢を誘う重要な入口として機能している。虚構の世界と現実とを最初に橋渡しする役割を担っているといえるだろう。予告篇制作のパイオニア、ガル・エンタープライズは、1976年の設立以来40年間、優に3,000本を超える予告篇を送りだしてきた。かつて予告篇は、主に撮影所の助監督が手がけ、その出来栄えが判断されて、監督昇進への登竜門になっていた。その後様々な変遷を経て、外部会社が作成するようになったが、ガル・エンタープライズはその先頭に立ち、優れた演出家を擁して良質の劇場用予告篇を作り、日本映画における予告篇の位置を築き高めた。時代の要請にも応え、TVCMや番組企画の分野にも積極的に乗り出した。デジタル時代にも対応し、編集スタジオの機能を高め、3Dや独自のCG製作能力を備えるなど、技術革新にも力を注ぐ。時代の先進性を取り込みながら、数多くの配給会社、宣伝部から絶大な信頼を寄せられている。映画の夢の案内人として今後も日本映画界の宣伝部門を支え続ける存在であることは確実だろう。

宮尾登美子
原作者
12月30日没 享年88才
白坂依志夫
脚本
1月2日没 享年82才
須崎勝弥
脚本
1月9日没 享年93才
黒田義之
監督
1月22日没 享年86才
入江雄三
協会役員/製作
1月31日没 享年84才
坂東三津五郎
俳優
2月21日没 享年59才
三條美紀
俳優
4月9日没 享年86才
愛川欽也
俳優/声優/監督
4月15日没 享年80才
萩原流行
俳優
4月22日没 享年62才
山方 浩
録音
4月26日没 享年56才
滝田裕介
俳優
5月3日没 享年84才
高橋二三
脚本
5月5日没 享年89才
今井雅之
俳優
5月28日没 享年54才
小泉 博
俳優
5月31日没 享年88才
林 土太郎
録音
7月9日没 享年93才
川崎敬三
俳優
7月21日没 享年82才
加藤 武
俳優
7月31日没 享年86才
原節子
俳優
9月5日没 享年95才
山内 久
脚本家
9月29日没 享年90才
熊倉一雄
俳優/声優
10月12日没 享年88才
佐木隆三
原作者
10月31日没 享年78才
加藤治子
俳優
11月2日没 享年92才
阿藤 快
俳優
11月14日没 享年69才
水木しげる
原作者
11月30日没 享年93才
金沢正夫
照明
12月8日没 享年63才
野坂昭如
原作者
12月9日没 享年85才

映画界に多大なる功績を残され2015年に逝去された映画人(没日順)

協会栄誉賞
(C)日本アカデミー賞協会
優秀賞仲代達矢


<収録インタビューより>
映画は、小林正樹監督の作品(「黒い河」)で“人斬りジョー”という悪役を演じ、次に「人間の條件」で正義の人をやらせて頂きました。その間に黒澤(明)さんの映画に出させて頂いて。残念なのは、小津(安二郎)さんと溝口(健二)さんの映画には出られなかった。そんな贅沢を言ってみんなに怒られる。そういう意味では幸運な俳優生活を送ったと思います。今日は素敵な賞を頂いて、光栄に思っております。

【解説】
正統派のヒーロー役を演じながら、気弱で誠実な役、冷酷かつ虚無的な悪役、さらにはコミカルな役までその役柄の守備範囲の広さには驚かざるをえない。日本を代表する名優のひとりである仲代氏は、千田是也の芝居に感銘を受け新劇の道を志し、55年俳優座に入団。イプセン作『幽霊』の舞台で、新劇界の注目を集め「火の鳥」(56)で本格的に映画デビューする。小林正樹監督に見込まれ「人間の條件」6部作(59~61)の成功でトップスターの座に就く。以後、その個性的な眼と声、大柄で細身の体、演技を緻密に練りあげていく姿勢を貫き、演劇界で活躍する一方、黒澤明監督「用心棒」(61)「椿三十郎」小林正樹監督「切腹」(共に62)「怪談」(64)勅使河原宏監督「他人の顔」岡本喜八監督「大菩薩峠」(共に66)「殺人狂時代」(67)山本薩夫監督「華麗なる一族」(74)市川崑監督「吾輩は猫である」(75)「不毛地帯」(76)五社英雄監督「雲霧仁左衛門」(78)「鬼龍院花子の生涯」(82)などの映画に主演。映画5社と専属契約を結ばないと映画出演が困難だった時代にフリーの立場で名監督たちから重用され、その多くの代表作を支える存在として、演劇界のみならず映画界を長く牽引してきた。黒澤明監督「影武者」(80)では、主役降板の代役として、急拠主役に抜擢され、結果として同作はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。続く「乱」(85)では、シェイクスピア『リア王』を大胆に翻案した悲劇的な役柄で比類ない演技を見せ、観客を圧倒した。75年からは夫人の宮崎恭子(女優、演出家、脚本家としての筆名は隆巴の『無名塾』を主宰し、マン・ツー・マン方式で新人を育て、役所広司らを輩出した。テレビドラマにも意欲的に出演し『新・平家物語』(72)『海は甦る』(77)『砂の器』(77)『大地の子』(95)『飢餓海峡』(88)『約束~名張毒ぶどう酒事件・死刑囚の生涯』(12)では、気迫のこもった演技を見せる。傘寿を越えても、その意欲は衰えず、近年も「春との旅」(10)「日本の悲劇」(13)「ゆずり葉の頃」「NORIN TEN 稲塚権次郎物語」(共に15)などに出演。「かぐや姫の物語」(13)「ジョバンニの島」(14)では、声優にも挑戦する。演技賞は数多く、挙げきれないほどだが、96年紫綬褒章、03年勲四等旭日小綬章受章、07年には文化功労者、15年には文化勲章を受けた。

【受賞歴】
第6回優秀主演男優賞「鬼龍院花子の生涯」、第10回優秀主演男優賞「熱海殺人事件」「道」で受賞。
話題賞
(C)2015映画「バクマン。」製作委員会

作品部門:「バクマン。」


監督・脚本:大根 仁
製作:東宝/アミューズ/電通/集英社/ビクターエンタテインメント/オフィスクレッシェンド/ジェイアール東日本企画/KDDI/GYAO/日本出版販売
(C)2015平田オリザ・講談社/フジテレビジョン 東映 ROBOT 電通 講談社 パルコ

俳優部門:ももいろクローバーZ「幕が上がる」


監督:本広克行
脚本:喜安浩平
製作:フジテレビジョン/東映/ROBOT/電通/講談社/パルコ