2月27日、グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールにて、第38回日本アカデミー賞授賞式が開催された。
今年の授賞式は例年に増して華やかな幕開けとなった。「永遠の0」で優秀主演男優賞、「蜩ノ記」で助演男優賞をダブル受賞した岡田准一さん、新人俳優賞の登坂広臣さん、福士蒼汰さんらがレッドカーペットに姿を現すと女性客からの黄色い声援が飛び交い会場は途端にヒートアップ。さらに、真紅のドレスに身を包んだ宮沢りえさんを始めとする主演女優6人とそれに続く主演男優の登場でますます熱気を帯び、最優秀賞の発表への期待も高まった。
司会は、昨年に引き続き日本アカデミー賞協会・組織委員会副会長の西田敏行さんと前回「さよなら渓谷」で最優秀主演女優賞、「そして父になる」で最優秀助演女優賞をダブル受賞した真木よう子さんが務めた。初めての大役に真木さんは、会場を見渡して「皆さんの顔が…怖い (笑)」ととまどいを隠さなかったが、通算5回目の司会となる西田さんから言葉をかけられ、そのリラックスムードに表情が和らいだ。
この日の主役は、最優秀主演男優賞「永遠の0」、最優秀助演男優賞「蜩ノ記」、話題賞〈俳優部門〉(「永遠の0」)の3賞を独占した岡田准一さん。日本アカデミー賞初受賞にも関わらず、史上初となる男優俳優部門の最優秀賞ダブル受賞の快挙を成し遂げた岡田さんは「自分を映画人と認めていただけて嬉しいです」と謙虚なコメント。こみあげる涙をこらえる姿に会場からは感嘆のため息がもれた。また、受賞対象作品「永遠の0」が歴史を伝える役割を担っていることに触れ、日本アカデミー賞の歴史を伝承してきた第1回最優秀賞受賞者である高倉健さんと第2回受賞者の緒形拳さんとの思い出に言及。緒形拳さんの「俳優は感情を伝える仕事だ」というアドバイスを日々心に留めながら俳優業に邁進していると神妙な面持ちで語った。
最優秀主演女優賞は「紙の月」の宮沢りえさんが受賞。残念ながら舞台出演のため、最優秀賞の発表時には既に退席しており、ブロンズ像を直接受け取ることは叶わなかったが、吉田大八監督が登壇。宮沢さんが今回7年ぶりの映画主演だったことを「もったいない」ともらし、今後の宮沢さんの活躍を期待する言葉を残した。
最優秀助演女優賞は、昨年のベルリン国際映画祭で銀熊賞〈女優賞〉にも輝いた「小さいおうち」の黒木華さんが受賞。艶やかな着物姿で登壇すると「私をいろいろなところに連れていってくれた作品。とても思い出深いです」と声を震わせながら喜びを語った。
「永遠の0」が最優秀作品賞を受賞し、監督賞、主演男優賞、撮影賞、照明賞、美術賞、録音賞、編集賞の計8部門で最優秀賞を制覇した。興行での大ヒットに続き、日本アカデミー賞でも最高の栄誉を手にしたことに山崎貴監督は「日本アカデミー賞はエンターテインメント作品にも光をあててくれる」と感謝の言葉を述べた。また、山崎貴監督作品としては「STAND BY ME ドラえもん」(八木竜一監督と共同)が、最優秀アニメーション作品賞も獲得。実写映画とアニメーション映画両作品で同時に最優秀作品賞を受賞した初めての監督となった。
今年も6名のフレッシュな面々が新人俳優賞を受賞。800名以上の候補者の中から主演の座を射止め、難役を演じきった「舞妓はレディ」の上白石萌音さん。「紙の月」「愛の渦」「ぼくたちの家族」など話題作に出演し、様々な役柄を演じ分けた池松壮亮さん。初めての演技とは思えない大胆さで複雑なキャラクターを演じきった「渇き。」の小松菜奈さん。「ホットロード」で息の合ったところを見せた能年玲奈さんと登坂広臣さん。「イン・ザ・ヒーロー」「神さまの言うとおり」「好きっていいなよ。」など、既に新人離れした活躍ぶりを見せる福士蒼汰さん。それぞれが初の大舞台に緊張した面持ちで受賞の喜びを語るとプレゼンターを務めた松田龍平さんが「私も新人俳優賞をいただいた時、ステージの華やかさに戸惑ったことを覚えています」と当時を思い出すコメント。
将来有望な新人たちを表彰する一方、惜しまれつつもこの世を去った偉大な映画人たちにもあらためてスポットがあてられた。昨年11月に亡くなった菅原文太さんには会長特別賞が贈られた。多くの映画で共演した松方弘樹さんが登壇すると「文ちゃん、もらったよ」と亡き友に語りかけた。同じく昨年11月にこの世を去った高倉健さんを偲ぶVTRも紹介。生前ご本人より「死後の贈賞は辞退する」旨の申し出があったため会長特別賞の授与は控えられたが、会場からは高倉さんの偉業に惜しみない拍手が送られた。偉大な映画人たちを多く失ったことを痛感させられた今年の授賞式だったが、一方で例年にないほどの熱気に包まれ、日本映画の明るい未来をも予感させる夜となった。
|
|
☆ぴあ特別会員による、授賞式に出席した感想 |
早川和希さん(女性/20代)
授賞式から1週間、本当に夢のような時間でした。当日は朝からソワソワしてしまい自分がちゃんと会場に到着できるのか正直不安でした。会場では、この1年レポートを書いてきた4人の方と初対面、みなさんレポート同様素敵な方々で、一緒にできたことがとても嬉しく思いました。
授賞式では、普段絶対に会えない映画関係者の方々を沢山見ることができ、そして個人的に大好きな岡田准一さんが話題賞を含めトリプル受賞という快挙の瞬間に立ち会えて本当に幸せでした。
パーティーとは無縁の生活をしている私には初めての経験で、どこを見てもスクリーンで観たことのある役者さんがいてドキドキしながら過ごしていました。興味のなかった俳優さんも近くで見るとかっこよくて全員の事を好きになりそうでした。そして何より、二階堂ふみちゃんが可愛かったです! 帰宅中にはオンエアを見ていた友人から「岡田くん受賞おめでとう」とメールを貰い、嬉しいことしかない1日になりました。
テレビでは短縮されてしまう、スタッフ陣の賞も丁寧に紹介されていて、会場の方がやはり見ていて楽しいなと思いました。来年もチケットが取れたら参加したいなと思います。ぴあ特別会員として過ごした1年、その締めくくりである授賞式、本当に幸せでした。
|
|
山本さん(男性/30代)
映画は近くに感じるのに映画界はどこか遠い世界に感じてしまう。たぶんそれが当たり前。この一年、日本アカデミー賞会員として映画をたくさん観て、投票用紙と格闘して、授賞式やパーティーにまで出席させていただいたのに映画界との距離は縮まらなかった。というより縮められなかった。もっと近くに感じられるようになれると思っていたのに。
映画界こそ人だった。スクリーンや写真、文字を通してでしか接したことのない人たちがみんなはつらつとそこにいて、その活きている人たちに圧倒されてしまった。なんて贅沢な一年だったんだろうと振り返って、旅をして帰ってきたようなこの感覚をただの思い出にしたくない。見たいと思っていた世界を見て、味わいたいと思っていたものを味わって知ってしまったものを遠いところに感じたくない。そう感じられることを幸運に思います。今まで想像でしかなかった距離を知ることができて、自分に足りないものも教わりました。とても恵まれた時間を過ごすことができました。
知らない世界に圧倒されるのは大歓迎でも萎縮してしまってはもったいない。もっといろんなことを楽しめるように、自分から世界を遠くしてしまわないようにこの経験を大切にしたいと思います。授賞式のアフターパーティーには名刺があると心強いですよ新会員のみなさま! |
|
矢嶋杏奈さん(女性/20代)
会員としての1年間、そして授賞式当日は「本当に楽しかった」その一言に尽きます。今回のような場は初めての経験だったので、着ていくものを選ぶときから緊張し、同時に楽しみで胸が高鳴っていました。1週間が経った今でも、時たまあの夢のような時間を思い出します。
テレビ放送では2時間程度にまとめられていましたが、実際は3時間半にも及ぶ長い授賞式で、それを余すところなく見ることができました。みなさん場慣れしているかと思いきや、緊張した面持ちで入場してこられたのが意外でした。印象に残ったのは、「永遠の0」が数々の最優秀賞をかっさらっていく中で、「超高速!参勤交代」が最優秀脚本賞を受賞したこと。土橋章宏さんの「はじめて人のために脚本を書いた」という受賞の喜びが滲み出るスピーチには、思わずこちらも笑顔になりました。
授賞式後の祝賀パーティーでは、福士蒼汰さんや小松奈々さんなどのフレッシュな顔ぶれを間近で見て、自分も同世代としてもっと精進していかなければと深く反省(笑)岡田准一さんに「おめでとうございます」と声をかけられたのは、一生の思い出です!ただ、お腹がペコペコだったはずなのに芸能人と同じ空間にいると思っただけで胸もお腹もがいっぱいになり、食事にはほとんど手をつけられませんでした…。
もう会員ではありませんが、今年も去年と同じペースで劇場に足を運び、映画を観ています。今年も多くの素敵な作品に巡り合えますように!
|
|
小室明子さん(女性/30代)
人生には、上り坂、下り坂、そして「まさか」があるそうですが、その「まさか」の日本アカデミー賞授賞式へ行く日がやって来ました。着物を着て会場に到着し、ぴあ特別会員の皆様とご挨拶。ついに念願の授賞式が幕を開けました。 続々と受賞者の方のスピーチが始まり、映画を支えて下さっている皆様の授賞式を見られた事は非常に素晴らしい体験でした。
また、岡田准一さんが最優秀助演男優賞が発表された後のスピーチは、こみあげる涙を抑えるように話す岡田さんの姿に思わず涙が溢れそうになり、史上初、男優の主演・助演の最優秀賞W受賞!感動の瞬間に立ち会えました。映画「永遠の0」がなんと8冠!に輝き、まさにこの日は「永遠の0」デー。チームの皆さんの結束力を感じた授賞式でした。「永遠の0」や「小さいおうち」は戦争にまつわる話だったこともあり、授賞式最後に司会の西田敏行さんが「戦争って本当に嫌ですね」とお話し下さった事が心に残りました。
授賞式後の祝賀パーティにも参加させて頂きましたが、芸能人の方々がすぐそばにいらしており、緊張しつつもしっかり食べつつお酒も飲んでいたら、目の前に眼鏡を掛けた超イケメンが!なんと三浦春馬さんでした。夢のような授賞式はあっと言う間に終わってしまいましたが、本当に素晴らしい一日でした。 |
|
Shioriさん(女性/20代)
自分の格好に疑問を持ちながらも会場に着くとなんと華やかなこと!女性達は皆さんまるでパリコレのように様々なドレスやお着物を着用され、誰が一般の方で誰が関係者なのかわからない状況に『しまった!自分 地味すぎるー!』と心の中で叫んでしまいました。
本年の日本アカデミー賞の司会は真木よう子さんと西田敏行さんのお二人。西田さんの軽妙なトークに何度も笑ってしまいました。また真木さんは前回のぴあ読者会員の皆さんの言う通り『顔ちっさー!』かったです。
レッドカーペットでは初っ端から今をトキメク新人俳優賞を受賞した皆さんが登場し、会場中がカッコいいーや素敵!などを連呼!ライブ会場のようでした。特に結果を予期していたかのように何度もカーペットを歩くことになった岡田准一さんパワーはこの時から一味違っていました。
映画関係者が選んでいると言うこともあり、受賞結果にお客さんとのギャップがあると言われることもありますが、今回の結果は映画を熟知したプロからの支持とお客さんの心からの感動が合致した文句なしの結果だと思います。またそれだけどの面からみてもパーフェクトな映画なんだなと思いました。
日本アカデミー賞授賞式という素晴らしい日をぴあの皆さんや同じく会員に選ばれた皆さんと過せた事が本当に楽しかったです! |
|